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インターネット字書きマンの落書き帳

   
リヒタとエリオとBARのキス(りひえり・BL)
なんだか流れで付き合うようになった世界線のリヒタ×エリオの話してます。
(挨拶をかねた幻覚の説明)

この話は……ど、どこに投げたっけ……!?
確かTwitterに投げた気がする!
その作品をちょっぴり手直しをしてブログにおいておきますぞい。

流れでキスをしてからリヒタの事気になってしかたないエリオがもだもだしながらリヒタにキスをおねだりする、そのような……話です。

『グラスを傾けて』

 隣に座りグラスを傾ける利飛太の唇ばかりを襟尾は目で追いかける。そんな襟尾に視線をおくると、利飛太は微かに笑って見せた。

「どうしたんだい、エリオ。さっきから全然飲んで無いようだが気分でも悪いのか」

 流石に見つめすぎたのだろう、声をかけられ襟尾はあわてて利飛太の顔から視線を逸らす。
 それでなくとも利飛太は他人の視線など気取る能力に長けているのだから、まじまじ見ていたら気付かれるのも当然だ。襟尾は慌てて手にしたグラスの酒を一気に煽る。
 喉元が焼けるように熱くなり身体全体が火照っていくのがわかった。

「一気飲みなんてらしくない事をするな、あまり酒が強い訳でもないだろ」
「ま、まぁそうなんだけどさ。こう、たまには男らしい所見せないと、なんて思って」

 誤魔化すつもりで口から出た言葉に、利飛太は大げさなほど首を振ってみせた。

「僕の前で格好付ける必用なんてないだろう? そんな無理な飲み方なんてしないで、いつも通りゆっくり飲もう」

 利飛太はそう告げ涼しい顔でグラスを傾ける。
 その唇を、襟尾はまた目で追いかけていた。

 先日、襟尾は利飛太と唇を重ねた。
 とはいっても別段に深い意味を持つ訳でもない、挨拶程度の触れるだけのキスだ。
 襟尾が冗談で「キスで起こしてくれ」なんて言ったから利飛太も冗談で目覚めのキスとして挨拶代わりに唇を重ねた、その程度のものである。

 挨拶程度の触れるだけのキスだ、深い意味はない。
 それを全て理解した上でなお、襟尾はずっとそのキスが忘れられずにいた。
 触れた時の柔らかさと暖かさ。肌にかかる吐息。目の前にある利飛太の整った顔……思い出すたびに身体が熱くなり、やたらと心が浮ついてくる。
 ただ触れただけで心地よかったのだから、気持ちがこもればもっと上手いのだろう。それを思うだけでもっと欲しいと思ってしまったし、利飛太が相手ならもっと色々なことを試してみるのも悪くないと、そんな事さえ思ってしまったのだ。
 それが単純に快楽と刺激を求めてのものなのか、それとも利飛太に対して特別な思いを抱いているのかはっきりとはわからなかった。
 だが、今キスをして優しく抱かれ身体を預けてもいいなどと思う相手がいるのだといしたらそれが利飛太であることだけは間違いない。

 しかしそんな事を告げられても、利飛太も困ってしまうだろう。
 それに元々襟尾はあまり誰かを口説いたりするようなタイプではなかった。 いつだって好きになってくれた相手と成り行きで付き合い成り行きで事に及ぶというのがお決まりのパターンになっていたのだから仕方ないだろう。
 これが映画やボーリングだったら気楽にやらないかと誘えたのだろうが、キスやセックスとなれば明らかに勝手が違う。
 刑事になってからそのような事とはとんと無縁の日々が続いているからなおさらどう誘っていいのか分からなくなっていたし、相手が気心知れた元同期の利飛太なのだから自分の感情とどう向き合っていいのかもわからなくなっていた。

「僕に何か言いづらい相談でもあるのかな。それなら場所を変えてもいいけど」

 利飛太はそう言いながら、BARのマスターへ視線を向ける。利飛太の視線を受けてマスターも何かを察したのか、こちらから離れた場所へ行き別の客と話し始めた。
 きっと襟尾があまり長く黙り込んでいたから、利飛太もおかしいと思っているに違いない。
 だがやはり躊躇いはある。
 どうやって言えばいいのだろうか、自然に誘う方法などあるのだろうか。
 あれこれ考えてみたものの、利飛太は襟尾をよく知っている。下手に隠したりしてもすぐ見破られるだろうと思ったし、それはいかにも自分らしくないと思い直し利飛太の方へと向き直った。

