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インターネット字書きマンの落書き帳

   
さくらの、ようなひと。(ヤマアル)
春はあげもの。(挨拶)
というワケで、春ですね。わりと俺の地元はこのくらいの時期に桜が咲いたり散ったりします。
田植えも早い土地なんで、田に水が張られたりしてそれも風情があるんですよね。

はい、限界集落らしい発言おわり。

桜の時期といえば推しCPを攫わせる季節ですね!
俺も是非アルフレートくんやヤマムラさんに桜に攫われて欲しいと思ったんだけど、こう。
こう……ね? 思う所もありまして。
こういった形になりました。

桜というのはどうしても、美しくて悲しい花ですよ。




『きみは桜そのものだった』

 ヤーナムも、間もなく春を迎えようとしていた。
 冬の深い夜はより長く獣がより闊歩するようになるこの街の冬はただ寒いだけではなく、多く血の雨も降る。
 その冬もまた多くの無力な市民と、獣を討ち果たそうとした狩人が雪に赤い華を咲かせた。 

(……この冬も、何とか生き残れたか)

 羽織の襟元を寄せ、ヤマムラはそんな事を考えながらヤーナムの街を歩く。
 これから日が長くなり夏へと向う。ヤーナムの獣は光の届かない闇や夜を好む故に冬と比べれば幾分か獣の被害は少なくなるだろうが。

(俺がこの街に来た時と比べ、圧倒的に獣の数が増えている……戦える狩人は減り、医療教会の狩人は以前ほど狩りに活発でもない。このところ、大きな狩りは俺のように外から来た狩人が中心でヤーナムの民は以前ほど狩人の資質があるものも少ない……そして、この街に来るものも随分減った……)

 ヤマムラはヤーナムという街にそれほど詳しいワケでもなければ政治や軍略といった面はとんと疎い方ではあったがそれでもヤーナムという街全体に獣に抗う力が殆ど残っていない事は容易に察する事が出来た。

 血の医療を求めてこの街へと来る異邦人は、もう殆どいない。
 ヤーナムの市民は力のない老人や子供が多くなり、獣の兆候が強く表れた市民の方が今は多いくらいにさえ見える。

 どう考えても潮時だろう。
 閉鎖的で排他的なヤーナム市民たちのために狩りを続ける理由はヤマムラにはない。
 ここでどれだけ抗っても獣を殺しきる事など出来ず、獣を殺しきる事が出来ないのなら「蟲」を全て潰す事も不可能だ。
 近頃、獣は殺すより増える方がずっと多い。その上に市民にも多数、獣の兆候が見られているのだ。
 このまま狩りを続けても、こちらが獣に喰われるのを待つばかりとなるだろう。
 頭でそれは理解していた。

(だが……俺にはもう……)

 仇討ちの名目でヤーナムへと趣き、復讐は成し遂げられた。
 目的を失った後は連盟がひとまず生きるための目的を与えた。
 そして夜の暗さも風の冷たさも忘れられる存在が。アルフレートが傍に寄り添ってくれた。

 故郷を捨てた今、行く場所など無い。
 それならば幾分か知り合いを得たこの土地で死ぬのも悪くないだろう。
 元より根無し草の旅人なのだから。

(いけないな……春が来たとはいえまだ寒いから、こんな事ばかり考えてしまう……)

 暖かくなってきた。
 冬に這いずり回った狩りの疲れをとるため気晴らしにと散歩に出たがどうにも思考は重くなる。これではいけない、気分を変えなければ。そう思ったヤマムラは、普段とは違う道へと入っていった。ヤーナムの中心街にある、閑静な住宅街の路地の方にだ。
 ここは以前、ヤーナムでも裕福であり裕福だからこそ武器をとらずとも許されていた市民が多く暮していた。
 だがその市民も獣の兆候が現れたり、いつの間にか消えていたりで随分と減り今は殆ど人の気配がしない。

(以前は異邦人がこの路地に入ると嫌味の一つでも言われたもんだが……)

 今は、行き交う人もなくただ風が吹き荒ぶのみだ。
 別段に嫌味を言われたい訳ではなかったが、それでも活気のない街並みを見るのはどこか寂しく思えた。

(子供の声さえ聞こえないのだからな……)

