インターネット字書きマンの落書き帳
「大丈夫? 胸とか揉むか」と聞いてくるシンドーパイセンの話(BL)
平和な世界線で普通に付き合っている新堂×荒井の話をしています。
(冷静と情熱の間に存在する境地での挨拶)
今回は、普段から滅多に学校には来ない引きこもりの荒井が珍しく学校に来たと思ったら『学校なんてうんざりですよ』『こんな不愉快なら今日は来なければ良かった』なんて延々と文句を垂れた長文メッセージを送ってくるので新堂パイセンが思いつきで「おっぱい揉む?」って聞いたりする話ですよ。
何を言ってるのかわからねーが俺もよくわからねー。
でも「男子高校生らしい馬鹿っぽい話をしている二人」というのを書いてみたいと思ったら……気付いたらこうなっていたんだぜ!
(冷静と情熱の間に存在する境地での挨拶)
今回は、普段から滅多に学校には来ない引きこもりの荒井が珍しく学校に来たと思ったら『学校なんてうんざりですよ』『こんな不愉快なら今日は来なければ良かった』なんて延々と文句を垂れた長文メッセージを送ってくるので新堂パイセンが思いつきで「おっぱい揉む?」って聞いたりする話ですよ。
何を言ってるのかわからねーが俺もよくわからねー。
でも「男子高校生らしい馬鹿っぽい話をしている二人」というのを書いてみたいと思ったら……気付いたらこうなっていたんだぜ!
『それは年頃らしい普通の会話』
新堂誠が二年生の教室棟に向かったのは他でもなく荒井昭二のためだった。
あまり学校に来る事のない荒井が今日は珍しく登校しているようだったが、朝から新堂の元に届くメッセージは『来るんじゃ無かった』『こんな不愉快な場所はない』といった内容をさらに10行ほど長文にした愚痴ばかりだったので流石の新堂も少しばかり心配になったからだ。
鳴神学園はマンモス校なので2年の教室に行くのも簡単な事ではない。ボクシング部の部長として細々として雑用もある新堂は心の隅で早く荒井の顔を見にいってやらないとと思ってはいたものの忙しさにかまけ結局放課後になってしまった。
荒井のやつ、きっとさぞ不服そうにしていることだろう。ひょっとしたらうんざりしてもう帰っているかもしれない。そう思い荒井のクラスを覗いてみればすっかり力尽きた様子で机に突っ伏す荒井が目に入る。何だかんだ言いつつ最後まで授業に耐える事が出来たようだ。
「よォ荒井、随分と参ってるじゃ無ェか。おまえらしくもねぇな」
荒井の名を呼びながら新堂が教室へと入れば彼の姿を見た生徒たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
各学年で三階建ての一棟が存在する鳴神学園で他学年の生徒が顔を出すのは珍しいことであり、上級生が二年の教室にいるのはかなり異質な事だった。学校という場がたった一つの年齢差で強い上下関係が表れるのも相まって上級生に対し畏怖を抱くのも仕方の無い事だろう。
ましてや新堂は鳴神学園でも札付きの不良として名の知られた存在だ。 ボクシング部の部長をする前は喧嘩で何人も半殺しにしているやら、半グレと連んで闇バイトを斡旋しているやら、実際に連れ去られマフィアに臓器を売られた生徒がいるといったやけに物騒な噂が後を絶たないのもあって顔を見ただけで逃げられるのはもはや当たり前になっていた。
こういった噂は否定しても好き勝手に尾ひれがついて広がっていくものだと新堂は諦めて放置していたのだが二年ではよほど恐怖の対象になっているのか、彼が荒井の席まで近づいた時はすでに教室から生徒の姿が一人もいなくなっているのを見ると半ば化け物のような噂が広まっているのだろう。 廊下には幾人か荒井の様子を気にして覗いているものもいるが教室に入ってくる様子はなさそうだった。
「おいおい……何だこのクラスは。まるで俺のこと怪物みたいに怖がってるじゃ無ェかよ。これでも人間だぞ……」
「僕の教室に新堂さんが来ても問題なくクラスメイトが帰ってくれるように少しキツめの噂を流してありますからね……他のクラスより数倍怖れられているんでしょう」
教室を見渡しながらついそう零す新堂を前に、荒井は事もなげに告げる。どうやら荒井の策略でより非道い事になっているようだ。新堂は渋い顔になると突っ伏したままの荒井を少し乱暴に撫でた。
