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インターネット字書きマンの落書き帳

   
あらいくんを誘拐して記憶を奪った上で拷問しよう! その5
いよいよ本心を隠さなくなってきたな!(挨拶)

荒井くんを誘拐し監禁し記憶を奪う男が我慢がきかなくなって拷問をはじめている話を書きました。
永遠に続いてしまいそうですが今週くらいには書き終わるといいですね。(希望)

本当はここ書かなくても何とかなりそうだな……と……思ったのですが……。
暴力に屈して泣きながら許しを乞う荒井くんは誰だって書きたいですよね。
俺だって書きたいので書きました!
健康になった気がします!

<前回までのあらすじ>

 荒井は誘拐・監禁・記憶操作を受け知らない男を兄さんと呼んでいたが、ふとした瞬間にその男の前で「誠」という名前を言ってしまったがばかりに逆鱗にふれもっと非道い記憶操作をされてしまう事となる。
 一方そのころ坂上は荒井が学校においていったスマホから誘拐した奴の居場所を突き止める事に成功したがすでにぶち切れで仕上がっている新堂が人を殺しそうな目をしていたからドン引きしてた。

<この作品に含まれている原材料>

・新堂×荒井の世界線で話をしているッピ
・新堂→荒井も荒井→新堂もクソデカ感情でhappyだっぴね!

・荒井くんを誘拐しているモブ男は変態
・誘拐して監禁して記憶操作をし虐待もする
・誘拐モブ男はたぶん黒髪痩躯の長身で浪川大輔の声とかでる
・書いてる人がhappyだっぴ!

以上です。
これが無事に書き終わったら……本にまとめるのを視野に入れていきたいですね。
狂気を保っていたらそうします!
(正気にもどったらやめておきます)




『There is no tomorrow』

 僕はいったいどれだけこの部屋にいるのでしょうか。
 灯りなどほとんどない石造りの部屋、その片隅で僕は鎖につながれて今日もぼんやりと何もない部屋を眺めるのです。
 首につながれた鎖は部屋に備え付けられたベッドの足につけられています。
 こんな鎖などなくとも、僕は自分の力で歩くことは出来ません。足にほとんど力が入らないのもそうなのですが、歩こうとするとナイフを突き刺したような激しい痛みがあるのです。
 それでも首輪でつないでいなければ僕が逃げ出すと思っているのでしょうか。
 いえ、きっと違うのでしょう。
 僕はもしこの部屋から外に出られたとしても何をどうすればいいのか、誰を頼ってどうやって生きていけばいいのかわからないのですから。

 ここがどこなのかを、僕は知りませんし、僕は自分が何という名前なのかさえわからないのです。
 そんな人間が外に出られたところで何が出来るのでしょうか。ましてや自分の力で歩く事も出来ない身体では助けを呼べる場所まで行き着けるかもわかりません。
 僕の飼い主だってそれくらいはわかっているでしょう。

 わかっていてもなお、僕を鎖でつなぐのは僕を追い詰めるためです。
 僕が飼い主には絶対に逆らえないのだということ、飼い主がいなければ生きていけないのだということを頭でも身体でも心の奥底からでも理解させたいのです。
 それならいっそ殺してくれればいい。
 こんな風に生かされているだけの状態を僕は「生きている」とは思えません。

 だけど僕の飼い主は僕が死を望んでいる事さえ知ってなお決して殺そうとはしないのです。
 死の淵で悶え苦しみ血を吐いている僕の頭を踏みつけ笑っているのですから。

 ……扉を開ける音がします。
 今日も僕の飼い主が僕をなぶる為にこの部屋に来たのです。

「やぁ、荒井くん。ご機嫌はいかがかな? うん、ちゃんと生きているようで偉いよ」

 僕の飼い主は部屋に入るとすぐに手を広げ嬉しそうに言うのです。
 アライくん、というのはどうやら僕の名前らしいのですがどうにも実感がありません。ここに来るまでの記憶がぽっかりと抜けてしまっている僕にとってのはじまりはこの部屋でありこの部屋が世界の全てなのですから。
 何と答えていいのかわからないまま飼い主を見ていると彼は笑顔のまま僕の前髪を掴んで顔を寄せるのです。

「返事出来ないのかな、荒井くんは? ……やはり少しエリクシルを入れすぎたかな? 最低限の知性を奪わないようにしたつもりなんだけれども」
「い、たい……痛いです……やめて、ください……」

