インターネット字書きマンの落書き帳
彼の知らない憧憬の思慕(ヤマアル)
皆さん、当て馬になる夢小説という概念好きですか?
(突然始まる人類の選別)
ぼくは『推しCPの当て馬にされるモブおじさん』になら喜んでなりたいタイプの人間なんですよね。
推しCP幸せになって!
推しCPが幸せになるなら俺ッ……どんな汚いモブでも演じる!
突然生えてきた推しの婚約者になったり、推しを闇オークションで2億で購入する汚い富豪になったりするからッ……。
そういう気概で生きているので、今回はヤマムラさんの事が大好きすぎるアルフレート君の当て馬モブ狩人になりました。
アルフレート君の優しさに対して好意を抱きつつある狩人が、ヤマムラさんを前にメチャクチャえっちになるアルフレートくんを目の当たりにして絶望する話です。
えっちなアルフレートくんを見て絶望したい!
えっちなアルフレートくんを見て絶望したい!(素振り)
(突然始まる人類の選別)
ぼくは『推しCPの当て馬にされるモブおじさん』になら喜んでなりたいタイプの人間なんですよね。
推しCP幸せになって!
推しCPが幸せになるなら俺ッ……どんな汚いモブでも演じる!
突然生えてきた推しの婚約者になったり、推しを闇オークションで2億で購入する汚い富豪になったりするからッ……。
そういう気概で生きているので、今回はヤマムラさんの事が大好きすぎるアルフレート君の当て馬モブ狩人になりました。
アルフレート君の優しさに対して好意を抱きつつある狩人が、ヤマムラさんを前にメチャクチャえっちになるアルフレートくんを目の当たりにして絶望する話です。
えっちなアルフレートくんを見て絶望したい!
えっちなアルフレートくんを見て絶望したい!(素振り)
『身体は厚く火照り、だが心はただ虚ろであった』
アルフレートは何処にいるのだろう。
知らないうちに美しい金色の髪をしたその狩人を探すようになっていた理由を、その狩人はある種の友情からだと思っていた。
その狩人はヤーナムに来てまだ日の浅い男であった。
不治の病にも効くとも、不老不死になれるとも言われる医療教会のもつ血の医療。
その秘密を一端でも持ち帰る事が出来れば助かる命があるのではないか。
彼はそんな善なる気持ちからヤーナムに入り、少しでも医療教会に近づくため狩人として生活するようになった男である。
もちろん、彼はただ善い心がけのみで動いているワケではなかった。
もし血の医療がヤーナムの外でも使える知識であればそれを利用し多額の利益を手にする事が出来るという野望は少なからずある。
他人の命を救う事で感謝され、しかも富まで得られるとしたらそれは苦労する価値は充分にある挑戦と言えただろう。
だが現実は甘くないという事をこのヤーナムについてすぐに思い知らされた。
獣の病と言われる風土病をもつヤーナムは世間から隔離されていた為極めて排他的であり、彼のような余所者とまともに会話しようとする輩はいなかった。
それでも獣狩りの狩人になった後は幾分かマシな扱いをされるようになったが、それでもヤーナムの秩序に入る事は容易ではない。
異邦人である狩人はどこまでいっても異邦人にすぎないのだ。
これでは医療教会の秘術である「血の医療」に触れるのも遠い。
狩人となったはいいが獣狩りの成果もあがらず、生活は日々困窮していった。
そんな中、最初に彼を人間らしく扱ってくれた狩人がアルフレートだった。
アルフレートはヤーナムの出身か、あるいはヤーナムで長く暮しているのかこの街の事情に詳しかった。
そして余所者にもヤーナムという街について親切に教えてくれ、医療教会やビルゲンワースといった施設がこの街でどのような存在であるのかも彼は教えてくれた。
『血族の情報、それとカインハーストへの招待状を見たら私に伝えて下さい』
アルフレートが求める見返りはただそれだけだった。
まだヤーナムに来て日が浅い彼には血族が何なのか、カインハーストというものがどのような場所なのか皆目見当もつかず、またそれについて聞ける相手もいなかったがそれでも優しく接してくれたアルフレートには何かしら尽くしたいと思っていた。
元も余所者である彼は何も知る事など出来なかったが。
いや、あるいはもし彼が何かを知る事が出来たのならばアルフレートと接するのは自然と避けていたかもしれない。
いつしか彼の話し相手はアルフレートだけになっていた。
話し相手といってもアルフレートだって別に暇を持て余しているワケではない。
挨拶をして、時々30分程度の雑談をする程度の関係であったがそれでも孤独な彼にとってその時間はヤーナムで暮す中で数少ない安らげる時間であった。
だから彼は自然とアルフレートを探すようになっていた。
他愛も無い会話をするだけだったとしても、ただ挨拶しかしなくても、アルフレートの顔を見て彼が無事に獣の血と脂にまみれたヤーナムで生き残ってくれているのならそれは彼にとっての支えだったからだ。
(いつもだったら、この時間は碑の前で祈りを捧げているのにな……)
アルフレートが祈る碑を見上げれば、見た事のない紋様が刻まれている。
目玉が刻まれた三角形のように見える奇妙な紋様は他の土地では見ない簡略化された記号のように見える。
貴族の紋章や宗派を示す紋章であればもう少し凝った意匠であっても良いと思うのだが、どこかこちらを見るようなその紋様は禍々しいような恐ろしさを感じた。