「ハァ? テメェのせいかよ何考えてんだおい……こんな柴犬大好きの優しいお兄さんを怪物みたいに吹聴するんじゃ無ェよまったく」
「別にいいじゃないですか、貴方の魅力は僕だけが知っていればいいんですから。それに、つまらない噂に翻弄されるような相手が新堂さんの良さなんてわかるとは思えませんからね」
荒井は相変わらず机に伏せたままそっけない口調で告げる。だがそっけない態度とは裏腹にこちらに向けてくる熱意と執着は相変わらずだといえよう。何で荒井が自分に対して情念に近い感情を抱くようになったかはわからないが、これだけ口が達者なら思ったより落ち込んだりはしてないのだろう。
それに、荒井のように綺麗な顔をした少年から好きだと言われるのは満更ではない。 新堂は荒井の頭をポンポンと軽く撫でながらふと思いついたように言った。
「口は元気みてぇだがいつまでそうして机に伏せてるつもりだおい、お前みてぇなヤツでも凹んだりするのか? ……お、そうだ。元気ないならどうだ、俺のおっぱいでも揉むか?」
「はぁ? ……何言ってるんですか貴方は」
名案を思いついたつもりでした提案に、荒井は露骨に表情を変えた。当然、歓迎している雰囲気ではない。気を紛らわそうと冗談を言ったつもりだったのだがどうやら逆鱗に触れたらしい。
荒井は冷静そうに見えてかなり感情の起伏が激しい性格であり、なおかつ怒りのスイッチがどこにあるかわからない気質なのだ。その上一度怒り出すと簡単には許さない執念深さがあるからうっかり怒らせると後々面倒なことになるのだ。
「あー、何だ。クラスのヤツと話してたらよォ。元気のない時キレーなお姉さんに『大丈夫? おっぱい揉む?』って言われたらサイコーだよなって話したんだよ前。だからお前も元気になるかなーって……ははッ……」
「新堂さん、自分のこと綺麗なお姉さんだとでも思っているんですか?」
「違います。ごめんなさい」
だから新堂は荒井が怒っている気配を察したらとにかく早めに謝るようにしていた。そうしなければこちらがとっくに忘れた頃合いに過去の失態を持ち出され鬱積した恨みを一度にぶつけられるのだから。
それに今のは確かに自分が悪いという自覚もある。荒井は性的な話に対して潔癖なところがあるからこの手の冗談を好まないというのを知っているというのに軽率だったと言えよう。
「でも俺の胸って暖けぇらしいぜ? 触ってみるか?」
怒られたのはわかっているが何となく引っ込みの付かないような心持ちになった新堂は場の空気を誤魔化すように笑うと荒井の手を引き自分の胸へと触れさせる。 荒井はいかにも不服そうな顔で何をさせるんだと抗議の視線を向けていたが暫く新堂の胸に触れているうちに驚いたように顔をあげた。
「……本当に暖かいんですね新堂さんの胸」
「だろ? 筋肉って脂肪と比べると暖かいらくてなァ、俺って体温高ェんだよな」
「それに、思ったより柔らかいんです……こんな柔らい身体してましたっけ?」
「そうか? 今は胸に力入れてないから柔らかく感じるだけだろ。力入れてねぇ筋肉って思ったより柔らかいからなぁ」
それを聞いて、荒井は突っ伏していた身体をようやく起こす。下らない事を言った癖にさらに下らない話をしたから起こっていないか心配はしたが彼の表情は幾分か柔らかく見えた。
「そうなんですか? ……貴方に抱かれている時はそれほど柔らかい胸だなんて思った事ありませんでしたけど」
「そりゃぁ、お前抱いてる時は気ぃ使って力入れてっからな」
「どういう気遣いですかそれは。僕に格好いいところ見せたいっと思ってわざわざ力入れてるんですか?」
「そうだが悪ィかよ」
新堂はいたく真面目な気持ちで答えたのだが荒井にはそれがさぞ面白かったようでそれまで不機嫌そうな表情は一切消えさも面白そうに笑って見せた。
「何ですかそれッ……そんな所で格好付けようとか、そういう上っ面の男らしさに囚われてしまうのが新堂さんらしいと言うか……」
「なぁっ、何だそれッ。お、お前だって俺の身体が好きならたるんだ身体より絞った身体の方が好きなんじゃ無ェのかっ」
「それはそうですけど、別にそんな小さい部分に気を遣わなくても嫌いになったりしませんよ僕は」
