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インターネット字書きマンの落書き帳

   
あらいくんを監禁して解放してあげよう その8
あーあ、もう遠慮なく長く書き続ける気持ちになってしまいました。
二次創作は自己満足だからです。(挨拶)

とはいえ、流石にもう話もカタがつくと思います。
俺の命がある限り、確実に完結はすると思うので最後までごゆるりとお楽しみください。

もう監禁暴行記憶操作シーンはありませんが……。
寂しいですね……。
書いていると「正気かコイツ」と思っているシーンも終わってみると「大好きだったぜ……」になるもんです。

今回は新堂さん視点の助けられた荒井くん病状報告です。
今までの中で比較的に短い話なんですがいつもより更新が遅れてしまいました、何故か!
それは途中で正気に戻ってしまったからです。

二次創作、常に狂気を保て!
正気になると辛い!

<前回までのあらすじ>

 記憶操作が出来る黒髪痩躯の浪川大輔のCVが出そうなタイプの変態に荒井くんがさらわれていたけど何とか助けたぞ。
 変態はドロドロに溶けて消えたぞ。

<俺の楽しい要素>

・新堂×荒井の世界線で話をしている
・新堂→荒井の感情も荒井→新堂の感情もクソデカクソ重
・クソデカ感情とクソデカ感情をもつ男のCPは健康にいいと信じて疑っていない

・理想の変態として作ったモブはもう死んだ

今回も張り切って行きましょう! 生きましょう!
いっしょに生きましょう!




『Mischievous good fairy』

 誰の犠牲も出さずに全てが無事に終わったといえば、これがあの時ではベストな結果だってのは俺にだって解ってる。
 でもよォ、頭でわかっていても心が追いつかねぇって事は誰にでもあるんじゃ無ェか?

 もっと早く気付く事が出来たんじゃ無ェのか。
 もう一日でも早く駆けつける事が出来ていたのならここまで非道ェ事にならなかったんじゃな無ェか……。

 一人で考えてるとよ、どうしても「もし」って考えがよぎるんだよ。
 そんな事今になって言ってもどうしようも無ェ。
 嘆いて悲しんで悔やんだりしても何にもならねぇなんてわかりきった事だってのにな……。

 俺の前で、荒井は眠っている。
 病院に運ばれてから三日経つが昏々と眠っているか、起きても何も喋る事もなく呆けたように外を見ている事がほとんどなんだそうだ。
 少なくとも俺が見舞いに来た時はずっと眠ってて起きるような様子は一度だって無ェ。

 医者は一時的に混乱しているだけで時間が経てば元に戻るだろうと話していたが、一体どれだけ時間が経てば元通りになるかハッキリ言う事はなかった。
 明日にはいつも通りの荒井に戻るかもしれねぇし、一生このままかもしれねぇって訳だ。

「おい、荒井……」

 名前を呼んで、頬に触れる。温もりも柔らかさも全てが俺の知る荒井のままだ。
 だが呼んでも触れても目を覚ます事はないし、もし仮に目覚めたとしてもきっと俺が誰かさえわからないのだろう。
 身体はボロ布のようにズタズタにされ足なんかはまともに歩く事すらできない程痛め付けられてたってのに顔には傷一つつけられていないのは、荒井をさらった変態がその顔を特に気に入っていたからに違い無ェ。
 本当に荒井の顔だけは愛していたんだろうと思うと余計に腹が立つ。顔だけがあいつの価値じゃ無ぇだろう。なぁ?

 ……俺たちが館に撮影という名目で踏み込んで荒井を助け出した後、自分の負けを認めたあの男は綺麗さっぱり消えやがった。
 ドロドロに溶かした錫みたいに溶けてなくなった……なんて言っても警察は信じねぇだろうからな。

 雰囲気のよい建物だから撮影に来た、そうしたら二階から荒井の声が聞こえておかしいと思ったら逃げ出した……という話を日野が説明したらとりあえずは納得したみてぇだ。
 俺たちは見た通りの外見を警察に伝えているが、あの男を捜してももう見つかるはずはねぇ。館の状態や凝った隠し部屋を見ても荒井が監禁されてたのは間違い無ぇし俺がぶん殴ってやった証拠ももう残ってねぇからその点はおとがめ無しだったのは幸いだろうが、結果をみればどうだ。