 痛みで僕は反射的に声が出ていました。
 でも、今の僕は反射で出た言葉しか口から出てこないのです。
 僕の飼い主は僕にもっと知性のある会話を求めているようなのですが、僕はこの人がどんな話を好むのかわかりませんし自分自身がもつ知識というものが一体何なのかすらよくわかっていない有様なのですから、このようなていたらくで何を語れというのでしょうか。

「痛いかい? やっぱり痛みには反応するね。うん……僕としても君が苦渋にまみれ痛みに耐え悶える姿を見るのがいっとうに興奮するから何ら実りの無い会話をするのなら嫌がって泣き叫ぶ君を見ているほうが楽しいし、そういった反応をしてくれるだけでも上出来と思おうかな」

 僕の飼い主はそう言うといつものように短い鞭を取り出します。
 さして長くもない鞭ですが固くなめされた革で出来た鞭はとても人の身体に振るうようなモノには見えません。きっとあれは馬を走らせる時に使うものです。事実としてあれで叩かれると一撃でこのシャツごと肌を引き裂くのですから。

「や、やめ……やめてください、何で……何でそんなことするんですか……僕が、あなたに何をしたっていうんですか……」

 逃げる所なんてないのは解っているのに身体がすくんでしまいます。
 頭と身体を押さえ自然と背を向けるのは、結局背中を打たれるのが一番痛くないのを覚えたからです。うっかり手でかばおうとして指などにあたったらかえって激しく痛むのです。
 その場で小さく身を丸める事しかできない僕を前に、彼は容赦なく鞭を振るいます。
 皮膚を裂く音が部屋中に響き渡るような気がしました。

「何をしたか? 覚えてないんだよね。でも君は僕の怒らせただけに飽き足らず、僕が怒る様を見てあざ笑って見せたんだ。この僕を本当に心の底から怒らせたんだよ? そして今でもそうだ、まだ僕を怒らせ続けてる。荒井くん、これはね、罰なんだよ。僕という人間をコケにした罰だ」

 鞭を振るうたび、肌が裂ける音が身体の内から響いて激しく痛むのです。 話をしている最中でも何度だって彼は僕の身体を叩き続けます。言葉はとても丁寧で穏やかなのですが張り付いたような笑顔のまま容赦なく鞭を振るう姿で僕を絶対に許すつもりなんてないのがわかるのです。
 僕は彼に何をしたのでしょうか。それはもう今の僕にはわかりません。
 ですが「今でも怒っている」理由はよくわかります。

「荒井くん、僕の名前は覚えてくれたかい?」

 何度も鞭を打った後、決まって彼は言うのです。

「僕の名前は■■■というんだ……わかる?」

 自分の名前を名乗って、僕に覚えさせようとするのですが、僕はどうしても彼の名前がわからないのです。
 わからない、というより僕の心が受け入れないのかもしれません。
 聞いているし、その言葉を理解しているとも思います。特別に珍しい名前でもないですから声に出して言いづらいといったわけでもありません。
 ですが僕はどうあってもその名を呼ぶのを拒むのです。
 名前を呼びたくない、その思いからなのか僕は彼の名前がどうあっても理解できないようでした。

「……わからない。言えない、言えないんです。僕は、あなたの名前がわからない」

 僕の言葉に、彼は残念そうに息を吐いてからまた鞭を振り下ろしました。

「どうしてなんだろうなぁ! 君の頭を弄ってはいるけど僕の言葉までわからくなるほどは手を入れてないんだ。それなのに、どうして君は僕の名前を覚えてもくれないんだ? ……僕を馬鹿にしてるのか?」
「そんなこと……そんな事はありません! 本当に……本当に、あなたの名前がわからないんです……自分でも、理由がわからない……」

 確かに聞こえている言葉が理解できない。そんなことってあるのでしょうか。
 でも僕は彼の名前をどうしても覚えておこうという気持ちになれないのです。ましてや声に出して呼びたいとも思わない。
 僕の頭では理解できないもっと奥底にそのような強い感情が根付いているのでしょうか。

