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インターネット字書きマンの落書き帳

   
あんたの為に尽くすのは苦じゃ無い(みゆしば)
平和な世界線で付き合ってる手塚と芝浦の話です。(挨拶兼幻覚説明)
最近は付き合う予定だけどまだ付き合ってない二人を書いてましたが、今回はちゃんと付き合っており平和に毎日を過している二人ですよ、やったね俺くん! 俺が見たい奴だよ!

手塚が家に戻ると、しばじゅんちゃんが料理してたり掃除しててくれたり。
最初はダラダラするだけなのに、ちょっとした家事とかしてくれるのが嬉しい反面、無理してるんじゃないだろうかと心配してしまうみゆみゆの話ですよ。

必用だからじゃない、したいからやる。
愛ですね。
愛が無いと出来ないので、愛があるうちに……やってもらおうな!




『予行練習』

 芝浦淳がおずおずと差し出したのは、黒いビロードの布で作られた巾着袋だった。
 縫い目はやや粗く糸の処理も拙い所があるが、簡単なものを入れるには充分な作りだったろう。
 最近の既製品はミシンがけでかなり縫い目が丈夫に作られているから、これは明らかに手作りだろう。

「これさ、手塚のカード入れる用に作ってみたんだけど、どうかな? ほら、タロットカードってケースとか袋とかに入れて管理する方がいいんだろ。でも手塚のタロットカード、いつもわりと雑に出されてなーと思ったんだよね」

 やはり、手作りのようだ。
 確かに芝浦の言う通り、占いの道具は本来専用の袋などで保管しておくのが普通だ。気分の問題という部分があるのは否めないが、あまり粗雑に使ったり外にだして置いたりするとカード側から心が離れて行き的中しづらくなる、という俗説があるからだ。

 手塚はタロットを用いた占いの他にも西洋占星術やルーン占いなど占いたい内容によっていくつかの手段をもってはいるが、一番良く使い同時に良く当たる占いは昔からやっている西洋銀貨を用いたコイン占いであったため、コインには愛着があるものの他はどうもおざなりになりがちだったのだ。

 それに気付いたからこそ、こうしてわざわざ手作りの袋を準備してくれたのだろう。
 実際、この手の小物は本格的な店で買うと中々の値段がするものだ。

「あぁ……そうか、悪いな……」

 とはいえ、芝浦からするとたいした金額でもないだろう。
 それでもあえて手作りしたというのは、そういった店の存在を知らないか。知っていても気に入った品がなかったか。
 あるいは……。

「そういえば、手塚夕食まだだよな。今日はシチュー作っておいたから、今温めるねー」

 芝浦は鼻歌を口ずさみながらキッチンへ立つ。
 初めてキッチンに立った時は卵すら割れない有様だったが、今は市販のルーなどを使えば多少料理が出来るようになっている。
 生焼けや生煮えといった事もないし、むしろ野菜の下ごしらえなどは几帳面なくらいだ。

 手塚の部屋も、以前と比べれば随分と綺麗になっていた。
 元々男一人で生活しており、モノなど自分がある場所さえ把握していればいいと思っていたし、芝浦も最初は似たような考えであちこち好きなところにモノを置いていたが、最近は乱雑に投げ置かれていた服は全てクローゼットに見やすく収納されているし、本棚も食器棚も以前と比べればずっと使いやすいように並べられている。
 部屋には今朝、手塚が出しておいた寝間着代わりのトレーナーが洗濯され干してあった。

 身の回りが綺麗になる事も、帰ったら美味しい食事にありつける事も嬉しくはあるのだが。

(……芝浦、無理してるんじゃないだろうか)

 同時に、それが心配になるのだった。

 芝浦はもともと、家政婦が入って掃除や料理といった家の事をしてくれるのが当然のような環境で育っている。
 料理や洗濯といった家事全般をやってこなかったのだから、手慣れているワケでもなければ日常的にやっているわけでもないだろう。
 だが今は、手塚が帰るまでに芝浦はおおむねの家事をやっておいてくれている。
 最初にこの家に出入りするようになった時は手塚が食事を運ぶまでゲームをするか漫画を読むかしてダラダラと過していたのを考えると、劇的な変化と言えるだろう。

