インターネット字書きマンの落書き帳
年下に言わせるズルい大人(アルヤマ)
以前、他のSNSかどこかにおいていたアルフレート×ヤマムラの話を引き上げてきたのでBlogに再掲しておきます。
これはたぶん、pixivにおいておいた奴かな?
アルフレートのこと好きだけど中々「俺のものになってくれ」とは言えないヤマムラさんが、アルフレートの方からそういう事を言わせるような空気をつくっていくタイプのヤマアルです。
わりと初期に書いた話っぽいなぁ~と思いつつも懐かしい気持ちになってのせておきます。
一度読んだ人も「懐かしいなぁ」と思って読んで下しぁ!
これはたぶん、pixivにおいておいた奴かな?
アルフレートのこと好きだけど中々「俺のものになってくれ」とは言えないヤマムラさんが、アルフレートの方からそういう事を言わせるような空気をつくっていくタイプのヤマアルです。
わりと初期に書いた話っぽいなぁ~と思いつつも懐かしい気持ちになってのせておきます。
一度読んだ人も「懐かしいなぁ」と思って読んで下しぁ!
『全ては盤上の駒』
鉛のようにのし掛かる疲労と痛みとに苛まれ、アルフレートは億劫そうにベッドより起き上がった。隣にはヤマムラがシーツにくるまり寝息を立てている。
昨晩は随分と無茶を言ったし、無茶をさせた。きっと疲れている事だろう。今しばらくはそっとしておこう。 そう思いベッドに腰掛けているうちに、アルフレートはじわじわと昨夜の狂騒を思い出していた。
若さからか、それとも血に酔いすぎていたのか。
昨晩はひどく血が高ぶり、内に秘めるべき情欲が抑えられない獣として身体の内側で荒れ狂っていた。 沸き立つような欲望は爪となり牙となりただ人肌を求め、その昂ぶりはとても一人で処理出来るないほど、誰かの身体を求めていたのだ。
だが、娼婦を抱くのは趣味ではない。
娼館独特の化粧や香水の匂いが嫌な記憶を蘇らせるばかりだったし、そもそも娼婦という存在は反吐が出るほど嫌いだった。 それに、その時のアルフレートには恋い焦がれている相手がいた。
その男……ヤマムラとは別にまだ恋人らしい距離感ではない。
ただともに狩りをして、時に食事をとり僅かに話をするだけ、その程度の付き合いだ。
だからこの思いはきっと、アルフレートからの一方通行だったろう。 だがそれでも、アルフレートはヤマムラという男を好いていたから、その気持ちをもったまま他の誰かを抱くのにひどい抵抗があった。
そういう意味で、アルフレートは潔癖な男だったのである。
だからその日は、血が静まるまでヤマムラと話をする事にした。
偶然だったのか、あるいはそれを運命というのかもしれないが、その時そばにヤマムラも居て、強かに血を浴び眠れず暖炉に火をくべ気を紛らわしていたからだ。
何を話したかははっきりと覚えていないが、他愛もない話が殆どだった気がする。
ヤーナムの建築は自分たちの故郷のそれと、随分違っているだとか、最近はまともな食事がとれないから、食事といえば干し肉か乾パンばかりだとか、ヤマムラの故郷では肉よりも魚が多く食べられているとか、そんな日常の話だ。
酒は二人とも、飲んでいなかったが血に酔っていた。
最初は差し向かいで語っていたはずだが、気付いた時は隣に座り、膝に触れ、手を重ね……どちらがというワケでもなく自然と唇が重なってから、理性は殆ど消え失せた。
貪るように唇を重ね、時々暖炉から炎が弾ける音よりも舌を舐る音の方が強く耳に残る。
『ヤマムラさん……ヤマムラさん、ヤマムラさん……』
気付いた時には幾度も彼の名を呼びながら、その痩躯を抱きしめていた。
誰にも渡したくないし、誰にも汚されたくない。 だがそれを言葉にしたら今の関係が崩れてしまう、それが怖くてただ名前を呼ぶ事しか出来なかったアルフレートの手をヤマムラは優しくなぞると。
『……ベッドにつれていってくれないか、アルフレート』
