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インターネット字書きマンの落書き帳

   
同じ形をした二つの傀儡(ローレンス×ルド)
高潔なルドウイークに対して嫉妬心が募りすぎてしまったローレンスがルドウイークを抱いて穢そうとする話です。

ローレンス×ルドウイーク。
この二人をコンビ的、あるいは対にかく事は多かったけどCPとして取り上げるのは珍しいなァと我ながら思いますので、珍しいものを時には食べて下さい。(雑な料理人みたいな発言)

抱いて穢して。
だけど結局は同じもの。みたいな二人の話ですよ。
ルドウイークは自分から性欲を口にしないので、どうしても受け身になりますね。(個人の感想です)



『同じ理由で壊れた傀儡』

 ルドウイークは獣狩りに関しては紛れもなく天才だった。
 それはローレンスも認める所ではあったし、まだ獣狩りの技術は確立していない現在の野蛮とも言える戦い方の中でもルドウイーク程の才能は100年経っても再び出るかどうかは分らない。
 獣狩りの開祖とも言えるゲールマンを持ってしてさえそのように評価せざるを得ないほど、彼の才能は優れていたのだ。

 それに反してルドウイーク自身は決して人間をうまくやれてはいない。少なくともローレンスはそう思っていた。
 英雄であるのに街外れでも治安の悪い貧困街の今のも壊れそうな狭い小屋に住んでいた。
 毎日水と固いライ麦パンだけを食べ、狩装束以外の服など殆ど持っておらず暇があれば武器の手入れをするか鍛錬をするかだけの生活を送っており、ローレンスが声をかけなければ人前に出る事はおろか外に出る事すら無いだろう。

 人はその姿を清貧であるとか、実直であると高く評価をしていた。
 英雄色を好むなどとよく言われているが、酒や女、博打なんて戯れとルドウイークは無縁であったと言えよう。
 確かにその姿は高潔に見え、しかも謙虚である彼の背は英雄であり理想として多くの民と狩人を勇気づけてきた事だろう。

 だがそれらは全て虚飾である事をローレンスは知っていた。
 いや、虚飾は言い過ぎだろう。実際ルドウイークの生活は清貧そのものなのだから。
 言い換えるのなら買いかぶりすぎ、あたりが妥当だろうか。

 ルドウイークという男は清貧であろうとしているのではない。
 そうとしか生きられないからそうなっている。ただそれだけの男なのだ。

 謙虚に見えるのは他人と何を話していいか分らないから。
 清貧に見えるのは住む場所を変える事で今の生活が変わってしまうのが怖いから。
 いつも同じものを食べるのも、服を買おうとしないのもただ単純に市場に並ぶ無数の品から何を選んでいいか分らないからというのをローレンスは知っていた。

 不器用だ。
 人間として生きるのにおおよそ向いているとは思えない程の不器用さだ。
 もしルドウイークという男がヤーナムではない街に生まれてたら恐らく言われた仕事をようやくこなし日銭を稼ぎ、誰かに目をかけられる事もなければいる事さえ気付かれず、友もなく、一人静かに生きそして死んでいくのだろう。

 だがヤーナムはこの何も持たぬ男に獣狩りの技を教えた。
 何も出来ぬはずの男に、すべき何かを与えてしまったのだ。

 故に男は英雄と呼ばれた。
 何ものでもない男が何かになれた、その事実は喜ばしい事だったのかそれとも……。

「いつも済まないな、ローレンス。私が病に伏せる度、部屋を貸してもらって……」

 ルドウイークは頑健な男ではあったが、時々熱を出す事があった。
 住んでる環境の悪さと普段の粗末な食生活が主な原因だろうと思ってはいたがルドウイーク自身がそれを変えられない性分なのだから仕方ない。
 だからせめて病の時くらいは療養に専念してもらおうと、医療教会の一室を特別に貸し出してやっていた。

「気にするな。お前が普段住んでいるあの不衛生なあばら屋では治るものも治らんからな」

 ローレンスは半ば呆れた様子でルドウイークのベッド脇に腰掛ける。
 ルドウイークが頑なに自分の生活習慣を変えようとしない事には正直うんざりしていたが、たかだか風邪ごときで英雄を失うのは避けたいというのが本音ではあった。
 そう言いながらテーブルの上を見れば薬湯は飲んでいるようだが輸血液には手をつけていない。

(そういえば、こいつは普段の狩りでもあまり輸血液を使わない男だったな)

