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インターネット字書きマンの落書き帳

   
いんぐべいさんの夢おじさんが書いた夢小説です。
グラブルのイングヴェイさんの夢おじさんなので、イングヴェイさんの夢小説書きました。
(1行で書いた人の頭がおかしくなってしまった事が理解できる説明)

イングヴェイさんの夢おじさんになりたい!
イングヴェイさんが、唯一抱いた男になりたいよぉ!
なりたいなりたい! ママー! イングヴェイさんが唯一心を許し抱いた男にしてー!

そうやって俺の中にいる2歳児が暴れるので、俺の脳内にいる2歳児が俺のために書きました。

かつてイングヴェイさんの部下でイングヴェイさんのお世話を文字通り色々していた男が、イングヴェイさんがお空に復帰したのを聞いて会いに来た話です。
夢おじさんの推定年齢は20代後半か30代前半くらいの年の割には若く見える男ですよ。

ママー、この人自分のために小説書いてるよー。
シッ、見ちゃいけません可愛そうな子ですからね……。




『空に踊り、心は堕ちる』


 騎空艇に戻るなりイングヴェイは粗末な木製の椅子にどっかりと腰掛け暫く動かずにいた。
 そんな彼の目にあたたかな蒸しタオルが乗せられる。
 閉じていた瞼の上が急に暖かくなったから驚いたのか、イングヴェイはその蒸しタオルを避け顔を上げればそこには見知った男が立っていた。

「久しぶりですね、イングヴェイさん。相変わらず酔狂な事をしているようで」

 それは、かつてイングヴェイが率いていた「伊達と酔狂の騎空団」に所属していた仲間の中でも最年少の部類に入る団員だった。
 イングヴェイが引退してから随分と歳月が流れている自覚はあったが、その顔は僅かに面影を残すだけで年頃なら壮年に入っているだろう。
 だが男にしてはやや中性的で荒事を生業とする騎空団の艇にいるとは到底思えない容姿は昔のままだったから、その姿を一目見ただけで彼が誰だかは理解できた。

「お前さん……いや、懐かしいな。どうしてこの艇(ふね)に?」

 驚いて問いかければ、男の方はどこか呆れたような表情を向けた。

「それはこっちの台詞ですよ。引退して余生は畑でも耕しながら安穏と暮すとか言ってませんでしたっけ?」

 伊達と酔狂の騎空団はかつて秩序の騎空団と同等の規模を誇る大きさではあったが、解散も突然だった。
 統率であるイングヴェイが突然一線を引くのを宣言したかと思えば、指標を失った多くの艇は散り散りになりまるで最初からそんなものが無かったかのように消えてしまったのだ。
 もちろん、最初は「二代目はどうするのか」といった事で諍いもあったが、それらにイングヴェイは一切参加せず文字通り姿を消した。
 元より団員の多くは「イングヴェイの見たい空の果て」を見たいという思いが。「イングヴェイが喜んでいる姿を見たい」という気持ちが多く彼についてきていたため、道しるべであった彼がいなければ集まっている理由などなかったから自然解体もまた早かったのだ。

「はは、ちょっと色々あってな。この歳で現役復帰、ってやつだ」
「色々って……ま、色々やらかしてましたからねェ。ツケを払わないで楽隠居なんてアンタには似合わないとは思ってましたよ」

 男はそう言いながら、イングヴェイに茶を差し出す。琥珀色の透き通った薬湯はほのかに湯気がたっていた。
 その様子を見て、イングヴェイはまだ騎空団を率いていた頃を思い出す。
 そういえば団を率いていた頃は、よくこの男が身の回りの世話をしていたものだったか。頼んでもいないのに食器の世話から茶の準備、身の回りの世話や香水といった小物が少なくなると買足しをするといった、小さい事でもよく気が付く男だった。
 同時にイングヴェイがただ一人だけ「身体を知ってる男」でもある。
 一つの艇(ふね)に一人の女を置いていたイングヴェイがただ一つだけ女を乗せてない艇にいたのが彼であり、その艇でイングヴェイの身の回りの世話を文字通り全てしていたのが彼だったのだ。

