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インターネット字書きマンの落書き帳

   
恋に落ち続けて(みゆしば)
平和な世界線で普通に付き合っている手塚と芝浦の概念です。(端的に説明される幻覚)
今回は付き合っている世界線なので普通に惚気ている二人ですよ。
とはいえ、手塚の愛も重いし芝浦の愛も重いので今日も令和の「重たい男合戦」を繰広げている感じです。

令和のとかいったけど、時代は2002年で止まっているんで令和に書いてる平成の話なんですけどね。(幻惑する発言)

そんなわけで、毎日のようにあってるのに飽きるどころかどんどん相手の事好きになっちゃっておかしいのかな、と思い悩むしばじゅんちゃんの話ですよ。

オラッ!
これが俺の楽しいと思うみゆしばだ摂取しろッ!




『落ちて、落ち続けて』

 心地よい疲れを感じつつ、芝浦は遅い朝を迎える。時計を見れば普段の起床時間はとっくに過ぎていた。
 芝浦家にいたのなら許されない程の朝寝坊だが、ここは手塚の家であり手塚の寝室だ。寝坊の原因も手塚にあるのだから誰からも文句は言われる事はないだろう。

(昨日は思ったより盛り上がっちゃったもんね……)

 とはいえそろそろ起きないと手塚も心配するだろう。
 芝浦は身体に残るくすぐったい疲労を抱きながらリビングへ向えば、先に起きていた手塚がすぐに声をかけてきた。

「起きたか芝浦。その……大丈夫か、身体は……」

 声をかけたはいいが物言いはやや困惑の色が覗える。芝浦の抱いている疲労の原因その殆どが手塚自身にあるのだからそれも当然だろう。芝浦は悪戯っぽい笑顔を見せると。

「誰かさんのおかげでかーなーり疲れてるけど、ま、大丈夫だよ。別に手塚だけのせいじゃないって事くらい分ってるからさ」

 とはいえ疲れが抜けきっているというワケではない。芝浦は身体の全てを預けるようにソファーへ腰掛ける。

「んー、でも今からすぐに何処か行けるほど元気じゃないかな? もし出かけるとしたらもうちょっと休んでからにしてくんない? お腹も減ってるし……」
「そうだな、今何かつくるから待っててくれ。お前はそのまま休んでくれてていいからな」
「ありがと、手塚のそういうとこ好きだよ」

 芝浦の笑顔にこたえるよう、手塚は彼の頭をくしゃくしゃと撫でてからキッチンへ向う。芝浦はただ何をするでもなくその後ろ姿を眺めていた。
 トースターにパンをセットしているうちに手早く卵をまぜてフライパンで炒る。冷蔵庫から取り出したレタスとトマトを切って添えるうちにパンが焼け、マーガリンとジャムを塗る。
 何ら面白くもない料理を作る姿だが、ただそれを見ているだけで幸せだと思えた。

(何だろうな、これ……俺、手塚に好きだって言われるのも嬉しいしえっちな事されてる時もすっごい幸せなんだけど……)

 芝浦の手は自然と首筋に触れる。そこには昨夜手塚が残した戯れの痕跡がまだ熱く感じられた。互いを求め合い溶ける程に混じり合う瞬間は激しく熱い愛を全身で感じられそれは歓喜に満ちていたが、今こうして静かに過す時間も確かに幸福を感じる。

(……何もしてなくても、幸せだって思えちゃうのって何だろうな)

 不思議に思う事はまだある。
 芝浦は最初、ただ遠くで手塚を見ていればそれで良かった。顔とスタイルが良い男を何とはなしに眺めていられる。それだけで充分幸せだと思っていたからだ。
 だが声を聞いてみたくなり彼の出している占いの店へ通うようになり、会話するようになってからは好きにならなくても良いが嫌われたくないと願うようになっていた。
 その気持ちは好きになって欲しいという願望に変わり、手塚から愛されるようになってからは『ひょっとしたら飽きてしまうのではないか』といった不安とは裏腹に、日に日に思いは強くなっていく。

(俺、ちゃんと誰かを好きになった事がないから良くわかんないけど……誰かを好きになるってこういう事なのかな……)