 斜陽の街。今のヤーナムにはその言葉がピッタリだろう。
 だがヤマムラの人生ももはや全盛期は過ぎている。

(やはり、ここで骨を埋めるのが俺に似合いか。いや、誰かが骨を拾ってくれるとも限らんがな……)

 気晴らしに出たというのにまた同じ結論に戻っている自分に気付き、ヤマムラはつい苦笑いをする。

(いかんな、先の無い事ばかり考えて……俺ももうそれだけ、歳か……)

 そして静かに眼を閉じるヤマムラの鼻孔を、得も言えぬ甘い香りがくすぐった。香水とは違う、もっと軽やかで自然な香りだ。
 不思議に思い周囲を見れば、半ば廃屋になりかけた屋敷から花を付けた木が伸びていた。
 故郷では見ない木だが、幾つもの小さい花をつけたその木は甘い香りが強くし、ミツバチが飛び交う姿が見える。

「へぇ……ヤーナムに来て庭木を植えている家なんて初めて見た。あぁ、俺はこっちに来る事が殆ど無かったが、そこそこ裕福な家だと庭木くらいは植えていたんだな」

 獣に追われるような日々をおくっているためか、ヤーナムの街全体はどこか廃れた感じがあった。公園に緑はなく、街全体は雑草が茂り整備されてない部分が多いからだ。
 だがこの街でも木を植える余裕がある家も存在していたのだ。それも、花が香るような庭木を。

「俺の故郷では見ない花だが、こっちでは多いのか? 桜とは違うようだが……」

 自分の言葉で、ヤマムラの脳裏にアルフレートの淡い笑顔が蘇った。

『桜というのは、どんな花なんですか?』

 あれは確か、ヤーナムには花の咲く木が少ないと零した時だったろう。花が咲く木というものにピンと来なかったのか、アルフレートは首を傾げながら問いかけてきた。
 だから、ヤマムラの故郷では桜が咲くということ。薄紅色の花びらが春頃になれば一斉に咲き誇り、それを見た人々は歌い騒いで喜ぶという事。その花は風で一斉に散る程に儚いが、風に舞う薄紅色の花びらの美しさはこの上なく幻想的である事を語って聞かせたのだ。

『風で舞う桜は視界を奪う程で……あぁ、そんな様を見て愛しい人が桜にさらわれそうになるような気がする、なんて言い回しがあるな』

 その話をしたのは何故だろう。

『桜に攫われるんですか?』
『桜の精に連れて行かれるとでも言うのかな。とにかく、現世(うつしよ)のものとは思えない程に美しいからね。その美しさに愛しい人が溶けて消えてしまうような気がしてしまうのは、わかる気がするよ』
『へぇ……ヤマムラさん。私も、桜に攫われそうに見えますか?』

 悪戯っぽくそう聞いてきたアルフレートに、果たして何と答えただろうか。
 覚えていない。彼の期待を裏切るような事は言っていないと思うが。

「そうだな、アル。君は……」

 その時、冷たい風が吹く。
 風に吹かれた小さな花は香りながら地へと落ちていった。
 美しく薫り高い花だが、散り様はやはり桜とは違う。

「数も少ないし、桜のように舞い散るようにはいかないか……」

 散ってもなお強く香る花びらを眺めながら、ヤマムラは故郷で見た桜吹雪を思い出す。
 あの桜に、アルフレートは消えていくような人だったろうか。

「いや……」

 ヤマムラは自然と自分の手を見つめていた。
 もう誰も触れなくなって久しい、肉刺と傷だらけの手を。

「アルフレート、君は桜そのものだったよ……」

 死に場所がどこになるかは分らない。だが故郷にだけはやはり帰るまい。
 故郷には桜があり、桜を見ればきっとより強く彼を思い出してしまうのだから。

 儚く、そして美しく、咲き誇りながら散っていく。
 そんな桜のようなアルフレートの面影を抱きながら生きれるほど、ヤマムラはもう強い男であり続ける事は出来なかった。

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インターネット駄文書き
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