インターネット字書きマンの落書き帳
蛇の撒き餌(浅芝・浅淳)
浅倉×芝浦は浅芝なのか、浅淳なのか……。(悩)
これは平和な世界線で出会ってしまった浅倉と芝浦が、お互いにお互い興味をもつ話です。
基本的に男しか相手にしてないしばじゅんちゃん概念が、男に声をかけられ困っていたら浅倉が助けてくれたようで全然助けてくれてねぇな!?
という話です。
浅倉に振り回されるけど嫌いじゃないしばじゅんちゃん概念……。
以前書いた話は浅倉にメチャクチャ暴力を受けるしばじゅんちゃんでしたが、今回は暴力を受けません。(が、他の人に暴力を振るう元気な浅倉くんを書いてます)
これは平和な世界線で出会ってしまった浅倉と芝浦が、お互いにお互い興味をもつ話です。
基本的に男しか相手にしてないしばじゅんちゃん概念が、男に声をかけられ困っていたら浅倉が助けてくれたようで全然助けてくれてねぇな!?
という話です。
浅倉に振り回されるけど嫌いじゃないしばじゅんちゃん概念……。
以前書いた話は浅倉にメチャクチャ暴力を受けるしばじゅんちゃんでしたが、今回は暴力を受けません。(が、他の人に暴力を振るう元気な浅倉くんを書いてます)
『近づく奴は蛇の餌』
芝浦淳はうんざりした顔で立ち止まっていた。
急に肩を掴まれたと思い振り返ったら見知らぬ男に声をかけられたからだ。
キミ、今日は一人?
そんな雑談を装った言葉から始まったが、続く言葉は「何処から来た、何処に行く」「一人だと危ないから車に乗っていくか」「一緒にちょっと食事か、お茶でもしない」「急ぎじゃないなら一緒に遊ぼう」といった有り体な口説き文句だ。
芝浦の顔立ちはどちらかといえばやや幼く見える方ではあったし父からは母親似だとよく言われたがそれでも女に間違われた事はない。
芝浦が男であるのを認識しているにも関わらず口説いているのだろうと思うと余計に気が滅入るのだった。
確かに芝浦は女を抱くのは趣味ではない。
好きになるのはいつも男だったし、今まで身体の関係になったのも男だけ。抱かれるより抱かれたい身体である故に男相手じゃないと満足できない体質になってたのは確かだった。
だが男であれば誰でも良いというワケではない。
芝浦は自分の顔が可愛い自覚があったし、この身体が魅力的である事も。相手の男が溶ける程愛する事が出来るという自身もあったが、だからこそ誰でも相手にする事はなかった。
少なくとも自分は選ばれる側ではなく、選ぶ方の立場だ。
はっきりとそう認識していた芝浦にとって、好みでもない相手に声をかけられるのは不快なだけだった。
「もう、さっきから嫌だって言ってんじゃん。大体さぁ、アンタ、顔も身体も全然好みじゃないから。格下のザコに口説き落とせると考えられてるだけでも結構不愉快なんですけど?」
しびれを切らしてそう告げれば、相手の顔が見る見るうちに赤くなっていくのが分る。
これは恥ずかしさからではなくプライドをへし折られて怒りに満ちている顔だ。
芝浦からするととてもナンパに励める程のレベルに到達していない男にしか見えなかったが、相手は思ったより自分に自信があったようだ。
この手の男はしつこいし面倒くさい。早めに立ち去ろうとする芝浦の腕を強く握ると、逃がすモノかといった表情で睨み付けた。
「何処行くんだお前? 散々コケにして帰ろうとか甘いだろうが……」
いかにも三流の男だと思っていたが、轢くべき時を知らない程度には立派な三流だったようだ。面倒になった、これからどうやって巻こうか。
逃げる算段を思案する芝浦の前にいた男が突然消えた。
いや、消えたとように見えた男は突然現れた見知らぬ男に殴りかかられ倒れて床に伏していたのだ。
「……何だ、喧嘩か? 面白そうな事してるじゃ無いか。俺も混ぜてもらっていいな」
男は唸るような声を上げながら、斃れた男に馬乗りとなってさらに殴りかかる。
最初は威勢が良かった男の声も徐々に乏しくなていき、最後は泣きながらの謝罪へと変わっていた。
突然現れた男を前に芝浦はしばし呆然とするが、流石にここまでやれとは思っていない。
「い、いやアンタちょっとまってって。助けてくれたのは嬉しいけど、やりすぎでしょ」
慌てて男を止めると、男はどこか物足りないといった様子で立ち上がった。
「何だ、もう終わりか。つまらんな」
返り血を拭うのも億劫といった様子で男は立ち上がる。
それまで散々と殴られていた男は悲鳴を上げながら逃げていった。
「えーっと……一応、ありがとうかな。俺は芝浦っていうんだけど、アンタは?」
「浅倉……浅倉威だ」
男はこちらを見る様子もないまま答えた。その表情はまだ殴り足りないといったものしかなく、芝浦を助けたつもりもないようだ。