「そんくれぇ分かってるっての。気持ちの問題っつーか……お前には格好いい所見せたいだろッ。あー……こういう事言うとかっこ悪いのか?」
荒井に問い詰められ段々と自分が格好付けようとしてかえってかっこ悪い事を言っているのに気付いた新堂はじわじわ恥ずかしい気持ちになり、慌ててスマホを取りだした。
「だ、大体別にそりゃいいだろうが。そもそも、お前が何か今日は元気がないとか、久しぶりに学校来たのにろくな事がないってグチグチとメッセージ送ってくるから心配して見にきてやったんだぞ俺は」
取り出したスマホには新堂の言う通り、『学校に来たのにろくな事がないです』だの『中村くんが相変わらず僕の親友と吹聴して僕の友達に迷惑をかけて……』といった愚痴がうんざりするほど長文で並んでいる。 普段のメッセージは『了解です』『見ました』なんて要件を告げる程度のものなのに今日はよほど嫌な事があったのかひどく冗長だったから心配になって来たのを半ば忘れそうになっていたが、荒井に笑われてようやく思い出したのだ。
「そのメッセージを送った時は本当に気分が悪かったんですよ。あなたが来た時も起きる程元気はありませんでしたから……」
荒井は身体を大きく伸ばすとゆっくり席から立ち上がる。机に伏せていた時と比べその表情は随分と軽くなっていた。
「何だよ、もう大丈夫なのか?」
「えぇ、新堂さんと話していたら下らない事を気にする自分が馬鹿らしくなりましたからね」
それでは新堂がえらい道化のようじゃないか。
荒井はいつだってそうだ、新堂より年下のくせにこちらを見下すような態度をとる。 今だって明らかに馬鹿にしているのだろう。一度ガツンと言ったほうがいいか、一発殴ってやったほうが効くだろうか。
あれこれ考えているうちに荒井は新堂の身体に抱きつくと胸元の柔らかさを確かめるよう顔を埋めた。
「……それに、貴方の身体に触れたら随分と気が楽になりました。新堂さんは今の僕にとって何をするにも特効薬になり得るんですよね」
そんな事を言われて微笑まれたらまんざら悪い気はしない。
荒井はひどく毒のある言葉を口にしたかと思うとすぐに甘えて見せるから殴るタイミングを逃してしまうというのがいつものパターンだった。 きっとそれも荒井の策略だろう。手のひらで転がされているような気がしない訳でもない。
「はぁ……わかったわかった、いつでもお前の特効薬をやってやるから辛ェ時は俺を呼べよな。他のヤツなんか呼んだら許さねぇぞ」
それでも荒井の傍にいれるのが自分だけだというのならそういうのも悪くはない。
新堂は抱きついてきた荒井の身体を強く抱きしめ返すと、彼の白く滑らかな肌に触れ自然と笑顔になっていた。
新堂誠が二年生の教室棟に向かったのは他でもなく荒井昭二のためだった。
あまり学校に来る事のない荒井が今日は珍しく登校しているようだったが、朝から新堂の元に届くメッセージは『来るんじゃ無かった』『こんな不愉快な場所はない』といった内容をさらに10行ほど長文にした愚痴ばかりだったので流石の新堂も少しばかり心配になったからだ。
鳴神学園はマンモス校なので2年の教室に行くのも簡単な事ではない。ボクシング部の部長として細々として雑用もある新堂は心の隅で早く荒井の顔を見にいってやらないとと思ってはいたものの忙しさにかまけ結局放課後になってしまった。
荒井のやつ、きっとさぞ不服そうにしていることだろう。ひょっとしたらうんざりしてもう帰っているかもしれない。そう思い荒井のクラスを覗いてみればすっかり力尽きた様子で机に突っ伏す荒井が目に入る。何だかんだ言いつつ最後まで授業に耐える事が出来たようだ。
「よォ荒井、随分と参ってるじゃ無ェか。おまえらしくもねぇな」
荒井の名を呼びながら新堂が教室へと入れば彼の姿を見た生徒たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
各学年で三階建ての一棟が存在する鳴神学園で他学年の生徒が顔を出すのは珍しいことであり、上級生が二年の教室にいるのはかなり異質な事だった。学校という場がたった一つの年齢差で強い上下関係が表れるのも相まって上級生に対し畏怖を抱くのも仕方の無い事だろう。
