インターネット字書きマンの落書き帳
取材に来た城戸の前でもイチャイチャするみゆしば(BL)
平和な世界線で普通に付き合ってる手塚×芝浦の話をするコーナーです。(挨拶)
過去の話をサルベージする作業に従事してますが……。
最近、このジャンルにハマってくれて、芝浦のこと好きになってくれた人がいるので!
嬉しいから頑張ってみゆしば掘り返しますゾイ。
今回は、城戸と顔見知りの手塚と芝浦、という概念です。
二人が付き合っているのを知りつつ、手塚のこと「イケメン占い師」として紹介記事を書こうとする城戸の話ですよ。
ほのぼの系イチャイチャ作品をいっぱい食べていってください♥
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最近、このジャンルにハマってくれて、芝浦のこと好きになってくれた人がいるので!
嬉しいから頑張ってみゆしば掘り返しますゾイ。
今回は、城戸と顔見知りの手塚と芝浦、という概念です。
二人が付き合っているのを知りつつ、手塚のこと「イケメン占い師」として紹介記事を書こうとする城戸の話ですよ。
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『心のありか』
大学が終る時間が早かったから、手塚はまだ占いの店を出している頃だろう。少し茶化しに行って、そのまま手塚の部屋にでも遊びに行こう。
漠然とそんな事を考えながら通い慣れた公園への道を歩いていた芝浦を呼び止めたのは、よく知った男の声だった。
「あれ、芝浦? 芝浦も、そっちの公園に用があるのか」
振り返ればそこにはオレンジのスクーターに乗った城戸真司の姿がある。
寒くなってきたからか、厚手のパーカーにリュックを背負ってる姿はオレンジのスクーターの色もあって遠目からもよく目立っていた。
「あれ、真司もこっちの公園に用があるんだ。どうしてまたこんな時間に? 仕事クビになって行くとこなくなちゃったワケ?」
「おまっ……相変わらず可愛くないなっ、全く……でも、お前がそっちの公園に行くって事は、手塚に会いに行くんだろ? だったら一緒に行かないか。俺もさ、手塚にちょっと用があるんだよ」
別に一緒に行くとは言っていないのだが、城戸はスクーターから降りるとそれを転がしながら芝浦と歩き出した。
「あんたも手塚に用があるとか。それって取材? それとも、占い目的?」
「占い兼取材って感じかな。いや、実は編集長に、知り合いにすっごく当たる占い師がいるって話したら結構乗り気になっちゃってさ。先方が構わないんなら、記事にしろって言われちゃって、その流れで。ほら、占いって一定量の需要があるんだよ。雑誌とかでも大体、占いのコーナーってあるだろ。だから記事にするとそれなりに見られるんだよね」
城戸の仕事は、web記事を手がける記者だ。
解像度の低いデジカメだがカメラマンも一人でこなし、今は流行りの店や評判のパワースポットなどを実体験のレポート付きで連載しているらしい。
芝浦も時々記事を読んでいるが、しばしば空回りし滑っている感はあるものの城戸の人柄もあってか体当たり取材の実体験レポートはそこそこ人気を得ているようだ。
「で、何? 今回は手塚の占いを実体験するワケ?」
「そうそう。M公園に現れる謎のイケメン占い師、必ず当たる占いその真相とは! ……てな感じでさ。手塚の占いは当たるし、顔だっていいし、嘘じゃないだろ?」
「アホくさ……本気で言ってんのそれ?」
