インターネット字書きマンの落書き帳
どんなごちそうより、おいしいもの。(みゆしば/BL)
平和な世界線で普通に付き合ってる手塚×芝浦の話を……します!
とはいえ、過去作のサルベージが最近は多めなので……。
ひょっとしたら、過去に書いた作品をまたupしているかもしれませんが、可愛い俺のする事ですから許してください♡
今回の話は、父親の命令で豪華な飯を食ったけど、何となく味気ない。
そんな芝浦が、手塚と安い飯を食ってイチャイチャする話です。
手塚×芝浦のこと好きかい?
今日から好きになろうぜ!
とはいえ、過去作のサルベージが最近は多めなので……。
ひょっとしたら、過去に書いた作品をまたupしているかもしれませんが、可愛い俺のする事ですから許してください♡
今回の話は、父親の命令で豪華な飯を食ったけど、何となく味気ない。
そんな芝浦が、手塚と安い飯を食ってイチャイチャする話です。
手塚×芝浦のこと好きかい?
今日から好きになろうぜ!
『ごちそうの定義』
父からの頼みは、芝浦家にとって実質決まり事のようなものだった。
『今日は晩餐会があるから参加してくれ。芝浦家の嫡男として、お前の顔も覚えてもらわないといけないからな』
芝浦の父はそう言いながら、晩餐会の予定表を渡す。
息子である芝浦淳はそれを断る理由も権利もなく、父の望み通りその場へと足を運んだ。
会場はホテルの最上階にある展望のいいレストランだった。
日が落ちてすっかり暗くなった窓からは都内の夜景が一望できるような場所だ。
芝浦が箱入りのお坊ちゃま育ちでも、このレストランが大学生の身分で簡単に出入りできるような場所じゃないという事くらいは一目で理解できた。
晩餐会とは言ったが、どこかの会社の記念会場らしい。
食事は立食形式のビュッフェスタイルだから、この手の食事会としては比較的に砕けた雰囲気だと言えただろう。
だが、料理は一流だ。このホテルのシェフは有名ガイドの常連店で修業をしており、ビュッフェスタイルであっても並べられたメニューはコース料理とも遜色ないできばえだった。
ニシンのマリネにスモークサーモンのサラダ、ココットは季節の野菜がふんだんに使われている。テリーヌは鴨だろうか。スープは定番のコンソメの他、オマール海老を丹念に裏ごししたもの。舌平目のムニエル、鯛のパイ包み。肉料理も多彩だ。ローストビーフは勿論、子羊の香草焼きまである。
豪華すぎるくらい豪華で、全てに一流の仕事がされている。当然のようにケーキワゴンも準備されてており、見た目だけではなく味も最高の上品なケーキがいくつも並んでいた。
さらにバーラウンジまで併設されており、シャンパンでもカクテルでも好きな酒を注文する事ができるようになっているのだから、至れり尽くせりの会場だろう。
(このホテルでこの規模のパーティが出来るって事は、オヤジの取引先でも結構でかい所みたいだな……)
適当に食事をつまみながら周囲の様子を伺えば、見知らぬ男が近づいてきた。
「芝浦くんかい? しばらく見ないうちに大きくなったね。もうお酒が飲める歳になったのかな」
親しげに話しかけてくる知らない顔は、父の得意先にいる誰かだろう。男はひとしきりワインの良さを語ると、あまり酒を飲まない芝浦でも飲みやすいというシャンパンを注文しそれを手渡して去って行った。
(……あぁ、これ美味いな。あんまり酒は好きじゃないんだけど)
大学に入ってから酒の席に呼ばれる事は増えたが、安い学生の飲み会など安い居酒屋の飲み放題が殆どだ。そんな場所で出るのはビールに濃い目のサワーばかり。そんな安酒に暫く舌が慣れていたから、本格的なバーで出すシャンパンはいっそう美味く感じられた。
(少し……甘いな。喉元を過ぎる時に芳醇な香りが抜けていく……シャンパンは殆ど白だし、普段あんまり酒を飲まない俺にはなるほど、こういう酒が飲みやすいんだな……)
一人そう思いながらシャンパングラスを揺らす。
グラス越しに夜景の瞬きが見えた。
食事も適度に済ませた。来る相手と挨拶も交した。自分の役割はおおむね終えているだろう。
年頃の女性も何人か声をかけてきたが、ほとんど上の空で受け答えしたのかお気に召さなかったのかすぐに飽きた様子でどこか別の場所へと行ってしまった。
