インターネット字書きマンの落書き帳
しあわせ的なかぞくけいかく。(手芝・みゆしば)
平和な日常で普通に付き合っている手塚と芝浦、という概念です。
……強めの幻覚?
二次創作は……幻覚を顕在化させる事を言うんだぜッ。
今日は何となく子供を見ていたら家族計画をたててしまう二人の話です。
愛が重いので計画は頓挫します。
……強めの幻覚?
二次創作は……幻覚を顕在化させる事を言うんだぜッ。
今日は何となく子供を見ていたら家族計画をたててしまう二人の話です。
愛が重いので計画は頓挫します。
「未来を向いて生きるということ」
冬の公園は肌を刺すような寒さに包まれていたが、それでもまばらに人の姿はある。
買い物帰りの主婦。まだ仕事途中であろうサラリーマン。手を組んで歩くカップル。そして、小さな子供をつれて歩く夫婦……。
公園に店を出す手塚は、普段からこんな風景を見ているのだろうか。
芝浦は漠然とそう考えながら、隣に座る手塚を見た。
手塚は暖かなジャスミンティーのペットボトルを開けると、遠くへ視線を向けている。視線の先を辿れば、そこには今目の前を去って行った子連れ夫婦の姿があった。
まだやっと歩き始めたばかりの女の子だろう。
冬の寒さに耐えるため、コートにマフラー、耳当てと厚ぼったい手袋でモコモコの姿になった彼女は覚束ない足取りで懸命に両親の元へと歩いている。
両親もまた立ち止まり、彼女がこちらへ来るのを笑顔で待っていた。
「へぇ、あんな小さい子でも結構歩けるんだね。ふーん……モコモコで羊みたいになってて可愛いじゃん」
芝浦はペットボトルに入ったミルクティーを飲みながら、暢気な様子で言う。
「そうだな」
手塚もまたジャスミンティーを口にし、返事をした。
その視線はまだ少女の方へ向いている。
「……手塚って子供とか好きなの?」
「ん……そういう風に見えるか?」
芝浦は手塚の顔を暫く眺めると、つい笑っていた。
「ゴメン、正直全然見えない」
「だろうな。別に好きでも嫌いでもないからな。そういうお前はどうなんだ? 子供好きなのか」
「そういう風に見える?」
今度は手塚の方が芝浦の様子を暫く眺めると、やはり笑って。
「……すまん、全くそういう風に見えないな」
そう、言うのだった。
「でしょー? ……俺むしろ子供に騒がれたりするの苦手だし、子供の世話とか億劫でいちいち見てらんないって感じ」
「お前自身がまだ子供みたいなもんだしな……」
「ん? 今なんか言った?」
「いや、何も」
やや不満そうに手塚の顔をのぞき込む芝浦を横目に、手塚は笑ったままジャスミンティーを一口飲む。まだ暖かなそれは、冬空の寒さを幾分か和らげた。
「いや、俺さぁ……やっぱ産めないじゃん?」
「……俺だって産めないが」
「ま、そうだけど……だから手塚が子供好きだったら……子供欲しいなぁって思っているんだったらさ。どうしたらいいのかなーとか、一応は考えた事あるワケ」
いらない心配をする奴だとは思うが、元々「芝浦家の嫡男」として育てられた芝浦にとって後を継ぐ為の子供という存在はかなり大きいのだろう。
「だが、俺は別に子供がいなくとも構わないな……元々俺のような男は、そういった家庭を築くのに向いてないだろうし」
「そうか? 手塚はいいパパになりそうなタイプだと思うけど?」
「別に良いパパになろうと思っていないからな」
それは手塚の本心だった。
元々あまり『良い家庭』で育っていなかった手塚は家族というものに理想も執着もないのだが、父の恐怖政治のような家庭で育ちながらも充分な愛情と財力を惜しげも無く与えられた芝浦にとって『家族を持たない』というイメージを掴みにくいのだろう。
あるいは、母がいない家庭で育った芝浦は両親ともにそろった家庭というのに一定の憧れがあるのかもしれない。
「どうせなら俺は何か動物を飼いたいと思うがな……犬なら大型犬がいいし、ネコだったら2匹は飼いたいな。小鳥は愛情深いというし、ハムスターやデグーも……熱帯魚やは虫類というのも面白いかもしれないな。どうだ?」
すると芝浦は露骨に不機嫌そうな顔をすると、唇を尖らせたまま指を突き出した。
「ちょっと……何でペットを飼いたい話になってるワケ? 言っておきますけど、俺はアンタの愛情が少しでも俺に向かないの、メチャクチャ嫌だからね?」
「何だお前は、ペットにも嫉妬するのか?」
「当たり前だろ? ……手塚だって俺がネコにばっかり構ってたら嫌じゃないの? 俺めちゃくちゃネコ好きだから、メチャクチャにネコかまい倒すけど」
そう言われ、手塚は少し思案する。
ネコじゃなくとも、以前芝浦は抱えるほど大きなぬいぐるみに「メタルゲラス」と名前をつけ、手塚の部屋において可愛がっていた事がある。メタルゲラスばかり抱いてこっちに甘えてこない時期があったのに焦れていたのは事実だ。
「……いや、それは……困るな」
「だろっ? ……俺はアンタの愛情が他の誰かにも、何かにも向いてほしくない。それが例え家族でも、ペットでもね。もし俺と一緒に暮すんなら、俺だけ見てくれる? ……ほーら、アンタいま後悔したでしょ? 面倒くさい男の事好きになったなーって。切り捨てるなら今のうちだよ? ……ま、もう遅いと思うけど」
芝浦は悪戯っぽく笑うと、手塚の頬に触れる。
彼は自身を「面倒くさい男だ」と称したが、同じような事を思っていた手塚もきっと同じ穴のむじなだろう。
だが、だからこそ自分たちは一緒にいられるのだろうと思う。
「そうだな、二人で暮すならそれでいい。むしろ、お前が将来的に俺と暮す事を考えていてくれたのなら嬉しい位だな」
「えっ?」
「……そんな事を言うなら、考えているんだろう? 俺の部屋は手狭だから、本格的にお前と暮すとなると引っ越しを検討しないといけない……その気になったら早めに言ってくれ」
「あっ……あ、あ。う、うん……わ、わかった。わかってるって!」
芝浦は急に狼狽すると、顔を赤くし俯いてしまう。
急に同棲の事を振られて戸惑っているのか、あるいはその生活に思いを馳せているのだろう。どちらにしても、芝浦の思考が自分だけに囚われているというこの状態は心地よい。
手塚は芝浦の頭を撫でると、残りのジャスミンティーを飲み干した。
共に未来の事を考えられる今の幸福を噛みしめながら。
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