芝浦はいかにも呆れた様子で城戸を見る。挑発されたと思ったのか、城戸は慌てて言い返した。
「ほっ、本気に決まってるだろ! 手塚の占いはメチャクチャ当たるし、佇まいはクールでミステリアス……写真から見ても明らかにこう、普通の人とは違うオーラ出してるから、絶対人気出るって」
「はぁ……そんなの俺が一番知ってるに決まってるだろ。っていうか、良く俺の前でそんな事言えるよね? 一応、俺が手塚の何なんだか知ってるよね?」
芝浦は手塚と付き合っているが、特にそれを周囲には話していなかった。内緒にしている、というワケでもないのだが特に聞かれないのなら言わなくてもいいだろうというのが、双方のスタンスだったからだ。
だがこの城戸には偶然にも付き合っている事がバレてしまっており、二人は城戸の前では関係をオープンにしている数少ない相手である。
「そりゃ、手塚の彼氏がお前だって事は分ってる……けど、俺の記事で手塚の占いに客が増えれば手塚だって喜ぶだろ?」
「それは、まぁ、そうだけどさ」
「……それとも、まさか芝浦嫉妬してる? まだ見ぬ未来に来る、手塚目当ての客がいるんじゃないかとか。その客に対して何かあるんじゃないかとか……そういうので嫉妬してる?」
「ちがっ……そんなワケないし。何いってんのマジで!?」
芝浦は慌てて否定するが、実の事を言えば図星だった。
手塚の見た目が人を惹きつける程だというのは芝浦自身がよく知っていたから、いくら城戸の解像度が低いデジカメでも記事になれば人目に触れ、今まで手塚の事を知らなかった層の目にもとまる事は容易に予想出来る。
そういった新規の客の中で、手塚が心変わりするのではないか……そんな不安が全くないとは言えないのが正直な所だったからだ。
ましてや、芝浦はずっと恋愛対象が同性だった事に対し、手塚は異性も恋愛対象にしている身だ。 自分より都合の良い異性の相手がいたら、その方が恋愛も、結婚もよりスムーズに進むという事は芝浦もよく分っていたから、心配と嫉妬心は募るばかりだった。
最もこういった悩みまでも城戸は理解していないのだろうが。
「へぇ、芝浦も嫉妬とかするんだな。何かもっと自信満々で、手塚の事惚れさせてやってるから。位に思ってるもんだと……」
「ちょっと真司さぁ、俺の事なんだと思ってるわけ? こう見えても俺、結構繊細なんですけど」
口をとがらせ文句を言えば、城戸は祈るような真似をして「ごめん、ごめん」と笑って見せた。城戸の愛嬌がある笑顔は武器だ。見て居ると何となく、怒る気を無くす。
「ま、取材でも何でもしてくればいいんじゃないの? ……俺だってそんな小さい男じゃないし」
内心の不安を気取られないよう、芝浦はいかにも余裕のある態度を見せる。上辺だけの仕草だったが、単純な城戸はそれでも納得したのだろう。
「わかった、最高の記事にしてやるから楽しみにしてくれよな!」
その言葉を受け、城戸は屈託なく笑いながら公園の歩みを早めるのだった。
※※※
「取材の事なら事前に聞いてる。といっても、俺は今までそういった話を受けた事がないからどうしていいか分らないんでな。城戸、お前が指示をしてくれ。その通りにしよう」
手塚はそう言い、城戸の指示通りに占いをしたり、ポーズをとったり、簡単な占いの話などを聞かせている。
城戸はそれを熱心にボイスレコーダーに録音しながら、要所要所にメモをとる。
見た印象からすると、取材はスムーズに進んでいるようだった。
(真司のやつ、占いの取材に行くのに占いの事全然知らなかったから、道すがら少しばかり入れ知恵したのが役にたったかな?)