ましてや新堂は鳴神学園でも札付きの不良として名の知られた存在だ。 ボクシング部の部長をする前は喧嘩で何人も半殺しにしているやら、半グレと連んで闇バイトを斡旋しているやら、実際に連れ去られマフィアに臓器を売られた生徒がいるといったやけに物騒な噂が後を絶たないのもあって顔を見ただけで逃げられるのはもはや当たり前になっていた。
こういった噂は否定しても好き勝手に尾ひれがついて広がっていくものだと新堂は諦めて放置していたのだが二年ではよほど恐怖の対象になっているのか、彼が荒井の席まで近づいた時はすでに教室から生徒の姿が一人もいなくなっているのを見ると半ば化け物のような噂が広まっているのだろう。 廊下には幾人か荒井の様子を気にして覗いているものもいるが教室に入ってくる様子はなさそうだった。
「おいおい……何だこのクラスは。まるで俺のこと怪物みたいに怖がってるじゃ無ェかよ。これでも人間だぞ……」
「僕の教室に新堂さんが来ても問題なくクラスメイトが帰ってくれるように少しキツめの噂を流してありますからね……他のクラスより数倍怖れられているんでしょう」
教室を見渡しながらついそう零す新堂を前に、荒井は事もなげに告げる。どうやら荒井の策略でより非道い事になっているようだ。新堂は渋い顔になると突っ伏したままの荒井を少し乱暴に撫でた。
「ハァ? テメェのせいかよ何考えてんだおい……こんな柴犬大好きの優しいお兄さんを怪物みたいに吹聴するんじゃ無ェよまったく」
「別にいいじゃないですか、貴方の魅力は僕だけが知っていればいいんですから。それに、つまらない噂に翻弄されるような相手が新堂さんの良さなんてわかるとは思えませんからね」
荒井は相変わらず机に伏せたままそっけない口調で告げる。だがそっけない態度とは裏腹にこちらに向けてくる熱意と執着は相変わらずだといえよう。何で荒井が自分に対して情念に近い感情を抱くようになったかはわからないが、これだけ口が達者なら思ったより落ち込んだりはしてないのだろう。
それに、荒井のように綺麗な顔をした少年から好きだと言われるのは満更ではない。 新堂は荒井の頭をポンポンと軽く撫でながらふと思いついたように言った。
「口は元気みてぇだがいつまでそうして机に伏せてるつもりだおい、お前みてぇなヤツでも凹んだりするのか? ……お、そうだ。元気ないならどうだ、俺のおっぱいでも揉むか?」
「はぁ? ……何言ってるんですか貴方は」
名案を思いついたつもりでした提案に、荒井は露骨に表情を変えた。当然、歓迎している雰囲気ではない。気を紛らわそうと冗談を言ったつもりだったのだがどうやら逆鱗に触れたらしい。
荒井は冷静そうに見えてかなり感情の起伏が激しい性格であり、なおかつ怒りのスイッチがどこにあるかわからない気質なのだ。その上一度怒り出すと簡単には許さない執念深さがあるからうっかり怒らせると後々面倒なことになるのだ。
「あー、何だ。クラスのヤツと話してたらよォ。元気のない時キレーなお姉さんに『大丈夫? おっぱい揉む?』って言われたらサイコーだよなって話したんだよ前。だからお前も元気になるかなーって……ははッ……」
「新堂さん、自分のこと綺麗なお姉さんだとでも思っているんですか?」
「違います。ごめんなさい」
だから新堂は荒井が怒っている気配を察したらとにかく早めに謝るようにしていた。そうしなければこちらがとっくに忘れた頃合いに過去の失態を持ち出され鬱積した恨みを一度にぶつけられるのだから。
それに今のは確かに自分が悪いという自覚もある。荒井は性的な話に対して潔癖なところがあるからこの手の冗談を好まないというのを知っているというのに軽率だったと言えよう。
「でも俺の胸って暖けぇらしいぜ? 触ってみるか?」
怒られたのはわかっているが何となく引っ込みの付かないような心持ちになった新堂は場の空気を誤魔化すように笑うと荒井の手を引き自分の胸へと触れさせる。 荒井はいかにも不服そうな顔で何をさせるんだと抗議の視線を向けていたが暫く新堂の胸に触れているうちに驚いたように顔をあげた。
「……本当に暖かいんですね新堂さんの胸」