 ローレンスはふとそんな事を思いだし、同時に訝しむ。
 ひょっとしてこの男は輸血液の正体が何だか知っているのではないかと、そう思ったからだ。

「どうして輸血液を使わない? 体力を戻すのにこれが一番手っ取り早いのは知ってるだろう」

 その言葉にルドウイークはさも当然のように言った。

「いや、私はたかだか病気で暫く休めば治る程度だろうからね。輸血液は今戦っている狩人のために使って欲しいだけさ」

 その言葉に嘘偽りはないように見える。
 普段輸血液を使わないのもそもそも他の狩人より遙かに怪我が少ないというだけだろう。
 ローレンスはなるほどと合点した様子で輸血液を懐に入れた。使わないのなら使う奴に渡すべきだと思ったからだ。

「殊勝なことだな。病に伏していても他の狩人を心配するか」
「病に伏してるからだ。私は狩りしか取り柄がないような男だが、誰よりも上手く獣を殺せる事は自分でも分っている。私が出れば一人の狩人が死なずに済んだかもしれない。私が出ればもっと被害が少なく済んだかもしれない。そう思うと、こうして寝ている時間も惜しいくらいなんだよ」

 全て本音であるのは分っていた。
 ルドウイークが自分の価値は獣狩りにしかないと思っている事も、本来は劣等感が強く消極的であり悲観的である癖に自己犠牲精神と責任感ばかりが肥大しているという事も。
 それは臆病な男の姿でありおおよそ英雄に似つかわしくないとローレンスは思っていたが、人々は怠惰で臆病な男の背に勝手な理想を押しつけた結果、ルドウイークは清貧で高潔な英雄として讃えられているのだ。

 まるで彼こそがヤーナムの清らかさの象徴であるかのように。

 それがローレンスは無性に腹立たしくなる事があった。
 ただ不器用で人付き合いが不得手な男が清らかな英雄と呼ばれ、ヤーナムのために日々尽力している自分は教区長として畏怖されている。
 慕われているし人望もある、自分の言葉を皆が待っているし自分が指示すれば無数の狩人が動き命を捨てる事だって厭わないという立場にいるのは自分の方だと分っていた。
 だが多くの狩人はそんな自分ではなく、血に濡れ這いつくばり泥まみれになった英雄の背にばかり光を求めていたのだ。

 本来導き手として灯火を掲げるのローレンスではなく、得体の知れない光を宿したルドウイークばかりを。

「ルドウイーク」

 声の方を見るルドウイークの身体を抱き寄せると、不意に唇を重ねる。
 ルドウイークは一瞬驚いたように身体を震わせたが強い抵抗はしなかった。

 キスをするのはこれが初めてではない。
 以前戯れに抱いた事もある。
 それに対してルドウイークが何を思っているのか分らなかったが。

「……身体の調子はそう悪くないようだな。久しぶりにお前を試してみてもいいか」

 ローレンスの誘いを拒む事は一度たりとも無かった。
 黙って頷くルドウイークを確認すると、ローレンスはそのままベッドへと押し倒す。
 口づけを繰り返しその白い首筋や肌に指を滑らせればルドウイークの白い肌が微かに紅潮していく。
 男を抱くのは趣味ではないローレンスがルドウイークを抱く理由はただ一つ。
 この高潔な英雄と憧れられている男の汚れた姿を見たいと思ったからだ。

「男に抱かれて散々と喘いで見せる。高潔と呼ばれた英雄も、快楽には勝てんか。尻を弄ばれ淫らに悶えるその姿、とうてい英雄と思えんな」

 その言葉をルドウイークはどこか虚ろな目で聞く。

「あぁ、私は……英雄の名こそ背負っているが、高潔であるワケではない。ましてや清らかであるものか。ここにいるのはただの傀儡。空虚で穢れた人もどきだよ……」

 甘い吐息を漏らしながら語る言葉は、やけに耳に絡む。
 そうだ、ルドウイーク自身とっくに知っているのだ。自分は英雄の名を背負った穢れた獣であると。そして。

「……お前だってそうだろ、ローレンス」

 分っているのだ。
 ルドウイークは自分の同類である事を。

「はぁ……ぁ……っ……」

 深い吐息とともに、ルドウイークは激しく爪をたてる。
 それはローレンスの背を酷く傷つけたが、今はその痛みさえ感じないほどの傷がローレンスの心に刻まれていた。

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