芝浦は少し離れたベンチに座り、缶コーヒーを飲みながら取材のため右往左往する城戸の姿を眺めていた。
占いの取材なのに、手塚がどんな占いをするのか、何の占いが得意なのか、そもそも占いにどれだけの種類があるのかも城戸は知らなかったから、そういった話を予め話しておいたのだ。
最も、芝浦が話した事も殆どが手塚からの受け売りなのだが、基礎を知らないのと多少知っているのとでは話のしやすさが違うというものだ。
(あいつ、記者のわりに下調べ全然してこないタイプだからなぁ。そういうトコなおせば、もうちょっとマシな記事書けると思うんだけど)
芝浦と城戸が出会ったのは、城戸が勤めているweb記事を発信している会社での事だ。
普段からサーバー管理から公式webサイトの管理まで一任していた職員がインフルエンザで暫く動け無いという緊急事態に出ていた求人を見て、何となく面白そうだと思いピンチヒッターとしてアルバイトを始めたのが切っ掛けである。
サーバー管理と公式webの管理。
その両方を同時にこなすという仕事は思ったより楽しく、また元々そこで仕事をしていた職員は相当パソコンに精通していたのだろう。改造に改造を施されたパソコンに、独自に開発されたプログラム。癖はあるが隙の少ないシステム構築を読み解きながら仕事をするのは芝浦の好奇心をくすぐった。
当初は自分が抜けた穴を心配していた職員も、芝浦が自分の作ったシステムを理解したのを知って安心したのだろう。それならついでにとばかりに、長らく消化してなかった有給まで消化し海外へ出かけた結果、何やかんやで一ヶ月近くはそこのバイトを続ける事になっていた。
飽き性で短期バイトしかやっていなかった芝浦にとって一番長く世話になった職場でもあり、今でも時々ちょっとした菓子折をもって様子を見に行く事もある程度には愛着のある職場だ。
その中でも城戸は一番歳が近いのもあって色々話しかけてきてくれたのは、今でも良く覚えている。
最初は少し疎ましいと思っていたが、あまりにも馬鹿馬鹿しい話を真剣にしている城戸を見ているうちに段々楽しくなっていき、今は良き友人、あるいは悪友としてしばしば二人で連む事もある程度の仲になっていた。
(そういえば、俺はずっと内勤だったから城戸が取材してるとこって初めてみるな……)
一通りの写真は撮れたのか、今は手塚から占いの結果を神妙に聞いている。
記事にするのだから、恋愛運でも相談したのだろうか。手塚はどんな結果が出ても顔色を変えるような事は滅多にないが、城戸は何にでもコロコロ表情が変わる性質だ。その表情から、結果がかんばしくないのは何とはなしに察する事が出来た。
「芝浦ぁー、終ったぞー」
一段落ついたのか、城戸はデジカメを確認しながら、遠巻きに見ていた芝浦に手をふり声をかけてくる。
「あー、もー、いちいちデッカイ声で呼ばなくてもいいっての。恥ずかしいだろ!」
手にもっていた空き缶をゴミ箱に捨てると、芝浦はいかにも億劫といった様子で二人の傍へと向う。
「で、どうなの? ちゃんとした記事かけそう?」
「あったりまえだろ! ちゃんと、メモも取ったし。写真だってほら」
デジカメの画質は相変わらず安物で酷い有様だが、それでも素材が手塚なのだからこれならイケメン占い師なんて煽り文句を付けてもクレームはないだろう。
だがメモ書きの方はやけにまだらで飛び飛びになっている。ボイスレコーダーがあるからそれを聞きながら書くのだろうが、これが本当に記事になるのだろうか。
「……マジでこれ記事になんの? なんも書いてないじゃん」
「ちゃんと記事になるに決まってるだろッ! これに、音声データを聞きながら肉付けして。あとは、アレしてコレすれば……とにかく、何とかなるから」
「えらいふわっとしてるけど? そういえば俺、真司と同じ会社で仕事してたけど、真司の仕事内容全然知らないんだよねー。記者ってこの後何すんの? てかちゃんと仕事してんの?」
「してるっての! 疑い深いなお前ほんと……信じられないなら見に来ればいいだろ。今日は直帰して、家で作業するつもりだけど」
「あ、じゃあお邪魔しちゃおっかな。真司のトンチキな記事のせいで手塚の信用が失われたらいけないもんね」
