インターネット字書きマンの落書き帳
葦宮が襟尾を監禁する話
葦宮誠と襟尾純が出る話です。
これ、Twitterに放流したときにCP概念が首の据わってない赤子くらいぐらぐらで「あしつつ」と記載してたんですが、どう見てもあしつつ要素ないですね。
もうしわけねぇ……もうしわけねぇ……(拾った砂利を口に入れながら)
そんなワケで(特にどんなワケだかはわからないやつ)Twitterに乗せたやつを再掲します。
多少加筆修正はしましたぞい。(えらいね)
続きそうですが特につづきません、えっちな話になっちゃいそうだからね。
これ、Twitterに放流したときにCP概念が首の据わってない赤子くらいぐらぐらで「あしつつ」と記載してたんですが、どう見てもあしつつ要素ないですね。
もうしわけねぇ……もうしわけねぇ……(拾った砂利を口に入れながら)
そんなワケで(特にどんなワケだかはわからないやつ)Twitterに乗せたやつを再掲します。
多少加筆修正はしましたぞい。(えらいね)
続きそうですが特につづきません、えっちな話になっちゃいそうだからね。
『嫉妬と羨望』
「津詰さんの若い頃を知ってるんですか!?」
葦宮誠の前に現れた青年は目を輝かせながらこちらを見つめていた。少し話をしただけだというのに食いつきが良すぎて話をした葦宮が気圧されする程である。
「おぉ、まぁな。津詰の旦那にゃぁ若ェころ色々世話になったのよ」
葦宮はそう言うと鼻の頭を掻きながら値踏みするような視線を向けた。
目の前にいる青年は襟尾純と名乗っていた。津詰徹生の知り合いらしく、以前に葦宮が津詰と話している所を見たので声をかけたのだという。
今日は偶然に葦宮が一人でいたところだったから等とは言っているが、これだけ熱心に津詰を崇拝しているのだ。葦宮が気付かぬよう後を付け一人になったタイミングで声をかけてきた可能性は高い。
葦宮に気取られないほどの尾行上手だ。この襟尾という男は警察官と見て間違いないだろう。しかも本庁の刑事に違いない。
そもそも津詰という男は仕事にかまけて嫁に愛想をつかされて離婚されるような男だ。上手いこと家族や地域と付き合えるようなタイプではない。社会とのつながりは仕事くらいしかない男がどう見ても20は歳が下な若い男と知り合う機会など、職場くらいしかないだろう。
「オマエさん、津詰の旦那の知り合いかい? 若ェ時の旦那に興味あるなら、立ち話もなんだ。俺の家に来るか? ゆーっくり話して聞かせてやるぜ」
「えぇっ、いいんですか? 行きます行きます」
葦宮が軽い口調で問えば襟尾は嬉しそうに笑みを浮かべる。どうやら葦宮のことを微塵も疑ってはいないようだ。刑事にしては脇が甘い気がするが津詰の知り合いであるという事は目の前の青年にとって絶大な信頼を得る担保なのだろう。
それに、今の葦宮は高校の用務員という立場だ。学校に関わる人間であれば怪しい事はないだろう、そんな思い込みも少なからずはあったに違いない。
ちょうど仕事を終えた帰り道に声をかけられたから葦宮の住むアパートは目と鼻の先にあった。 この程度の距離ならさして人に見られず襟尾を部屋に招き入れる事も容易だろう。仮に誰かが見ていたとしても、葦宮は普段周辺の住人にはなるべく愛想よく過ごしている。簡単に疑われる事はないという自信もある。
自分の部屋という場所ほど罠にも檻にも適した場所などないだろう。
襟尾が津詰とどのような関係なのか詳しくは知らないが、これだけ慕っている男だ。彼を捕らえありとあらゆる痛みと苦しみを与えればそれは津詰のいい土産になるだろう。
葦宮がそんな下心を抱いているなどつゆ知らぬといった笑顔のまま襟尾は彼と並んで歩いた。
まったく、刑事の知り合いといえば以前逮捕した犯罪者もいるのは当然だろうが脳天気な性格なのか。あるいは例え犯罪者でも娑婆に出ている限りは更生しまっとうな生活を送っていると信じているのかもしれない。
「はい、到着っと。男の所帯なんであんまり綺麗じゃ無ぇがまぁくつろいでくれや」