 それは喜ばしい事だろう。
 だがもし芝浦が無理をしているのだとしたら……。

 芝浦は手塚の恋人ではあるし、お互いの身体を抱き慈しむ方法も知っている。
 だが「恋人」になる事はできても「彼女」というものにはなる事が出来ない。その点に負い目のようなものを感じているのは、手塚も勘付いていた。

 待っている間に家事をやる……というのは、いかにも「彼女」がしてくれるようなイメージだ。そういったイメージに準じて芝浦が無理をしてそういった振る舞いをしているのだとしたらそれは手塚の本意ではなかったからだ。

 芝浦は芝浦として傍にいてくれるだけで充分幸せなのだから。

「ありがとう、芝浦。だが、その……無理して俺に尽くさなくてもいいんだぞ」

 手塚の言葉に芝浦は小首を傾げて見せる。
 意味を計りかねているといった様子だった。

「お前は料理や洗濯なんて普段してないだろう? 裁縫までして手作りしてくれたのは嬉しいが、お前が無理をして身の回りの世話をしてくれているのだとしたら、悪いと思ってな」

 芝浦の事を大切に思っているから、無理をしては欲しくないと思う。
 そのつもりで言ったのだが、芝浦は普段と変わらぬ様子で笑って見せた。

「あれ、手塚ってひょっとして俺が無理して掃除とか洗濯やってると思ってた?」
「……違うのか」
「もともと、俺って一人暮らしの経験ないからさ。こういう事、やった事なかったのは事実だよ。食事も洗濯も掃除も家政婦さんに任せて、俺は勉強に集中してたからね……でも、将来的に一人暮らしとかすると思うと、何も出来ないままってワケにもいかないだろ? だから、予行練習のつもりでやってたんだけど……」

 と、そこで芝浦は温めたシチューをかき回す。沸々と鍋が温まっていく音が聞こえてきた。

「性に合っているって言うのかな? 結構楽しくなってきちゃってさ……俺、もともと自分の部屋はキチンと片付いてる方が好きだし、洗濯も、手塚が着た奴だーと思うとテンション上がるし。料理もちゃんとやれば上手くなるだろ? それ、手塚はちゃーんと誉めてくれるしさ。だから今、すっごい楽しいんだよね」

 まだどこかぎこちない手付きで、シチューを皿に盛り付ける。
 料理は手慣れてきたが、盛り付けはまだあまり得意ではないようで震える手付きで慎重にシチューをよそう姿は初々しく愛らしい。

「あ、でも手作りの袋とか、人によっては重いなーって思うかな? ま、俺が重い男だってのは手塚も承知してるだろうけどさー……手作りのモノもつの抵抗あるんなら一応言っておいてね。善処はするからさ」

 善処はする、という事は手塚が「いらない」と言っても気が向いたら作るという事だろう。
 だがそれら全て、芝浦が望んでやっているのなら……。

「いや、それならいいんだ……ありがとう。大事に使わせてもらう……」

 それなら、何も拒む理由はない。手塚は粗雑に置かれたタロットカードをまとめると、早速その袋にしまった。
 その横で芝浦が、温めたばかりのクリームシチューを並べる。

「でも俺、無理するの好きじゃないから飽きたら辞めるからそのへんは安心してよね。手塚に尽くすの飽きちゃったら、またダラダラゲームして漫画みて映画見る生活に戻る予定だから」
「そうか……その時は俺がやるから心配するな。最も……お前を簡単に飽きさせるつもりはないがな」

 準備された夕食を前に、手塚は妖しく微笑む。

「その顔見せられると弱いよねー……ま、俺ももう暫く飽きそうにないから、もうちょっと付き合ってよ。俺の一人暮らし、予行練習にね」

 悪戯っぽく笑いながらシチューを頬張る芝浦を見ながら、手塚はぼんやりと考えていた。
 一人暮らしの予行練習というが、本当に一人暮らしをするのだろうか。
 それなら二人でこのまま一緒に暮した方が良さそうな気がする。家賃も折半になるし、もっと広い部屋に引っ越す事も出来るだろう。
 だが二人で暮すとなると、その前に言うべき言葉があるはずだ。

「俺も予行練習が必用かもしれないな……」
「ん、何の? 何かやる事あるっけ」
「いや、別に。独り言だ」

 手塚は目を伏せ、密かに願う。
 いつか芝浦に「一緒に暮して欲しい」と告げられる日が来ることを。

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インターネット駄文書き
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紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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