インターネット字書きマンの落書き帳
特別以上、恋愛未満のヒカセンとウリエンジェの話
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光の戦士×ウリエンジェの話を書きました。
時空的には暁月クリアくらいのイメージですが、特に大きなネタバレとかはない風に書いてます。
ヒカセンは一般男性口調なので、一般夢ヒカセンに対応です。
(ヒカセンはひろしです、に近いイメージ)
お互いのこと気になるし気にしてるけどまだ恋愛にいたってない光ウリをどうぞ。
光の戦士×ウリエンジェの話を書きました。
時空的には暁月クリアくらいのイメージですが、特に大きなネタバレとかはない風に書いてます。
ヒカセンは一般男性口調なので、一般夢ヒカセンに対応です。
(ヒカセンはひろしです、に近いイメージ)
お互いのこと気になるし気にしてるけどまだ恋愛にいたってない光ウリをどうぞ。
『星を飲む器』
いつだって華やかな場所は苦手だ。皆が光の戦士とはやし立て、解放者と尊敬の眼差しを向けられるからだ。それだけの事をなし得たのだから当然だろうと言われても人前に立つのはどうにも苦手だし、未だに慣れないでいる。適当な挨拶を済ませ会場から早々に逃れれば、冷たい風の吹きすさぶテラス席では先にウリエンジェが涼んでいた。
「おや、あなたもこちらにいらしたのですか」
「あぁ、人が多い所は苦手でね。皆を前にすると、何を話せばいいのかわからないんだよ」
ウリエンジェの隣に立てば、彼は静かに目を閉じ夜風に浸る。光の戦士と言われる立場なのに情けないだとか、英雄なのだからそろそろ慣れろなんて事をウリエンジェが言う事はなかった。ウリエンジェはこちらを最初から英雄などと思っておらず、一人の人間として、仲間として、友人として見てくれていたからだろう。
たまたま、自分のしてきた事が人の役に立っただけ。争いの渦中に祭り上げられただけ。ただそれだけで、目立ちたがり屋でもなければ英雄になろうとした訳でもない一人の男としてこちらを見てくれる数少ない理解者の一人がウリエンジェだった。
だからだろう、いつだって、ウリエンジェの隣は心地よい。自分を特別視することもなければ英雄として神聖視することもなく、一人の仲間としてあるがままに受け入れてくれる彼との距離感は心地よくあった。
だがその心地よさは時に不安にもなる。
自分も同じようにウリエンジェを特別視せず、一人の仲間として見てやれているだろうかと。重荷を背負わせてはいないだろうかと。そんな考えに囚われてしまうのだ。
実際に、ウリエンジェは過去何度も重荷を背負わされている。
いつも曖昧に語り本心を隠そうとし、辛い時こそ笑ってこちらを気遣おうとする優しい男なのだ。膝を付いて号泣したい時でさえ、何でもないようにふるまい成すべき事を遂げるよう気丈に振る舞ってみせるくせに、内実は誰より繊細なのだからこちらも不安になる。
自分は正しいと思った道を信じて進んで来たが、その事がウリエンジェにとって負担になっているのではないか。知らないうちに彼を傷つけてしまうのではないだろうか。
失うものが多い路行きだったからこそ、今隣にある存在を失うのが何よりも恐ろしかった。
「心配せずとも、私は大丈夫ですよ」
その時、まるでこちらの心を見透かしたかのようにウリエンジェは笑った。
「私は、湖に浮かぶひとひらの葉のようなもの。自らの路行きに惑い、大きな波に揺られればすぐに沈んでしまうか弱い存在です。そんな私の標となってくれたのが、貴方ですから。貴方という標に向かっている時だけ、私は強くなれるのです。だから……私は好きでこうしています。その果てにどうなったとしても……どうか、貴方が気に病まないで欲しいのです。私は満足して、この場におりますので……」
好き、という言葉に一瞬戸惑う。ウリエンジェの口から好意の言葉が紡がれるたび、胸の中がざわざわと音をたててかき乱されるのがここ最近の悩みであった。当のウリエンジェは気にしてない様子ではあるのだが。
「そ、そうか。それならいいんだが、無理しないでくれよ……俺もウリエンジェの事が大切なんだ。好きだから、失いたくない……」
ウリエンジェの好きは親愛の情で仲間の延長だろう。それなら自分だって同じように、信頼を好意で紡いでもいいのではないか。そう思い告げた言葉に、ウリエンジェは予想外にもど驚きを露わにしてみせた。
「そ、そんな。私など、貴方には何も……」
「そんな事はない、俺だってウリエンジェには何もしてやれてないし……」
気付いたら二人お互いに頭を下げあい、どちらかともなく笑い出す。
「何だ、大の男が二人でお辞儀をしあうのも変な話だなぁ、やめておこうか」
「そうですね……お見苦しい所を……」
頬を赤らめ俯くウリエンジェを前に、手にした杯を差し出していた。何とはなしに手にとって飲まずにここまできた赤ワインは並々と満たされ夜空の星を映している。
「……飲むか?」
「はい、いただきます……」