葦宮が押し入れに入れっぱなしだった座布団を出せば襟尾は珍しそうに室内を見渡した。気になるものでもあったのかと思うが。
「あんまりモノがないんですねぇ」 と、言いながら襟尾は座布団の上にちょこんと座る。
普段から家でするのは寝る事くらいだけだし、食事は外で済ます事が多い。必要最低限の家具しかない空間は襟尾には殺風景に見えたのだろう。実際、部屋に置かれているものといえばちゃぶ台と何冊かの古書くらいだ。
黒魔術には裏切られたという気持ちを抱いている葦宮ではあったがオカルトそのものは今でも信じており、最近は福永葉子の誘いもあって呪術やまじないを学んでいる最中だった。
「へぇ、随分古い本とか読むんですねぇ」
襟尾は古書に気付いて物珍しそうにして手にとるがぱらぱらとページをめくる。
最近葦宮が好んで読んでいる本は江戸中期頃に書かれたものであり黒魔術の魔導書とは違い日本語で書かれているものが多かったが、旧字体の崩し字で描かれた本はおおよそ日本語が書いてあるなんて思えないような文章が並んでいる。この手の書物を読み慣れていなければきっと何を書いているのかはわからないだろう。
実際に襟尾も手にしてみたが何が書いてあったのかはよくわからなかったようで、すぐに元の場所へと戻してた。
「はは、昔から古本巡りが好きでねェ。珍しい表紙なんかを見るとつい、興味をもっちまうんだよ。ほとんど読めないがね」
呪術について記載された書物だなんて説明しても気味悪がられるだけだろう。いくらオカルトブームとはいえ、やれ他人を呪うだの呪詛を生み出すだのといった話を本気に調べる輩など頭がおかしいと言われても仕方の無いものだ。
実際に葦宮は半ば狂った人間なのだからおかしい人間扱いされるのなど今さらなのだが、今の襟尾から警戒されるような真似はしたくなかった。
何せ、極上の餌が自分からこちらの懐へと飛び込んできたのだ。こんなチャンスを逃すワケにはいかない。
葦宮はカップを二つ取り出すとそれを並べ、客人用のカップには数種類のクスリを混ぜ込ませた特製のブレンドを施した。
多少の苦みがあるがコーヒーと混ぜれば分からないだろう。色味もやや濃くでるのだが、これもまた少し濃いめに入れれば恐らくは気付かれない。 後はコーヒーの味など気にしないほど、この襟尾某という男を夢中にさせるよう話が出来ればいいのだ。せいぜい津詰の活躍を飾り立てて話してやるとしよう。
葦宮はそう思いながら、客人用のカップを襟尾へと差し出した。
「待たせちまったねぇ、インスタントだけどコーヒーだよ、砂糖かミルクはいるかい?」
「大丈夫です、オレはブラックでも飲めるタイプなんで……なんかお邪魔しちゃった上にコーヒーまでいただいてすいません」
「いやいや、気にしなさんなって。俺も久しぶりに津詰の旦那について話せるなんてぇ嬉しいからねェ。さて、何から話そうか……」
葦宮は目を閉じ、津詰の記憶を呼び起こす。
隅田川で見つかった女子高生の手首。それを元にして自分まで行き着いた執念。その後逃亡した自分を確実に追い詰め包囲していく嗅覚。しらを切ろうとした自分に対し、様々な搦め手を使いより大きな罪状を積み重ねていく手腕。どれを思い出しても忌々しい。
忌々しいほど誠実で吐き気がするほど真っ直ぐだ。
地道ながら必死の努力で根島史周であったころの自分を追い詰めとうとうその喉笛に食らいついたあの正義に従順な狼は、気取った言葉なぞ使わなくても充分すぎるほどの魅力があるだろう。
悔しいが、それは認めざるを得なかった。
津詰の捜査は泥臭い、だが間違いなく華があるのだ。
「そうだなァ、俺の知っている津詰の旦那っちゃぁ、今よりもっとギラギラしていてなァ……自分の正義ってのに一片の疑いなんざ抱いていねぇ、そりゃぁもう立派な人だったぜ……」
だから葦宮は憎しみをぐっと飲み込む。
元より目覚ましい活躍だ、憎しみをすべて美談ににかえて語れば充分すぎるほどまばゆい話となり美談となるだろう。津詰の捜査はそれだけ誠実なのだから。
