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インターネット字書きマンの落書き帳

   
もっと背が伸びたい坂上くんと1年の頃は小柄だった新堂さん概念
坂上くん、1年生の今はかなり「小柄な少年」って感じだけど、どれくらい背が高くなるのかな。
170cm以上の長身になるのかな。
それとも、今くらいの身長でずっと可愛いままなのかな。

ひょっとしたら、背が高くなるのかもしれないね。

そんな事を思っていたら、ふと。
実は他の語り部たちも、一年生の頃は小柄だった可能性があるのかな?

ふと、そう思ううち、一年生の頃は小柄で可愛かった新堂さん、という概念が生まれたので。
一年生の頃はちまったかった新堂さんと、それを知ってる岩下さん、新堂さんが小さかったのなら自分も背が伸びるかも! なんて思う坂上くんを書きました。

特にCPとかそういう描写のない、みんながわちゃわちゃしているだけの話ですぞい。



『少し前の可愛いあなた』

「演劇部に取材したいから、岩下に声をかけておいてくれないか」

 日野からそんな指示を受けた坂上は、昼休み、一人で三年の教室まで来ていた。
 マンモス校である鳴神学園では、各学年でそれぞれ教室棟が存在する。三年の教室棟には当然、三年しかおらず一年生の坂上が来るのは珍しいのだろう、廊下を歩いているだけで周囲の生徒が物珍しそうに眺めていた。

 うう、恥ずかしいな。早く用事を済ませて帰りたいよ。

 坂上は内心そう思い、岩下のクラスを目指す。
 確か岩下はA組で、教室は三階の一番端だったはずだ。

 岩下へアポを取るという仕事は、本来なら同学年である日野がやった方がスムーズな仕事だったろう。
 日野は岩下とは以前から顔見知りなのだから尚更だ。
 だが、今回坂上がそれを任された理由は岩下へアポをとるという事が本当の目的ではない。
 何に対しても受け身で自分から前に出ていく事が苦手な坂上にもっと積極性をもってもらいたいと思った日野から、一人でも物怖じせず三年の教室まで行く根性を身につけてこいと命令を受けてのお使いだった。
 岩下のアポが最終目的ではあるが、岩下の元までたどり着く事がすでに一つの目的という訳だ。

 三年の教室棟に立っただけで帰りたい気分になり、階段を登るたび、せめて倉田に付いてきてもらえば良かったと後悔する。
 ただでも一年生が教室棟をウロウロしていれば目立つというのに、坂上は同年代の男子生徒と比べても明らかに小柄なのだからなおさら目立つようだった。

「見て見て、一年生の子が来てる、可愛いわね」
「何だ、一年生か。ずいぶんと小さい奴が来てるな」

 坂上を見た上級生たちの何人かが、そんな風に話しているのが聞こえてくる。
 不良の生徒に因縁を付けられたり、一年生だからと茶化すように絡んでくる相手と出くわさなかったのは幸いだが、小さいとか可愛いなんて形容で呼ばれるのは、相手に決して悪気が無かったとしても、微妙な気分だった。

 僕だって別に、好きで小さい訳じゃないんだよ。
 父さんも母さんも小柄な方だし、遺伝だから仕方ないよね。
 それに、まだ成長期も終わってないだろうし、もっともっと背が伸びるかもしれないし……。

 モヤモヤとした考えを抱きながら岩下の教室まで行けば、ちょうど岩下は廊下で新堂と雑談しているようだった。

「あ、あの、すいません、岩下さん」

 会話している最中に割り込むのは心苦しいし緊張するが、話し終わるのを待つ程に休み時間は長くない。それに、一年生がずっと三年の教室棟にいると好奇の目にさらされ、注目されるのになれてない坂上はそれが辛い。
 思い切って岩下へ声をかければ、話をしていた新堂も同時に坂上へと視線を向けた。

「あら、坂上くんじゃない。どうしたの」

 美しい顔から、微かな笑みが漏れる。
 美人ではあるが常に周囲と距離を置く岩下は、氷の美女や冷たいマドンナといった形容をされる事が多いのだが、坂上にはいつでも親切に接してくれた。

