インターネット字書きマンの落書き帳
少しずつの変化にそばにいる民は気づかない(みゆしば)
平和な世界で普通に付き合ってる手塚と芝浦という概念です。
(今日も1行で端的に幻覚を説明しながら挨拶をする)
今回は付き合い始めてそこそこに同じ時間を過ごした二人。
芝浦からすると「ずーっと変わってないかっこいい恋人」のままだと思っている手塚。
だけど、手塚当人は自分が結構変わった事に気づいていた……的な、やつ、です!
句読点が多い!
オッサンだからかな!?
(今日も1行で端的に幻覚を説明しながら挨拶をする)
今回は付き合い始めてそこそこに同じ時間を過ごした二人。
芝浦からすると「ずーっと変わってないかっこいい恋人」のままだと思っている手塚。
だけど、手塚当人は自分が結構変わった事に気づいていた……的な、やつ、です!
句読点が多い!
オッサンだからかな!?
『彩りの満ちた世界』
「海之って俺と会った時からずーっと変わってないよねー」
芝浦はそんな事を言いながら、無邪気な笑顔を浮かべて見せた。
おそいらくはずっと手塚のそばにいた芝浦にとって手塚は以前と変わらない、ポーカーフェイスの占い師といったイメージのままなのだろう。
だが本当に何も変わっていないのかと問われればそれは「NO」だ。
芝浦が現れて常につき慕うようになってから手塚の世界は今までに比べてずっと広がっていた。
それまで読んだ事もなかった推理小説を読むようになっし、まるで関心のなかったスポーツも……サッカーはもちろんのこと、野球のルールすら知らなかった手塚が今はテレビで野球やサッカーを流すようになっている。
年に一度行くか行かないかだった映画館も今は月に二、三度の割合で出かけているし、以前はほとんど見なかった洋画もずいぶんと見るようになった。
二人でコントローラーを並べて遊ぶゲームがこんなにも楽しいのだと知った。
サッカーの上手い選手というのはピッチで輝いて見えるものだという事も教わった。
文字を読むのさえ億劫に思っていたが、今は推理小説を自分なりに真相を考えながら読む時間を楽しんでいる。
芝浦が自分の生活に入り込んできた時は自分のペースを乱される事が多く苛立つ事もあったが、今考えればそんないらだちさえも楽しかったように思えた。
手塚にとって芝浦はそれだけ世界を広げてくれた存在なのだ。
だがきっと、芝浦はそれに気づかないのだろう。
少しずつ変わっていく手塚のそばにずっといて、その緩やかな変化を隣で眺めてきたのだから。
『あれ、手塚。なんか雰囲気変わった? ……以前は待ち時間に小説なんて読んでたりしなかったじゃないか。何読んでるんだよ』
久しぶりに会った親友の雄一はすぐに手塚の変化に気づいた。
元より何に対しても無関心な部分が多かった手塚がただ本を読んでいるというだけでも大きな変化に思えたのだろう。
手塚が変わった理由までは聞かなかったが、ただ別れ際に。
『幸せになれよ!』
そう声をかけたのを考えても、変化の理由は何とはなしに気づいているのだろう。
まだ恋人である芝浦の事は黙っているが、聡い雄一の事だからきっと恋人ができた事もそれが誰であるのかもわかっていて黙ってくれているのだろうと思う。
言ってもきっと驚かないし祝福してくれるだろうが、今はまだ芝浦と秘密を共有していたいという思いから黙っていた。
そんなにも自分は変わり、今まで見ていた世界が色づいているようにさえ思えているというのに芝浦は自分を「変わってない」と思っているのだ。
手塚が芝浦を思い、大切にするようになったその気持ちをとれば確かに手塚は変わってないだろう。
だがこんなにも自分を変えてくれた芝浦自身がそれに気づいてないというのはどこか奇妙な感じがした。
「……それは、おまえがずっとそばにいるからそう思うだけだろう」
手塚はそう言い、後ろから恋人の身体を抱きしめる。
こんなにも愛しいと思う気持ちが今まであっただろうか。愛しいと思う気持ちを留める事もなくさらけ出しても、全てを受け止められる相手がいただろうか。
そして何より。
「俺は、以前とずいぶん変わった……」
こんなにも貪欲に求めたくなるとは自分でも思わなかった。
そばにいてどこかあどけない笑顔を向ける芝浦をその手に抱けば温もりをより深く、強く求めたくなる。
心の赴くままに唇を重ねれば、芝浦は最初少し戸惑った様子を見せたがすぐに全てを受け入れた。
「……ほんと、変わった? 俺の事もっと好きになってくれたんならうれしいけど」
「あぁ、そうだ……以前よりずっと愛しいと思っている。だから……俺から離れるな」
最も、手放す気もないのだが。
「変わってないと思ったけどさ……そうやって、どんどん俺にのめり込んでくれるならうれしいかな。海之もずーっと俺の事見ててよね? 俺、かなり執念深い方だから」
「わかってる、わかってるさ……」
愛しい温もりを抱きしめながら、手塚は漠然と思う。
これからも芝浦と過ごしていれば自分の周囲も環境も少しずつ変わっていくのだろう。
だが芝浦を愛する気持ちだけは変わらず、いつも傍らに彼がいるのだろうと。
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