インターネット字書きマンの落書き帳
急に誕生日だって言い出す襟尾と津詰の話
津詰と襟尾が出る話です。
張り込みの最中に突然「実は今日誕生日なんですよ」って言い出す襟尾にあわてて何かプレゼントを渡そうとする津詰の話ですよ。
何となく襟尾は10月生まれの天秤座だといいなぁ~と思いながら誕生日の話を書きました。
いぜん、襟尾がボスから万年筆をもらって嬉しくてそれをずっと使っている~という話を書いたのでその前の出来事っぽくかきましたよ。
公式で誕生日がわかると誕生日が祝えるから誕生日、わかるといいですね。
誕生日は毎年祝っていきましょう。
何なら毎日祝っていきましょう!(誕生日の意義とは)
張り込みの最中に突然「実は今日誕生日なんですよ」って言い出す襟尾にあわてて何かプレゼントを渡そうとする津詰の話ですよ。
何となく襟尾は10月生まれの天秤座だといいなぁ~と思いながら誕生日の話を書きました。
いぜん、襟尾がボスから万年筆をもらって嬉しくてそれをずっと使っている~という話を書いたのでその前の出来事っぽくかきましたよ。
公式で誕生日がわかると誕生日が祝えるから誕生日、わかるといいですね。
誕生日は毎年祝っていきましょう。
何なら毎日祝っていきましょう!(誕生日の意義とは)
『突然のプレゼント』
いつ終わるかも知れぬ張り込みは昼夜問わず続く。
その日、津詰と襟尾は車の中で容疑者に動きがないか息をひそめて見守っていた。時刻は午前零時をまわり、大都会と呼ばれた東京も周囲の灯りが少なくなるさなか。
「ボス、いま0時回りましたよね? 実はオレ、今日誕生日なんですよ」
襟尾は真面目な顔で容疑者の部屋を見つめたまま、不意にそんな事を言い出した。
緊迫した空気が微かに揺らぎ、津詰は驚き襟尾を見る。
「そうだったのか、そんな大事な日に休みもしねぇで狭い車に押し込めちまって悪ィな」
「別にいいですよ、いまさら誕生日だからってはしゃぐ歳でもありませんから」
「そっか、幾つになるんだ?」
「はい、18歳です!」
「おいおいまたエラくサバ読むじゃ無ェか、18歳なんて紅顔の美少年を夜分に連れ込んだとなっちゃ始末書モンだぞ……」
津詰は茶化しながらも対象者へと視線を向ける。
今日はまだ寝るつもりはないのか、アパートの窓からは薄明かりが零れていた。対象のライフスタイルや交友関係からも、今日はこれから人が来る事もなく午前3時頃には寝るのだろうが、それとわかっていても目を離す訳にはいけないのが張り込みというものだ。
津詰はポケットからガムを取り出すと、襟尾にもそれを向けた。
「しかし、せっかく誕生日だってのに今日いきなり言うんだもんなァ。知ってりゃ事前にプレゼントの一つでも準備してたってんだが……」
「いやいやいや、ボスからプレゼントなんてもらえませんよ! そんな……オレがボスと連んでるのがモノ目当てみたいな男だと思っていたんですか、オレとボスってそんな薄っぺらい関係でしたっけ」
「何の話だそれ!? 部下が一つ年取った祝いくらい普通にするだろ……それでカネ目当て、貢ぎ物目当てにならねぇだろそんな薄っぺらな部下だと思ってねぇよ。しかし今は何の持ち合わせも無ェんだよな……」
「気持ちだけで充分嬉しいですよ、『おめでとう、エリオ。また一つ歳を取って渋みが出たな、さすがは俺の部下だ一段とセクシーだぜ』くらい言ってくれれば充分ですって」
「充分のハードルが高ェんだよな……」
襟尾は笑いながらガムを受け取るとそれをくわえる。
彼の言葉に嘘はなく、プレゼントなど必用としていないのだろう。誕生日もすでに特別な日ではなく、それより犯罪検挙を優先させたい気持ちが大きいに違いない。
そんな部下だからこそねぎらってやりたいと思うが、いかんせん急に聞いた話だ。鞄の中には警察手帳とメモ用紙くらいしか入れていないし、財布を出して「これで美味いものでも食え」なんて金を出すのも味気ない気がする。
と、そこで津詰は自分の内ポケットに入った万年筆のことを思い出した。
以前、津詰がそれでメモをとっているとき襟尾は目を輝かせて「格好いい」と言っていた、古めかしい万年筆だ。津詰が若い頃買った物だから随分と古くはなっているが品は悪くないはずだ。
「何の準備も出来なかったから、こんなもんしか無ェけど。ほらよ」
津詰はポケットからそれを取り出すと襟尾の鼻先へと向けた。
「ちゃんとしたプレゼントはまた後でな」
すると、襟尾の目はみるみる輝いていき満面に笑みを浮かべると子供のようにはしゃぎながら万年筆を手に取った。
「えぇ、いいんですかボス! これボスがずっと使っていた万年筆でしょう? ちゃんとしたプレゼントとか、そんな……オレ、これがいい! これがいいです!」