(……今日はいないのなら帰ろうか。他に行く所もないし)
帰ろうと振り返ったその時、何処かから微かにアルフレートの声がした。
囁くようなか細い声ではあったが幾度も聞いているアルフレートの声だ。聞き間違えるはずがない。
(アルフレート……この建物の中にいるのか……)
彼は声に導かれるよう、聖堂のような建物へと向っていった。
このヤーナムは今でこそ医療教会が政治も信仰も街全体を支配しているが、かつては別の信仰も入っていたのか街中至る所に荘厳な雰囲気を残した聖堂と思しき廃屋が存在していたのだ。
「アルフレート……いるのか……?」
いつも横目に見ていたが入るのは初めての建物である。
捨て置かれているのか室内は外が夕暮れ時というのも相まってすっかり暗くなっていた。
静まりかえっている。だが人がいる気配は微かにする。
人気のない柱の向こうでアルフレートがあげる声を聞き、彼はその声を頼りにくらい室内を進んでいた。
「アルフレート……」
そこに、アルフレートはいた。
薄暗い室内の物陰で、知らない男と唇を重ねていた。
「んぅ……ヤマムラさん、すいませんワガママ言って。でも……どうしても、貴方が欲しくて……」
恥じらいながらも嬉しそうに笑うアルフレートの顔は、それまで彼が見た事のない表情だった。
申し訳なさそうにそう口にするが、身体が激しく相手を求めている事は同じ男だったら見てすぐに理解するだろう。
「別にいいさ。ただ……いいのかい、こんな所で。誰かに見られでもしたら……」
相手は彼の知らない男ではあるが、彼と同じ異邦人のようだった。
黒髪にやや黄色みがかった肌はヤーナムでは勿論のこと、この周辺の土地でもあまり見ない容姿だ。
輝くような美貌をもつアルフレートと比べれば随分と歳は上のように見えたので嫌がっている所を無理矢理連れ込まれたか、あるいは金でも掴まされたのかと勘ぐったが。
「んっ……ヤマムラさん、愛してます。愛してます、愛して……だから、待ちきれないんです。どうかはしたないと思わないで下さい……」
恥じらうようにそう告げ、必死に懇願するアルフレートの姿を見ればどちらがより深く相手に惚れ込んでいるのかは一目瞭然であった。
「キミはそう言うけど、やはりきちんとした場所じゃないとな……こういった所ですると、どうもキミを粗雑にしているようで気が引ける」
見知らぬ男はそう言いながら、アルフレートの白い肌に指を滑らせる。
アルフレートも男の首に自然と手を伸ばしていた。
「普段からヤマムラさんには、とても大切にしてもらっていると思いますよ。だけど時々、貴方のその深い優しさが不安になるんです……たまには少し酷い事をされたい……なんて思ってしまう程度には。きっとこれは贅沢な悩みなのでしょうね」
抱かれた身体に誘われるよう、見知らぬ男はアルフレートの首筋へ舌を走らせる。
甘い吐息に混じり歓喜の喘ぎが暗い室内に響いていた。
と、その時アルフレートと視線が合う。
アルフレートは彼の姿を認め一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに穏やかに笑うと口元に指を当て『静かにしてください』とジェスチャーで示す。
今声を立てられれば、それに気付いた相手の男が手を止めてしまうかもしれない。
きっとそう思って、そんな仕草をしたのだろう。
それほどまでにアルフレートはその男を求めているのだ。
同時にそれは彼にとってアルフレートは多数いる狩人の一人であり、決して特別な存在ではないという事実を突きつけられる。
アルフレートはいつでも笑顔で応対してくれた。
その優しさ全てが偽りではなかったのだろう。
「んっ……ヤマムラさん……好きです、好き……好きです……」
だが、甘い声で男を求める表情とはあまりにも違いすぎる。
恐らくこの表情が、この声が、アルフレートが身も心も許した相手に見せる姿なのだろう。
見知らぬ男はアルフレートに誘われ求められるまま、その片足を抱えるとより深く身体を穿つ。
「ぁっ……ぁ……ぁ……」
身体を仰け反らせ強く男を抱く姿を目の当たりにし、彼は黙ってその場を立ち去った。
自分の入る余地など何処にもないという事を理解してしまったからだ。
アルフレートに抱いていた感情は友情のようなものだと彼は思っていた。
だが歓喜の声を上げ幸福そうに抱かれる姿を目の当たりにし、強い敗北感を胸にしてそれが違っていた事にようやく気付く。
血の医療、その知識を得る。
目的は到底果たすことの出来ない遠い道であり真に才能がない限りヤーナムの狩人として使い潰される未来しかない。それが予測できてもなおヤーナムという街にしがみついていたのは他でもない、アルフレートがいたからだ。
アルフレートの笑顔を傍で見ていたい。
その身体を抱いて体温を感じたい。
アルフレートと二人で幸福に過したい。
いつしかそれが彼の目的となっていたのだが、それさえも幻想と分ってしまった。
(この街を経とう。一刻も早く。そして全て忘れよう、血と脂にまみれた古い都などどこにも無く、そこに優しくも美しい人間などいなかったのだ)
宿に戻ったらすぐにでも荷物をまとめようと思いながら、彼は夕暮れの街を進む。
虚ろな心と裏腹に昂ぶるばかりの身体を持て余しながら。
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