「あなたこそ……どうして僕にこんなにも拒絶されているんですか? 僕は……叩かれるくらいなら名前を呼びたいと思っているのに、僕の心がそれを許してくれないんです」

 痛みと恐怖が入り交じった感情は、ついそんな言葉になって出ていました。
 僕はバカですよね。そんなことを言われたら誰だって怒るに決まっています。これは僕の本音で、本音とは大概悪口になるのですから。
 当然、その人は非道く怒ったようでますます強く鞭を振るうのです。

「本当に! 本当に、本当に本当に強情なんだな君は! 人間ってさぁ! 記憶の積み重ねで人格が出来ていき、自我が生まれてくるもんじゃないのかなぁ! 君は記憶を弄っても! それを奪っても! 心の奥底から僕を拒絶して受け入れようとしない! どういうことだ? ……君みたいに調整がうまく出来ない奴は初めてだよ」

 散々鞭で打たれたせいで、着ていた服はもうズタズタに破れていました。 肌のあちこちも裂け血が滴っています。 赤く、どこかラメの入ったように輝く血が白いシャツを染めベッドのシーツまで濡らしています。
 僕は僕の身体から流れ出す血液をどこか他人事のように眺めていました。

「……すこし、僕の話をしようかな。荒井くん、僕はこれでもう結構長生きなんだ。普通の人間の3倍は生きてる……若い頃に囓った学問で優秀を極めた結果、不老不死にかなり近いところまで行ってる。すごいだろ?」

 そんな僕の前に座ると、彼は不意に話し始めました。
 僕の世界がこの暗がりで始まってから彼が自分のことを話すのは初めてだと思います。
 だけどその話はおおよそ突飛な内容で真実とは思えない話でした。
 人間の三倍といえば短く見ても150年は生きているという事でしょう。人間の肉体を限界まで消費した時の最高寿命がそれくらいだと聞いた事がありますが、彼の見た目はせいぜい30歳前後です。 本当にそれだけ長生きなのでしょうか。それとも自分の事を不老不死だと思っている狂人なのでしょうか。
 普通に考えれば後者です。そんなもの自分が特別だと思っている異常者の発想ですから。ですが目の前にいる彼はおおよそ普通の人間とは思えませんでした。
 少なくとも僕の記憶がぽっかりと抜けているのは彼の仕業なのですから。

「僕がまだ若かった頃、流行った学問がね。錬金術なんだよ、知ってる? 錬金術」

 錬金術……とは、西洋で一時期流行ったオカルトと科学の揺らぎにあるような分野のことでしょうか。 ただの石ころを金に変えるような秘術と形容されますが、その目的は様々で実際に石ころから金を創造できないか試行錯誤する研究者もいれば金持ちに不老不死になれると吹き込んでパトロンを得て好き放題に生きる詐欺師のような連中も随分いたと聞きます。
 その大目標が「賢者の石」の生成だとはよく聞く話ですがその賢者の石が具体的に何であるかは解釈に揺らぎがあるようで、不老不死であったり生命の創造であったり万物の知識を得る事であったりと様々なのですがようするに各々にとって最も求めている存在の比喩ということでしょう。
 多くの錬金術師は自分の研究を残す時に古いラテン語を用いたり独自の記号を用いたりと具体的な内容をぼかす事が多かったといいます。そのほとんどは詐欺が見破られぬようでっち上げの研究をパトロンに提出するためのものだったのでしょうが……。
 こういった知識も、自身が「錬金術を学問にしていた」という彼の前では会話するにも値しない薄っぺらな話にすぎないのでしょうが。
 僕が黙っていると、彼は虚空を見つめ続けます。

「僕は不老不死を求めるタイプの錬金術師だった。現代の科学や医学からすると僕のした事はオカルトとかスピリチュアルと揶揄される内容なんだけれどもね。でも僕はそんな有象無象の中から僕の求める情報を得る事に成功したんだ。それが、エリクシル。便宜上そう呼んでるモノだ」

 彼の手に小ぶりの折りたたみナイフが握られていました。
 鞭の後はそのナイフで僕の身体を切り裂くのでしょうか。そんな事を考えながらナイフを見つめていれば、彼は自ら手首を切って見せるじゃないですか。
 勢いよく真一文字に切られた傷からは血と呼ぶにはやけに粘り気のあるタールのような液体がどろりと流れ出てきました。