父親への義理は果たした、そろそろ抜けてもいいだろう。芝浦は人が切れるのを確認し、そっと父親の傍へ近づく。
「……父さん、もう遅いから俺は先に戻るよ。一通り、挨拶も済んだしね」
流石に人前でオヤジと呼ぶ訳にはいかない。
実情はただの道楽息子でも、他人の前では品行方正な芝浦家の一人息子でいなければいけないのだから。 そう思い改まった口調で問えば、芝浦の父は横目で彼を一瞥する。
「そうか、ホテルに泊っていくか?」
父はこの手の晩餐会があると、大抵自分用にスィートルームを取ってある。
普段だったら家に帰るのも面倒だからその提案にのり芝浦もとってあるホテルに泊っていくのだが。
「いや、今日はいいや。大学の友達にノート返すの忘れちゃってたから、そっち寄ってから行くよ」
時刻は21時を過ぎていた。
友人の家に行くにはやや遅い時間帯だったろうが、大学に入ってから放任主義が加速したのもあって父はさして気にする様子もなかった。
ただ 「わかった、気をつけて行ってこいよ」 とだけ言うとまた他の得意先との会話へと戻っていく。やはりこの会社は上得意なのか、普段より気を遣っているようにも見えた。
その姿を横目に、芝浦は一人会場を後にする。
高校までは厳しい門限を強いられていたが、大学になったとたん放任主義へと転じたのは芝浦を信頼しているというよりは、父の仕事が以前にも増して忙しくなったからという方が大きいだろう。
以前のようにどこにいたのか、何をしていたのかと事細やかに聞かれるよりは気は楽だが……。
「道具、って感覚。やっぱ抜けないよね」
誰に聞かせるでもなく、芝浦はそう独りごちると呼んでおいたタクシーにすぐ乗り込んだ。
家に帰るつもりはない。
当たり前のようにドレスコードのある店だったが、ジャケットだけ羽織っていれば正装でなくても良いというのは助かった。
芝浦はネクタイを緩めると、馴染みの住所を運転手に告げる。
そして目的地の少し前にあるコンビニで降りると、ビールとコーラにポテトチップス。それと、冷凍食品のたこ焼を買って夜の道を歩き出した。
コンビニから歩いて5分。酔いを覚ますためにいつもよりゆっくり歩いたから、もう少し時間はかかっただろうか。
「手塚ぁ、いる? まだ起きてる?」
慣れた道を歩き部屋の前に立ってノックしながら声をかければ、すぐにドアが開き手塚が顔を覗かせる。
「どうした芝浦? こんな時間に来るのは珍しいな……」
「いやー、オヤジの飲み会に付き合わされてたんだけど、飽きちゃってさ。これ、お土産。冷凍のたこ焼き買ってきたからさ、今から温めて一緒に食べようぜ」
ビニール袋を差し出せば、手塚はそれを受け取りすぐにたこ焼をレンジに放り込む。
芝浦が部屋に上がり上着を脱いだ時に、手塚はビールを開け温めたたこ焼にソースとマヨネーズをかけていた。
「芝浦、お前はコーラでいいのか?」
「うん。オヤジの飲み会でちょっと飲んできたから、酒はもういいかな」
手塚の隣に座り、缶コーラを開けて一口飲むとすぐにたこ焼きを口に頬張る。
温めたばかりのたこ焼はアツアツで味わう余裕もなく、すぐにコーラで流し込むよう食べてしまったが。
「あつっ……あつ、あつ……」
「今温めたばかりだぞ? 気をつけないと口を火傷するだろ……全く、何をそんなに慌てているんだか」
「んー、いや。何だろうなー……こうやって食べるたこ焼きのが、なんか美味いなぁって思うんだよね」
冷凍食品のたこ焼は塩辛く、ソースとマヨネーズの味が混ざったそれはジャンクフードと呼ぶものに近いのだろう。
だがそれでも手塚の隣で落ち着いて食べる事が出来るものは、見知らぬ顔の前で食べる高価な酒や食事よりずっとずっと美味しく、ずっとずっと楽しく思える。
「そうだな……俺も、お前がいる時の方が缶ビールでも美味く思える」
「えっ、マジで? やっぱ俺って愛されちゃってる?」
「さぁて、どうだろうな」
手塚はビールをあおると、僅かに笑って見せる。そして隣に寄り添うように座る芝浦の肩を抱くと、挨拶代わりのように唇を重ねた。
ビールの苦みとソースの味が舌に絡みつき、小一時間前まで口にしていたディナーの味はたちどころに消えていく。