優しい声を注ぐのだ。
『今日の俺は、血に酔っている……一人でベッドに行くのもおぼつかないだろう。君につれていってもらいたい』
そんな事をしたら、寝室まで理性を抑えられる自信がなかった。
いや、仮に抑えられたとしても寝室を前にしたらそのまま彼を押し倒してしまうのではないか、そんな思いがあった。 だがヤマムラはそんなアルフレートの不安を断ち切るように不器用なキスをする。
『……君に頼んでいるんだよ。わかってくれないか?』
それはアルフレートが求めていて、決して得られないと思っていた言葉だったから、それからは夢中でただ彼を腕に絡みついていた。
ヤマムラの身体は折れそうな程に細いがよくしなり、最初から違い交わるためにあるかのようにアルフレートの身体によく馴染んでいた。
『性急すぎるぞ、アルフレート……もっと落ち着け。心配するな、俺は何処にも逃げないから……』
その声に窘められながらもその身体を貪り、ヤマムラに誘われるよう互い熱い夜を過ごしたのだった。
「私は……何てことを……」
アルフレートは昨晩の狂騒を全て思い出し、恥ずかしくり俯く。頬が自然と紅潮していくのが自分でも解った。 昨晩はただ血に酔い、劣情を催し、その本能のままヤマムラの身体を貪ってしまった。 愛を語りながらの優しいものとは、到底言えなかっただろう。
もしヤマムラと同衾出来る事があれば、優しく穏やかに。お互いの事を語りながら情愛を重ねたいと密かに願っていたアルフレートからすれば、理想から随分かけ離れている。
それに、ヤマムラも男である自分を相手にしているというのに、やけに手慣れているのも気になった。
別に初めての相手じゃなかったとか、そんな子供じみた理由で嫌いになったりしないが、それでも妙に男相手でも慣れているのは歯がゆい気持ちがある。それは、自分が抱いた初めての男がヤマムラだった事に対する劣等感のようなものもあるのだろう。
何とも言えない気持ちを引きずりベッドから出る事もなく、ただぼんやりと座って考える。そんな事をどれくらいの時間していたのだろうか。
アルフレートの背後から、ヤマムラが身じろぎする気配が感じられた。彼は身体を半分おこし、ベッド脇においた眼鏡を見つけるとそれをかけてからアルフレートを見て。
「あぁ、おはようアルフレート」
いつもと変わらぬ笑顔を向ける。そのあまりにも平然としているその態度が、アルフレートを不安にさせた。
「おはようございます、ヤマムラさん……」
「どうした、アルフレート? ……元気がないじゃないか、具合でも悪いのか」
「そうじゃ、ないんですけど……」
アルフレートは少し考え、自分の中にあるこのモヤモヤした感情を何とか形にしようとする。
「昨晩は、その……すいません、お世話になりました……」
「あ、いや……悪かったな。俺も……そういう気分だったから。気にしないでくれ」
「……いや、気にならないんですか、ヤマムラさんは。その……私と……するのは……」
「あ、ああ……君が欲しいと思った時に、俺にも性処理の必要があれば断らない」
「そうじゃなくて! ……そうやって誰にでも頼まれたらセックス出来る。そういうタイプなんですか、ヤマムラさんは!」
やや語気を荒げながら詰め寄るアルフレートの手を、ヤマムラはとっさに掴む。
そして彼の目を見て。
「……他の男とセックスしてほしくはないのかい?」
そんな風に聞くものだから、アルフレートはすっかり毒気が抜かれてしまった。そしてまるで乙女のように耳まで紅くすると、消え入りそうな声でただ一言。
「……はい。他の奴なんか相手にしないで……私だけに……私だけのヤマムラさんでいてください」
そうやって告白せざるを得ない状況に、気付いたらなっていたのだ。それを聞いてヤマムラは、ようやく安堵の吐息をつく。
「あぁ、うん……よかった。いいよ、そう……元々そのつもりだったんだが、なかなかうん。自分からは言い出しにくくてね」
