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インターネット字書きマンの落書き帳

   
昔の男が生きていた。(ヤマアル)

 生きている事が幸運であるのなら、『その狩人が生きていた』という事実は喜ぶべき事なのだろう。
 だがアルフレートがその報せを聞いた時、とても喜べるような心持ちになれなかった。

 アルフレートはその男の事を良く知っていた。
 いや、知りすぎていたと言うべきだろう。
 一時とはいえ親密な付き合いをし、お互いの身体を貪るように重ね合った相手なのだから。
以前付き合っていた悪い男と再会してしまうアルフレートくんの話です。
端的に説明したけどえげつないなッ!

昔、悪い男に引っかかってしまったアルフレートくんが、会いたくもなかった過去の男に会ってしまい、まぁ何もなかったんだけど今の彼氏であるヤマムラさんは昔の事をあれこれ聞かされたっぽくて気まずい! もうやだ!

そんな気持ちになってしまうアルフレートくんの話です。

感情ドロドロ!
金曜日!

感情ドロドロ!
金曜日!




『変えようもない故に過去は忍び寄る』

 だがそれはアルフレートにとって良い思い出ではなかった。
 相手はアルフレートを思いやる事もなく酒や煙草、薬物にも手を出し、賭け事に負けてはアルフレートの財布から金を抜いて行くような男だったかだ。
 生活がルーズなら当然、性欲のコントロールもろくに出来ないような男で自分以外に男女構わず粉をかけ夜通し帰ってこない日などしょっちゅうだった。
 あの頃はアルフレートも今より若く、幼く経験も少なかったから大事な恋人だと思っていたが、今となっては思い出したくない記憶ばかりだ。

 死んだと聞いたのは別れてから数年後であり、悲しいどころかほっとした気持ちさえあったのだから生きていたと聞いても会いに行くつもりなど微塵も無かった。
 むしろ会わないで済めばいいとさえ思っていたのだが。

「よぉ、久しぶりだなアルフレート。元気にしていたか?」

 軽い調子で声をかける顔立ちは以前と変わらぬ整った容姿のままだったが、その笑顔を見ても抱くのは嫌悪の気持ちばかりだった。
 しかもアルフレートが最近ヤマムラと会うためにこの宿に入り浸っている事を知っていたのだろうか。宿に入った時、すでにヤマムラと会って会話をしていたようだった。
 一体、こいつがヤマムラと何を話していたのか。考えるだけでおぞましい気持ちになるがヤマムラが見ている手前、露骨に避けるのも気が引ける。

 アルフレートは当たり障りのない挨拶をすれば、男はあっけない程に引き下がった。

「お前が元気そうで何よりだよ。また暇があったら遊ぼうぜ、俺はいつでも前の宿にいるからさ」

 だが、別れ際に告げた言葉とあの嫌らしい笑顔はどことなくアルフレートを不安にさせる。
 下卑た男の嫌らしい笑みから、ヤマムラに対して余計な事を吹き込んだ姿は容易に想像出来た。

「ヤマムラさん、あの人……何か言っていませんでしたか?」

 部屋にもどってすぐ、普段と変わらぬ様子で椅子に腰掛けるヤマムラを見てつい不安からそう聞いている。

『アルフレートの今の彼氏かい? どうだい、俺の仕込んだ身体はいいだろ?』
『俺の使い古しだけど楽しんでくれよ』
『中古の男と付き合うなんて、アンタも物好きだね。慈善事業って奴?』

 ……そういった事は言うだろう。
 それも別にアルフレートに対して未練があるからというワケではない。ただ単純に、相手の幸せを踏みにじりたいだけなのだ。
 あいつは、そういう男だった。

「んー……ま、色々とね」

 ヤマムラは言葉を濁すが、あまり嘘が上手い性分ではない彼の表情からアルフレートの予想通り、有ること無い事吹き込んでいったのだろう。
 何を言ったのか、気になって少し聞いてみたがヤマムラはそれを語ろうとしなかった。
 優しい人だから、アルフレートが傷つくと思ってあえて自分の胸にしまう事を選んだのだろう。
 だが、何も言われないとかえって不安になった。

 あいつから何を聞かされたのか。
 きっとろくな事では無い悪意の籠もった悪口だろうが、それを聞いてどう思ったのか。
 自分の事を見限って、嫌いになったのではないか……。

 そんなアルフレートの様子に気付いたのだろう。
 ヤマムラはふっと微笑むと、アルフレートへ手を伸ばす。そして彼と並んでベッドへと腰掛けた。

「君がそんなに気に病む必用はないさ。本当に、たいした話はしてないんだ」
「本当に、ですか……あの、私はあの人をよく……知っている、ので……あまり、その。良くない事を言う人ですから……」

 歯にモノが詰まったような言い方しかできず顔をしかめるアルフレートの髪を撫でると、ヤマムラはそのまま彼の肩を抱き寄せた。

「君が不安になる必用は何もないさ。俺は、君が過去に何をしていたか、どういう事をしていたか……そういった事で、今の君まで否定するような事はしないよ。ずっとこの街で生きてきたんだ、言えないような過去もあるだろう? そのくらいは分っているつもりだし、俺だって人に誇れたような生き方はしてないからね」

 やはり、あの男は昔のアルフレートについてあれこれ語っていったのだろう。
 だがそれを知った上でもヤマムラは変わる事のない笑顔と温もりを惜しげ無く与えてくれた。

「それに……俺は、今の君が俺だけを見てくれている事が何より嬉しいんだ。今の君が俺に触れてくれるだけで。俺と語らってくれるだけで幸せなんだよ。この幸福を前に君の昔話なんて下らない戯れ言だよ」

 ヤマムラはいつだってそうだ。アルフレートの一番欲しい言葉をくれる。

 この世界で信頼にあたる言葉はローゲリウス師の言葉だけだ。
 だがもし信頼できる人間がいるのだとしたら、それはヤマムラだけだろう。

「ヤマムラさん……ありがとうございます……」

 感極まって泣きそうになるアルフレートの涙を止めるよう、ヤマムラは優しく口づけをする。
 溶ける程に温かな唇を前に、心に抱いていた不安も過去を覆っていた闇も全て消えて行き、自然と身体を抱きしめていた。
 全てが無かった事にはならないとしても、今はただ愛しい人を見つめていよう。
 そんな事を思いながら。

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インターネット駄文書き
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