「おまっ……どれだけ俺の事信用してないんだよっ……」
その様子を暫く眺めていた手塚が、不意に口を挟んできた。
「という事は、今日は城戸の家に行くんだな。芝浦」
恐らく手塚は芝浦が自分の家に来ると思っていたのだろう。
芝浦自身もそのつもりだったのだが、城戸のする仕事に好奇心が向ってしまい今は城戸の家に行きたくなっている。
「あ、あぁ。そうだな……いや、悪いと思ってるけどさ。ホント、真司とは別に何でもないし……」
言い訳しているつもりはないが、ついしどろもどろになる。
城戸は年上の友人であり一度だって恋仲を想定した事のない相手だが、それでも男二人で遊ぶのは気にするのではないかと思ったからだ。少なくとも芝浦は、手塚が親友である斉藤と二人で遊ぶ時、二人が親友であるのは納得していたが嫉妬しないワケではないのだから、手塚もきっとそうだろう。
「俺だって芝浦を取って食おうとか思わないっての……」
何となく自分が痴話げんかに巻き込まれている気分になってきたのだろう。城戸もやや不服そうに、だが小声で呟く。
そんな芝浦と城戸の様子に気付いたのか、手塚は少し困ったような顔を見せた。
「いや、別にそれを咎めているワケではない。そうするなら俺は今日、夜まで店を出すだけだからな。ただ、気をつけて行ってこいと……それだけの事だ」
「そ、そう。ならいいけどさ……後でグチグチ言ったり、嫉妬してたとか言うのナシだからね?」
「嫉妬なんかしない……といえば嘘になるがな」
と、そこで手塚は芝浦の胸元を指先で二度、三度と叩くように触れる。
「ただ、お前の心が必ず俺に戻ってきてくれるなら、俺はそれ以上うるさく言うつもりはない。楽しんで来い」
そして微かに笑うと、簡易的に組み立てられた自分の店へと戻って行く。その後ろ姿を城戸はぼんやりと眺めながら。
「ふぇー、手塚って本当に格好いいよな。あぁいう所、サラっと出来るとか俺と一つしか違わないのに断然大人って感じするってかさ……」
つい、そんな言葉が漏れる。 その横で芝浦は少し得意気に笑うと。
「当たり前じゃーん、だって俺の彼氏だもんねー」
そうして城戸の腕を引くと、早く行くよう促して見せる。
「あー、まてまてまてって、今バイクとってくるから……」
「急げ急げ-、ほらおいてくよ真司ィー」
笑いながら歩む芝浦は一度だけ振り返ると、手塚の姿を見つめた。
(どこに行っても、何してても……俺の心はとっくに、ずぅっとあんたのモノだよ)
密かにそんな思いを抱いて。
大学が終る時間が早かったから、手塚はまだ占いの店を出している頃だろう。少し茶化しに行って、そのまま手塚の部屋にでも遊びに行こう。
漠然とそんな事を考えながら通い慣れた公園への道を歩いていた芝浦を呼び止めたのは、よく知った男の声だった。
「あれ、芝浦? 芝浦も、そっちの公園に用があるのか」
振り返ればそこにはオレンジのスクーターに乗った城戸真司の姿がある。
寒くなってきたからか、厚手のパーカーにリュックを背負ってる姿はオレンジのスクーターの色もあって遠目からもよく目立っていた。
「あれ、真司もこっちの公園に用があるんだ。どうしてまたこんな時間に? 仕事クビになって行くとこなくなちゃったワケ?」
「おまっ……相変わらず可愛くないなっ、全く……でも、お前がそっちの公園に行くって事は、手塚に会いに行くんだろ? だったら一緒に行かないか。俺もさ、手塚にちょっと用があるんだよ」
別に一緒に行くとは言っていないのだが、城戸はスクーターから降りるとそれを転がしながら芝浦と歩き出した。
「あんたも手塚に用があるとか。それって取材? それとも、占い目的?」
「占い兼取材って感じかな。いや、実は編集長に、知り合いにすっごく当たる占い師がいるって話したら結構乗り気になっちゃってさ。先方が構わないんなら、記事にしろって言われちゃって、その流れで。ほら、占いって一定量の需要があるんだよ。雑誌とかでも大体、占いのコーナーってあるだろ。だから記事にするとそれなりに見られるんだよね」
城戸の仕事は、web記事を手がける記者だ。
