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インターネット字書きマンの落書き帳

   
年始の元気なごあいさつ。(手芝・みゆしば)
平和な世界線で普通に付き合ってる手塚×芝浦という概念です。
(今年もこの幻覚をよろしくね!)

季節のネタは季節のうちに書いておきたいよね!
という事で今回は「お正月は何かと忙しくて芝浦くんが遊びにこれないのを知って油断してダラダラすごしていた手塚お兄さん」の話だよ。

わりと季節を感じるように手芝を描いていて思ったんだが……。
マジで手塚くん、『本当にその商売で生計成り立ってるの?』ってくらい稼げてなさそうだよなッ!
路上占いは、本当に稼げない……本当に稼げないんだ……。

そんな事を考えて書いていたら、手塚お兄さんの怠惰な生活が想定以上にリアルな一人暮らし男の怠惰な生活になっちまったが、まぁ気のせいだろう。

正月はダラダラ過ごして生きて行こうなッ!




『元気をもらえる口づけ』

 誰かがドアをノックする音に急かされ、手塚はようやく目を覚ました。

 正月のさなかである。
 手塚は経験から正月はさして客入りがないのを知っていたので三が日は出かける事もなく家で過ごす事にしていた。

 初詣に向うにしても、福袋の為に並ぶにしてもそう。
 明確な目的がある人間はふらりと公園に立ち寄って占いなどしないものだ。
 おまけに街中は故郷に帰省する者が多く、普段より人通りもぐっと少ない。
 寒さに耐えながら客を待つのには割が合わないのである。

 せめて芝浦が家に来ていればもう少し賑やかに過ごせたのだろうが、芝浦も一応は『良い所のお坊ちゃん』である。
 正月ともなれば年始回りという名目で父と懇意にしている会社のお偉方や取引先の重役、自社でも特に大事な社員などにきちんと挨拶をする必用があるらしく三が日ずっと忙しいのだそうだ。

 店を出しても儲からない。
 年の瀬に恋人も来ないというのだからやる事もなかった手塚はソファーに寝転び年末年始の特番を見たり、見ようと思って積んでいたDVDを流したり、合間に酒を飲み出来合の総菜を食べたりといった怠惰な日々を過ごしていた所だった。

 その日はTVをつけたままソファーで寝入ってしまったのだろう。
 箱根駅伝の選手が賢明に走っている様が中継されている。

(誰だ……今、何時頃だ……。いや、誰かが訪ねて来てるなら出ないといけないな……だが正月だというのに何だ? 新聞の勧誘というワケではないだろう……)

 ぼやけた頭のまま玄関の扉を開ければ、そこにはきちんとスーツを着た芝浦が立っていた。

「よォ、手塚。あけましておめでとー……って、随分と酷い顔してるじゃーん、髭も剃ってないし酒飲み過ぎてない? 瞼腫れぼったくなってるけど」
「淳っ……おまえ、正月は来られないって言ってなかったか……?」
「うん、まぁそのつもりだったんだけどね。今、ちょうど手塚の家の傍まで来たから、ちょっとだけ抜け出して来た」

 芝浦は悪戯っぽく笑うと、悪びれた様子もなく言う。

「おい、それ……いいのか?」
「いいワケないだろ? ちょっとコンビニに買い物って名目で抜け出して来たからあんまり遅いと怒られるだろうし、手塚ん所来てたのバレたら説教じゃ済まないだろうね」
「済まないだろうね……って、軽く言うな。早く戻れ……いくらお前でも父親ににらまれるのはまずいだろう?」
「そうだけどさ……ま、ちょっとだけ上がらせてよ。この格好で立ち話してたら目立つだろ?」

 色々思う所はあったが、確かに玄関先で話しているのは目立つし周囲に聞かれるのもまずい。そう思い手塚は芝浦を部屋に招き入れ扉を閉めれば、扉が閉まると同時に芝浦は手塚の身体に抱きついてきた。

「お、おい……」
「んー……手塚の匂いする……はぁ……やっぱ落ち着くな、手塚の匂い。もう年末から家の行事が詰まっちゃって、全然会いに来れなかったじゃん。ずっと会えなかったからさ……ちょっと限界だったんだよね」

 抱きつく腕の力が普段より強く感じる。
 確かに最後に会ったのはクリスマスが過ぎた頃だったか。電話やメールのやりとりを欠かした事はなかったが、顔を合わせたのは数日ぶりだ。

「何だ、大げさな奴だな。別に一ヶ月も会わなかったワケじゃないだろう」
「そうだけど、俺にとってはそれくらい長く感じたんだって。何ていうのかなぁ……俺さ、今まで誰かを好きになった事なかったからさ。会えない時間がこんなに辛いとも思ってなかったし、声聞いてるだけじゃ物足りないなんて思ってもいなかったんだよね。こうして、触れて。匂いとか、暖かさとか。そういうの感じたくなるなんて、自分でも思ってなかったから……」

 芝浦はそう語ると顔を上げ、やっと人心地ついたような笑顔を向ける。
 これが初めて恋を知る男の顔なのだろう。
 キスもセックスも初めてではなかったが恋をするのは初めてだという芝浦が見せる表情は時々やけに純粋で何処かあどけなく、だからこそ愛しく思う。

「……好きになる事が、こんなに幸せになれる事だって全然思ってなかったよ」

 はにかんで笑う芝浦の頬に自然と手が触れていた。

「どうだ。抜け出して来た甲斐はあったか?」
「あったあった。やっぱ会いに来て良かったよ。この後も興味のない上に息の詰まるような会話が続くと思うとウンザリだもん」
「そうか……それなら、もう少しだけ……お前が頑張れるように……」

 手塚は最後まで語らず、芝浦と唇を重ねる。
 芝浦は突然のキスに少し驚いたように身体を震わせたが、すぐに全てを受け入れるよう身体を預けてくる。
 唇を舐り、舌を絡めて慰めるそのキスはいかにも手慣れていて心地よくすらあるのに、唇を離した時の芝浦はまるで初めてキスをされた少年のように顔を真っ赤にして俯くのだ。

「……どうだ、頑張れそうか?」
「あ、ありがと……うん。頑張れそ……頑張れそうだけど、早く終らせたいって感じかな。全部終ったらまた遊びに来るからさ、その時は……もっとぎゅってしてくれよ。な?」
「当たり前だ。焦らされてるのは俺も一緒なんだからな……ほら、行って来い」

 軽く肩を叩いてやれば、芝浦は名残惜しそうに離れる。

「あぁ……行ってくる。また、絶対手塚のところに戻ってくるから、それまで待っててくれよなッ」

 部屋を出る芝浦の背を見送れば、部屋に来た時と比べ幾分か気力を取り戻した風に見える。

 自由業の手塚と違い、芝浦は何かと付き合いが多い。
 大学生という身分だから学業にも手を抜けず、会えない日や待たされる日は手塚の方が多かった。
 だがあれほどまでに自分と会う時間を心待ちにしているのだと思えば、待たされるのも存外に悪くないとも思う。

「さて……テレビでも見ながら、もう少し横になってるか……」

 一人そう呟きながら、唇に触れる。
 そこにはまだ僅かにだが温もりが残っていた。

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インターネット駄文書き
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