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インターネット字書きマンの落書き帳

   
お互いの匂いが重なる時(ヤマアル)
お互いの匂いでついつい気がそれてしまうヤマアルの話です。

どうしよう!?
今回、一文で全ての説明が出来てしまったんだが!?

どうしたの!?
脳の容量が軽量化されちゃったの!?

と思いますが、マジでそういう話だし、こういう話は何度も書いている気がしますが、俺が書きたいので書きます。

俺が! 書きたいので!
書きます! よ!




『重なる匂い』

 部屋に訪れたアルフレートを訝しげに見つめると、ヤマムラは無言のままアルフレートに自分の額を押しつけた。

「ちょ、何するんですかヤマムラさん……!?」
「アル、熱があるな?」

 朝起きた時、少し熱っぽかったし喉もいがらっぽいような気がしていた。
 だが今日はヤマムラの狩りを手伝う約束だったし、気にする程でもないと思いやってきたのだ。

「あぁ、ちょっと熱っぽいくらいだから大丈夫ですよ」
「少しの油断が命取りになるものだぞ、獣狩りは特にな。俺の手伝いは別にいい、今日は少し休んでいろ」

 ヤマムラはアルフレートの狩装束をやや強引に脱がすと自分のベッドへと座らせる。
 そして枕元に水差しとコップを準備し、粉薬を差し出した。

「馴染みの薬屋で買った漢方だ。これを飲んでゆっくり休んでいろ。何、キミがいない時に無茶はしない。俺の部屋は日当たりも良いし、一日寝れば治るだろう」
「でも、ヤマムラさん……」
「こういう時くらい俺の言う事を聞いてくれ。キミは成すべき事があるんだろう? それなら、今は休むんだ」

 ヤマムラに言い含められ、アルフレートはしぶしぶ横になる。

「あ、それじゃぁせめてこれを……」
「ん……」
「私が普段使っている虫除けです。連盟が虫を狩るといっても、森にいる蚊や虻を狙っているワケではないでしょう? そういうのを避けるための……獣には匂いで分ってしまうかもしれませんが……」

 ヤマムラは瓶に入った液体を少し手にとり、匂いを確かめる。

「確かにキミが普段つけている匂いがするな……虫除けの匂いだったのか」
「えぇ、よかったらどうぞ。蚊や虻は病気を媒介しますから……」
「ありがとう、使わせてもらう。キミもきちんと休んでるんだぞ」

 ヤマムラはそう告げ、部屋を出る。
 一人になったアルフレートは粉薬を水で飲み下すと、すぐにベッドへ潜り込んだ。

(変な味の薬……ヤマムラさん、よくこんな苦い薬を飲めますね……)

 毛布を被れば、ヤマムラのにおいがする。
 彼が普段使っているベッドなんだから当然と言えば当然なのだが。

(ヤマムラさんの匂い……暖かい部屋……ヤマムラさん……)

 温かな日差しとヤマムラの匂いが、彼に抱かれている時の体温を思い出させる。
 この匂いと温もりに包まれていては……。

「こんな所で……休めるワケないじゃないですかっ……」

 自然と顔が紅潮する。
 だが休んでいないときっとヤマムラは怒るのだろうから、アルフレートは毛布にくるまりその匂いと温もりに包まれるのだった。
 ヤマムラが戻ってくるのを心待ちにしながら。

 ・
 ・
 ・

 アルフレートから渡された虫除けを首や顔に塗り、ヤマムラは一人で狩りに出た。
 獣は匂いに敏感だから感づかれるかもしれない。
 アルフレートはそれを心配していたが、人の匂いを恐れて隠れるような相手はヤマムラの獲物ではない。

 人の匂いに反応し、襲ってくるような獣……。
 理性を失い人間を恐れず涎をたらし牙を剥く、そういった相手こそがヤマムラが倒すべき相手であり、連盟が潰す虫を飼う化け物なのだ。

 だが……。

(身体からアルフレートの匂いがするな……)

 普段アルフレートから微かに匂っていたハーブの香りが、今は自分の服からする。
 アルフレートの香りだと思っていたが虫除けの香りだったのかと思うと同時に、普段から隣で微かに感じていた匂いが自分の身体からするという違和感がどうにもくすぐったい。

(アルフレートが傍にいるような気がしてしまうな)

 彼がいたら何を言うだろう。
 彼が並んでいたら、ヤマムラにどんな表情を向けるだろう。

 ……会いたい。
 今別れたばかりだというのに、もう顔が見たくなる。

(慣れないものを無闇に使うものではないな……)

 狩りも始まっていないというのに、アルフレートの姿ばかり思い浮かぶ。
 大人しく休んでいるだろうか。
 頑固だが素直な性格だ、ヤマムラの言いつけを聞いたのならきっと素直に休んでいる事だろう。
 病み上がりで抱く訳にはいかないが……。

(戻ったら一緒に、暖かい食事でもしよう……元気になるようなものを食べさせてやらないとな)

 ヤマムラはその匂いを確かめると、暗がりを歩き出した。
 無事に戻れたのなら強く抱きしめたい相手の笑顔をぼんやりと思い描いて。

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