時に切迫し、時にユーモアを交えて語れば、襟尾はますます目を輝かせて葦宮を見た。その姿はまるでヒーローの英雄譚を聞いている少年のようである。あるいは実際に襟尾という青年にとって津詰は大悪党と戦う英雄なのだろう。
野球少年が王や長嶋に憧れるように、プロレスファンが馬場や猪木に熱狂するように、彼にとっては津詰がヒーローなのだ。
訥々と語るうちに喉が渇きコーヒーで口を潤せば、襟尾もそれに習うよう警戒もなく飲み物を口にする。その最中も津詰について語り続けていれば、次第に襟尾の目はうつろになる。
矢継ぎ早に話を進めていけば襟尾にとって葦宮の語りは子守歌代わりとなり、とうとう襟尾はちゃぶ台へ静かに伏していった。
「……ようやくオネンネしたか。いやぁ、特製ブレンドだから随分無茶な盛り方してるが、この兄ちゃんくらい立派な身体してりゃぁ死にはしねぇだろ」
葦宮は押し入れからロープを取り出すが、襟尾がスーツ姿なのを見てロープをしまうと彼のネクタイをほどく。そして後ろに回した襟尾の手を彼のネクタイでしっかりと縛り付けてやるとさらに襟尾のズボンからベルトを外しと両足に巻いて足の自由を奪う。きつくなりすぎないが決して逃れられない拘束は、昔取った杵柄というものだろう。 縛る時に力の入る場所をきちんと把握しておけばどんな馬鹿力で振りほどこうが簡単にほどける事はないということ、根島史周と呼ばれていたころに身体で覚えたものだ。
襟尾自身の衣服を使ったのは手持ちのロープを使うより、自ら着ていた服を利用されるほうがよほど屈辱だろうと考えたからだ。 油断して眠らされ自分のベルトとネクタイで縛り上げられたなんて、誰に話したって笑い話だろう。
人間の心を責める方法は罵声を浴びせる事や痛みを与えるのも勿論あるが恥辱もその一つになる。彼にはこれからもっと笑えるような真似をし、誰から見ても恥ずかしい行為を与えてやろう。津詰を尊敬している男なんざ、一生残るような傷を心と体に与えてやるくらいでちょうどいいと思っていたし、津詰にとって自分より自分の大事にしている仲間や肉親が傷つけられるほうがよっぽどに堪えるということを葦宮はよく知っていたのだ。
「津詰ィ、オマエはじわじわ絞めるように苦しめて殺してやろうと思ってるけどよォ。この若ェのはそのための、いーいオモチャにさせてもらうぜ」
葦宮は声を殺して笑い、襟尾の身体に触れる。
若く瑞々しい肢体をもつ襟尾の豊満な身体は指が埋まるほどに柔らかく、絹のように艶やかな肌は葦宮の強い嗜虐心と歪な劣情を煽るのだった。
「津詰さんの若い頃を知ってるんですか!?」
葦宮誠の前に現れた青年は目を輝かせながらこちらを見つめていた。少し話をしただけだというのに食いつきが良すぎて話をした葦宮が気圧されする程である。
「おぉ、まぁな。津詰の旦那にゃぁ若ェころ色々世話になったのよ」
葦宮はそう言うと鼻の頭を掻きながら値踏みするような視線を向けた。
目の前にいる青年は襟尾純と名乗っていた。津詰徹生の知り合いらしく、以前に葦宮が津詰と話している所を見たので声をかけたのだという。
今日は偶然に葦宮が一人でいたところだったから等とは言っているが、これだけ熱心に津詰を崇拝しているのだ。葦宮が気付かぬよう後を付け一人になったタイミングで声をかけてきた可能性は高い。
葦宮に気取られないほどの尾行上手だ。この襟尾という男は警察官と見て間違いないだろう。しかも本庁の刑事に違いない。
そもそも津詰という男は仕事にかまけて嫁に愛想をつかされて離婚されるような男だ。上手いこと家族や地域と付き合えるようなタイプではない。社会とのつながりは仕事くらいしかない男がどう見ても20は歳が下な若い男と知り合う機会など、職場くらいしかないだろう。
「オマエさん、津詰の旦那の知り合いかい? 若ェ時の旦那に興味あるなら、立ち話もなんだ。俺の家に来るか? ゆーっくり話して聞かせてやるぜ」
「えぇっ、いいんですか? 行きます行きます」