「僕の血にはそのエリクシルが随分と混ざっている。このエリクシルってのはね、簡単にいうと人間の記憶を封じた液体のことだ。僕は自分の記憶を液体に封じ込めて他人の身体に入れ替えて今を生きている……この身体は元々僕のモノじゃなかったんだが、綺麗だし羽振りもいいからね。20年くらい前にぼくが勝手に譲り受けた身体なんだ」

 勝手に譲り受けた、ということはつまり相手に無断で自分の記憶を植え付けてその身体を使っているということでしょう。乗っ取った、という事です。
 荒唐無稽なことですが今の姿が若いのはそれで幾分か納得できます。他人の身体を奪って現在まで生きているのなら確かに100年以上、自分という存在を保っているのは確かでしょう。
 それも「生きている」という認識で良いのかどうかは甚だ疑わしいところですが。

「エリクシルは調整によって肉体をかなり若い状態で保つ事が出来る上、人間の記憶をある程度溶かし出して引っこ抜くことが出来るんだ。うん、今の荒井くんが自分のこと何も思い出せないのは僕がその脳みそから液状にして掻きだしたから……君の身体にも結構な量のエリクシルを注入してるんだよ」

 どうやって信じればいいのかわからない話をしながら、男は自分の血を指先で弄っていました。やけに粘り気のある血とも言えぬそれは指で集めるとまた傷の中に戻っていき、男が最後傷口を指でなぞったところで最初からナイフで切ってなどいないといった様子になるのです。
 手品でも見ている気持ちになりました。実際、手品だったら良いのですが。
 これが現実だとしたら僕の目の前にいるのは人間のカタチをした化け物じゃないですか。 しかもこの化け物に散々と頭の中身を弄られて得体の知れない薬剤を身体に入れられていたなんて……それなら僕はもう人間じゃない何かになってしまっているのでしょうか。

「エリクシルは液状の金属に近いものだけど培養できるんだ。生物みたいに増えていくんだよ。僕は僅かに見つけたエリクシルを培養して扱っている……荒井くん、君にはその貴重なエリクシルを結構使ったんだ。それなのに、君は魂から僕を拒絶してる……こんなこと、初めてだ。本当に忌々しいことだよ」

 座ったまま彼は長く息を吐いてみせました。
 豊富な知識を蓄えているのであれば新しい事例というのは興味深い事になり得るような気もしますが、彼にとってはむしろ僕という例外が存在している事が気に入らないように思えます。
 あるいは自分が最も大事にしている研究を手ずから与えた僕が思い通りに動いてくれない事で自尊心が傷ついたのかもしれません。

「これが僕の研究。君の記憶がすっぽり抜けてる理由で、僕が君のことをとても憎んでる理由。わかった? ……でも僕はそれでも君の事が愛おしい。君はとても綺麗で、記憶や知識をこれだけ壊されても無様な取り乱し方をしない知性をもっている……だから実に愛おしいく、だからこそ僕を拒むのは許せないという訳だけれど……」

 男は僕の首輪から伸びる鎖を無理矢理引きずって笑うのです。 喉に首輪が食い込むのを必死に抑えるんですが、僕より身体の大きな彼の前でいくら抗ってもほとんど無力でした。

「何でこんなことを君に聞かせてるかわかるかい? それは、今の君にこんな話をしたところで真偽の判断なんて出来ないだろうってのが第一だ。荒井くんが僕と出会った頃の知識をもっていたら僕の話がどこまで真実なのかある程度は判断がつくだろうけど、今の君だったら無理だろう。それと、もう一つはね……僕はもう君をこの部屋から一生出してやるつもりはない。いいかい、荒井くん。君はもう一生この部屋以外の世界を知らないし、僕以外の人間を知らないで生きていくんだよ」
「……やめて、ください。もう……許してくださっ……許して……」

 こんな痛みにあと何年耐えればいいのでしょうか。
 暴力的なまでの痛みと気が狂う程の責め苦をどれだけ続けられているのかわかりません。
 それならばいっそ殺してもらえた方が楽だとさえ思います。

「心配しなくても、エリクシルを入れてある君の身体は普通の人間より幾分か回復が早い。それに歳もとらないようにしてあげるからね。僕の手元で10年でも20年でも、僕の気が済むまでその身体を切り裂いてなぶり散々と汚してあげるから……できるだけ長く、気が狂わないでいてくれ」

