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インターネット字書きマンの落書き帳

   
あらいくんを誘拐しようよ! その2
キミは推しを監禁したり誘拐する話は好きかい?
(※犯罪を誘発させる意図はありません)
ぼくは大好きだよ!
(※犯罪の大胆告白ではありません)

すごく……本当に狂おしい程に好きでね……推しをいっぱい誘拐させちゃうんです。
そんな誘拐欲が湧いてしまったので暫く僕が洗いくんを誘拐する話に付き合ってください。
この一週間で終わらせますんで……。

大丈夫! ぼくは話を終わらせられる変態だよ!

今回は「荒井が最近学校に来ないけどどうしたんだろう」と新聞部で相談する坂上くん、新堂さん、日野さん、倉田さんがダラダラと話す話ですよ、


<作品傾向>

・オカルト要素が混じった荒井くん誘拐ストーリー第二話
・新堂×荒井前提のBL要素ストーリー
・モブキャラの男が一方的に荒井を愛してる
・坂上くんは元木さんと付き合っている

<前回までのあらすじ>

 気がついたら知らない部屋にいた荒井くんは自分の名前も覚えていなかった。
 そこで知らない人に親切にされるが全体的に違和感を覚える。
 何かおかしい、自分の記憶がないのも、足が動かないのも。妙に思った荒井くんは一瞬、自分の名前が「荒井昭二」である事に気付くが知らない男に眠らされてしまうのだった。




『club room』

 僕が新聞部に来た時、普段は滅多にこの部屋で顔を見ない新堂さんの姿があった。
 以前集会で新聞部に集まった時でさえ「暑い」「狭い」「汚い」など散々な言い草だったか二度と来ないだろうと思っていたのだが、今日は何か用事でもあるのだろうか。仏頂面で腕を組むと日野さんと向かい合っている。 二人の前には見覚えのないスマートフォンが一台置かれていた。

「あの、日野さん。新堂さん。どうしたんですか。新堂さんが新聞部に来るとか珍しいですね」

 沈黙に耐えかねて僕は声をかける。
 あまりに空気がピリピリしているから何も言わずこのまま外に出てしまおうかとも考えたが、先週は部で集まる予定をすっぽかしてしまっている。今日も帰ってしまったらますます部室に来づらくなると思ったのだ。
 最近は倉田さんとのYチューブの活動が忙しくはなっているが僕は新聞部の雰囲気が嫌いではなかったし、まだ日野さんから教えて欲しい事は沢山あったのだ。

「あぁ、坂上。来てたのか、すまんな、気付かなくて……」
「いえ、別にいいんです。それより、そのスマホ誰のですか? 何で新堂さんも新聞部に……」
「このスマホは荒井のだ」

 僕の疑問にこたえるよう、新堂さんはスマホに触れる。スマホは一瞬明るくなったかと思ったがすぐに飾り気のないロック画面が現れた。
 だけどどうして荒井さんのスマホがここにあるんだろう。それを新堂さんがもってきたのだろうか。 不思議に思う僕を前に、新堂さんが口を開いた。

「実はな、先週からずっと荒井のやつ学校に来てないみてぇなんだよ」
「荒井さんが?」

 荒井さんは以前日野先輩が企画した「学校の七不思議」を作るために集まってくれた語り部の一人だ。 臨場感がある語り口はまるで実際にそのようなモノを見たのではないかと思わせるほど迫力があったのは今でも覚えている。
 集会が終わった後も僕はあの時知り合ったメンバーと定期的に連絡をとりあっていて、荒井さんはテスト前の勉強を見てくれたこともあった。 そっけなさそうに見えるけれどもとても上手に教えてくれたから普段より良い点が取れて助かったくらいだ。
 ただ、荒井さんは滅多に学校に来る人ではなかった。
 学校という場所は嫌いではないみたいなんだけど画一的なカリキュラムを押しつけられるのがどうにも苦手だったみたいで、気が向いた時にしか学校に来ないのだ。
 実際、荒井さんは鳴神学園の2年生でやる範囲を概ね把握しているだろうから学校に来るのはあくまで出席日数を稼ぐためだろう。