葦宮が軽い口調で問えば襟尾は嬉しそうに笑みを浮かべる。どうやら葦宮のことを微塵も疑ってはいないようだ。刑事にしては脇が甘い気がするが津詰の知り合いであるという事は目の前の青年にとって絶大な信頼を得る担保なのだろう。
それに、今の葦宮は高校の用務員という立場だ。学校に関わる人間であれば怪しい事はないだろう、そんな思い込みも少なからずはあったに違いない。
ちょうど仕事を終えた帰り道に声をかけられたから葦宮の住むアパートは目と鼻の先にあった。 この程度の距離ならさして人に見られず襟尾を部屋に招き入れる事も容易だろう。仮に誰かが見ていたとしても、葦宮は普段周辺の住人にはなるべく愛想よく過ごしている。簡単に疑われる事はないという自信もある。
自分の部屋という場所ほど罠にも檻にも適した場所などないだろう。
襟尾が津詰とどのような関係なのか詳しくは知らないが、これだけ慕っている男だ。彼を捕らえありとあらゆる痛みと苦しみを与えればそれは津詰のいい土産になるだろう。
葦宮がそんな下心を抱いているなどつゆ知らぬといった笑顔のまま襟尾は彼と並んで歩いた。
まったく、刑事の知り合いといえば以前逮捕した犯罪者もいるのは当然だろうが脳天気な性格なのか。あるいは例え犯罪者でも娑婆に出ている限りは更生しまっとうな生活を送っていると信じているのかもしれない。
「はい、到着っと。男の所帯なんであんまり綺麗じゃ無ぇがまぁくつろいでくれや」
葦宮が押し入れに入れっぱなしだった座布団を出せば襟尾は珍しそうに室内を見渡した。気になるものでもあったのかと思うが。
「あんまりモノがないんですねぇ」 と、言いながら襟尾は座布団の上にちょこんと座る。
普段から家でするのは寝る事くらいだけだし、食事は外で済ます事が多い。必要最低限の家具しかない空間は襟尾には殺風景に見えたのだろう。実際、部屋に置かれているものといえばちゃぶ台と何冊かの古書くらいだ。
黒魔術には裏切られたという気持ちを抱いている葦宮ではあったがオカルトそのものは今でも信じており、最近は福永葉子の誘いもあって呪術やまじないを学んでいる最中だった。
「へぇ、随分古い本とか読むんですねぇ」
襟尾は古書に気付いて物珍しそうにして手にとるがぱらぱらとページをめくる。
最近葦宮が好んで読んでいる本は江戸中期頃に書かれたものであり黒魔術の魔導書とは違い日本語で書かれているものが多かったが、旧字体の崩し字で描かれた本はおおよそ日本語が書いてあるなんて思えないような文章が並んでいる。この手の書物を読み慣れていなければきっと何を書いているのかはわからないだろう。
実際に襟尾も手にしてみたが何が書いてあったのかはよくわからなかったようで、すぐに元の場所へと戻してた。
「はは、昔から古本巡りが好きでねェ。珍しい表紙なんかを見るとつい、興味をもっちまうんだよ。ほとんど読めないがね」
呪術について記載された書物だなんて説明しても気味悪がられるだけだろう。いくらオカルトブームとはいえ、やれ他人を呪うだの呪詛を生み出すだのといった話を本気に調べる輩など頭がおかしいと言われても仕方の無いものだ。
実際に葦宮は半ば狂った人間なのだからおかしい人間扱いされるのなど今さらなのだが、今の襟尾から警戒されるような真似はしたくなかった。
何せ、極上の餌が自分からこちらの懐へと飛び込んできたのだ。こんなチャンスを逃すワケにはいかない。
葦宮はカップを二つ取り出すとそれを並べ、客人用のカップには数種類のクスリを混ぜ込ませた特製のブレンドを施した。
多少の苦みがあるがコーヒーと混ぜれば分からないだろう。色味もやや濃くでるのだが、これもまた少し濃いめに入れれば恐らくは気付かれない。 後はコーヒーの味など気にしないほど、この襟尾某という男を夢中にさせるよう話が出来ればいいのだ。せいぜい津詰の活躍を飾り立てて話してやるとしよう。
葦宮はそう思いながら、客人用のカップを襟尾へと差し出した。
「待たせちまったねぇ、インスタントだけどコーヒーだよ、砂糖かミルクはいるかい?」
