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インターネット字書きマンの落書き帳

   
初めてもらったプレゼントの話(みゆしば)
平和な世界線で、いずれ付き合う事になる手塚と芝浦の話です。
いずれ付き合う事になる未来が確定しているものの、まだ付き合ってない頃。
一方的に手塚に対して片思いをしている(と思っている)芝浦くんが、急にいつもの公園から姿を消した手塚を心配したり、プレゼントをもらってなんかはしゃいだり。
そうして一喜一憂するような話ですよ。

芝浦くんはこの頃自分の一方的な片思いだと思ってますが、手塚くんも少なからず気にかけているので実は片思いじゃないんですよね。
まぁいいですけど。

そんな話でーすはーいよんでー。
俺の幻覚読んでー。




『最初にもらったへんなやつ』

 芝浦が公園に訪れれば、久しぶりに占いの店を出す手塚の姿があった。
 一週間ほどは店を出していなかっただろうか。
 最後に会った時には特に何も言っていなかったので病気でもしたのかと心配していたが、今日の様子を見る限り元気そうな様子だった。

(店の場所、変えたのかと思ったけど良かったァ……見た感じ普段通りだし、病気とか事故とかじゃなさそうだし、何処行ってたんだろ……)

 手塚が店を出さなくなって最初の二日は、ただ気まぐれで店を出してないか別の場所で店を出しているかくらいにしか考えてはいなかった。
 だが3日を過ぎて何の音沙汰もないと流石に不安になる。
 何せ芝浦と手塚の関係は「占い師とその店に来る客」でしかなく、手塚が店をを出す事を止めてしまえばもう会えなくなる可能性が高いのだから。
 休日は、手塚が以前言っていた『雨の日や休みの日は、もっと人通りの多いショッピングモールなどで店を出している』といった言葉を頼りに有名どころのショッピングモールを意味なくブラついてみたりもした。

(なーんて……顔見て、嫌われてないだけで充分って思ってる癖にいなくなると探しちゃうなんて、本気で好きになってるみたいじゃん。これじゃ、完璧にストーカーだよね)

 久しぶりに見た手塚を前に、芝浦はそんな事を考える。
 実のところを言えば自分の思いがただの憧れから本気の想いに変わりつつある事には気付いていたし、そうでなければわざわざ行き慣れていないショッピングモールなんて理由もなく行くはずもないのだ。
 だがそれを自分で認めてしまう訳にはいかなかった。
 女性が恋愛対象である男を好きになってもただ空しいだけだという事くらいとっくに分っていたからだ。

(思い切って告白してフられちゃえばいいんだろうけど……)

 そう思う事もある。
 だが告白する事自体が芝浦にとって大きなリスクになるのもまた彼はよく理解していた。

 世間の常識はマジョリティを優遇し、マイノリティである人間は貶めても、笑いものにしても構わない。そういった風潮や空気はどこかに必ず存在する。
 思春期を過ぎた時から好きになる相手は男だけだったという芝浦の性嗜好はマイノリティ側であり、理解出来ない相手には不潔で穢らわしいものだと思われても『仕方ない』とされるのが今の常識でもある。
 いずれ「芝浦の人間」として人の上に立つ事を期待されている芝浦は、その立場上他人に貶められ、笑いものにされるような隙を見せる訳にはいかなかった。

 だから胸に秘めておくしかない。
 人に弱みを見せる訳にはいかないし、手塚と会って話が出来なくなる機会を永遠に失いたくもないからだ。

(なーんて、あんまり色々考えるの、らしくないよね。どうせ俺の行く先はもう決まってるんだから、ウダウダ考えても仕方ないって一番分ってるの俺だってのにさ)

 幼少期から父の望む跡取りとして育てられ、それに必用な教育だけを与えられてきた。
 資産家である芝浦の一族を継ぐ事になれば、世間の誰もが羨むような生活が保証される。
 芝浦は生まれながらにして「勝利」を約束されているのだ。だからその道を違わず歩いていけば、それだけで成功者になれる。
 そこに「芝浦淳」個人としての理想や価値など入れる隙間などないのだから。