ビュッフェで出たマリネやステーキは間違い無く一流のごちそうだ。
だが今食べている冷凍食品のたこ焼きの方が、今の芝浦にとってよっぽど幸せにしてくれる。
(高くて美味いだけがごちそうじゃないんだよな……心から喜んで食べられる事だって、ごちそうに成り得るんだから……)
唇を重ねながら、芝浦は漠然とそんな事を思う。
テーブルにおかれたたこ焼きは、ちょうど食べやすい熱さになった頃だろう。
父からの頼みは、芝浦家にとって実質決まり事のようなものだった。
『今日は晩餐会があるから参加してくれ。芝浦家の嫡男として、お前の顔も覚えてもらわないといけないからな』
芝浦の父はそう言いながら、晩餐会の予定表を渡す。
息子である芝浦淳はそれを断る理由も権利もなく、父の望み通りその場へと足を運んだ。
会場はホテルの最上階にある展望のいいレストランだった。
日が落ちてすっかり暗くなった窓からは都内の夜景が一望できるような場所だ。
芝浦が箱入りのお坊ちゃま育ちでも、このレストランが大学生の身分で簡単に出入りできるような場所じゃないという事くらいは一目で理解できた。
晩餐会とは言ったが、どこかの会社の記念会場らしい。
食事は立食形式のビュッフェスタイルだから、この手の食事会としては比較的に砕けた雰囲気だと言えただろう。
だが、料理は一流だ。このホテルのシェフは有名ガイドの常連店で修業をしており、ビュッフェスタイルであっても並べられたメニューはコース料理とも遜色ないできばえだった。
ニシンのマリネにスモークサーモンのサラダ、ココットは季節の野菜がふんだんに使われている。テリーヌは鴨だろうか。スープは定番のコンソメの他、オマール海老を丹念に裏ごししたもの。舌平目のムニエル、鯛のパイ包み。肉料理も多彩だ。ローストビーフは勿論、子羊の香草焼きまである。
豪華すぎるくらい豪華で、全てに一流の仕事がされている。当然のようにケーキワゴンも準備されてており、見た目だけではなく味も最高の上品なケーキがいくつも並んでいた。
さらにバーラウンジまで併設されており、シャンパンでもカクテルでも好きな酒を注文する事ができるようになっているのだから、至れり尽くせりの会場だろう。
(このホテルでこの規模のパーティが出来るって事は、オヤジの取引先でも結構でかい所みたいだな……)
適当に食事をつまみながら周囲の様子を伺えば、見知らぬ男が近づいてきた。
「芝浦くんかい? しばらく見ないうちに大きくなったね。もうお酒が飲める歳になったのかな」
親しげに話しかけてくる知らない顔は、父の得意先にいる誰かだろう。男はひとしきりワインの良さを語ると、あまり酒を飲まない芝浦でも飲みやすいというシャンパンを注文しそれを手渡して去って行った。
(……あぁ、これ美味いな。あんまり酒は好きじゃないんだけど)
大学に入ってから酒の席に呼ばれる事は増えたが、安い学生の飲み会など安い居酒屋の飲み放題が殆どだ。そんな場所で出るのはビールに濃い目のサワーばかり。そんな安酒に暫く舌が慣れていたから、本格的なバーで出すシャンパンはいっそう美味く感じられた。
(少し……甘いな。喉元を過ぎる時に芳醇な香りが抜けていく……シャンパンは殆ど白だし、普段あんまり酒を飲まない俺にはなるほど、こういう酒が飲みやすいんだな……)
一人そう思いながらシャンパングラスを揺らす。
グラス越しに夜景の瞬きが見えた。
食事も適度に済ませた。来る相手と挨拶も交した。自分の役割はおおむね終えているだろう。
年頃の女性も何人か声をかけてきたが、ほとんど上の空で受け答えしたのかお気に召さなかったのかすぐに飽きた様子でどこか別の場所へと行ってしまった。
父親への義理は果たした、そろそろ抜けてもいいだろう。芝浦は人が切れるのを確認し、そっと父親の傍へ近づく。
「……父さん、もう遅いから俺は先に戻るよ。一通り、挨拶も済んだしね」
流石に人前でオヤジと呼ぶ訳にはいかない。
実情はただの道楽息子でも、他人の前では品行方正な芝浦家の一人息子でいなければいけないのだから。 そう思い改まった口調で問えば、芝浦の父は横目で彼を一瞥する。
「そうか、ホテルに泊っていくか?」
父はこの手の晩餐会があると、大抵自分用にスィートルームを取ってある。