「大丈夫です、オレはブラックでも飲めるタイプなんで……なんかお邪魔しちゃった上にコーヒーまでいただいてすいません」
「いやいや、気にしなさんなって。俺も久しぶりに津詰の旦那について話せるなんてぇ嬉しいからねェ。さて、何から話そうか……」
葦宮は目を閉じ、津詰の記憶を呼び起こす。
隅田川で見つかった女子高生の手首。それを元にして自分まで行き着いた執念。その後逃亡した自分を確実に追い詰め包囲していく嗅覚。しらを切ろうとした自分に対し、様々な搦め手を使いより大きな罪状を積み重ねていく手腕。どれを思い出しても忌々しい。
忌々しいほど誠実で吐き気がするほど真っ直ぐだ。
地道ながら必死の努力で根島史周であったころの自分を追い詰めとうとうその喉笛に食らいついたあの正義に従順な狼は、気取った言葉なぞ使わなくても充分すぎるほどの魅力があるだろう。
悔しいが、それは認めざるを得なかった。
津詰の捜査は泥臭い、だが間違いなく華があるのだ。
「そうだなァ、俺の知っている津詰の旦那っちゃぁ、今よりもっとギラギラしていてなァ……自分の正義ってのに一片の疑いなんざ抱いていねぇ、そりゃぁもう立派な人だったぜ……」
だから葦宮は憎しみをぐっと飲み込む。
元より目覚ましい活躍だ、憎しみをすべて美談ににかえて語れば充分すぎるほどまばゆい話となり美談となるだろう。津詰の捜査はそれだけ誠実なのだから。
時に切迫し、時にユーモアを交えて語れば、襟尾はますます目を輝かせて葦宮を見た。その姿はまるでヒーローの英雄譚を聞いている少年のようである。あるいは実際に襟尾という青年にとって津詰は大悪党と戦う英雄なのだろう。
野球少年が王や長嶋に憧れるように、プロレスファンが馬場や猪木に熱狂するように、彼にとっては津詰がヒーローなのだ。
訥々と語るうちに喉が渇きコーヒーで口を潤せば、襟尾もそれに習うよう警戒もなく飲み物を口にする。その最中も津詰について語り続けていれば、次第に襟尾の目はうつろになる。
矢継ぎ早に話を進めていけば襟尾にとって葦宮の語りは子守歌代わりとなり、とうとう襟尾はちゃぶ台へ静かに伏していった。
「……ようやくオネンネしたか。いやぁ、特製ブレンドだから随分無茶な盛り方してるが、この兄ちゃんくらい立派な身体してりゃぁ死にはしねぇだろ」
葦宮は押し入れからロープを取り出すが、襟尾がスーツ姿なのを見てロープをしまうと彼のネクタイをほどく。そして後ろに回した襟尾の手を彼のネクタイでしっかりと縛り付けてやるとさらに襟尾のズボンからベルトを外しと両足に巻いて足の自由を奪う。きつくなりすぎないが決して逃れられない拘束は、昔取った杵柄というものだろう。 縛る時に力の入る場所をきちんと把握しておけばどんな馬鹿力で振りほどこうが簡単にほどける事はないということ、根島史周と呼ばれていたころに身体で覚えたものだ。
襟尾自身の衣服を使ったのは手持ちのロープを使うより、自ら着ていた服を利用されるほうがよほど屈辱だろうと考えたからだ。 油断して眠らされ自分のベルトとネクタイで縛り上げられたなんて、誰に話したって笑い話だろう。
人間の心を責める方法は罵声を浴びせる事や痛みを与えるのも勿論あるが恥辱もその一つになる。彼にはこれからもっと笑えるような真似をし、誰から見ても恥ずかしい行為を与えてやろう。津詰を尊敬している男なんざ、一生残るような傷を心と体に与えてやるくらいでちょうどいいと思っていたし、津詰にとって自分より自分の大事にしている仲間や肉親が傷つけられるほうがよっぽどに堪えるということを葦宮はよく知っていたのだ。
「津詰ィ、オマエはじわじわ絞めるように苦しめて殺してやろうと思ってるけどよォ。この若ェのはそのための、いーいオモチャにさせてもらうぜ」
葦宮は声を殺して笑い、襟尾の身体に触れる。
若く瑞々しい肢体をもつ襟尾の豊満な身体は指が埋まるほどに柔らかく、絹のように艶やかな肌は葦宮の強い嗜虐心と歪な劣情を煽るのだった。
PR
COMMENT