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インターネット字書きマンの落書き帳

   
遠くに行ってほしくない、ただそれだけだった。(ダウジャミ)
ダウジャミへの愛を叫ぶフォロワーさんが誕生日だったので、自分なりにダウジャミを。
普段書かないタイプの、少しえっちな雰囲気でかいてみま……した!

僕自身が普段あまり書かないシチュエーションだったのでうまくいってるかわかりませんが、少しでも楽しんでくれれば……うれしいな!

こう、ジャミルが英雄。あるいは伝説と呼ばれ遠くに行ってしまう人間として選ばれた。
けれども、それを「コソ泥ジャミル」という何でもない普通の世界にとどめておく、最後の存在がダウドだったらいいなぁ……という気持ちも、若干込めております。

善しにしても、悪しきにしても。
彼を人間の範囲内にとどめておける最後の存在、ダウドくんが枷なのかぬくもりなのか。
それともその両方なのか……。

なんて、思ったりしてネ。
ウヌン~。




『贖罪の抱擁』

 ベッドの中でぐったりとうつ伏せになるジャミルを眺めるたびに、ダウドは深い後悔に苛まれるのだった。
 初めて唇を交わしたのは、もうずいぶん前のことになる。
 それから二人きりの夜は自然と抱き合い求め合うようになっていた。

 溺れるようなキスを交わし、肌が触れ合っている時は夢中で貪っているから考えないでいられたが、すべてが終わり冷静になると酷く不安になる。

 こんな事をしていいのだろうか。
 ジャミルは本当にこんな事を望んでいたのだろうか。
 内心ではダウドとこんな関係を結ぶ事など望んでおらず、もっと広い世界を旅して、様々なものを見聞きし、冒険のある毎日を求めていたかったのではないだろうか。

 だがそれらのすべてを、ダウドが奪ってしまったのだ。
 彼がジャミルの唇を、身体を、その運命をダウドが求めてしまったから、彼は遠くに行く足を止めてしまった。
 ダウドのそばにいるために、エスタミルへ戻る決意をしたのだ。

 彼の覚悟はうれしかったが、同時に思うことがある。
 ジャミルは親友であり幼馴染である自分をつなぎとめるために身体を許したのではないだろうか。自分のわがままで彼の自由を奪ってしまったのではないか。
 彼はきっと、英雄あるいは伝説と呼ばれる素質があったはずなのに……。

 そんな事ばかり考えてしまうのは、夜風が冷たかっただけではなかっただろう。

 隣ではジャミルが静かに寝息を立てている。
 シーツの下はお互い裸身で、月の下に照らされたジャミルの身体は男性にしてはしなやかなシルエットを浮かべていた。

 二人で部屋に入ってすぐ、どちらかともいわずに口づけを始めた。そのまま転がるようにベッドへ向かい、存分に身体を重ねる。 互いを求め合う中では何度も「愛している」とささやきあっただろう。
 だが行為の最中は一種の熱狂にある。
 本心でなくともただ快楽を求めたい一心で甘い言葉などいくらでもささやく事ができるものだ。
 ましてやジャミルはもともと口が達者なのだから。

 だから夜、一人起きると不安になる。
 ジャミルの事を相棒としてではなく、一人の人間として。男として。恋慕の情を抱いているのに気付いたのはごく最近のこと。
 エスタミルから逃げるように去り、各地を転々と旅している時だった。

 最初はただの何気ない感情から。
 ジャミルがほかのだれかと……それが男か女かは問わず、自分以外の誰かと親しく話すのを見るだけで苛立ったり、焦ったりするのに気付いた事からだろう。
 この苛立ちは何だと考えるうち、ジャミルを見ているだけで気恥ずかしいがだが幸せな気持ちになる事を知る。
 それが恋だと察するのは、鈍感といわれるダウドでもそう時間はかからなかった。

 ダウドはジャミルにとって幼馴染であり、誰より長く同じ時間を過ごしていた。
 彼の相棒としていつもそばにいるから、ジャミルが軟派な気質である事もよく知っている。

 ジャミルは女性が好きなはずだ。男の自分なんて最初から眼中にない。
 秘めていよう、この思いは。
 そう思ったのは、ジャミルの相棒として存在する今の関係を壊したくなかったからだった。

