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インターネット字書きマンの落書き帳

   
ディスティニィストーンは運命を絡め取る(ジャミルとダウド)
子供の頃からディスティニィストーンを盗むのが夢だったジャミル。
そんな彼の話を聞くのが好きだったダウド。

だが、その夢が現実味を帯びてくると段々と劣等感が募ってしまい……。

そんなアサシンギルド落ちルートに入ってしまう、ダウド君の話ですよ。
どうしてこんな事になっちゃったんだろうな。

なんて思ってしまう程度に突然変わってしまうジャミル……。
ごめんな、中にプレイヤーが入ってしまったがばかりに……。(?)




「キミと同じ夢を見れたら良かったのに」

 ダウドにとって、ディスティニィストーンというのは最初一つの憧れだった。

 正直なところ、最初はそれが宝石である事も知らない。
 神話にある英雄が邪神を封じるために使ったなどという話も全てジャミルから伝え聞いたものだった。

 だがその話をしている時のジャミルは楽しそうで、嬉しそうで。
 いずれディスティニィストーンを盗み出せるくらい凄い盗賊になるんだと夢を語る彼の笑顔を見るのがダウドはただ好きだった。

 その憧れに陰りが出たのは、ジャミルが本当にディスティニィストーンさえ盗み出せるような年齢になり、それが実際手を伸ばせば届くほど存外に「近い」ものだと知った頃だろう。

 ディスティニィストーンの話をするジャミルの姿を見るのは相変わらず楽しかった。
 今はどこかの王が持っているとか、名も知らぬ踊り子の手に渡ったとか。
 そんな話を興奮気味に語るジャミルの姿は少年の頃と変わらなかったからだ。

 だが話している内容は、もっと現実味を帯びてきた。
 あの王が隠し持っているとしたら、場所は何処だろう。この土地で消えたというのならひょっとしたらあの遺跡に封じられているのかもしれない。年代的にディスティニィストーンを封じるために建てたものだとすると符合する。
 もし踊り子がもっていたとしたら、何とかして譲り受けるように交渉しようか。泥棒ではあるが強盗ではないのだから。

 子供の頃は何処にあるかもわからない。
 雲を掴むような話からより綿密な計画が出来上がってくるたび、ダウドは怖くなっていった。

 ジャミルがディスティニィストーンに奪われてしまうような気がしたからだ。
 同時に子供の頃から見せていた笑顔を見るのも辛くなってきた。
 今まではダウドに夢を語る、ダウドに向けての笑顔だったものがディスティニィストーンに対する憧憬だった事に気付いてしまったからだ。

 その思いは、エスタミルから離れてから益々強くなっていった。

 しばしエスタミルから離れよう、ほとぼりが冷めるまで。
 せいぜい一ヶ月か長くても半年程度だろうと思っていた旅は思いの外長く続き、ジャミルの周囲に人が集まってくると不安と焦りが強くなっていった。

 ……自分は長くジャミルと共にいたが、ジャミルほど器用ではない。
 賢いワケでもなければ要領よく立ち回れるタイプでもない。
 ジャミルに指示されなければ判断が遅れる事もあったし、飛び抜けて技量があるワケでもなければ術が得意というワケでもない。

 ジャミルの回りに集まる人間は、冒険者だったり傭兵だったり、戦闘や術を得意としているものが多かった。
 それもあり、ダウドはなおさら自分が惨めに思えてきたのだ。

 自分は、ディスティニィストーンを掴む男の隣にある存在として相応しくないと。
 夢を語り、笑顔を見せるジャミルのその笑顔を受け止める事すらできない狭量な男でしかないのだと。

「エスタミルから出たくないんだ……」

 焦りと不安ですっかり精神が摩耗していたダウドは、自然とそう口にしていた。
 それは一片でもあったのかもしれない。

 ディスティニィストーンを盗み出す。
 そんな大それた夢を諦めて自分とエスタミルでまた小さな盗みをやるような生活をしてくれるんじゃないか。
 さして実入りがあるワケではないが毎日楽しく笑って過ごせる日々が戻ってくるんじゃないか……。

 だがジャミルの目は、とっくにエスタミルにはなかった。
 エスタミルは「故郷」であるが、ずっとそこに留まる場所ではなくなっていたのだ。

「また、一緒に旅をしたくなったら言ってくれよ。俺はお前の事待ってるからな」

 ダウドが以前より笑わなくなった事に気付いていたのだろう。
 ジャミルは彼がエスタミルに戻る事を止めようとはしなかった。
 あるいは彼の元気がなくなっていたのを、ホームシック程度に捉えていたのかもしれない。

 あぁ、これでジャミルは自分の代わりにもっと優秀な仲間と旅をするのだろう。
 そうしたら、自分は本当に居る場所なんてない。
 エスタミルに帰りたいといったが、あそこだって本当は帰る場所じゃなかったんだ。

 自分の居場所はずっとジャミルの隣だった。
 それなのに……。

「どうして……どうしてこうなっちゃったんだろうな……」

 誰もいない小屋で、ダウドは独りごちる。
 酒が楽しめる身体だったらそれで気分を紛らわしていただろうが、あいにく少し飲んだだけですぐに気分が悪くなってしまうのでそれさえも出来ない。

 ただ、小さな生活をしているだけで充分だった。
 子供の頃のように笑い、些細な盗みで日銭を稼ぐ。
 ずっとそんな生活をしているのは難しい事くらい分っていたが、それでももう少しだけぬるま湯のような生活に浸っていたかったというのに。
 自分たちは運命に翻弄され性急に生きるのには、まだ早すぎるはずなのに……。

「どうしたのかな、何か……悩みでも、あるのかい?」

 誰も知らないはずの場所に、人影が揺れる。
 仮面のような笑顔をもつ見知らぬ男は、静かに手を伸ばして……。

 ……それがダウドの覚えている、最後の記憶だった。

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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
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