「な、何ですかそれ……私に言わせたんですか?」
「そうなるかな……うん、そうなる……いや、俺くらいの年齢になるとなかなか素直に言えないもんなんだよ、君から言ってくれて助かった」
「何ですかもぅ……」
アルフレートは脱力したように、ベッドへ身体を投げだす。
「……ヤマムラさんって結構ずるい人なんですね」
「そりゃ、君より年かさだ。純粋純朴のままではいられないからね……君の気持ち、少しだけ利用させてもらったよ」
「セックスしてる時も、へんに冷静でしたし」
「……君より年かさだとね、いやでも変な経験をしてしまう。うん、その名残だろうね」
「……ズルイですよ、ホント。私、ずっと……ずっと憧れて、こうなる事を望んでたのに、何か騙されたみたいで……」
枕に顔を埋め、昨晩の事を思い返す。互い本能のまま身体を貪っていると思ったが、あれさえも全てヤマムラの手の内だと思うと怒りより恥ずかしさが前に出ていた。 そんなアルフレートの頭をくしゃくしゃ撫でると、ヤマムラは笑う。
「はは……悪かった。俺は元々、ムードとかそういうのと無縁だったからな……君の期待に添えないようで……」
「ひどいですよぉ……」
「でもな」
と、そこでヤマムラは不意に真剣な目をしてアルフレートを見据える。深い琥珀色の瞳が、アルフレートを捉えた。
「でも、俺は……君が『最後の男』だったらいいと、そう……思っている。だから……俺より先に死ぬな、アルフレート」
「ヤマムラさん……」
ズルイな、とアルフレートは思っていた。
散々茶化して、のらりくらりと本心を言わないよう避けていた風にみせながら、最後の最後で真実を言うなんて、そんな事されたらますますのめり込んでしまうではないか。本当に、他の相手なんか見えなくなってしまうではないか。
そんな事を考えながら、アルフレートはヤマムラの痩躯を抱く。
「……何いってるんですか。ヤマムラさんだって死なせませんからね? 二人でずっと……ずっと一緒で、ヤマムラさんの最後の恋人は俺だけ、そう、私だけです」
きっとこれもヤマムラの手の内なのかもしれないと、アルフレートはどこかで考えていた。
でもそれでもいい。
ヤマムラが自分を必要としてくれるのであれば、どんなに幸福なのだろう。
だからその約束が例え守れないものだとしても、今だけは嘘をつく。
先に嘘をついたのはヤマムラなのだから、きっと許してくれるだろう。
鉛のようにのし掛かる疲労と痛みとに苛まれ、アルフレートは億劫そうにベッドより起き上がった。隣にはヤマムラがシーツにくるまり寝息を立てている。
昨晩は随分と無茶を言ったし、無茶をさせた。きっと疲れている事だろう。今しばらくはそっとしておこう。 そう思いベッドに腰掛けているうちに、アルフレートはじわじわと昨夜の狂騒を思い出していた。
若さからか、それとも血に酔いすぎていたのか。
昨晩はひどく血が高ぶり、内に秘めるべき情欲が抑えられない獣として身体の内側で荒れ狂っていた。 沸き立つような欲望は爪となり牙となりただ人肌を求め、その昂ぶりはとても一人で処理出来るないほど、誰かの身体を求めていたのだ。
だが、娼婦を抱くのは趣味ではない。
娼館独特の化粧や香水の匂いが嫌な記憶を蘇らせるばかりだったし、そもそも娼婦という存在は反吐が出るほど嫌いだった。 それに、その時のアルフレートには恋い焦がれている相手がいた。
その男……ヤマムラとは別にまだ恋人らしい距離感ではない。
ただともに狩りをして、時に食事をとり僅かに話をするだけ、その程度の付き合いだ。
だからこの思いはきっと、アルフレートからの一方通行だったろう。 だがそれでも、アルフレートはヤマムラという男を好いていたから、その気持ちをもったまま他の誰かを抱くのにひどい抵抗があった。
そういう意味で、アルフレートは潔癖な男だったのである。
