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インターネット字書きマンの落書き帳

   
大人ぶりたい芝浦と大人にさせない手塚(みゆしば/BL)
平和な世界線で普通に付き合っている手塚×芝浦の話をするコーナーです。
はい、一行に凝縮された幻覚の説明終わりッ。

最近upしてるのは過去作の再掲が多いんですけどね。
以前書いた奴を置いていた場所が焼き討ちにあって消えてしまったのでサルベージしてブログに置いていたりしています。

もう読んだよ!
って人もいるかもしれませんが、んまぁ、可愛い俺がすることなので許してやってください。

この話は、手塚に「大人だ」「かっこいい」って思ってほしくて頑張ったけど、ダメだったタイプの芝浦が出てきます。

芝浦永遠にかわいいよ♥



『星の海を行く』

 都会では星空より夜景の方がずっと近く、いつも鮮やかに輝いている。
 その日の芝浦は、そんな夜景を遙か下に眺めていた。

「はは、すっげーだろ。ヘリで見る夜景ってのはさ」

 瞬くネオンの光やビルから漏れるライトを見ながら、芝浦はやや得意気に言う。
 隣に座った手塚は二言、三言何か話したようだったが、ヘリの羽が回るモーターの轟音で全てがかき消えていた。

 空から夜景を楽しもうと手塚を半ば強引に誘い出したのは、これならば手塚には出来ないエスコートだろうと思ったからであり、手塚のエスコートするのが以前から芝浦がしてみたいと思っていた事だった。

 というのも芝浦は手塚と恋仲になってからずっと普段の生活は勿論、デートする時でも身体の関係になる時でも何かと手塚にばかりリードされる事を気にしていたからだ。

 手塚の方が3つも年上なのだから、日常生活でリードされるのは仕方ない所もあると思っていた。
 芝浦は大学生になった今でも家政婦付きの生活を当然にしている上、それまで現金など殆ど持ち歩かず何でもカードで決済するような生活を当然と思っていた「箱入り」なのだから尚更だ。

 レストランの予約や移動手段の手配も、今までは使用人に「頼んでおいて」の一言で良かったし、電車などに乗らず送迎用の車を出してもらえればそれだけで事が済んでいたが、流石に恋人とのデートを人任せにするワケにはいかない。

 これは、周囲には聞かれないから言わないだけ、というスタンスではあるが、芝浦は家族にまだとても自分の恋人が同性である事は言えないでいたため、手塚の存在を知られたくないというのもある。

 かといって自分でレストランの予約などは今までしたことがなかったので、自分から誘おうとするとどうしても手際が悪くなり何かと後手後手に回りがちなので、結局全てのお膳立てを手塚がする事になる……という流れが最近はすっかり出来上がっていた。

 せめて奢らせてくれればとも思うのだが手塚は頑なに

「学生からたかるわけにはいかないだろう?」

 と譲らず、払わせてくれない。
 こういった所も今まで芝浦と付き合ってきた相手とは違うので、ますます戸惑うばかり。そしてリードは広がるばかりだった。

(手塚が色々俺の為にしてくれるのは嬉しいけどさ……俺だって手塚に何かしてやりたいんだよね)

 そう考えた末に思いついたのが、ヘリコプターをチャーターし二人で夜景を見るという催しだった。
 ヘリコプターをチャーターは事前に支払いも済んでいるし、ヘリまで案内する所まで完璧にエスコートも出来た……と思う。
 フライトは30分ほどだったろう。
 天気も良く、夜空の星より地上のライトの方が輝く都内では大地に広がる輝きを存分に堪能出来た。

(これで少しは俺も見直されたかな? いっつも手塚にリードされてばっかりってのも、ちょっと癪だしね)

 フライトを終え地上におりて、手塚の手をとり彼を案内しながらそんな事を考える。
 別に手塚から見下された事もなければ極端に子供扱いをされてる訳ではないのだが、いつでも手塚が自分の歩みに会わせてくれているような所があるのは常々感じていたからだ。

「どう、楽しかった?」

 今日は少しでも大人らしく振る舞えただろうか。
 そう思い得意気に笑えば、手塚は僅かに頷いて見せる。

「空の散歩なんて話には聞いていたが、実際体験できるとは思わなかったからな。ありがとう」
「へへー、この手のサプライズだったら、俺もちょっとは手塚を楽しませる事が出来る、って事かな」

 そう言って笑えば、手塚は不意に芝浦の身体を引き寄せるとそのまま強く抱きしめた。
 すでにヘリポートからは幾分か離れているし辺りは暗く誰も見てないだろうが、それでも人目は気に掛かる。

「ちょっ、ちょっと……まだ誰か見てるかもしれないだろっ」
「いいだろ、別に困りはしない」
「そう、だけどさ……いや、俺はまだちょっと恥ずかしいし、ここ知り合い多いからマズイかも……」

 芝浦はそう言いながらも、戸惑いつつ手塚の身体を抱きしめ返していた。抱かれればやはり嬉しいし、触れてもらえればもっと傍に感じたいと思う。
 手塚の身体はずっと外の風に触れていたのもあってか、いつもより暖かく感じる。
 そうして暫く互いの身体を確かめるように抱きしめた後、手塚はやっと人心地ついたような顔を芝浦へと向けた。

「あぁ、よかった……」
「なに? そんなに空の散歩楽しかった? それならまた……」
「それも良かったが、ずっと空ではモーターの音でうるさかっただろう? 今はこうして静かになって、お前の声が聞こえる。そう思うとやけに安心してな。お前の顔が、声が、こんなに近いだけで、こんなにも安心するんだな……」

 その言葉は周囲に聞こえない程度に、だが芝浦には届くように静かに囁かれる。
 当然のように自然に、だが本心からの言葉を思いがけずぶつけられた芝浦は、自分の顔が紅くなっていくのを感じた。

「ま、また……あんたってば本当に、何もないみたいにそうやって格好いい事いえちゃうんだからさ……」

 そうだ、手塚はなにげない日常の中、芝浦と二人でいるだけで充分喜んでくれるような男なのだ。
 特別なことなんてしなくていい。自分が隣に居て、笑っていればそれを見て手塚も幸せだと思ってくれる。
 そういう相手を好きになったのだから。

「あぁ、空の散歩も良かったぞ。俺の為に色々考えてくれたんだろう? ……ありがとう」
「ホント、ホント手塚はさぁ、そういう所あるっていうか、やりづらいっていうか……」

 背伸びをして格好付けてリードしようと思ったが、結局いつも手塚が一歩リードしているような気がするのだが、それでもいいかと芝浦は思い直す。
 それほどまでに彼のくれる言葉は暖かく、優しく、嬉しいものだったから。

「……格好良すぎだって」

 芝浦は自然と手塚を抱きしめ、その顔を胸に埋める。
 いつもリードされていて、相手のペースにされるのはどこかもどかしいと思っていた。
 だが、手塚はこんなにも自分を愛してくれているのだ。それなら彼のペースで、彼のリードに導かれて進んで行くのも案外悪くないかもしれない。
 そんな事を思いながら手塚に身を任せれば、手塚もまた全てを受け入れるよう芝浦の身体を優しく包み込むのだった。

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