解像度の低いデジカメだがカメラマンも一人でこなし、今は流行りの店や評判のパワースポットなどを実体験のレポート付きで連載しているらしい。
芝浦も時々記事を読んでいるが、しばしば空回りし滑っている感はあるものの城戸の人柄もあってか体当たり取材の実体験レポートはそこそこ人気を得ているようだ。
「で、何? 今回は手塚の占いを実体験するワケ?」
「そうそう。M公園に現れる謎のイケメン占い師、必ず当たる占いその真相とは! ……てな感じでさ。手塚の占いは当たるし、顔だっていいし、嘘じゃないだろ?」
「アホくさ……本気で言ってんのそれ?」
芝浦はいかにも呆れた様子で城戸を見る。挑発されたと思ったのか、城戸は慌てて言い返した。
「ほっ、本気に決まってるだろ! 手塚の占いはメチャクチャ当たるし、佇まいはクールでミステリアス……写真から見ても明らかにこう、普通の人とは違うオーラ出してるから、絶対人気出るって」
「はぁ……そんなの俺が一番知ってるに決まってるだろ。っていうか、良く俺の前でそんな事言えるよね? 一応、俺が手塚の何なんだか知ってるよね?」
芝浦は手塚と付き合っているが、特にそれを周囲には話していなかった。内緒にしている、というワケでもないのだが特に聞かれないのなら言わなくてもいいだろうというのが、双方のスタンスだったからだ。
だがこの城戸には偶然にも付き合っている事がバレてしまっており、二人は城戸の前では関係をオープンにしている数少ない相手である。
「そりゃ、手塚の彼氏がお前だって事は分ってる……けど、俺の記事で手塚の占いに客が増えれば手塚だって喜ぶだろ?」
「それは、まぁ、そうだけどさ」
「……それとも、まさか芝浦嫉妬してる? まだ見ぬ未来に来る、手塚目当ての客がいるんじゃないかとか。その客に対して何かあるんじゃないかとか……そういうので嫉妬してる?」
「ちがっ……そんなワケないし。何いってんのマジで!?」
芝浦は慌てて否定するが、実の事を言えば図星だった。
手塚の見た目が人を惹きつける程だというのは芝浦自身がよく知っていたから、いくら城戸の解像度が低いデジカメでも記事になれば人目に触れ、今まで手塚の事を知らなかった層の目にもとまる事は容易に予想出来る。
そういった新規の客の中で、手塚が心変わりするのではないか……そんな不安が全くないとは言えないのが正直な所だったからだ。
ましてや、芝浦はずっと恋愛対象が同性だった事に対し、手塚は異性も恋愛対象にしている身だ。 自分より都合の良い異性の相手がいたら、その方が恋愛も、結婚もよりスムーズに進むという事は芝浦もよく分っていたから、心配と嫉妬心は募るばかりだった。
最もこういった悩みまでも城戸は理解していないのだろうが。
「へぇ、芝浦も嫉妬とかするんだな。何かもっと自信満々で、手塚の事惚れさせてやってるから。位に思ってるもんだと……」
「ちょっと真司さぁ、俺の事なんだと思ってるわけ? こう見えても俺、結構繊細なんですけど」
口をとがらせ文句を言えば、城戸は祈るような真似をして「ごめん、ごめん」と笑って見せた。城戸の愛嬌がある笑顔は武器だ。見て居ると何となく、怒る気を無くす。
「ま、取材でも何でもしてくればいいんじゃないの? ……俺だってそんな小さい男じゃないし」
内心の不安を気取られないよう、芝浦はいかにも余裕のある態度を見せる。上辺だけの仕草だったが、単純な城戸はそれでも納得したのだろう。
「わかった、最高の記事にしてやるから楽しみにしてくれよな!」
その言葉を受け、城戸は屈託なく笑いながら公園の歩みを早めるのだった。
※※※
「取材の事なら事前に聞いてる。といっても、俺は今までそういった話を受けた事がないからどうしていいか分らないんでな。城戸、お前が指示をしてくれ。その通りにしよう」
手塚はそう言い、城戸の指示通りに占いをしたり、ポーズをとったり、簡単な占いの話などを聞かせている。
城戸はそれを熱心にボイスレコーダーに録音しながら、要所要所にメモをとる。
見た印象からすると、取材はスムーズに進んでいるようだった。
(真司のやつ、占いの取材に行くのに占いの事全然知らなかったから、道すがら少しばかり入れ知恵したのが役にたったかな?)
