インターネット字書きマンの落書き帳
津詰が葦宮に飯をつくる話
葦宮誠と津詰徹生が出る話です。
葦宮と津詰だったら、料理のスキルは葦宮の方が上だと嬉しいよね。
何だかんだで葦宮は自炊できそう……。
そう思って書きました。
津詰が家に来て面倒くさいから仮病でやりすごそうとしたら、なんか料理を作ってもらう葦宮の話ですよ。
本編のネタバレがあるからパラノマサイトをクリアしてから見てね♥
葦宮と津詰だったら、料理のスキルは葦宮の方が上だと嬉しいよね。
何だかんだで葦宮は自炊できそう……。
そう思って書きました。
津詰が家に来て面倒くさいから仮病でやりすごそうとしたら、なんか料理を作ってもらう葦宮の話ですよ。
本編のネタバレがあるからパラノマサイトをクリアしてから見てね♥
『何も入ってないラーメン』
葦宮誠はちゃぶ台の上に置かれたラーメンをぼんやりと眺めていた。
チャーシューや卵といった具材もネギの一欠片も入っていないインスタントラーメンは、小さな片手鍋に入れられたままほかほかと湯気をたてている。
「どうだ、元気が無ぇんだろ。遠慮しねぇで食え、熱い方が美味ぇだろ。早くしねぇと麺がのびちまうぜ」
目の前には、どうだ自分が飯を作ってやったんだから有り難く食え。そして俺を褒め称えろ。そんな顔をして得意げに笑う津詰徹生の姿があった。
事の発端は日曜日、市井の民として用務員の仕事に従事する日々の疲れがたまり昼まで寝入っていた葦宮のアパート、そのドアを勢いよく叩く津詰が現れたのだ。
「根じ……葦宮、いるのか? いるなら返事くらいしろ」
先日、偶然顔を合わせ根島史周であることに気付かれてから、津詰は頻繁に葦宮の前に顔を見せるようになっていた。
自分が逮捕した容疑者の顔をわざわざ拝みに来るのは、根島を死刑にする程の証拠がつかめなかった事を後悔しているからだろう。
根島事件と呼ばれる一連の殺人事件は、被害者の数が特定できず証拠も乏しかったため根島は死刑を逃れ20年の刑務所暮らしで娑婆に出る事ができた。その刑務所暮らしも根島、こと葦宮にとっては充分すぎるほど苦渋を舐めさせられた記憶でしがないが、それは津詰も同様だったのだろう。
被害者の数がわかっていたら。証拠をもっと詰める事ができていたら。恐らく根島は死刑になっていたのだから。
根島にとって証拠を掴まれてしまったのが失態だったように、津詰にとって、殺人鬼である根島を娑婆に出してしまったのが失態なのだ。
そして今、失態を補うかのように根島、こと葦宮が普通の生活をし、犯罪に手を染めないよう目を光らせているという訳だ。
「まったく、しょっちゅう本庁の刑事が顔見せるカタギがいるかってンだ……」
葦宮は寝間着姿のままのろのろと起き上がると、津詰をサッサと追い返すため、わざとらしい咳をしながらドアを開けた。
「あぁ、津詰の旦那か。わざわざ家にまで悪ィな。寄る年波には勝てないってのか、ちょっと体調が優れ無ェもんで伏せってたんだ」
だから悪いな、また今度来てくれや。
ゴホゴホと咳をする演技をし、そう続けようとしたが葦宮が全てを言い終わる前に津詰は驚いたように顔をあげた。
「何だ葦宮、風邪ひいてんのか。飯もまだだろ、男の一人暮らしだもんな。まってろ、俺が何か作っておいてやるぜ、お前は養生してろ」
そして意気揚々と部屋に上がり込むと、キッチンに陣取る。
しまった、追い出す方法を間違えた。こうなったら飯を作ってもらい、さっさと帰ってもらおう。
葦宮は諦めの心を抱き布団をかぶると、キッチンに立つ津詰を見た。
普段から料理なんてしないのだろう。鍋を出して湯を沸かすのも思いっきり強火だ。包丁を出してみてはしまい、まな板を出してはしまうと意味不明の挙動をしていると思ったら、出てきたのが何も入っていないインスタントラーメンとは、刑事というのは飯など腹が膨れればいいと思っている職業なのだろうか。
だいたい、病人にインスタントラーメンを出しても良いと思っているのが葦宮には信じられなかった。
もっと身体に優しいもの。うどんやお粥を作ろうという発想はなかったのか。冷蔵庫には生うどんの麺も入っているし、冷や飯もタッパーに入れてある。
よしんばインスタントラーメンにするとしても、せめて卵やネギくらい入れていいだろう。どちらも冷蔵庫に入っているのだから、少し見ればわかるはずだ。あるいは、冷蔵庫を覗いて何か作るという習慣がないのかもしれない。
「おい、津詰。お前さん、ろくなもん食ってねぇだろ。ちゃんと自炊してんのか?」