 でも、相手はそんな事をする気はないようです。
 僕が正気を保てるよう壊れるか壊れないかギリギリのところを見極めて少しずつ苦しめていこうと思っているのでしょう。
 もし完全に壊れてしまっても、ご自慢のエリクシルとやらで僕を直してまた正気に戻し苦しめるのかもしれません。
 両手を鎖につながれ、吊り下げられていくのがわかります。 天上から腕を吊り下げられるというのは何となく見たような記憶があります。映画やテレビなどで見たワンシーンなどでしょうか。 どんな作品を見たかまではわからないのですが、そういったシーンは創作物によくあるものです。ですがよくあるシーンでも実際に自分がされてみるとこれが非道い拷問だというのがよくわかります。
 人間の体重が身体にかかり肩の関節が悲鳴をあげ非道く痛むのです。
 自分の足で立つ事がままならない僕は尚更痛み、関節が外れば腕がちぎれそうな程になるのです。
 それを知っている上でこの人は僕を吊り下げたまま暫く放っておくのです。両腕がちぎれても別段構わないとでも思っているのでしょうか。
 ……ずっと自分の手元において逃さないつもりであればそんな事を考えていても不思議ではない気がします。

「やめてください、もう……鎖を……吊り下げるのは、もう……」

 イヤイヤと首をふる僕は痛みからか辛さからかわからぬまま涙をこぼしていました。
 その顔を満足そうにながめ、彼は僕の涙をいやらしい舌で舐って笑うのです。

「本当に、君は綺麗な顔をしてる。泣き叫び拒絶する顔を見るとすこぶる興奮するよ……さぁ、暫くこの部屋で一人で泣き喚いているといい」
「いや、やめてください……何でもします、何でも……しますから……」
「ははっ、言ってるだろ。何でもするなら僕の名前を呼んでくれって。僕はそれだけでいいのに、それが出来ないのは君じゃないか……さ、一人でいい叫びをあげてくれ。そして是非とも孤独と痛みで狂ってくれ」

 望まれなくともすでに狂いそうになるほどの痛みが身体中に走っています。
 鞭で散々打たれた傷が痛むのか、身体を支えるために床へとついた足が痛んでいるのか、それとも身体をつられた枷が食い込んでいるのが痛いのか、それさえもわからない程です。
 そんな僕を前に、彼はふと思い出したように言うのです。

「あぁ、そうだ。実は君の友人から連絡があったんだ。時田くん、だったっけ。どうしてもまた僕の家に来たいけど良いかって……君、この家に来ること誰かに告げたのかい? そんな暇与えてなかったつもりだったけど、やっぱり聡い子だね」

 友人? ……誰の事だかわかりません。
 トキタという名前なんでしょうか。今そんなことを告げられても実感がありません。 友人などと楽しく過ごしてた時間などいまの僕には存在していないのですから。

「複数人で撮影をしたいと言っていたからね。この家に君がいるんじゃないかと思っているのかもしれない……でも、君を見つけるのは無理だろうからね、OKしたんだ。僕も君の友人に興味があったからね」

 彼は僕へ顔を近づけ、いやらしい笑みを浮かべました。

「……きっと来てくれるんだろう、『マコト』って奴も。そいつを見つけて引きずり出して、この世にある苦痛という苦痛全てを与えて殺してやる。君の前で臓腑をぶちまけて肉の塊にしてやるからね」

 その時、僕の身体から痛みという痛みが消えていくのがわかりました。
 そのかわり激しい焦りが募るのです。痛みに増しての狼狽が僕の頭をかき乱すのです。

「まってください! 僕だったら……僕だったら何をされてもいいです! どんな事でも耐えます……だから、お願いです。どうか……どうか、その人は……僕じゃない誰かに手を出したりはしないでください……お願いです、お願いですから……」

 ほとんど叫ぶように言う僕を、男は満足そうに笑ってみると部屋を出ていきました。 遠ざかる渇いた靴音を聞きながら僕はどうしようもなくこぼれ出てくる涙を拭う事も出来ないで。

「お願いです、僕になら何をしたっていいですから……」

 ただ一人そう、繰り返しつぶやいていました。
 あの人が口にした名前が誰なのか、その顔も思い出せないというのに絶対に傷つけて欲しくない。
 その強い思いだけが、空虚であるはずの僕の記憶にはっきりと焼き付いていたのです。

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プロフィール
HN:
東吾
性別:
男性
職業:
インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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