ウリエンジェは髪をかきあげ耳元でおさえながら、満たされたワインに恐る恐る口を付ける。
彼の中にはまだ愛しい人がいて、自分の思いが届くことはないのだろう。だが今は、わからせようとも思わないし分からなくてもいいと思った。ただ目の前で無防備に差し出した杯の酒を飲み干してくれるほど信頼してくれるのならそれでいい。
僅かに酔ったウリエンジェの頬は、ワインと同じようにうっすらと赤みがさしていた。
いつだって華やかな場所は苦手だ。皆が光の戦士とはやし立て、解放者と尊敬の眼差しを向けられるからだ。それだけの事をなし得たのだから当然だろうと言われても人前に立つのはどうにも苦手だし、未だに慣れないでいる。適当な挨拶を済ませ会場から早々に逃れれば、冷たい風の吹きすさぶテラス席では先にウリエンジェが涼んでいた。
「おや、あなたもこちらにいらしたのですか」
「あぁ、人が多い所は苦手でね。皆を前にすると、何を話せばいいのかわからないんだよ」
ウリエンジェの隣に立てば、彼は静かに目を閉じ夜風に浸る。光の戦士と言われる立場なのに情けないだとか、英雄なのだからそろそろ慣れろなんて事をウリエンジェが言う事はなかった。ウリエンジェはこちらを最初から英雄などと思っておらず、一人の人間として、仲間として、友人として見てくれていたからだろう。
たまたま、自分のしてきた事が人の役に立っただけ。争いの渦中に祭り上げられただけ。ただそれだけで、目立ちたがり屋でもなければ英雄になろうとした訳でもない一人の男としてこちらを見てくれる数少ない理解者の一人がウリエンジェだった。
だからだろう、いつだって、ウリエンジェの隣は心地よい。自分を特別視することもなければ英雄として神聖視することもなく、一人の仲間としてあるがままに受け入れてくれる彼との距離感は心地よくあった。
だがその心地よさは時に不安にもなる。
自分も同じようにウリエンジェを特別視せず、一人の仲間として見てやれているだろうかと。重荷を背負わせてはいないだろうかと。そんな考えに囚われてしまうのだ。
実際に、ウリエンジェは過去何度も重荷を背負わされている。
いつも曖昧に語り本心を隠そうとし、辛い時こそ笑ってこちらを気遣おうとする優しい男なのだ。膝を付いて号泣したい時でさえ、何でもないようにふるまい成すべき事を遂げるよう気丈に振る舞ってみせるくせに、内実は誰より繊細なのだからこちらも不安になる。
自分は正しいと思った道を信じて進んで来たが、その事がウリエンジェにとって負担になっているのではないか。知らないうちに彼を傷つけてしまうのではないだろうか。
失うものが多い路行きだったからこそ、今隣にある存在を失うのが何よりも恐ろしかった。
「心配せずとも、私は大丈夫ですよ」
その時、まるでこちらの心を見透かしたかのようにウリエンジェは笑った。
「私は、湖に浮かぶひとひらの葉のようなもの。自らの路行きに惑い、大きな波に揺られればすぐに沈んでしまうか弱い存在です。そんな私の標となってくれたのが、貴方ですから。貴方という標に向かっている時だけ、私は強くなれるのです。だから……私は好きでこうしています。その果てにどうなったとしても……どうか、貴方が気に病まないで欲しいのです。私は満足して、この場におりますので……」
好き、という言葉に一瞬戸惑う。ウリエンジェの口から好意の言葉が紡がれるたび、胸の中がざわざわと音をたててかき乱されるのがここ最近の悩みであった。当のウリエンジェは気にしてない様子ではあるのだが。
「そ、そうか。それならいいんだが、無理しないでくれよ……俺もウリエンジェの事が大切なんだ。好きだから、失いたくない……」
ウリエンジェの好きは親愛の情で仲間の延長だろう。それなら自分だって同じように、信頼を好意で紡いでもいいのではないか。そう思い告げた言葉に、ウリエンジェは予想外にもど驚きを露わにしてみせた。
「そ、そんな。私など、貴方には何も……」
「そんな事はない、俺だってウリエンジェには何もしてやれてないし……」
気付いたら二人お互いに頭を下げあい、どちらかともなく笑い出す。
「何だ、大の男が二人でお辞儀をしあうのも変な話だなぁ、やめておこうか」
「そうですね……お見苦しい所を……」
頬を赤らめ俯くウリエンジェを前に、手にした杯を差し出していた。何とはなしに手にとって飲まずにここまできた赤ワインは並々と満たされ夜空の星を映している。
「……飲むか?」
「はい、いただきます……」
ウリエンジェは髪をかきあげ耳元でおさえながら、満たされたワインに恐る恐る口を付ける。
彼の中にはまだ愛しい人がいて、自分の思いが届くことはないのだろう。だが今は、わからせようとも思わないし分からなくてもいいと思った。ただ目の前で無防備に差し出した杯の酒を飲み干してくれるほど信頼してくれるのならそれでいい。
僅かに酔ったウリエンジェの頬は、ワインと同じようにうっすらと赤みがさしていた。
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