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インターネット字書きマンの落書き帳

   
非道い事になれてるお坊ちゃんのはなし。(みゆしば)
平和な世界線で普通に付き合っている手塚と芝浦の話です。(挨拶をかねた幻覚の端的な説明)

手塚がいつも優しいから不安になって「もっとムチャクチャにして」と頼んでしまう。
そんな芝浦くんの話を書きましたyo!

このシチュエーション、俺としては「よく書いてるんじゃないか」というか。
「また書いたのか」というか。
何度やってるんだネタに入るとは思うんですが……こう……。

サビなので何度でも歌いたい。
みたいな感じで許して頂ければ幸いですッ!




『普通のままでいればいい』

 愛されているのを疑った事はない。
 だがそれでも時々不安になるのは、手塚があまりに優しすぎるからだろう。

 これまで芝浦を抱いた男たちは、自分の欲望を隠そうとはしなかった。
 それは芝浦自身が「割り切った身体だけの関係」を望んだのもあり、相手もそれを知った上であえて「恋人のような存在には出来ない欲望」の吐け口に彼の身体を選んだというのは少なからずあっただろう。

 だが芝浦を愛し、恋人になりたいと願った男たちさえ少なくない欲望を芝浦の身体で満たそうとする事を辞めなかった。
 それは時に暴力的な支配欲として牙を剥き、芝浦の身体を欲しいがままに穢し、犯しつくすのだ。

 そんな経験を、幾度もしていたからだろう。
 手塚との行為は優しくくすぐったいくらいでそれは幸福なのだが、同時にそれまで嫌という程に男たちの本性を見てきた故に感じてしまうのだ。

 手塚も本当は、ガマンしているのではないだろうか。
 芝浦に気遣ってしたい事をガマンして、優しく振る舞っているんじゃないだろうか、と。

「あのさぁ……海之。海之、ひょっとしてガマンしてる?」

 だから、その日は思いきって聞いて見る事にした。

「俺の恋人だからって、海之がガマンする必用ないっていうかさ……俺けっこう非道い事されるの慣れてるし。無理矢理とか、そういうの好きだったら遠慮しなくていいから、俺に非道い事してもいいよ?」

 突然の提案に、手塚はやや困惑したような表情を向ける。
 芝浦の言葉その意味を計りかねているといった所だろうか。

「だから、何というのかなァ……男ってさ、恋人には嫌われたくないからって、えっちの時本当にしたい事ガマンしてやらない……みたいな所あるじゃん? 恋人には出来ないプレイをするため風俗に行く奴とかもいるんでしょ? 俺はノンケのそういうの詳しくないけど……」

 だが、芝浦に対して非道い事をしてきた男はいた。
 その多くは『恋人には出来ないから』といった言葉を残したのもまたよく覚えている。

「恋人にしたくないから、他の誰かにする……っての俺、絶対許さないからね? ……恋人でも俺は海之になら全然、非道いことされてもオッケーだし。海之が何望んだって俺、何だってやれるからさ……俺に遠慮しなくていいからね?」

 そこまで聞いて、手塚はようやく合点がいったような顔を見せた。

「なるほど、お前には俺が遠慮しているように見えるのか」
「うーん、遠慮している……とまでは思わないけどさ」

 芝浦は眼を閉じ少しのあいだ思案する。
 手塚は優しく接してくれてはいるが、セックスが長く激しい所があるのは確かであり元より感度の良い芝浦は何度も絶頂に達した結果気を失う事が少なくはなかったからだ。
 手心を加えようとしていれば、気絶するまで抑えがきかないといった事は普通ないだろう。

「……うん、正直いってアレで遠慮してるんならかなり絶倫? って思うけど。ンでも海之ってプレイはわりとノーマルじゃん。基本的に部屋かホテルでしかしないし、縛るくらいの事はするけど無理矢理襲ってくる、みたいな事ないから……ちょっと心配になっちゃって」

 当たり前のようにそう告げる芝浦に対して、手塚はやや呆れる。

「俺からすれば、そういうプレイを当然のように受け入れるお前の胆力が普通に思えないがな……まったく、いくら俺の身体を教えても、変な経験が抜けないのがお前の困った所だな。やけに物覚えがいいというか……」
「へへー、これでも結構、頭いい方だからねー」
「……覚えが良すぎるというのも困りものだな。お前としては俺を気遣っているつもりだろうが過去の男と比べられてる気がして嬉しくはない」
「えっ? ゴメンゴメン、そんなつもりは無かったんだけど。ただ……海之って優しいから、なんか心配になっちゃうんだよ。俺、本当にこれでいいのかなーって……」

 手塚は一つため息をつくと、芝浦の頭をくしゃくしゃとなで回す。
 そして不安そうに毛布の端を握る芝浦に優しい表情を向けるのだ。

「心配しなくても、お前は俺の求めるもの全てを満たしてくれている。だから別段、特別な事なんか必用ないんだ。俺にはな」
「えー、俺ちゃんと海之にご奉仕できてる? ホント、何も求めないから不安になっちゃうんだけど……」
「貪欲なほど、俺は求めてるぞ」

 と、そこで手塚は芝浦の肩を軽く押し、ベッドの中へと深く沈める。芝浦もまた特に抵抗する事なくされるがまま、その腕を受け入れていた。

「……俺は、お前に俺だけを見て欲しいと思っている。俺だけを愛して、他の連中が入る余地など一切無いようにしたいと。溺れる程に落ちる程に俺だけを愛して、俺だけに満たされて欲しいと……どうだ、淳? お前はもう俺なしで生きていけないんだろう?」
「あ……う、うん……俺は……もう、アンタなしじゃ生きていけない……アンタに比べたら今までの奴なんて全然たいした事ないって思うし……アンタが一番好きだし、これからもずーっとアンタだけを愛していたい……って、そう思ってるけど……」
「それなら、それでいい。俺はそれだけしか求めないが、それだけを求め続けているからな」

 手塚はそう告げ、唇を重ねる。
 それは優しく慈しむようなキスだったが、芝浦は自らの身体全てが縛られるような感覚に浸る。
 そう、これは契約のキスだ。
 激しくも優しく愛され続ける代わりに、自分もまた愛し続けなければならないという楔であり鎖だ。
 だがそれが分っていてもなお、芝浦は幸福に思えていた。
 この鎖に結ばれて、永遠にほどけないほど愛されたのならそれほど嬉しい事はないと本気で思っていたから。

(きっと、俺たちって他人から見ればそうとうオカシイ奴らなんだろうな……)

 だがそれが心地よい。
 つまるところ彼らは似たもの同士であり、だからこそ互い共にありつづける事が出来る。
 そういう関係なのだろう。

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