 「普通に休んでるだけ、とかじゃないですか。テストも終わりましたし……」

 そういう性格だから休むのは珍しくないんじゃないだろうか。 テストが終われば学校では授業らしい授業なんてないから荒井さんならこのまま休んで夏休みまで過ごしそうだとも思った。

「だが、スマホを学校に置きっぱなしにするか? これ、荒井の机に入っていたんだぜ」

 僕の考えを打ち消すよう新堂さんはスマホを手にしぶらぶら揺らして見せる。確かに長期間休むつもりだったらスマホを置いていくのはおかしい気がする。 今のスマホは電話でありスケジュール帳であり本でありゲームでもあるのだ。長らく休むつもりなら手放す必用はない。
 荒井さんは暇つぶしにアプリゲームもいくつかやってたはずだ。最近遊んでないゲームもログインボーナスのために一応は立ち上げているなんて言ってたからスマホを学校においたままにするのはおかしい気がする。

「それに、荒井は最近時田の映画撮影を手伝っていたらしくてな。休む前から時田と約束をしていたらしい」

 さらに日野さんがそう付け足す。
 時田さんは荒井さんの親友で生徒数が多い鳴神学園でも名の知れた存在だ。自主制作の映画を撮りそれを去年の文化祭で発表したのだがかなり好評で、校内はもちろん校外にもファンが多いのだという。
 荒井さんも時田さんの才能には一目おいており撮影や編集を率先して手伝っている。その時田さんと約束を反故にしてまで休むとは確かに考えにくい。それならせめて時田さんには何かしら連絡はいっていると思うんだけれども。

「確かにそれはおかしいですね。荒井さんは友達の約束を破るような人じゃないと思うんですけど」

 下らないと思った人物は一切相手にしないが友人の頼みには真摯に向き合ってくれるのが荒井さんという人だ。 約束をしたのなら絶対に守ってくれるだろう。
 ……少しだけ怒りのポイントが解りづらいのが難点ではあるけど。

「あー、遅くなってごめんなさいー! 倉田恵美、ただいま到着いたしましたっと」

 そんな僕らの前に倉田さんが勢いよくドアを開けて現れる。かと思えば息を弾ませながら新堂さんが机に置いたスマホを目聡く見つけると止める間もなく手にとった。

「あっ、スマホだ。誰のですか? ロックしてある……暗証番号は、っと」

 そして適当に暗証番号を入力する。
 倉田さん、デリカシーとかそういうものが一欠片もないのか。

「おい、何やってるんだ倉田!」

 日野さんが止めるがすでに番号を入力した後だったのか、倉田さんは小さく舌を出して笑っていた。

「えへへ、ごめんなさーい。でもロック解除できませんでしたー」
「解除できませんでしたー、じゃないだろ……何を入力したんだ」
「0918! 坂上くんの誕生日ですよ。これ、坂上くんのスマホじゃないんですか」

 どうやら僕のスマホだと思ってロックを解除しようとしたらしい。いや、仮に僕のスマホだったとしても勝手にロックを解除しようとするのはどうかと思うけど。

「それ、荒井さんのスマホらしいよ……あ、でも僕のスマホ、別に誕生日でロック解除できるようにはしてないからね」

 確かにロック解除をするには覚えやすい番号がいいけどだからといって誰にでもわかるような番号にしてしまってはロックの意味はないだろう。 かといって逆に難しすぎる数字にしてしまって自分が覚えられなければ本末転倒だ。自分が覚えられる範囲で、なおかつわかりやすい番号にしておくのが普通だろう。

「荒井のスマホは番号を入力するタイプのロックか……」

 新堂さんは倉田さんからスマホを取り上げると、数字画面を見る。今、倉田さんがデタラメな番号を入力したから試せるのはあと2回くらいだろう。 だいたいスマホは何度も暗証番号の入力に失敗すると悪用防止のために暗証番号が使えなくなったりするのだ。