芝浦は少し離れたベンチに座り、缶コーヒーを飲みながら取材のため右往左往する城戸の姿を眺めていた。
占いの取材なのに、手塚がどんな占いをするのか、何の占いが得意なのか、そもそも占いにどれだけの種類があるのかも城戸は知らなかったから、そういった話を予め話しておいたのだ。
最も、芝浦が話した事も殆どが手塚からの受け売りなのだが、基礎を知らないのと多少知っているのとでは話のしやすさが違うというものだ。
(あいつ、記者のわりに下調べ全然してこないタイプだからなぁ。そういうトコなおせば、もうちょっとマシな記事書けると思うんだけど)
芝浦と城戸が出会ったのは、城戸が勤めているweb記事を発信している会社での事だ。
普段からサーバー管理から公式webサイトの管理まで一任していた職員がインフルエンザで暫く動け無いという緊急事態に出ていた求人を見て、何となく面白そうだと思いピンチヒッターとしてアルバイトを始めたのが切っ掛けである。
サーバー管理と公式webの管理。
その両方を同時にこなすという仕事は思ったより楽しく、また元々そこで仕事をしていた職員は相当パソコンに精通していたのだろう。改造に改造を施されたパソコンに、独自に開発されたプログラム。癖はあるが隙の少ないシステム構築を読み解きながら仕事をするのは芝浦の好奇心をくすぐった。
当初は自分が抜けた穴を心配していた職員も、芝浦が自分の作ったシステムを理解したのを知って安心したのだろう。それならついでにとばかりに、長らく消化してなかった有給まで消化し海外へ出かけた結果、何やかんやで一ヶ月近くはそこのバイトを続ける事になっていた。
飽き性で短期バイトしかやっていなかった芝浦にとって一番長く世話になった職場でもあり、今でも時々ちょっとした菓子折をもって様子を見に行く事もある程度には愛着のある職場だ。
その中でも城戸は一番歳が近いのもあって色々話しかけてきてくれたのは、今でも良く覚えている。
最初は少し疎ましいと思っていたが、あまりにも馬鹿馬鹿しい話を真剣にしている城戸を見ているうちに段々楽しくなっていき、今は良き友人、あるいは悪友としてしばしば二人で連む事もある程度の仲になっていた。
(そういえば、俺はずっと内勤だったから城戸が取材してるとこって初めてみるな……)
一通りの写真は撮れたのか、今は手塚から占いの結果を神妙に聞いている。
記事にするのだから、恋愛運でも相談したのだろうか。手塚はどんな結果が出ても顔色を変えるような事は滅多にないが、城戸は何にでもコロコロ表情が変わる性質だ。その表情から、結果がかんばしくないのは何とはなしに察する事が出来た。
「芝浦ぁー、終ったぞー」
一段落ついたのか、城戸はデジカメを確認しながら、遠巻きに見ていた芝浦に手をふり声をかけてくる。
「あー、もー、いちいちデッカイ声で呼ばなくてもいいっての。恥ずかしいだろ!」
手にもっていた空き缶をゴミ箱に捨てると、芝浦はいかにも億劫といった様子で二人の傍へと向う。
「で、どうなの? ちゃんとした記事かけそう?」
「あったりまえだろ! ちゃんと、メモも取ったし。写真だってほら」
デジカメの画質は相変わらず安物で酷い有様だが、それでも素材が手塚なのだからこれならイケメン占い師なんて煽り文句を付けてもクレームはないだろう。
だがメモ書きの方はやけにまだらで飛び飛びになっている。ボイスレコーダーがあるからそれを聞きながら書くのだろうが、これが本当に記事になるのだろうか。