 自分が「好きだ」と伝えたら、この関係は簡単に壊れてしまう。
 そしてもし壊れてしまったら、ダウドの恋が終わるだけではなく、十年以上付き合ってきた親友との関係も終わってしまう……ただそれが、怖かったのだ。

「おいら、ジャミルの事好きなんだよ。だから、どこにも行ってほしくないんだ」

 そう思っていたからこそ、遠くに行こうとしているジャミルを前になぜあんな事を口走ったのか、自分でもよくわからなかった。
 ただ、今のままだとジャミルはどこか手の届かない場所に行ってしまいそうで……自分の知る彼ではなくなってしまいそうで、ただそれが恐ろしくて。

 もしかしたら自分の存在が。言葉が、彼を「英雄」という存在から元の「ジャミル」という一人の盗賊に戻してくれるのではないか。
 そんな思いも、あったのかもしれない。

 ジャミルは最初驚いた顔をして、それから困ったような表情に変わる。
 きっと「自分にはそんな気はない」とダウドを突き放すのだろう。そんな気がしたから、ダウドは少し強引にその唇をふさいだのだ。
 彼に自分を、拒否させないために。

 ……あの時のキスが一つの分岐点だったのかもしれないと、今になれば思う。
 キスをした時、ジャミルは身体を震わせて驚いたようだったがそれでもダウドを受け入れた。  そのまま強引にベッドへ押し沈めようとする彼を見て「あんまり焦るなよ、俺はどこにもいかないからさ」そうやって柔らかく笑ったのは、よく覚えている。

 その笑顔を見て、「ジャミルはもうどこにもいかないのだ」と。
 もう「ダウドの相棒・ジャミル」のままでいてくれるのだと、そんな気がして安心したのだが……。

 今になって改めて思うのだ。
 本当はジャミルは、コソ泥ではなく世界を見て回りたかったのではないか。
 エスタミルに自分を置いて、もっと遠くへ行きたかったのではないかと。

 その足を自分がとどめてしまったのだとしたら、それは彼にとっても大きな損失だったのではないか、と。

「ダウド、まだ起きてるのか?」

 月明りの下、ジャミルが身じろぎするのがわかる。 ダウドの気配を感じ取り、起こしてしまったのだろう。

「あぁ、ごめん。月がきれいだったから、ちょっとぼんやりしてたんだ」

 ダウドは慌てて作り笑いをする。
 窓から見える青白い月は夜空を朧気に映し出していた。そんな彼を少し見ると、ジャミルはとんとんとベッドの隣をたたく。隣で寝ろ、という事だろう。
 ダウドは誘われるがままにシーツの中に滑り込めば、ジャミルは嬉しそうに彼を抱き寄せた。ベッドから離れて窓の外を眺めていたからか、自分の身体は思いのほか冷えていたようだ。

「おまえ、冷たいなぁ。どれだけ月なんか見てたんだよ」
「あはは……おいら、なんかぼーっとしてたみたいでさ。たまにこう、ぼーっとしちゃうのおいらの悪いところだよね」
「そうだな、こんなに身体が冷たくなるまでぼーっとしてるのは悪い癖だ」

 ジャミルは強くダウドを抱くと、ぬくもりを彼に分けようとする。
 その身体からはかすかにジャスミンの香りが漂っていた。

「……だけど、きれいな月だ」

 青白い光はカーテンのように空いっぱいに広がり、海のようにも見える。

「ダウド。俺は、お前を抱きしめて一緒にこうして月を見る事ができる……そんな今も、悪くないって思ってるからな。だから……」

 抱きとどめるジャミルの手が、一層強くなる。 そして額が重なり、吐息が頬にかかるほど近くなっていた。

「だから、俺のそばにいてくれ。俺から離れないでくれ、ずっと一緒に……」

 彼を、とどめてしまったのではないか。
 そんな後悔をする事もある。
 だがジャミルが自分を求めてくれるのなら。

「わかってるって、おいらはずーっとジャミルといっしょにいるよ。ずーっと、ずーっとだ」

 彼をとどめてしまった者として、その職務を全うすべきだろう。
 ダウドはジャミルの身体を強く抱くと、自然と唇を重ねる。

 英雄への翼を折った罪は、この身体と心すべてを彼に差し出す事。
 大事なものは自分の命だけしかもたないダウドにとって、ジャミルに命も人生もささげる事が唯一の贖罪であり、また幸せを感じるただ一つの方法であった。

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インターネット駄文書き
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