「赤川に頼めば無理矢理中のデータを取り出す事は出来るみたいなんだが、流石にそれは荒井に悪いからな……暗証番号がわかれば荒井が最後に何をしようとしてたのか手がかりくらいつかめそうだけどな」
「赤川さん……? 新堂さんの知り合いですか?」
「いや、荒井の知り合いだ。ゲーム関係に詳しいみたいなんだが、パソコンでイジればデータくらい取り出せるって話をしてたんだよ」

 ……それって犯罪じゃないのかな?
 でももし荒井さんが赤川さんの存在を見越してスマホをおいていったのだとしたら、自分が何かしら危険な目にあうのを見越してスマホをおいていった事になるってことだ。 ますます荒井さんがただ休んでいるだけではないという気がしてくる。

「荒井さんの誕生日は試してみたんですか、暗証番号」
「あいつの誕生日は11月18日なんだよ。暗証番号にするには単純すぎるだろ。実質、1が3つ並んでるんだぜ? もし暗証番号にするならもう少し工夫すると思うけどなァ」
「確かに、そう考えると11月生まれの人って同じ数字並びやすいですよね~……って、荒井さんの誕生日とか覚えてるんだ。新堂さん、思ったよりマメですね」
「…………何か思いついた暗証番号があったら言ってくれ」

 いま、一瞬新堂さんの言葉に間みたいなのがあったけど何だろう。
 でも暗証番号といわれても急に思いつくのはないな……。

「ちなみに、坂上くんはスマホの暗証番号何にしてるの? 坂上くんの誕生日だとロック開かなかったけど」

 倉田さんの方を見たら、倉田さんは僕のスマホを持っている。
 い、いつの間に僕のカバンから取り出したっていうんだ。そういうの犯罪だって言ってるのに!  それに誕生日じゃないってさっき言ったじゃないか、相変わらず全然人の話を聞かないな、倉田さんは。

「やっぱ恋人の誕生日とか? あ~、だとすると日野さんの誕生日かな、日野さんって早生まれでしたよね、確か……」
「俺の誕生日を暗証番号にしてるのか……やめろ坂上、照れるじゃないか」

 日野さん! 日野さんがそんな事をいうから倉田さんが助長するんだ。 間違っても日野さんの誕生日にはしないし、そもそも僕は日野さんの誕生日なんか知らない。

「ちがうよ! 元木さんの誕生日に決まってるだろ! 恋人の誕生日にするんだったら元木さんだよ!」

 とっさにそう……僕はつい、そう、言ってしまっていた。
 すぐに倉田さんの顔が嫌なニヤけ方にかわり手早く暗証番号を押す。僕のスマホは無惨にも開け放たれた状態となってしまった。

「おやおや、二人とも青春をしているようですな~」
「健全な付き合いでお父さんは嬉しいぞ」

 倉田さんも日野さんもニコニコしながらスマホを見ている。やめて! 僕だって恥ずかしいのに!  あと日野さんどうして後方お父さん面してるんです!?

「返してくださいよぉ! 何してるんですかっ!」

 取り返そうと手を伸ばすけど、日野さんが本気で上まで上げると僕の背じゃとても届かない。くそ、あと2年あればぼくも日野さんくらい背が高くなるはず……日野さんくらいじゃなくても、せめて新堂さんくらいの背にはなりたいな……母さんは小柄だけど父さんはそこまで小さくないから遺伝的には問題ないんだ……。
 そんな僕の隣で新堂さんは。

「恋人……と思ってくれてれば、か……」

 新堂さんは何か独りごちるとスマホをタップする。そして。「……開いた」 と、驚いたように顔を上げた。

「えーうそうそ。何を入力したんですか新堂さん」
「何かスクープになりそうなネタはあったか? 荒井のスマホなら学園の裏事情が一つや二つ入っているだろうからな」

 日野さんも倉田さんも目を輝かせながらスマホに食いつく。けど、それ犯罪だと思うからやめたほうがいいですよそういうの……。
 でも僕のスマホに興味を失ってくれたのは助かった。 今度は別の暗証番号にしておかないといけないな……何がいいだろう。以外と倉田さんの誕生日だったら盲点かもしれないな。