「だろ? 筋肉って脂肪と比べると暖かいらくてなァ、俺って体温高ェんだよな」
「それに、思ったより柔らかいんです……こんな柔らい身体してましたっけ?」
「そうか? 今は胸に力入れてないから柔らかく感じるだけだろ。力入れてねぇ筋肉って思ったより柔らかいからなぁ」
それを聞いて、荒井は突っ伏していた身体をようやく起こす。下らない事を言った癖にさらに下らない話をしたから起こっていないか心配はしたが彼の表情は幾分か柔らかく見えた。
「そうなんですか? ……貴方に抱かれている時はそれほど柔らかい胸だなんて思った事ありませんでしたけど」
「そりゃぁ、お前抱いてる時は気ぃ使って力入れてっからな」
「どういう気遣いですかそれは。僕に格好いいところ見せたいっと思ってわざわざ力入れてるんですか?」
「そうだが悪ィかよ」
新堂はいたく真面目な気持ちで答えたのだが荒井にはそれがさぞ面白かったようでそれまで不機嫌そうな表情は一切消えさも面白そうに笑って見せた。
「何ですかそれッ……そんな所で格好付けようとか、そういう上っ面の男らしさに囚われてしまうのが新堂さんらしいと言うか……」
「なぁっ、何だそれッ。お、お前だって俺の身体が好きならたるんだ身体より絞った身体の方が好きなんじゃ無ェのかっ」
「それはそうですけど、別にそんな小さい部分に気を遣わなくても嫌いになったりしませんよ僕は」
「そんくれぇ分かってるっての。気持ちの問題っつーか……お前には格好いい所見せたいだろッ。あー……こういう事言うとかっこ悪いのか?」
荒井に問い詰められ段々と自分が格好付けようとしてかえってかっこ悪い事を言っているのに気付いた新堂はじわじわ恥ずかしい気持ちになり、慌ててスマホを取りだした。
「だ、大体別にそりゃいいだろうが。そもそも、お前が何か今日は元気がないとか、久しぶりに学校来たのにろくな事がないってグチグチとメッセージ送ってくるから心配して見にきてやったんだぞ俺は」
取り出したスマホには新堂の言う通り、『学校に来たのにろくな事がないです』だの『中村くんが相変わらず僕の親友と吹聴して僕の友達に迷惑をかけて……』といった愚痴がうんざりするほど長文で並んでいる。 普段のメッセージは『了解です』『見ました』なんて要件を告げる程度のものなのに今日はよほど嫌な事があったのかひどく冗長だったから心配になって来たのを半ば忘れそうになっていたが、荒井に笑われてようやく思い出したのだ。
「そのメッセージを送った時は本当に気分が悪かったんですよ。あなたが来た時も起きる程元気はありませんでしたから……」
荒井は身体を大きく伸ばすとゆっくり席から立ち上がる。机に伏せていた時と比べその表情は随分と軽くなっていた。
「何だよ、もう大丈夫なのか?」
「えぇ、新堂さんと話していたら下らない事を気にする自分が馬鹿らしくなりましたからね」
それでは新堂がえらい道化のようじゃないか。
荒井はいつだってそうだ、新堂より年下のくせにこちらを見下すような態度をとる。 今だって明らかに馬鹿にしているのだろう。一度ガツンと言ったほうがいいか、一発殴ってやったほうが効くだろうか。
あれこれ考えているうちに荒井は新堂の身体に抱きつくと胸元の柔らかさを確かめるよう顔を埋めた。
「……それに、貴方の身体に触れたら随分と気が楽になりました。新堂さんは今の僕にとって何をするにも特効薬になり得るんですよね」
そんな事を言われて微笑まれたらまんざら悪い気はしない。
荒井はひどく毒のある言葉を口にしたかと思うとすぐに甘えて見せるから殴るタイミングを逃してしまうというのがいつものパターンだった。 きっとそれも荒井の策略だろう。手のひらで転がされているような気がしない訳でもない。
「はぁ……わかったわかった、いつでもお前の特効薬をやってやるから辛ェ時は俺を呼べよな。他のヤツなんか呼んだら許さねぇぞ」
それでも荒井の傍にいれるのが自分だけだというのならそういうのも悪くはない。
新堂は抱きついてきた荒井の身体を強く抱きしめ返すと、彼の白く滑らかな肌に触れ自然と笑顔になっていた。
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