「そ、そんなに喜ぶんじゃ無ェよ、古いもんだぞ」
「ボスと一緒に事件を解決してきた万年筆ですよ。嬉しいに決まっているじゃないですか。オレ、大切にします!」
心底嬉しそうに万年筆を抱く襟尾を見て、津詰の顔もついほころぶ。
「……そうか、誕生日おめでとさん、エリオ」
「はいボス、ありがとうございます。一生忘れない誕生日になりましたよ」
窮屈な車内が、一瞬だけ賑わう。
それは過酷な勤務の最中に行われた、小さく幸福な一幕だった。
いつ終わるかも知れぬ張り込みは昼夜問わず続く。
その日、津詰と襟尾は車の中で容疑者に動きがないか息をひそめて見守っていた。時刻は午前零時をまわり、大都会と呼ばれた東京も周囲の灯りが少なくなるさなか。
「ボス、いま0時回りましたよね? 実はオレ、今日誕生日なんですよ」
襟尾は真面目な顔で容疑者の部屋を見つめたまま、不意にそんな事を言い出した。
緊迫した空気が微かに揺らぎ、津詰は驚き襟尾を見る。
「そうだったのか、そんな大事な日に休みもしねぇで狭い車に押し込めちまって悪ィな」
「別にいいですよ、いまさら誕生日だからってはしゃぐ歳でもありませんから」
「そっか、幾つになるんだ?」
「はい、18歳です!」
「おいおいまたエラくサバ読むじゃ無ェか、18歳なんて紅顔の美少年を夜分に連れ込んだとなっちゃ始末書モンだぞ……」
津詰は茶化しながらも対象者へと視線を向ける。
今日はまだ寝るつもりはないのか、アパートの窓からは薄明かりが零れていた。対象のライフスタイルや交友関係からも、今日はこれから人が来る事もなく午前3時頃には寝るのだろうが、それとわかっていても目を離す訳にはいけないのが張り込みというものだ。
津詰はポケットからガムを取り出すと、襟尾にもそれを向けた。
「しかし、せっかく誕生日だってのに今日いきなり言うんだもんなァ。知ってりゃ事前にプレゼントの一つでも準備してたってんだが……」
「いやいやいや、ボスからプレゼントなんてもらえませんよ! そんな……オレがボスと連んでるのがモノ目当てみたいな男だと思っていたんですか、オレとボスってそんな薄っぺらい関係でしたっけ」
「何の話だそれ!? 部下が一つ年取った祝いくらい普通にするだろ……それでカネ目当て、貢ぎ物目当てにならねぇだろそんな薄っぺらな部下だと思ってねぇよ。しかし今は何の持ち合わせも無ェんだよな……」
「気持ちだけで充分嬉しいですよ、『おめでとう、エリオ。また一つ歳を取って渋みが出たな、さすがは俺の部下だ一段とセクシーだぜ』くらい言ってくれれば充分ですって」
「充分のハードルが高ェんだよな……」
襟尾は笑いながらガムを受け取るとそれをくわえる。
彼の言葉に嘘はなく、プレゼントなど必用としていないのだろう。誕生日もすでに特別な日ではなく、それより犯罪検挙を優先させたい気持ちが大きいに違いない。
そんな部下だからこそねぎらってやりたいと思うが、いかんせん急に聞いた話だ。鞄の中には警察手帳とメモ用紙くらいしか入れていないし、財布を出して「これで美味いものでも食え」なんて金を出すのも味気ない気がする。
と、そこで津詰は自分の内ポケットに入った万年筆のことを思い出した。
以前、津詰がそれでメモをとっているとき襟尾は目を輝かせて「格好いい」と言っていた、古めかしい万年筆だ。津詰が若い頃買った物だから随分と古くはなっているが品は悪くないはずだ。
「何の準備も出来なかったから、こんなもんしか無ェけど。ほらよ」
津詰はポケットからそれを取り出すと襟尾の鼻先へと向けた。
「ちゃんとしたプレゼントはまた後でな」
すると、襟尾の目はみるみる輝いていき満面に笑みを浮かべると子供のようにはしゃぎながら万年筆を手に取った。
「えぇ、いいんですかボス! これボスがずっと使っていた万年筆でしょう? ちゃんとしたプレゼントとか、そんな……オレ、これがいい! これがいいです!」
「そ、そんなに喜ぶんじゃ無ェよ、古いもんだぞ」
「ボスと一緒に事件を解決してきた万年筆ですよ。嬉しいに決まっているじゃないですか。オレ、大切にします!」
心底嬉しそうに万年筆を抱く襟尾を見て、津詰の顔もついほころぶ。
「……そうか、誕生日おめでとさん、エリオ」
「はいボス、ありがとうございます。一生忘れない誕生日になりましたよ」
窮屈な車内が、一瞬だけ賑わう。
それは過酷な勤務の最中に行われた、小さく幸福な一幕だった。
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