だからその日は、血が静まるまでヤマムラと話をする事にした。
偶然だったのか、あるいはそれを運命というのかもしれないが、その時そばにヤマムラも居て、強かに血を浴び眠れず暖炉に火をくべ気を紛らわしていたからだ。
何を話したかははっきりと覚えていないが、他愛もない話が殆どだった気がする。
ヤーナムの建築は自分たちの故郷のそれと、随分違っているだとか、最近はまともな食事がとれないから、食事といえば干し肉か乾パンばかりだとか、ヤマムラの故郷では肉よりも魚が多く食べられているとか、そんな日常の話だ。
酒は二人とも、飲んでいなかったが血に酔っていた。
最初は差し向かいで語っていたはずだが、気付いた時は隣に座り、膝に触れ、手を重ね……どちらがというワケでもなく自然と唇が重なってから、理性は殆ど消え失せた。
貪るように唇を重ね、時々暖炉から炎が弾ける音よりも舌を舐る音の方が強く耳に残る。
『ヤマムラさん……ヤマムラさん、ヤマムラさん……』
気付いた時には幾度も彼の名を呼びながら、その痩躯を抱きしめていた。
誰にも渡したくないし、誰にも汚されたくない。 だがそれを言葉にしたら今の関係が崩れてしまう、それが怖くてただ名前を呼ぶ事しか出来なかったアルフレートの手をヤマムラは優しくなぞると。
『……ベッドにつれていってくれないか、アルフレート』
優しい声を注ぐのだ。
『今日の俺は、血に酔っている……一人でベッドに行くのもおぼつかないだろう。君につれていってもらいたい』
そんな事をしたら、寝室まで理性を抑えられる自信がなかった。
いや、仮に抑えられたとしても寝室を前にしたらそのまま彼を押し倒してしまうのではないか、そんな思いがあった。 だがヤマムラはそんなアルフレートの不安を断ち切るように不器用なキスをする。
『……君に頼んでいるんだよ。わかってくれないか?』
それはアルフレートが求めていて、決して得られないと思っていた言葉だったから、それからは夢中でただ彼を腕に絡みついていた。
ヤマムラの身体は折れそうな程に細いがよくしなり、最初から違い交わるためにあるかのようにアルフレートの身体によく馴染んでいた。
『性急すぎるぞ、アルフレート……もっと落ち着け。心配するな、俺は何処にも逃げないから……』
その声に窘められながらもその身体を貪り、ヤマムラに誘われるよう互い熱い夜を過ごしたのだった。
「私は……何てことを……」
アルフレートは昨晩の狂騒を全て思い出し、恥ずかしくり俯く。頬が自然と紅潮していくのが自分でも解った。 昨晩はただ血に酔い、劣情を催し、その本能のままヤマムラの身体を貪ってしまった。 愛を語りながらの優しいものとは、到底言えなかっただろう。
もしヤマムラと同衾出来る事があれば、優しく穏やかに。お互いの事を語りながら情愛を重ねたいと密かに願っていたアルフレートからすれば、理想から随分かけ離れている。
それに、ヤマムラも男である自分を相手にしているというのに、やけに手慣れているのも気になった。
別に初めての相手じゃなかったとか、そんな子供じみた理由で嫌いになったりしないが、それでも妙に男相手でも慣れているのは歯がゆい気持ちがある。それは、自分が抱いた初めての男がヤマムラだった事に対する劣等感のようなものもあるのだろう。
何とも言えない気持ちを引きずりベッドから出る事もなく、ただぼんやりと座って考える。そんな事をどれくらいの時間していたのだろうか。
アルフレートの背後から、ヤマムラが身じろぎする気配が感じられた。彼は身体を半分おこし、ベッド脇においた眼鏡を見つけるとそれをかけてからアルフレートを見て。
「あぁ、おはようアルフレート」
いつもと変わらぬ笑顔を向ける。そのあまりにも平然としているその態度が、アルフレートを不安にさせた。
「おはようございます、ヤマムラさん……」
「どうした、アルフレート? ……元気がないじゃないか、具合でも悪いのか」