「……マジでこれ記事になんの? なんも書いてないじゃん」
「ちゃんと記事になるに決まってるだろッ! これに、音声データを聞きながら肉付けして。あとは、アレしてコレすれば……とにかく、何とかなるから」
「えらいふわっとしてるけど? そういえば俺、真司と同じ会社で仕事してたけど、真司の仕事内容全然知らないんだよねー。記者ってこの後何すんの? てかちゃんと仕事してんの?」
「してるっての! 疑い深いなお前ほんと……信じられないなら見に来ればいいだろ。今日は直帰して、家で作業するつもりだけど」
「あ、じゃあお邪魔しちゃおっかな。真司のトンチキな記事のせいで手塚の信用が失われたらいけないもんね」
「おまっ……どれだけ俺の事信用してないんだよっ……」
その様子を暫く眺めていた手塚が、不意に口を挟んできた。
「という事は、今日は城戸の家に行くんだな。芝浦」
恐らく手塚は芝浦が自分の家に来ると思っていたのだろう。
芝浦自身もそのつもりだったのだが、城戸のする仕事に好奇心が向ってしまい今は城戸の家に行きたくなっている。
「あ、あぁ。そうだな……いや、悪いと思ってるけどさ。ホント、真司とは別に何でもないし……」
言い訳しているつもりはないが、ついしどろもどろになる。
城戸は年上の友人であり一度だって恋仲を想定した事のない相手だが、それでも男二人で遊ぶのは気にするのではないかと思ったからだ。少なくとも芝浦は、手塚が親友である斉藤と二人で遊ぶ時、二人が親友であるのは納得していたが嫉妬しないワケではないのだから、手塚もきっとそうだろう。
「俺だって芝浦を取って食おうとか思わないっての……」
何となく自分が痴話げんかに巻き込まれている気分になってきたのだろう。城戸もやや不服そうに、だが小声で呟く。
そんな芝浦と城戸の様子に気付いたのか、手塚は少し困ったような顔を見せた。
「いや、別にそれを咎めているワケではない。そうするなら俺は今日、夜まで店を出すだけだからな。ただ、気をつけて行ってこいと……それだけの事だ」
「そ、そう。ならいいけどさ……後でグチグチ言ったり、嫉妬してたとか言うのナシだからね?」
「嫉妬なんかしない……といえば嘘になるがな」
と、そこで手塚は芝浦の胸元を指先で二度、三度と叩くように触れる。
「ただ、お前の心が必ず俺に戻ってきてくれるなら、俺はそれ以上うるさく言うつもりはない。楽しんで来い」
そして微かに笑うと、簡易的に組み立てられた自分の店へと戻って行く。その後ろ姿を城戸はぼんやりと眺めながら。
「ふぇー、手塚って本当に格好いいよな。あぁいう所、サラっと出来るとか俺と一つしか違わないのに断然大人って感じするってかさ……」
つい、そんな言葉が漏れる。 その横で芝浦は少し得意気に笑うと。
「当たり前じゃーん、だって俺の彼氏だもんねー」
そうして城戸の腕を引くと、早く行くよう促して見せる。
「あー、まてまてまてって、今バイクとってくるから……」
「急げ急げ-、ほらおいてくよ真司ィー」
笑いながら歩む芝浦は一度だけ振り返ると、手塚の姿を見つめた。
(どこに行っても、何してても……俺の心はとっくに、ずぅっとあんたのモノだよ)
密かにそんな思いを抱いて。
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