普段だったら家に帰るのも面倒だからその提案にのり芝浦もとってあるホテルに泊っていくのだが。
「いや、今日はいいや。大学の友達にノート返すの忘れちゃってたから、そっち寄ってから行くよ」
時刻は21時を過ぎていた。
友人の家に行くにはやや遅い時間帯だったろうが、大学に入ってから放任主義が加速したのもあって父はさして気にする様子もなかった。
ただ 「わかった、気をつけて行ってこいよ」 とだけ言うとまた他の得意先との会話へと戻っていく。やはりこの会社は上得意なのか、普段より気を遣っているようにも見えた。
その姿を横目に、芝浦は一人会場を後にする。
高校までは厳しい門限を強いられていたが、大学になったとたん放任主義へと転じたのは芝浦を信頼しているというよりは、父の仕事が以前にも増して忙しくなったからという方が大きいだろう。
以前のようにどこにいたのか、何をしていたのかと事細やかに聞かれるよりは気は楽だが……。
「道具、って感覚。やっぱ抜けないよね」
誰に聞かせるでもなく、芝浦はそう独りごちると呼んでおいたタクシーにすぐ乗り込んだ。
家に帰るつもりはない。
当たり前のようにドレスコードのある店だったが、ジャケットだけ羽織っていれば正装でなくても良いというのは助かった。
芝浦はネクタイを緩めると、馴染みの住所を運転手に告げる。
そして目的地の少し前にあるコンビニで降りると、ビールとコーラにポテトチップス。それと、冷凍食品のたこ焼を買って夜の道を歩き出した。
コンビニから歩いて5分。酔いを覚ますためにいつもよりゆっくり歩いたから、もう少し時間はかかっただろうか。
「手塚ぁ、いる? まだ起きてる?」
慣れた道を歩き部屋の前に立ってノックしながら声をかければ、すぐにドアが開き手塚が顔を覗かせる。
「どうした芝浦? こんな時間に来るのは珍しいな……」
「いやー、オヤジの飲み会に付き合わされてたんだけど、飽きちゃってさ。これ、お土産。冷凍のたこ焼き買ってきたからさ、今から温めて一緒に食べようぜ」
ビニール袋を差し出せば、手塚はそれを受け取りすぐにたこ焼をレンジに放り込む。
芝浦が部屋に上がり上着を脱いだ時に、手塚はビールを開け温めたたこ焼にソースとマヨネーズをかけていた。
「芝浦、お前はコーラでいいのか?」
「うん。オヤジの飲み会でちょっと飲んできたから、酒はもういいかな」
手塚の隣に座り、缶コーラを開けて一口飲むとすぐにたこ焼きを口に頬張る。
温めたばかりのたこ焼はアツアツで味わう余裕もなく、すぐにコーラで流し込むよう食べてしまったが。
「あつっ……あつ、あつ……」
「今温めたばかりだぞ? 気をつけないと口を火傷するだろ……全く、何をそんなに慌てているんだか」
「んー、いや。何だろうなー……こうやって食べるたこ焼きのが、なんか美味いなぁって思うんだよね」
冷凍食品のたこ焼は塩辛く、ソースとマヨネーズの味が混ざったそれはジャンクフードと呼ぶものに近いのだろう。
だがそれでも手塚の隣で落ち着いて食べる事が出来るものは、見知らぬ顔の前で食べる高価な酒や食事よりずっとずっと美味しく、ずっとずっと楽しく思える。
「そうだな……俺も、お前がいる時の方が缶ビールでも美味く思える」
「えっ、マジで? やっぱ俺って愛されちゃってる?」
「さぁて、どうだろうな」
手塚はビールをあおると、僅かに笑って見せる。そして隣に寄り添うように座る芝浦の肩を抱くと、挨拶代わりのように唇を重ねた。
ビールの苦みとソースの味が舌に絡みつき、小一時間前まで口にしていたディナーの味はたちどころに消えていく。
ビュッフェで出たマリネやステーキは間違い無く一流のごちそうだ。
だが今食べている冷凍食品のたこ焼きの方が、今の芝浦にとってよっぽど幸せにしてくれる。
(高くて美味いだけがごちそうじゃないんだよな……心から喜んで食べられる事だって、ごちそうに成り得るんだから……)
唇を重ねながら、芝浦は漠然とそんな事を思う。
テーブルにおかれたたこ焼きは、ちょうど食べやすい熱さになった頃だろう。
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