「助けてくれた、って感じじゃなさそうだけど助かったよ。俺さ、何かナメられやすいのか、よくあぁいう奴らに声かけられんだよね。とにかくありがと、ちゃんとお礼言いたいから……」
そこまで聞いて、浅倉は芝浦へと顔を向ける。
「お前は、よくあぁいう事があるのか?」
「えっ? あぁ、まぁね。酷い時には1日に4,5回声かけられる事もあるけど? そんなに軽く見えるかなぁ、俺」
愚痴混じりに何気なくいったつもりの言葉に浅倉は口角を上げて笑う。
かと思うと。
「それはいいな、ついて来い」
半ば強引に芝浦の首根っこを掴むと、引きずるように連れて行かれるのだった。
その後の事はよく覚えていない。
ただいかにも人が多くその手の趣味をもつ男が声をかけそうな場所ばかりに連れていかれ声をかけてきた相手を浅倉が待っていたかのように飛びかかる。
まるで獲物をひっかける釣り餌のような、暴力だけが目的の美人局とでもいうべきだろうか。
芝浦が誰かに声をかけられ迷惑そうに振る舞うたび浅倉が飛んで来て相手を殴る。
また別の場所に連れて行かれて同じように立っていれば誰かが声をかけてくるので浅倉が殴る……といった事を幾度か繰り返し、何人の男が土を舐めたかわからなくなる頃、やっと浅倉は満足したように笑って見せた。
「本当に面白いくらい釣れるな、お前は」
「はは……いや、こんなに声かけられるとは自分でも思ってなかったけどね……」
最初は声をかけてくる相手が悪いと思っていた芝浦だが、あまりに浅倉が徹底的に相手を打ちのめすので途中から声をかけてくる相手が気の毒になってしまったのは確かだ。
「はぁ、それにしてもまさかこんなに声かけられるとは思ってなかったよ……何だろ? 俺ってそんなチョロそうって言うか、軽そうに見えるかな」
1日に4,5回声をかけられた事はあるのは本当だが、今日はそれ以上の男たちが声をかけてきている。
今までは意図して誰かを引っかけるつもりで立った事などなかったから知らなかったが、実はこんなにも声をかけらえるタイプなのに気付いた芝浦は少し気落ちしていた。
そんな芝浦を見て、浅倉は首を傾げる。
「何だお前、気付いてなかったのか」
そして芝浦の手を引くと、自分の方へと抱き寄せた。
一瞬浅倉の身体から強い雄の匂いがした。
「……この時計。その靴。この匂い。お前は一級品の金持ちの匂いがする。自然と身につけていて時計も靴も一切ブランドに劣ってない顔をしてるんだ。目聡い奴ならそれだけでお前がこんな繁華街をフラついていいような男じゃないって分る。あいつらも感じるんだろう。だから目の色変えて追いかけてくるんだ……中古車しかない店に一大だけ真っ赤なフェラーリが止まってるようなもんだからな」
浅倉に言われて改めて自分の服を見る。
父より普段から良いものを身につけろと言われているものの大学生という身分でブランドに身を固めるのも目立つだろうと時計や靴、香水にアクセサリーとあまり目立たないものでなおかつブランド名が入っていないものだけを普段使いしていたつもりだが、見る人間には分るのだろう。
「へぇ、アンタけっこう目聡いんだ。あんまり目立たない奴だけ普段使いしてるつもりだったけど……」
「ブランドの名前なんざ知らん。だがお前が一流の男なのは見て分る……その顔と、匂いでな」
浅倉はそう言いながら芝浦の首筋へ鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。
それまでただ暴力と蛮行を行使する姿しか見ていなかったから大きく恐ろしい男のようにしか見えていなかったが、近くで顔を見ると思った以上に良い男である事に気が付いた。
(普段好きになるタイプとはちょっと違うけど、結構カッコイイじゃん。背も高いし身体もいいし……)
ぼんやりとそんな事を考えながら浅倉の顔を見ていれば、気付いた時に唇が触れている。
舐るように味わう突然のキスに芝浦は思わず身体を離していた。
「ちょっ、あんた何してんのさ!? いきなりとか反則だし、俺そんな安い男じゃないから」
口ではそう言うが、心臓の鼓動は止まらない。
浅倉の身体からはとにかく強い男の匂いがして、それは今まで芝浦が見て来た男たちとは違ったが、だからこそ惹きつけられるものをもっていたからだ。
「いいだろう、少し味見しただけだ……やはりお前は美味そうだ」
浅倉は蛇のように笑うと、芝浦へと背を向ける。
「ちょ、アンタ待ってって。俺……」
「心配するな、また会う。お前にその顔と身体がある限りな」
そしてそんな予言めいた事を告げると、芝浦の前から立ち去る。
芝浦はただ闇に消えていく彼の背を見送る事しか出来ないでいた。
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