「占い師さん、久しぶりー。暫く見なかったけど、どっか行ってたの?」

 心配していた気持ちなどおくびにも出さず、普段と変わらぬ様子のまま声をかければ手塚はゆっくりと顔を上げる。

「芝浦か、心配したか?」
「べ、別に心配とかしてないし……ってか、何で俺が心配しなきゃいけないワケ?」

 図星をつかれ一瞬狼狽えるが、手塚はそんな芝浦の様子に気付く事もなく続けた。

「いや、実は友人に頼まれて手伝いに行ってたんだ。アルバイト……みたいなものだな」
「へぇ、占い師さんもいるんだ。トモダチ」
「……俺にどういうイメージを抱いてるんだ、お前は。最も、お前の想像する通り決して友達の多い方ではない。というのは認めるがな」
「それで、何処行ってたの。一週間くらい見てなかった気がするけど」

 そう言って、芝浦は「しまった」と思う。一週間はいなかった事を気にしていたと感づかれたのではないか、そう思ったからだ。
 だが手塚は相変わらず、特に気にした様子も見せず続けた。

「コンサートの裏方スタッフみたいなのをやるために、N県まで行っててな。いや、コンサートは3日程度だったんだが、準備や片付けも結構大変でな……」
「コンサートスタッフって奴だ。だとすると、けっこー人いたんじゃない? 占い師さん、そういう人がいーっぱいいる所で指示されて動くのも、力仕事もそんなに得意そうじゃないもんね」

 芝浦に言われ、手塚はどこか噛みしめるように頷いて見せる。

「いや、まったくだ。改めて自分が人に使われるのに向いてないと感じた……一人で好きな事に没頭している方が気楽だな。最も、拘束時間が長かったかわりにその時間いるだけでもちゃんと賃金が支払われるのはありがたいが……」

 珍しく金の話をする手塚を見て、芝浦は公園で店を出し占いをするなんて思った以上に稼ぎにならないものなのだろうと思った。
 普段見ている限り客足は多い方に思えるし、芝浦のようなリピーターも少なくはない。路上占いとしてみれば随分と繁盛しているように見えるが、それでも毎日の客足に左右される仕事はお世辞にも安定しているとは言い難いのだろう。

「ふーん……で、N県まで行って何か観光とかしてきたの? 今の時期だとまだ雪は多そうだけど、あそこ結構食べもの美味しいよね」
「いや、それがな……メインになったコンサート会場は観光地でもない上、周囲に何もないホテルだった上、コンサート中も殆どホテルで生活していたから行って帰って来るのが精一杯だった。食事も弁当ばかりで、物珍しいものを食べてきたワケでもない」
「ははッ、残念だったねー、折角遠出したのにそれじゃ、このへんのコンサートスタッフと一緒じゃん」
「あぁ、そうだな……だが、ちょっと待ってくれ」

 そこで手塚は自分の荷物をあさると、小さな包みを取り出すと「もっとちゃんとしたものを買って来たかったんだがな」言いながらそれを芝浦に手渡した。不思議に思いながら開けてみれば、中には犬なのかネコなのかも判別できないような、ゆるいマスコットキャラクターが入っている。

「ははッ、なにこれ? カワイーじゃん……ご当地ゆるキャラって奴?」
「いや、俺もよくわからん」
「えー、よくわからないのに買って来たの? で、そのよくわからないものを俺にくれるの?」
「お前は普段から色々と差し入れも貰うし、この前も土産をもらったばかりだからな。本当はもう少しマシな土産を買いたかったんだが、時間も余裕もなくてこんなモノになってしまったが……なに、気に入らなかったら捨ててくれ」

 手塚はそう言いながら、少し視線をそらす。
 どうやら芝浦のために土産物をと思い、少ない時間で選んできたものらしい。
 それにしては随分と変わったものを選んできたとは思うが、それでも。

「へー……面白いね。占い師さん、こういうお土産選んだりするんだ……気に入ったよ。ありがと、大事にするね」

 手塚が自分の事を考えて、少ない時間のなか一生懸命選んでくれた。
 ただその事実が嬉しくて、芝浦は自然と笑顔になる。

 高価なプレゼントなどいくらでも貰ってきた。
 服でも靴でも時計でも常に一流のものを身につけるよう言われ、服でも鞄でも小物でも自分を飾るのに困った事はない。
 芝浦家の機嫌伺いのための贈答品や芝浦淳という人間そのものを欲しがる男たちの貢ぎ物なども数多く受け取ってきた。

 だが、こんなに嬉しいと思ったプレゼントは初めてだ。

 他人からもらったプレゼントの殆どはクローゼットの奥に詰め込み、身につける事はない。中にはパッケージさえ開けてないものもある芝浦であったが、その時もらったプレゼントは手塚と恋人になった今でも大事に鞄につけている。

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インターネット駄文書き
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