 イングヴェイの気まぐれも、女癖も全て理解した上でイングヴェイに抱かれる。
 覚悟をしていた男だったから、突然引退を決めたイングヴェイに追いすがる事もなかった。
 ただ、『忘れないでほしい』と願ってはいたが……。

「俺の顔見るまで、忘れてたでしょう?」

 男は悪戯っぽく笑って見せる。
 以前はもっと純真な笑顔を向けていたと思うが、歳を増して見せたその笑顔はどこか妖艶にも見えた。

「さぁ、どうだろうな。お前はどうだと思う?」
「そうやってはぐらかして期待させる所、アンタの非道い所だと思いますよ? ま、別にいいですけどね。コッチも別段、イングヴェイさんの『特別』になりたいとは思ってないですから」

 男はそう言いながら、イングヴェイの向いに座る。
 そして肘をつくと。

「……そう、俺は別にイングヴェイさん。あんたの『特別』になりたいとは思っちゃいないですよ。今も、昔もね。だけど俺にとってイングヴェイさん、あんたはずっと『特別』だ。俺はそれで充分なんです」

 訥々と語り、微かに笑う。
 以前と比べて随分と経験を積んだのは明らかだが、それは憂いと色気が充分に乗ったその仕草からも見てとれた。
 イングヴェイは目を細めると、薬湯へ手を伸ばす。久しぶりに会った相手の淹れた茶ではあるが、相手が毒を盛るとは思っていなかったから飲む事に躊躇はなかった。
 縦しんば毒が盛られていたとしても、かつて抱いた相手なら誰に殺されても文句はない。少なくともイングヴェイはそう思っているのもあっただろう。

「……ただの薬湯です。筋肉の痛みなどをほぐす効果があるとか。その歳で無理してるんでしょう? 大丈夫、毒なんて入れてませんよ」

 イングヴェイが躊躇なく茶を飲んだ事がかえって意外だったのだろう。男は自ずからそう告げる。

「何だ、俺と心中するつもりじゃなかったのか?」
「まさか。伊達と酔狂の伝説が毒殺なんてつまらない理由は似合わないでしょう」
「俺を殺した毒だ。有名になるに決まってるだろう?」

 イングヴェイは軽口を叩くと、喉で笑う。その様子を見て、男の表情が懐かしさに緩むのが分った。

「変わってないですねぇ、アンタは」
「お前さんは随分と変わったな? ……以前より男っぷりが良くなった。今は何をしている」
「他の艇に乗ってますよ。小さい騎空団で主には輸送ですが、時たま傭兵の真似事なんかもしてます。俺はそこの副官ですよ」
「副官か、お前さんなら団長でもやっていけそうだがな」

 薬湯を啜りながら言えば、男は大げさに肩を上げたジェスチャーをする。

「まさか。アンタを知ってる俺にとって団長といえばアンタだけですからね。俺が団長を名乗るのはどうも烏滸がましい気がしちまって上に立つのは腰が引けちまうんだ。意気地無しでしょう? でも、俺は存外に副官って立場が向いてるようで気楽にやらせてもらってますよ」

 その口ぶりは皮肉に満ちてはいるが今の境遇に満足しているのは嘘ではないようだった。
 やはり空にあり、空にいつづけ日々を過すのが彼には向いているのだろう。責任を負いすぎない立場というのも彼の性格に合っているはずだ。昔から何かと考えすぎて慎重になりすぎたり、思い詰めすぎて背負いすぎる所があったから上の立場にいると重責で潰れそうなか弱さが彼にあったのをイングヴェイは思い出していた。

「そうか、お前さんが楽しそうで何よりだ」
「そりゃ、どーも……イングヴェイさん。アンタも今の方が楽しそうですよ。やっぱり艇を降りて清貧な生活なんてアンタには向いてなかったんじゃないですか?」
「おいおい、これでも解散した後は清く正しく真面目な毎日を過していた老人にかける言葉かそりゃぁ……」