 アイツは死に逃げして、荒井はがらんどうだ。人形みたいにされてただぼんやりと生きている。 もし荒井が一生このままだったら、あいつの勝ち逃げなんじゃ無ェか?
 マジで地獄があるんなら、「ほら見ろやっぱり自分の手元にあったほうがずっと良かっただろう」なんてあのスカした顔で笑ってんだろうと思うと、今すぐ地獄に行って今度こそ息の根を止めてやろうかとさえ思えてくる。

 あぁ、わかってる。
 俺たちが駆けつけた時、もう荒井は散々痛め付けられた後だった。もっと早く気付いていたとしてもあいつが俺たちを迎え入れたかはわからない。
 日野の作戦は成功した訳だし皆が怪我なく帰ってこれた。警察の世話になる奴もいなかった。それだけでも上出来だってのは解ってるんだ。
 だがどうしても自分の事を責めちまう。どうしてもっと早く行けなかったんだと思っちまうのは仕方ねぇ事だろう。
 もし俺の腕が腕一本でも失っていたのならここまで後悔しなかったのかもしれねぇ。
 なまじ俺が無事だったからこそ。そして今の俺に何も出来る事がないからこそこんなにも悔しい思いをしてるのかもしれねぇな。
 俺一人が憤ってみたところで、何にもならねぇのだってわかってるつもりなんだがな……。

 医者は荒井が呆けている理由を「精神的なショック」だと説明していた。
 だが高柳って医者が話しているのを聞いた限り、あの男は何かしら呪術的なモンで荒井の記憶を弄っていたらしい。
 綾小路が言うには悪魔的な呪いや契約じゃなく錬金術で作られる薬品の作用の近ェもんだから魔術よりも医療分野のほうがまだ治療しやすいとは言ってたが、こうも呆けてしまった理由は急な記憶の出し入れを連続して行ったのも理由の一つで間違いは無ェってことだ。
 そして元に戻れるかどうかも荒井次第……いつ戻るかはわからないってのは医療から見てもオカルトから見ても同意見なんだと。

 俺に出来る事は何もねぇ、って事だ。
 まったく、腹立たしいったらありゃしねぇ。

 俺は相変わらず眠り続ける荒井の髪に触れる。
 細くて柔らかな髪がさらさらと指の間をすり抜けていった。

 ……これがおとぎ話だったらキスで呪いがとけて全てハッピーエンドで終わってくれるんだろうがな。
 これは現実だ、そんな甘い夢物語みてぇな事は起きやしねぇ。
 起きやしねぇとわかっていても、縋りたくもなるだろう。
 俺にはこれくらいしか出来る事が無ェんだからな……。

「荒井……頼むから早くこっちに戻って来いよ。そうじゃ無ェと俺は……」

 火が消えたみてぇに、何もやる気が起きやしねぇ。
 じきに試合で、高校生活最後のシメが迫ってるってのにだ。
 自分でもこんなフヌケになっちまうとは非道ェザマだと思うが自分じゃどうしようも無ェんだからしょうがねぇ。

 縋るような気持ちで荒井の前髪を上げ、唇を重ねる。
 あぁ、そういえば最後にキスしてやったのは何時だったかな。二人だけで会う時は必ずしていたからそう遠くないはずだが、もう一週間以上は会ってなかったからその間はしてないか。
 触れるだけのキスから何度か唇を甘噛みするのはこういうキスを荒井が好いていたからだ。
 アイツは滅多なことで気持ちいいなんて口にはしねぇがこうすると喜んでるってのは目に見えても明らかで、こうしてやると蕩けたような顔をしてみせるからそれが面白くてよくこんなキスをしていたか。

 ……オマエが欲しいならオマエの好きなキスなんざいくらでもしてやる。
 他にして欲しい事があるなら何だってしてやるし、俺は頭悪ィけどオマエの好きな事なら全部覚えておいてやるから、だからどうか還ってきてくれ、頼むから……。
 思いを全て吐き出して祈るようなキスの後も、やはり荒井が目覚める事はなかった。

