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インターネット字書きマンの落書き帳

   
コシチェイは理解(わか)らない
昔書いた話を発掘してwebに放流していこうのコーナーです。

これは以前書いたメギド72のコシチェイの話。
コシチェイは自分の研究所に配属されるメギドたちはやらかしたクズか実験材料くらいにしか思ってないんだろうなァ~と思いながら書いた短編です。

全てコシチェイの一人語りで書かれておりますぞい。

書いた当時はまだコシチェイのストーリーが完結しておらず彼の背景もろもろも明らかになっていなかったので今出すと「ミョーン」って気持ちにもなるんですが、当時の歴史的資料だと思っていただければ幸いです。

自分のいにしえ作品を「歴史的資料です」としれっと言うくらいの図々しさで生きていこうな!



『コシチェイ送り』

 ようこそ我が理術院へ。
 歓迎するよ、盛大にな。

 早速だが単刀直入に聞こう。まどろっこしい話は私も嫌いだからな。
 さて、お前は一体何をやらかして来たんだ?

 戦争で大被害を出したくせにおめおめと逃げ帰ってきたのか?
 それとも貴重な実験動物をヴァイガルドに取り逃がしでもしたのか?
 要人警護に失敗して、肝心の要人をブチ殺しでもしたのか?
 古き時代に思いを馳せ禁じられている歌やら踊りやらに取り憑かれでもしていたとしても存外に面白いかもしれないな。

 まぁ、何をしていたっていいし、どうだっていい。聞いておいて何だが正直言えばお前が何をしでかしていようが私はそれほど興味がないからな。
 だがお前がいかに下等なクズどもの中でも元も愚かな行いをしたアホだったとしても、この私が歓迎してやろうじゃないか。 そのような役に立たない人材を有効活用するのも天才であるこの私の役目だからね。
 さて、一応だがお前の経歴も読んでやったよ。本来多忙であるこの私が貴重な時間を裂いてやったんだから有り難く思うといい。
 いかにもアホ面を下げてノコノコとやってきたから高貴な使命をもつ研究員を身体で守るしか能の無い戦闘特化のメギドだと思っていたが、以前所属していた研究所では幻獣の管理や改造なども任されていた一端の研究員だったみたいだな。
 ははッ、立派なもんじゃないか。しかもあの研究室はかなり多くの人手とたっぷりの経費もつぎ込まれているらしいな。全く忌々しい。最も私ほどになると予算など少なくとも実績を出す事が出来るから問題ないがね。

 大体のところ、だ。
 いくら予算をふんだんにもらったとしてもお前のようなアホが無駄に予算を使い潰してこのような失態をしでかしていたら、それこそ貴重なフォトンの無駄使いだとは思わんか?
 その点私は現状、殆ど一人で研究をし、少ない予算で面白い功績をあげている……お前と比べて立派なもんじゃないか? ん?

 あぁ、わかっているさ。理術院は私の研究をさして重要なものとは思ってない。
 それくらいは気付いているし理解しているとも。
 連中が私の事など最初から歯牙にもかけていない、それどころか路肩のゴミと同等に汚らしいモノだと思っていることくらいな。

 ……ったく、いつもいつも人の事を見下しやがってよォっ!
 胸くそ悪いッ……アホが雁首揃えてろくな成果もなし得てないというのに、コッチの研究を道楽か何かだと思っていやがってッ。
 分ってンだよ! コッチに送られてくる奴はスプーン一杯の脳みそさえ無いような役立たずだけだって事くらいなァっ!

 はぁ。いけないな、どうも頭に血が上ると浅慮になる。
 私の実験は繊細で取り扱いを気をつけなければいけない触媒もあるというのに……。

 そうだ、ここにおいてある薬剤一つだって間違って混ぜ合わせたらヴィータ1000人分の致死量にもなる。ヴィータ体で過ごしている我々だって影響がある危険な代物だからな。もっと気をつけて扱わないといけないというのにどうにも時々怒りを制御する事が出来なくなるのが困りものだな。
 これが骸体を扱う悪影響か、あるいはかつての実験の副作用か……もう少し冷静さを保てるように安定させたい所だが、我が身で実験するのもあまり良くないから困った所だ。
 うかつな事をしてこの天才・コシチェイをメギドラルから失わせるワケにはいくまい。お前もそう思うだろう?

 おい、聞いているのか?
 アホとはいえ、私と同じ研究員だったんだろう? それとも私の高尚な会話に付き合える程度の脳もないのか? それとも貴様も私を他の奴らと同じよう私を見下しているのか?
 それとも、もう死んだのか?

 何だ、もう死んだのか。
 全く、身体を張るだけのアホメギドたちと違ってやはり研究員を志すメギドというのは耐久力が少ないな。たったこれっぽっちの毒薬と、拷問と、試薬実験と……あと何かしたか?
 したような気がするが忘れてしまったな……だがその程度で死んでしまうなんて情けない話だ。

 しかしお前も分っていたんだろう?
 この私の元に来るという意味は、即ちこういう事だという位はな。

 さて、死体になったメギドでも有効利用できる「黴」をちょうど手に入れていたんだ。
 知性はなくなり単純な命令でしか動かない木偶の坊だがそれでも生きていた頃のお前より頑健でよく働いてはくれるだろう。どうだ、死んでからもこの私のために働けるとはなかなかに誇らしいじゃないか。
 この私の実験に携われた事を栄誉に思い、存分に傀儡の兵士として働く事を期待してるぞ。
 他ならぬこの私のためにな。

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