 ぼんやりとそう考える芝浦の前に、できたての朝食が並ぶ。

「スープとコーヒーはインスタントだ、悪いな」
「いや、全然オッケー。ありがと……手塚はもう食べた?」
「あぁ、お前より随分と早く起きたからな」

 そう言いながら手塚は芝浦の隣に座り、手にしたペットボトルのジャスミンティーを飲む。彼の首筋にもまた昨夜の痕が残っていた。

(あぁ……けっこう目立つ所につけちゃったかな……手塚の店、手塚が好きって理由で来る客も多いだろうから、仕事に影響しないといいけど)

 そうとは思うが、同時に彼が自分の恋人であるという事を喜んでいるのも事実だった。そんな芝浦の視線に気付いたのか、手塚はこちらに視線を向ける。

「どうした、食べないのか?」
「ごめんごめん、ちょっと考え事ってか……」

 芝浦はトーストに手を伸ばすとそれを一口齧る。
 ブルーベリージャムがたっぷり塗られた甘いトーストはまだどこか寝ぼけていた芝浦の頭をゆっくりと目覚めさせていった。

「……何だろうな。俺さ、昨日アンタに抱かれてる時、アンタの事いまが最高に好きだなって思ってたんだけど。今日、起きてこうして何もしないでただ一緒に飯食べてる間も、どんどん好きになっていくから。俺ちょっとおかしいのかな? それとも、誰かを好きになるってそういう事なのかなって。そんな事考えちゃってたんだよね」

 食事をするのと同じような事といった風にそう口にする芝浦を前に、手塚はやや驚いたような顔をして見せた。

「芝浦……おまえはひねくれ者を気取ってるくせに時々ひどく真っ直ぐな物言いをするな」
「そう? 俺っていつも自分に正直だと思ってるけど……あ、やっぱこういうのって重い? 毎日、会ってない時でもどんどん好きになってく気がするとか俺ってかなりヤバい方?」
「どうだろうな。ただ……こんな言い回しがある」

 手塚は手にしたペットボトルを飲み干すとテーブルの上に置く。ボトルについた結露が雫となってテーブルを濡らしていた。

「恋は落ちるものだが、愛は育むものだと。俺を好きになってからもまだお前にその感情があるのなら……お前は今、育ててるんだろうな」

 その言葉に、芝浦は食べていたパンを落としそうになる。

「……いや、手塚その顔でそういう事言うのズルいでしょ? えっ……カッコイイ……俺の彼氏カッコイイ……」
「茶化すな。お前もさっきは相当な事を言ってたと思うんだがな」
「えー、えーそれって手塚も育ててくれてるって事? 毎日俺の事好きになってくれてる?」

 残りのパンを一気に食べると、芝浦はさらに問いかける。その眼差しを遮るよう、手塚は彼の額を軽く弾くマネをした。

「……聞かないと分らないか? 俺は、お前を思ってない日なんてない」
「そっか。あんたも俺と同じくらい、重い男だもんねー」

 芝浦は嬉しそうに笑った後、ふと思いついたような顔を手塚へと向ける。

「あ、でも俺はまだ『落ちてる』段階なのかも。恋って落ちるみたいにスリリングな体験なんでしょ? 手塚との毎日って平凡に思えて結構刺激的だし、俺あんたと出会ってからずーっとアンタに落ちっぱなし。落ちても落ちても底がないみたいに深いなーって気がするもん」

 そして子供のように無邪気に笑う。
 その笑顔を眺めながら、手塚もまた微かに笑って見せた。

「それも悪くないだろう? ……俺がずっとお前を堕とし続けてやる。何処までも、俺の中にな」

 手塚の指先が頬に触れる。その笑顔は妖しくだが微塵の嘘も見られない。
 本気でそう思っているのだろう。芝浦を自分の傍から放すつもりもないし、他の誰かに眼を向けさせる事など考えてもいないのだ。
 だがそれで良いと、芝浦も思っていた。

「そうだね。ずーっと、ずっと……もう、アンタだけに溶かされてアンタの中に落ちて沈んで……俺の一生、それでもう完成してるって気がするもん」

 だから迷いなく、本心からの言葉を告げる。

 もし人生で本当の理解者と出会えて、その相手が自分を何よりも愛してくれているのだとしたらその場所が他人から見て深淵であっても闇であったとしても互いにとっては幸福でそして暖かいものだ。
 そんな思いを強く抱いて。

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インターネット駄文書き
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