「な、何でわかるんだようるせぇな……お前は俺のカミさんか」
やっぱり、料理はしてないらしい。となると、この何も入っていないインスタントラーメンは普段津詰がつくる飯なのだろう。
「……今度お前さんに、ちゃんとした料理を作ってやらねぇとな」
葦宮は苦笑いをしながらラーメンをすする。
その姿を津詰は据わりが悪そうに見つめていた。
葦宮誠はちゃぶ台の上に置かれたラーメンをぼんやりと眺めていた。
チャーシューや卵といった具材もネギの一欠片も入っていないインスタントラーメンは、小さな片手鍋に入れられたままほかほかと湯気をたてている。
「どうだ、元気が無ぇんだろ。遠慮しねぇで食え、熱い方が美味ぇだろ。早くしねぇと麺がのびちまうぜ」
目の前には、どうだ自分が飯を作ってやったんだから有り難く食え。そして俺を褒め称えろ。そんな顔をして得意げに笑う津詰徹生の姿があった。
事の発端は日曜日、市井の民として用務員の仕事に従事する日々の疲れがたまり昼まで寝入っていた葦宮のアパート、そのドアを勢いよく叩く津詰が現れたのだ。
「根じ……葦宮、いるのか? いるなら返事くらいしろ」
先日、偶然顔を合わせ根島史周であることに気付かれてから、津詰は頻繁に葦宮の前に顔を見せるようになっていた。
自分が逮捕した容疑者の顔をわざわざ拝みに来るのは、根島を死刑にする程の証拠がつかめなかった事を後悔しているからだろう。
根島事件と呼ばれる一連の殺人事件は、被害者の数が特定できず証拠も乏しかったため根島は死刑を逃れ20年の刑務所暮らしで娑婆に出る事ができた。その刑務所暮らしも根島、こと葦宮にとっては充分すぎるほど苦渋を舐めさせられた記憶でしがないが、それは津詰も同様だったのだろう。
被害者の数がわかっていたら。証拠をもっと詰める事ができていたら。恐らく根島は死刑になっていたのだから。
根島にとって証拠を掴まれてしまったのが失態だったように、津詰にとって、殺人鬼である根島を娑婆に出してしまったのが失態なのだ。
そして今、失態を補うかのように根島、こと葦宮が普通の生活をし、犯罪に手を染めないよう目を光らせているという訳だ。
「まったく、しょっちゅう本庁の刑事が顔見せるカタギがいるかってンだ……」
葦宮は寝間着姿のままのろのろと起き上がると、津詰をサッサと追い返すため、わざとらしい咳をしながらドアを開けた。
「あぁ、津詰の旦那か。わざわざ家にまで悪ィな。寄る年波には勝てないってのか、ちょっと体調が優れ無ェもんで伏せってたんだ」
だから悪いな、また今度来てくれや。
ゴホゴホと咳をする演技をし、そう続けようとしたが葦宮が全てを言い終わる前に津詰は驚いたように顔をあげた。
「何だ葦宮、風邪ひいてんのか。飯もまだだろ、男の一人暮らしだもんな。まってろ、俺が何か作っておいてやるぜ、お前は養生してろ」
そして意気揚々と部屋に上がり込むと、キッチンに陣取る。
しまった、追い出す方法を間違えた。こうなったら飯を作ってもらい、さっさと帰ってもらおう。
葦宮は諦めの心を抱き布団をかぶると、キッチンに立つ津詰を見た。
普段から料理なんてしないのだろう。鍋を出して湯を沸かすのも思いっきり強火だ。包丁を出してみてはしまい、まな板を出してはしまうと意味不明の挙動をしていると思ったら、出てきたのが何も入っていないインスタントラーメンとは、刑事というのは飯など腹が膨れればいいと思っている職業なのだろうか。
だいたい、病人にインスタントラーメンを出しても良いと思っているのが葦宮には信じられなかった。
もっと身体に優しいもの。うどんやお粥を作ろうという発想はなかったのか。冷蔵庫には生うどんの麺も入っているし、冷や飯もタッパーに入れてある。
よしんばインスタントラーメンにするとしても、せめて卵やネギくらい入れていいだろう。どちらも冷蔵庫に入っているのだから、少し見ればわかるはずだ。あるいは、冷蔵庫を覗いて何か作るという習慣がないのかもしれない。
「おい、津詰。お前さん、ろくなもん食ってねぇだろ。ちゃんと自炊してんのか?」
「な、何でわかるんだようるせぇな……お前は俺のカミさんか」
やっぱり、料理はしてないらしい。となると、この何も入っていないインスタントラーメンは普段津詰がつくる飯なのだろう。
「……今度お前さんに、ちゃんとした料理を作ってやらねぇとな」
葦宮は苦笑いをしながらラーメンをすする。
その姿を津詰は据わりが悪そうに見つめていた。
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