インターネット字書きマンの落書き帳
裏バイト:逃亡禁止「ホテル従業員」のファン創作です
裏バイト:逃亡禁止面白いですね!
11巻は「愛の話」が多かったと思いますが、個人的には最後の「ホテル従業員」に出てきた長田が身勝手すぎて大被害を出してしまっていて「びっくりするほど気持ち悪い!」ってなっちゃいました!
特に(以下ネタバレのため文字色反転) 長田の告白を断った支店長に粘着して他の人を巻き込みそれでも支店長を困らせ続けた所 が最高に気持ち悪いと思ってます!
俺は一方的に愛情を押しつけてくる人間が基本的に気持ち悪いッ!
怖いよッ!
そんな気持ちを抱きながら、あの店長ならあっちに行っても何ら性格かわらんでいてくれるだろうな。と思ってファン創作をしました。
HOTEL黎明の支配人、幸有らんことを。
11巻は「愛の話」が多かったと思いますが、個人的には最後の「ホテル従業員」に出てきた長田が身勝手すぎて大被害を出してしまっていて「びっくりするほど気持ち悪い!」ってなっちゃいました!
特に(以下ネタバレのため文字色反転) 長田の告白を断った支店長に粘着して他の人を巻き込みそれでも支店長を困らせ続けた所 が最高に気持ち悪いと思ってます!
俺は一方的に愛情を押しつけてくる人間が基本的に気持ち悪いッ!
怖いよッ!
そんな気持ちを抱きながら、あの店長ならあっちに行っても何ら性格かわらんでいてくれるだろうな。と思ってファン創作をしました。
HOTEL黎明の支配人、幸有らんことを。
『だが情熱はない』
窓の外に出ているのは朝日なのか、それとも夕日なのだろうか。時間さえも曖昧にようやく起き上がった俺のすぐ後ろで、今日も長田はあれこれ話しかけてきた。
本人曰く、俺の耳元で囁く言葉は辞書にある全ての愛の言葉なのだそうだ。ようやく俺が自分のモノになってくれた事に対しての感謝と、俺がそばにいる喜びを時には詩にしたためて、時には歌として、時には劇の台詞のように、時には重厚な純文学のように賛美を込めて語るのだという。
だが、ひしゃげた長田の喉から出る声は何の言葉を話しているのかまともに聞き取る事すら出来ない。ただ、ホースが潰れた掃除機のように不愉快な音をたてるばかりでかまびすしいだけだった。言ってる事も早口で滑舌は悪いため、何を伝えたいのかなんて全くわからないのだがそれは生前の長田も同じだった気がする。あいつはいつも一方的で、おおよそ会話らしいものは成り立っていなかった。
つまるところ、長田は俺というアチーブメントを求めているだけで、俺という人間にはそれほど興味はなかったのだろう。俺がそばに居ることは嬉しいが、俺との対話は望んでいない。俺が何を好物にし、どんな色が好きでペットを飼うなら何がいいとか、そういう考えなどに興味などないのだ。
長田にとって俺なんぞ、水槽に入れた金魚とさして変わらないのだろうから。
こんなにも耳障りで一方的な言葉により起こされてもさして怒りを抱かないのは、ここに仕事があるからだ。 HOTEL黎明の3階はいつだって客でいっぱいで、従業員は殆どいない。全ての客は逗留は無期限だから、部屋のシーツを変えたり掃除をしたり食事を準備したりと、やる事はやたらに多い。忙しいのは体にくるが、気が紛れるのは幸いだった。
それに、客の殆どがこのホテルでのバイト経験があるのも助かっている。元バイトで見知った顔だから気心が知れているし、室内の配置も全て理解しているから自室が汚れればリネンを勝手に変えてくれるしゴミ処理もしてくれるから面倒を見なければいけない部屋は思ったより少ないのだ。
反面、バイト経験のない泊まり客はひどく無作法だ。ホテルに泊まる事が滅多にないのか、放っておけば部屋はどんどん汚れていくし、客の身体も捻れてひしゃげる。それで悪びれる様子もなく意味不明の言葉をはなつから、質の悪い客が多いと言っていいだろう。
この前などはテレビを引っ張って割られていた事もあった。ホテルの備品を我が物顔で使われるにあきたらず、壊れても何の報告もしてくれないのは常識を欠いている。
……そういえばあのテレビは今でもあの部屋に置きっぱなしだったろうか。それとも新しいものに変えたか、テレビを捨てただけだったか。思い出そうとすると、記憶がひどく曖昧になる。頭もずんぐり重くなり、気持ちもどんどん塞ぎ込む。
もういい、思い出せないのなら思い出さない方がいいのだろう。