「それで、荒井さんのスマホには何かありましたか?」

 もし荒井さんが失踪したのだとしたら、その前に何かしらヒントになるようなものを残しているだろうとは僕も思う。 そのヒントは学校の机においてあったというスマホに隠されていると思うのが普通だろう。 だけど中を見ている三人……新堂さんも日野さんも倉田さんも、思いのほか普通の内容しか入っていない……むしろ男子高校生のスマホとしては少なすぎる写真や動画の数に首を傾げるばかりだった。

「何もはいってない……え、逆にこんなに何も入ってないって凄くないです? これ、意図的に消したりしてますよね」
「あぁ、いくらなんでも少なすぎるな……写真も数枚しかない」
「そうだな、しかも見た事もない建物の写真だけだ。おい、これどうなってんだ……この建物、見た事あるか?」

 新堂さんはそういいながら写真を向けるけど、そこには見た事のない洋館が写っているだけだった。 周囲の風景から山中にある建物なのは見てわかったが当然僕も知らない建物だ。黙って首をふれば、倉田さんもため息をつく。

「誰も知らないなら、たぶんお店とかそういうのじゃないですよね。誰かの家かな……」
「かといってあまり遠くでもないだろう。この写真がとられたのは荒井が休むようになる前だ。明日は学校だという時にそこまで遠出はしてないだろう」

 雰囲気ある洋館だけれども町中にあればきっと目立つだろう。お店屋さんという雰囲気ではない。

「ペンションとか個人経営のホテルだったらこういう所ありそうですよね」

 何気なく口にした僕の言葉に日野さんは膝を打つ。

「なるほど、確かにこの周辺にはペンションも多い。宿泊施設じゃなくとも別荘なんかあるかもな。webを回って似た外観の建物を探してみるか……おい新堂、他には何かあるか?」
「他に……いや、自分のスマホじゃないから操作よくわかんねぇな……どうすんだコレ」
「あ、新堂さん何かここにメモがおいてあります。荒井さんが残したメモじゃないですかね」

 僕は横からのぞき込み、スマホを操作する。 普段は出ていない場所に出ているメモ帳。それがこのスマホの中では明らかに異質だったから何かあると思ったのだ。

「そうなのか? ……開けてみっか、どれ」

 開いてみるとそこに書かれていたのは……。

『これを僕以外の誰かが見ているという事は、僕がスマホに触れられない状態だと思います。申し訳ありませんがアカシック・レコーダーというゲームを立ち上げてプロフィール画面からログインボーナスをもらっておいてください』

 という、苦労して見つけたわりにはよくわからない指示だった。

「何だコレ? おいおい、随分とのんきなメッセージだな……チッ、心配して損したぜ」

 新堂さんは舌打ちしながらスマホをポケットに突っ込むと。

「悪い、面倒かけたな。俺は練習行くから……邪魔して悪かったな」

 と、止める暇もなく新聞部から出ていった。

「あーあ、結局サボるために休んでるって事かな」
「さぁ、どうだろうな。それより時田が新作を撮っているのは興味深い、今日は彼に話を聞いてくるか」

 新聞部から出ていく新堂さんを見送ると、倉田さんは背伸びをして明らかに落胆した様子を見せる。 確かにあのメッセージは拍子抜けするような内容だったが、僕は少し違和感を覚えた。
 アカシック・レコーダーは僕もプレイしているゲームだけど、あのゲームは別にプロフィール画面なんて開かなくともログインボーナスくらいもらえるのだ。 そもそもそんな面倒な方法でログインボーナスをもらうようなアプリゲームなんて存在しないだろう。 だとしたら、ひょっとしてそのゲームに何かメッセージを残してあるのだろうか。

「おい、何してる坂上。今から時田のところに行くぞ。ついてこい」
「あっ、はい……」

 日野さんに呼ばれて僕は慌てて走り出す。
 だけど胸の奥にはそんな小さな疑問が引っかかってずっと消えないでいた。

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プロフィール
HN:
東吾
性別:
男性
職業:
インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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