インターネット字書きマンの落書き帳
何よりもあなたの心が欲しいから(ヤマアル)
ヤマムラさんから気の利いたプレゼントをもらって嬉しいけど、気の利きすぎているプレゼントなので「どうやって手に入れたのか」探りを入れた結果、他の皆と相談して決めたのを知りなんだか不機嫌になってしまう。
そんな嫉妬深いアルフレートくんの話です。
アルフレくんは一途だから、なんか嫉妬深い子みたいなイメージでどうしても書いちゃいますね。
ヤマムラさんと歳が離れているから、自分の方が子供……みたいな認識をしてたりすると……kawaiiですね!
いつも心にそんなフェチズムを抱いています。
そんな嫉妬深いアルフレートくんの話です。
アルフレくんは一途だから、なんか嫉妬深い子みたいなイメージでどうしても書いちゃいますね。
ヤマムラさんと歳が離れているから、自分の方が子供……みたいな認識をしてたりすると……kawaiiですね!
いつも心にそんなフェチズムを抱いています。
『貴方だけに選んで欲しい』
いつもキミにはお世話になっているから。
そんな言葉とともにヤマムラは照れた様子で綺麗に包まれた箱を取り出した。
明らかに特別なプレゼントを前に、アルフレートは自然と笑顔になる。
「ありがとうございます、ヤマムラさん! 開けてもいいですか?」
「あぁ、いいよ。目の前で開けられると、少し恥ずかしい気がするけど……気に入ってくれるといいな」
照れるヤマムラを前に包み紙を開けば、中には文字盤の大きな懐中時計が入っていた。
銀色に鈍く輝く懐中時計はシンプルなデザインだが仕上げも丁重で、きちんと手入れしていれば長く使えそうな良い品だというのは一目で分る。
ヤーナムには器用な職人が突出して多いが、殆どが武器職人でありこのような日用品を作る職人は殆どいない。
安い買い物ではなかっただろう。
「キミが普段着ている装束の色にも合うように色々見てきたんだが、どうかな……」
心配そうにアルフレートの様子を伺うヤマムラを前に、アルフレートは笑顔を向けた。どこか不安げな恋人を少しでも安心させたかったからだ。
「とても嬉しいです、ヤマムラさん。ありがとうございます、大事にしますね!」
その言葉は嘘ではないが、少しだけ気にかかる事があるのも事実だった。
ヤマムラはこの街の人間ではない。
排他的で閉鎖的なヤーナム市民は狩人であれば一応は歓迎するが、それでも異邦人は余所者として忌み嫌われ、客として扱わない店も少なくはない。
だから自然と異邦人の行く店は裏路地に広がる怪しい店やヤーナムに転がり込んで来た行商人などが多いのだが、そういった店で買うにはこの品は「良すぎた」のだ。
明らかに良い職人により作られた懐中時計など、この街では滅多に見るものではない。
ヤマムラに限って盗品などを扱う店でプレゼントを買うような事はしないだろうが、だからこそ「どうやって手に入れたのか」が気になった。
「あ、あの。でも、このような品、どうやって……」
聞かなくてもいい事だと思いつつ、つい気になって聞いて見ればヤマムラはさして戸惑う事もなくこたえた。
「あぁ、連盟のヘンリックさんは長らくヤーナムにいるからね。彼経由で、いい工房の職人を紹介して貰えたんだ」
「ヘンリック……ヘンリックさんに、相談したんですか」
「俺はキミくらいの年頃の子が喜ぶようなものがどうにも思いつかなくてね、連盟の皆に色々と聞いて良さそうなものを考えたんだ。気に入ってくれたのなら良かったよ」
アルフレートは改めて懐中時計を見る。
選んでプレゼントしてくれたのはヤマムラだが、その中にヤマムラ以外の誰かが関わっていると思うと、何故か苛立つ自分がいた。
せっかくプレゼントをもらったのに、どうしてこうも焦れているのだろう。
己の心に問いかければ、すぐに答えが返ってきた。
嫉妬しているのだ。
ヤマムラが自分以外の誰かに相談している事、そのものに。
「ヤマムラさん、頂いたプレゼントはとても嬉しいですし、大事にしようと思います。ですけど、その……次は、誰かに聞いて選んだものではなく、ヤマムラさんが『良い』と思うものをプレゼントしてくれませんか?」
「ど、どうしたんだい。アル、やっぱり気に入らなかったかい?」
「とても素敵なものだと思います! ですが……私は、貴方から見れば子供ですから。貴方が私の知らない所で、他の誰かと密談している。そう思うだけで……嫉妬してしまうのです」
アルフレートの言葉に、ヤマムラは虚を突かれたような顔をする。
「あ、貴方が呆れてしまうのは分っています! 子供っぽいと、自分でもそう思います! ですけど……他の誰かの意向が入ったプレゼントも、他の誰かと相談している貴方を想像するのも、私はどうしても許せないんです。貴方は、私の好きな人だから……」
何て子供なんだろう。何て嫉妬深いんだろう。何てエゴイストなのだろう。
自分でも嫌になる狭量な性格だと思っているが、嫉妬の心は止められない。
こんな事ばかり言って嫌われてしまうとは思っていたが、それでも言わずにいられない自分の性格も嫌になる。
もっと大人になればこんな醜態をさらさなくても良いのだろうか。
様々な思考が巡る中、温かな手がアルフレートの頭を撫でた。
「そうだったね、キミが酷く子供っぽくて嫉妬深くて……でもそれだけ一途に、俺の事だけを愛してくれる人だというのを忘れていたよ」
「……ごめんなさい、ヤマムラさん。私は、そういう風にしか生きられない性質なんです」
「あぁ、だがそれを分っていて変な事を話した俺も悪かった……そうだね、これからは俺がキミに似合うと思ったものを渡して、キミにしてあげたいと思う事をするよ」
「ヤマムラさん……」
それでもヤマムラは、こんな自分でも良いというのだ。
子供っぽくて嫉妬深い、鉛のように重いアルフレートの全てを知ってなお、彼と寄り添おうとしてくれるのだ。
「あぁ、だが俺はあまりセンスがいい方ではないから、その懐中時計のような良い品をプレゼント出来るとは思わないでくれ。キミの期待に添えるようなものはきっと、与えてやれないだろうからね」
「そんなの、いいです。そんな事は……」
それに、もう貰っている。
自分の心に寄り添って大切にしてくれようというヤマムラの暖かい気持ちは、どんなプレゼントにも勝る喜びとなっていた。
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