「す、すいません岩下さん、お昼休み中なのに、あの……」

 坂上はしどろもどろになりながらも、懸命に要件を伝える。
 岩下は急かす事もなく静かに耳を傾け、全てを聞き終わると頷いて見せた。

「えぇ、わかったわ。日野くんからも聞いているから心配しないで、私は約束を破ったりしないから」

 髪をかき上げ、岩下は笑う。
 詳しい予定などは日野が事前に説明しておいていたのだろう、深い質問などされず快く受けてもらえてひとまず安堵の息を吐いた。
 予め日野が説明していたという事は、やはりこれはアポを取る目的ではなく、坂上に度胸をつけるための特訓なのだろう。
 少し荒療治がすぎる気がしたが、坂上を心配しての事なら文句も言えない。

「良かったな、坂上。無事にお使いが済んで。日野も人が悪ぃよな、一年生が三年の教室まで来るの、大変だったろ」

 安心した顔を見せる坂上の頭を、新堂がぐりぐりと撫でる。
 坂上は自分の使命を達成できた喜びと、近くに知り合いがいる安心から幾分か緊張もとけてきた。

「はい、緊張したのもあるんですけど、僕を見て『小さい』とか、『可愛い』って言う声が聞こえてきて、それがちょっと恥ずかしかったですね。僕も新堂さんくらい、背が高くなれるといいんですけど」
「お、可愛い事言ってくれるじゃねぇの。なれるんじゃないか? 俺も入学した時、お前くらいの背丈しかなかったからな」

 新堂は坂上の頭を撫でながらそう言って笑う。
 その言葉に、坂上は目を丸くした。

「えぇ、新堂さん、入学した時は僕くらいの背丈だったんですか」

 とても信じられない。  新堂は、日野や風間と並べば少し背が低いのだが一般的には充分、長身な方だ。
 そんな彼が入学当初は坂上と同程度の身長というのは、少し信じがたい。格闘技をするためにボクシング部に入ったのなら尚更だ。大概のスポーツは背が高い方が有利なのだから。
 だがもしそれが本当だとすると、自分でもまだ背が伸びる余地があるという事だろうか。
 驚く坂上を前にして返事をしたのは、意外にも岩下の方だった。

「えぇ、確かに新堂くんは入学した頃、坂上くん位の背丈しかなかったわね。すぐに背は伸びてしまったけど」
「お、おい……岩下、何で知ってるんだよ」

 岩下が話し出した事は新堂にとっても意外な事だったのだろう。驚く新堂を横に、岩下は目を細めた。

「入学した頃は、まだ黒髪だったのよ。髪ももう少し短くて……ふふ、とっても可愛かったわ」
「いやいや、何で知ってるんだよマジで……俺、その頃まだ岩下と知り合いじゃなかったよな」
「その頃の写真、もっているのよね。良かったら見てみる?」

 首を傾げて問いかける岩下を前に、新堂はみるみるうちに赤くなっていた。

「いやいや、マジでやめてくれって、一年の頃はもっと地味だったし、今見るのは恥ずかしいってか……」
「そんな事はないわ、とっても可愛かったもの」
「うっ……わ、わかった。でも見せるなら、俺がいないところで見せろよな。俺がいる前でやられると、恥ずかしいからよ。頼むぜ」

 新堂は早口でそうまくし立てると、慌てた様子で去って行く。
 その背中を見送った後、岩下は微笑み坂上を見た。

「どう、坂上くん。一年生の頃の新堂くん……見てみる?」
「えぇ、えっと……」
「なんて、冗談よ。二年も前の写真残してある訳ないのに、新堂くんったら。でも、からかわれたと知ったらとても怒るでしょうから、内緒にしておいてね」

 岩下が淡く笑うのを見て、坂上は冗談だったのを知る。

「そうだったんですね……わかりました、黙ってます。あ、新聞部の取材の件も、ありがとうございました」

 深々と頭を下げる坂上を、岩下は静かに見つめる。
 そして小さな声で、独り言を呟いた。

「……自信家なのに臆病で、尊大なのに繊細で。小さいけれど一生懸命動いていた時の新堂くんは、本当に可愛かったのよ」

 岩下のそれは、ただの独り言だったろう。だが彼女が演劇で培ったよく通る声のせいで、自然と耳に入ってしまった。
 坂上は顔を上げると、もう一度頭を下げてから岩下の元を去る。

 自分も誰かから何処かで、そんな風に優しい目で見つめられたりしているのだろうか。
 もしそうだったら、きっとそれは幸福な事なのだろう。

 坂上は一人、教室に戻る。
 その胸には無事にお使いをやり遂げた達成感と、他人を思う事への温もりが確かに芽生えていた。

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東吾
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インターネット駄文書き
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紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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