 ははッ、そうだよな。 これが「現実」だ。
 願いや祈りなんて何ら意味のねぇクソッタレな世界に俺たちは生きてんだよな。
 まったく、馬鹿馬鹿しい。

 俺はカバンを持つと立ち上がる。

「……じゃあな、また来る」

 眠ったままなのはわかっていたがそう、声をかけるのは目が覚めて不意に話しかけてくるんじゃないか。そんな淡い期待を抱いちまうからだろう。今さっき、これが現実で奇跡なんざおきないと見せつけられたばかりなのにな。
 俺はそう思い振り返る。

「もう、帰ってしまうんですか。新堂さん」

 そんな俺の背中を、か細い声が呼び止めた。
 気のせいじゃ無ぇのか。自分があんまりに寂しいからついに幻聴でも聞こえるようになっちまったのか。そう思って振り返れば、半身起こした荒井は微かに笑っていた。

「あ……荒井? 本当に荒井か? ……いま、オマエが喋ったのか!?」

 俺はカバンを取り落とし驚いたまま荒井の肩を掴む。すると荒井は一瞬痛そうに表情をゆがめた。

「えぇ、そうです……あの、新堂さん。あまり強く掴まれては……怪我が、まだ治ってないので……」
「あぁ、悪ィ……」

 俺たちが助け出した時、荒井は殴る所がないくらいボロボロの身体をしていた。その傷はまだ治ってねェんだから触っただけでも痛いだろう。
 だが、触れば痛いと顔を歪める。そんな当たり前の反応すら今まで見せなかった荒井が今、人並みに痛みを訴えている。俺を見て普通に話をしている。
 いつになるかわからないと言われていた目覚めの時が、今来た。やっと来てくれたのだ。

「良かった……本当に、良かったなァおい……」

 言葉に詰まった俺は、荒井の頭を抱きしめる。そんな俺の身体を確かめるよう荒井もまた俺の手に触れた。

「すいません、心配を……おかけしまして。いま、戻りました……えぇと、こういう時は……ただいま、とでも言えばいいですか?」
「何でもいいさ。あぁ、でも一応は……おかえり、と言った方が洒落てんのか?」

 俺がそう言えば、荒井はクスクス笑い出す。

「陳腐なラブストーリーにありそうな台詞ですね」

 そして皮肉たっぷりの笑顔でそんな可愛くない事をいうのだ。
 あぁ、これは間違いなく俺の知ってる荒井だ。綺麗な顔をしてる癖に可愛い事を言う訳じゃ無ェ。頭の悪い連中をどこか見下すような態度をとるクソ生意気な荒井昭二だ。
 やっぱりコイツは見てくれだけじゃつまらねぇ。
 天使みたいに綺麗な顔にクソみたいな性格がくっついてるから最高の男なんじゃ無ェか。

「っと……オマエが起きたなら医者に連絡したほうがいいのか? オマエは知らねぇだろうがもうまる三日もグースカ寝てたんだぜ。ってかオマエ、何処まで記憶がちゃんとしてんだ?」

 もう少しこうやって他愛もない話で盛り上がっていたい所だが荒井はまだ本調子じゃ無ェ。
 医者だっていつ目覚めるかわからない奴がやっと目覚めたんだ、連絡したほうがいいだろう。そう思った俺の手を止めるよう握ると、荒井はどこか寂しそうな目で俺を見る。

「まだ……まだ、少し待ってください。もう少しだけ、二人で……いいですか? ……正直なところ、完全に全てを思い出したという訳ではないんです。ただ、新堂さん……あなたの事だけは、ずっと忘れていませんでした。だから……もう少しだけ、僕にあなたの時間をください……お願いですから……」

 ……まったく、そんな風に頼まれたら断れ無ェじゃねぇか。

「あぁ……わかった。もう、少しだけ……な」

 俺は荒井が痛くねぇようにできるだけ優しく抱きしめてやる。
 温もりが腕に伝わり、くすぐったそうに笑う荒井の吐息が肌に触れるのがわかった。

 その姿を見て、感じて、俺はやっと生きているという実感が沸く。
 荒井が生きているのを見て自分が生きた実感が沸くなんて変な話なんだろうが……。

 俺にとっての荒井は、今やそういう存在になっていた。

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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