 とは言うものの、イングヴェイ自身も陸の上で安寧を得ていた時よりも今の方が充実していたのは事実だった。
 団を解散した事も後悔していなければ引退してから暢気に過していた日々も愛おしい時間であったが、空の上で戦いに身を投じている今を楽しいと思っているのは紛れもない事実だった。
 以前のように団を率いる責任がない、気楽な立場になったのもあるのかもしれない。最もその点で言えばイングヴェイは団を率いていた頃から重責を感じるタイプではなかったが。

「……身体、良くはないんでしょう」

 薬湯を飲み干し空になった器を下げた時、男は呟くように言った。
 元より引退の理由、その多くは空を駆ける程に身体が持たなくなったから……というのが大部分を占めていた。
 騎空団を率いている身として空で死ねるのならそれも良かったが、そうするには「伊達と酔狂の騎空団」はあまりに大きくなりすぎていたのだ。
 空で突然死に至った時の混乱を考えれば、そうなる前に身を引いて自分の見える範囲での諍いが起きてくれればそれを静める事は出来る。
 巨大な団を率いる身のケジメとして引退する事がイングヴェイの選んだ道だという事、彼もまた少なからず気がついていたのだろう。

 同時に身体が治ったのならまた小さい騎空艇でも得て空に戻りたいと夢想していた事もある。
 生憎、身体が治る事はなかったのだが……。

「なんで空に戻って来たんですか。アンタは……」

 男はそれ以上言わず、ただ唇を噛みしめた。
 だが理解しているのだろう。

 空にありつづければ、イングヴェイの死はそれだけ近くなるという事を。

「だから言っただろ、色々と。過去のケジメをつけなきゃいけなくてな……どうしても捨て置けない事が、空に出来ちまったんだ。借りは返さないといけないだろう?」
「律儀なんですねェ。ツケるだけツケといて踏み倒していくモンだとばかり思ってましたよ」

 男は目を潤ませながら、耐えきれなかったようにイングヴェイの身体に縋り付く。戦いを終えたばかりで身体は痛んだが、眼前の男が心に抱えてきた思いを前にすればその痛みなど些細なものだった。

「……何で帰って来たんですか、バカなんですか? 伊達ってのは死にたがりの事ですか? 酔狂ってのは生き急ぎの事ですか? そのまま年寄りは田舎くさい島に引っ込んで毎日昼寝でもしてるのが似合いだって言うんですよ。それなのにアンタはまた戻って来て、借りだのツケだの律儀に返そうとする。ホントにアンタはバカですよ。大馬鹿野郎のまま、何も変わらない……どうしてアンタは何も変わってくれないんだ……」

 もしイングヴェイが年老いて臆病になっていたのなら。
 引退したまま静かに息を引き取っていたのなら、男はイングヴェイを諦める事が出来たのだろう。だが戻って来てしまったから、彼もまたここに来てしまったのだ。
 忘れられない特別な男の前に。

「……そうだ、俺は昔と何も変わらん。伊達と酔狂なんて洒落た言葉で誤魔化してるがどこまでも空に生きてる、ガキくさい馬鹿なままだ。嫌いになったか?」
「どうしてそんな下らない事を聞くんですか? ……愛した男が以前とまったく変わらない姿でいたのなら……それが、どうして嫌いになる事が出来るっていうんです」

 抱きしめる力が自然と強くなる。
 以前より幾分か太くなり焼けた肌をしているが、その目がただ真っ直ぐにイングヴェイだけを捉えているのは何も変わっていない。以前抱いた愛しい「子猫」のままだった。
 だからイングヴェイは、彼の唇をなぞる。

「それなら……抱いてもいいな? 愛しいお前を……ただ一人だけ愛した、俺の男を」
「好きにしてください。いや……好きに、されたい……アンタに好きにされたいんです。アンタには何をされてもいいし、俺になら何をしたっていい……俺を好きにしていいのはこの空でイングヴェイさん、アンタだけだから……」

 二人の唇は自然と重なる。
 それは二度と触れる事のないと思っていた互いの肌が触れる証であると同時に、愛しいものと最後の交わりも意味をしていた。

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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