俺はそれ以上考えるのをやめると各部屋にまわり洗濯物をあつめ洗濯機をかける。
本来、ホテルの支配人にそんな仕事はないが三階の面々はもうこの部屋にずっとずっと泊まっている。客というより家族のようなものだから、こういう事をやるの苦痛ではない。むしろ必要に迫られてやっていると言っていいはずだ。客は放っておけばずっと同じ服を着ているし、羞恥心というのが無いのか、服がなければ裸でうろつくのも珍しくはないのだから。
「失礼します」
相変わらず後ろで本人曰く美辞麗句を奏でている長田は無視して部屋に入るが、宿泊客はベッドの上でご盛んに励んでいる最中であった。俺が入ってきたのに気付いたのか気付いていないのか、甘い吐息をもらしひたすら交わっている。
昼夜の区別もつかず、一部屋にいる人数が決まっているこのホテルで男女が二人部屋になると、こうして時間を潰す客が多い。
仕方ない、出直してくるか。三日くらい交われば流石に飽きて呼ぶだろう。
「ご用があったらお申し付けください」
盛りのついた猿のような連中だと軽蔑したくもなるが、他にやる事もないのだから仕方もない。 旅で出会った男女がその日だけの出会いを楽しむのも旅行の醍醐味だろうからこちらが何かを言うのは無粋だろう。俺は頭を下げると部屋を出た。
しかし、私は支配人を辞めたはずなのにいつまでこうしているのだろう。
ドアベルが鳴り響き、部屋の掃除をし、ベッドメイクをし、また新しい客を迎え入れる。
客にとっては思い出に残る旅行だろうが、迎える側からすると代わり映えのない毎日だ。大きな稼ぎでもないが、収入に困る程の事もなく毎日をやっている。
長田はうるさいが、壊れたゴムホースだと思えば大人しくさえ思えた。長田さえ邪魔しなければ楽しい仕事だろう。
だが、情熱はない。
ただ目の前にある仕事を淡々とこなし、トラブルを先送りに本当に危険がでたらようやく対処する。こんな俺に生きている意味があるのだろうか。ただ社会という枠組みに生かされているだけで、存在価値などそれほど無いのではないか。
そんな疑念が渦巻く事もあるのだが。
「叔父さーん、じゃなかった。支配人ー」
「……あぁ、千智か。どうした?」
「そろそろリネン足りなくなるから頼んでおきましょうか。あっ、あと掃除は終わってますから、支配人は昼まで休憩でOKですよ」
「そうか、ありがとう。悪いな」
「いえいえ、私がこのホテルを継ぎたいってお願いしてやらせてもらってるんで!」
千智は笑顔を向けると、俺の前から走り去る。
俺に情熱はない。誰かを愛そうという気持ちも、何かを大切にしようと感じる執着も。
だがこのホテルで千智が楽しく働いてくれているのは、きっと良い事なのだろう。
もし俺にとって救いがあり、ホテル黎明の存在に意味があったのなら、彼女のようにホテルで勤め旅の出迎えを、見送りをしたい。そう思える人間が、どこかにいてくれること。
俺に存在理由があるのだとしたら、きっとそれがそうなのだろう。
窓の外に出ているのは朝日なのか、それとも夕日なのだろうか。時間さえも曖昧にようやく起き上がった俺のすぐ後ろで、今日も長田はあれこれ話しかけてきた。
本人曰く、俺の耳元で囁く言葉は辞書にある全ての愛の言葉なのだそうだ。ようやく俺が自分のモノになってくれた事に対しての感謝と、俺がそばにいる喜びを時には詩にしたためて、時には歌として、時には劇の台詞のように、時には重厚な純文学のように賛美を込めて語るのだという。
だが、ひしゃげた長田の喉から出る声は何の言葉を話しているのかまともに聞き取る事すら出来ない。ただ、ホースが潰れた掃除機のように不愉快な音をたてるばかりでかまびすしいだけだった。言ってる事も早口で滑舌は悪いため、何を伝えたいのかなんて全くわからないのだがそれは生前の長田も同じだった気がする。あいつはいつも一方的で、おおよそ会話らしいものは成り立っていなかった。
つまるところ、長田は俺というアチーブメントを求めているだけで、俺という人間にはそれほど興味はなかったのだろう。俺がそばに居ることは嬉しいが、俺との対話は望んでいない。俺が何を好物にし、どんな色が好きでペットを飼うなら何がいいとか、そういう考えなどに興味などないのだ。
長田にとって俺なんぞ、水槽に入れた金魚とさして変わらないのだろうから。