「実はさ、リヒタ。このまえオマエ、オレとキス……しただろ?」
「あぁ、そんな事もあったね」
「あれさぁ……また、してもらえないかな」

 襟尾の言葉に、グラスをもつ利飛太の手が止まる。何かしら思い詰めている様子なのに気付いても、流石にキスをねだられるとは思ってもいなかったのだろう。
 きっと、利飛太も困っているに違いない。そう思った襟尾は何だか急に気恥ずかしくなりせわしなく両手を振り出した。

「いや、違うんだ。違わないけど、何というか。まえ、してもらっただろ。なんか、それすっごく気持ち良くて……いや、変な意味じゃないというか。まぁ、変に思うかもしれないけどさ。でも、なんかあれから集中できないってか。そういうのだから、もう一回してもらえれば吹っ切れるかな、って。そういう系」

 自分でも何を言ってるのだろうと思ったが、利飛太はわかってくれたのだろう。一度深くため息をつくと。

「まったく、どういう系があるっていうんだ。まぁ、それでキミがおかしくなってしまったのなら僕のせいだからね。責任はとらせてもらうよ」

 そういいながら微かに笑いとグラスの氷を手に取ると、それを口に含んでから襟尾の身体を抱き寄せ唇を重ねた。
 薄暗いBARの中とはいえ人前でキスをされ、襟尾の思考は一気に焼き切れる。
 恥ずかしい、皆が見ているだろう。いや、だがこの角度なら周囲からは見えないだろうか。
 あれこれ考える以上に利飛太とのキスは心地よく、次第に全てを考えるのをやめていた。
 触れた唇は温かいし肌にかかる吐息はくすぐったい。おまけに目の前にある利飛太の顔はとびっきり美しいのだ。
 自分を抱く腕は女性の華奢な手と違い随分とたくましい。もちろん自分だって普段から鍛錬はしているが、それでも背丈も身体も利飛太のほうが随分大きいように思えた。

 思考が一気にかき乱され、それから少しずつ利飛太のことばかり考えるようになっていく。
 交わした唇は以前寝ぼけ眼でした挨拶のキスよりずっと熱く襟尾の心を焦がし、利飛太のことしか考えられない程度には思いを一杯に注いでいた。

 やはり、好きなのかもしれない。
 そう思った瞬間、唇に舌が滑り込む。挨拶のキスよりずっと深い舌が絡むキスに溺れそうになる襟尾の舌へ冷たい氷が転がった。まるでこの氷を転がせと、転がしながらゆっくり息をしろというように現れた氷を舐りながら、利飛太にリードされるようそのままキスをつづける。微かにウイスキーの匂いがする氷が口の中で転がり、少しずつ溶けながら互いの舌が絡まっていった。
 何と心地よいのだろう。
 触れるだけのキスであれだけ幸せだったのだから、こんなキスをされては……。

「これで、吹っ切れたかな。エリオ」

 氷が溶けるのと同時に利飛太はキスを終え悪戯っぽく笑って見せる。
 どうしてこれで吹っ切れるというのだろう、きっと暫くは忘れられない。
 襟尾は頭を抱えると、その場に突っ伏した。

「吹っ切れるかよ、無理。無理無理無理無理、もう、何でそんなことすんだよぉ……当分忘れられそうにないんだけど、どうしたらいいんだよこれ。え、どうすればいいんだオレ?」

 自分でもどうしていいのか、何をしたらいいのか、この感情をどう処理したらいいのか。何もわからないままついそう言えば。

「さぁ、好きにしたらいい。もし僕と……もっと、そうしたいのであれば……僕は、悪い返事をするつもりはない。そうとだけ、伝えておこうかな」

 利飛太は涼しい顔のまま、襟尾の肩に優しく触れる。

「えぇっ」

 襟尾は驚きつい顔をあげ、何も言えないまま利飛太の横顔を眺める。
 そんな襟尾の隣で、利飛太はどこか楽しそうにグラスを傾けるのだった。

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インターネット駄文書き
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