「そうじゃ、ないんですけど……」
アルフレートは少し考え、自分の中にあるこのモヤモヤした感情を何とか形にしようとする。
「昨晩は、その……すいません、お世話になりました……」
「あ、いや……悪かったな。俺も……そういう気分だったから。気にしないでくれ」
「……いや、気にならないんですか、ヤマムラさんは。その……私と……するのは……」
「あ、ああ……君が欲しいと思った時に、俺にも性処理の必要があれば断らない」
「そうじゃなくて! ……そうやって誰にでも頼まれたらセックス出来る。そういうタイプなんですか、ヤマムラさんは!」
やや語気を荒げながら詰め寄るアルフレートの手を、ヤマムラはとっさに掴む。
そして彼の目を見て。
「……他の男とセックスしてほしくはないのかい?」
そんな風に聞くものだから、アルフレートはすっかり毒気が抜かれてしまった。そしてまるで乙女のように耳まで紅くすると、消え入りそうな声でただ一言。
「……はい。他の奴なんか相手にしないで……私だけに……私だけのヤマムラさんでいてください」
そうやって告白せざるを得ない状況に、気付いたらなっていたのだ。それを聞いてヤマムラは、ようやく安堵の吐息をつく。
「あぁ、うん……よかった。いいよ、そう……元々そのつもりだったんだが、なかなかうん。自分からは言い出しにくくてね」
「な、何ですかそれ……私に言わせたんですか?」
「そうなるかな……うん、そうなる……いや、俺くらいの年齢になるとなかなか素直に言えないもんなんだよ、君から言ってくれて助かった」
「何ですかもぅ……」
アルフレートは脱力したように、ベッドへ身体を投げだす。
「……ヤマムラさんって結構ずるい人なんですね」
「そりゃ、君より年かさだ。純粋純朴のままではいられないからね……君の気持ち、少しだけ利用させてもらったよ」
「セックスしてる時も、へんに冷静でしたし」
「……君より年かさだとね、いやでも変な経験をしてしまう。うん、その名残だろうね」
「……ズルイですよ、ホント。私、ずっと……ずっと憧れて、こうなる事を望んでたのに、何か騙されたみたいで……」
枕に顔を埋め、昨晩の事を思い返す。互い本能のまま身体を貪っていると思ったが、あれさえも全てヤマムラの手の内だと思うと怒りより恥ずかしさが前に出ていた。 そんなアルフレートの頭をくしゃくしゃ撫でると、ヤマムラは笑う。
「はは……悪かった。俺は元々、ムードとかそういうのと無縁だったからな……君の期待に添えないようで……」
「ひどいですよぉ……」
「でもな」
と、そこでヤマムラは不意に真剣な目をしてアルフレートを見据える。深い琥珀色の瞳が、アルフレートを捉えた。
「でも、俺は……君が『最後の男』だったらいいと、そう……思っている。だから……俺より先に死ぬな、アルフレート」
「ヤマムラさん……」
ズルイな、とアルフレートは思っていた。
散々茶化して、のらりくらりと本心を言わないよう避けていた風にみせながら、最後の最後で真実を言うなんて、そんな事されたらますますのめり込んでしまうではないか。本当に、他の相手なんか見えなくなってしまうではないか。
そんな事を考えながら、アルフレートはヤマムラの痩躯を抱く。
「……何いってるんですか。ヤマムラさんだって死なせませんからね? 二人でずっと……ずっと一緒で、ヤマムラさんの最後の恋人は俺だけ、そう、私だけです」
きっとこれもヤマムラの手の内なのかもしれないと、アルフレートはどこかで考えていた。
でもそれでもいい。
ヤマムラが自分を必要としてくれるのであれば、どんなに幸福なのだろう。
だからその約束が例え守れないものだとしても、今だけは嘘をつく。
先に嘘をついたのはヤマムラなのだから、きっと許してくれるだろう。
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