こんなにも耳障りで一方的な言葉により起こされてもさして怒りを抱かないのは、ここに仕事があるからだ。 HOTEL黎明の3階はいつだって客でいっぱいで、従業員は殆どいない。全ての客は逗留は無期限だから、部屋のシーツを変えたり掃除をしたり食事を準備したりと、やる事はやたらに多い。忙しいのは体にくるが、気が紛れるのは幸いだった。
それに、客の殆どがこのホテルでのバイト経験があるのも助かっている。元バイトで見知った顔だから気心が知れているし、室内の配置も全て理解しているから自室が汚れればリネンを勝手に変えてくれるしゴミ処理もしてくれるから面倒を見なければいけない部屋は思ったより少ないのだ。
反面、バイト経験のない泊まり客はひどく無作法だ。ホテルに泊まる事が滅多にないのか、放っておけば部屋はどんどん汚れていくし、客の身体も捻れてひしゃげる。それで悪びれる様子もなく意味不明の言葉をはなつから、質の悪い客が多いと言っていいだろう。
この前などはテレビを引っ張って割られていた事もあった。ホテルの備品を我が物顔で使われるにあきたらず、壊れても何の報告もしてくれないのは常識を欠いている。
……そういえばあのテレビは今でもあの部屋に置きっぱなしだったろうか。それとも新しいものに変えたか、テレビを捨てただけだったか。思い出そうとすると、記憶がひどく曖昧になる。頭もずんぐり重くなり、気持ちもどんどん塞ぎ込む。
もういい、思い出せないのなら思い出さない方がいいのだろう。
俺はそれ以上考えるのをやめると各部屋にまわり洗濯物をあつめ洗濯機をかける。
本来、ホテルの支配人にそんな仕事はないが三階の面々はもうこの部屋にずっとずっと泊まっている。客というより家族のようなものだから、こういう事をやるの苦痛ではない。むしろ必要に迫られてやっていると言っていいはずだ。客は放っておけばずっと同じ服を着ているし、羞恥心というのが無いのか、服がなければ裸でうろつくのも珍しくはないのだから。
「失礼します」
相変わらず後ろで本人曰く美辞麗句を奏でている長田は無視して部屋に入るが、宿泊客はベッドの上でご盛んに励んでいる最中であった。俺が入ってきたのに気付いたのか気付いていないのか、甘い吐息をもらしひたすら交わっている。
昼夜の区別もつかず、一部屋にいる人数が決まっているこのホテルで男女が二人部屋になると、こうして時間を潰す客が多い。
仕方ない、出直してくるか。三日くらい交われば流石に飽きて呼ぶだろう。
「ご用があったらお申し付けください」
盛りのついた猿のような連中だと軽蔑したくもなるが、他にやる事もないのだから仕方もない。 旅で出会った男女がその日だけの出会いを楽しむのも旅行の醍醐味だろうからこちらが何かを言うのは無粋だろう。俺は頭を下げると部屋を出た。
しかし、私は支配人を辞めたはずなのにいつまでこうしているのだろう。
ドアベルが鳴り響き、部屋の掃除をし、ベッドメイクをし、また新しい客を迎え入れる。
客にとっては思い出に残る旅行だろうが、迎える側からすると代わり映えのない毎日だ。大きな稼ぎでもないが、収入に困る程の事もなく毎日をやっている。
長田はうるさいが、壊れたゴムホースだと思えば大人しくさえ思えた。長田さえ邪魔しなければ楽しい仕事だろう。
だが、情熱はない。
ただ目の前にある仕事を淡々とこなし、トラブルを先送りに本当に危険がでたらようやく対処する。こんな俺に生きている意味があるのだろうか。ただ社会という枠組みに生かされているだけで、存在価値などそれほど無いのではないか。
そんな疑念が渦巻く事もあるのだが。
「叔父さーん、じゃなかった。支配人ー」
「……あぁ、千智か。どうした?」
「そろそろリネン足りなくなるから頼んでおきましょうか。あっ、あと掃除は終わってますから、支配人は昼まで休憩でOKですよ」
「そうか、ありがとう。悪いな」
「いえいえ、私がこのホテルを継ぎたいってお願いしてやらせてもらってるんで!」
千智は笑顔を向けると、俺の前から走り去る。
俺に情熱はない。誰かを愛そうという気持ちも、何かを大切にしようと感じる執着も。
だがこのホテルで千智が楽しく働いてくれているのは、きっと良い事なのだろう。
もし俺にとって救いがあり、ホテル黎明の存在に意味があったのなら、彼女のようにホテルで勤め旅の出迎えを、見送りをしたい。そう思える人間が、どこかにいてくれること。
俺に存在理由があるのだとしたら、きっとそれがそうなのだろう。
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