インターネット字書きマンの落書き帳
どうしてボクに気付いてくれないの?(風坂)
平和な世界線で、なんだか坂上の事が気になって仕方がない風間の話をします。
今回は、日野の髪型が崩れた時「かっこいい!」と言っていた坂上くんを見て「何だよ、ボクだって髪型変えたら格好いいんだからね」と思って髪型をちょっと変えて、格好いいアピールをする風間の話をしますよッ。
Twitterでちょっと書いたネタなんですが、折角だから形にしてみました。
よろしければ楽しんでいってください♥
今回は、日野の髪型が崩れた時「かっこいい!」と言っていた坂上くんを見て「何だよ、ボクだって髪型変えたら格好いいんだからね」と思って髪型をちょっと変えて、格好いいアピールをする風間の話をしますよッ。
Twitterでちょっと書いたネタなんですが、折角だから形にしてみました。
よろしければ楽しんでいってください♥
『かっこよくて、かわいいひと』
放課後、坂上が部活のため新聞部を訪れた時、すでに風間がテーブルの一角を支配していた。
パソコンの前では部長である朝比奈が次の新聞に載せる写真を吟味しており、長机では日野が取材用のメモを広げている。
どちらかといえば小さい部である新聞部は、校内新聞を作るだけでも人員総動員で大わらわになっている。にも関わらず、風間は涼しい顔をして前髪を弄っていた。貴重な椅子に座り込み、長机にマンガ本を広げる様子を見る限り、手伝いに来たワケではないようだ。
忙しそうに各々の仕事に集中している部員たちとは目を合わせようともせず、ぱらぱらとマンガのページをめくっている。
「こんにちは、風間さん。新聞部にいるなんて珍しいですね」
ひょっとしたら坂上に用があってきたのかもしれない。そう思って声をかけたが。
「やぁ坂上くん、遅かったね。これから原稿かい、頑張ってくれたまえよ」
そう一言告げるだけで、またマンガのページをぱらぱらとめくりはじめた。特にマンガを読んでいるワケではなさそうだが、やはり新聞部に用があって来たワケではないようだ。暇だが暇つぶしが出来る場所がないので、新聞部に間借りしているのだろう。
坂上は勝手にそう納得すると、風間の向かい側に座ると新聞を書くためのメモを広げた。
学校の七不思議という大きな企画を乗り越えた後、幾分か自信を付けた坂上は校内新聞で目立つ箇所の記事も任されるようになっていた。今回は社会的な記事を任されているから気合いをいれて下調べをしてきたので、下書きも進むはずだ。
意気込み部活用のノートにシャープペンシルを走らせる坂上を見て、風間は急にそわそわしはじめた。立ち上がり窓を開けてみたり、椅子に戻って足を組んでみたり、意味ありげにため息をついてみたりと、明らかに様子がおかしい。
とはいえ、風間は元々気まぐれで変わった事をする性格だから、それが普段の風間なのか、やはり傍目からしてもおかしいのかが判断つかなかった坂上はこっそり日野へ近づくと、こちらの様子をじっと窺う風間の視線を避けるよう日野に小さく耳打ちをした。
「あの、日野さん。風間さん、なんかずっとソワソワしてるみたいですけど、何ですか。そもそもどうして新聞部にいるんでしょうか」
「ん……そうだなぁ、実は俺もなんで風間がこっちに来てるかわからないんだよ。朝比奈がいうには、部室開ける前からドアの前にいて、一緒に入って来たから誰か他の部員に用があってきたのかなーと思ったくらいなんだが……」
日野は坂上の頭ごしに風間を見る。風間は何故か不服そうに頬をふくらめると、椅子を方向け足組みをしていた。
「見る限り、誰にも用がなさそうだな。ま、邪魔するワケでは無さそうだし、放って置いていいんじゃないのか」
日野は特に気にしてない様子でそう告げ、取材用のメモを整理しはじめた。
新聞部はよっぽど秘匿したい特ダネでもない限り、基本的にオープンな場所だ。他の生徒が入ってきても気にしないのだろう。
日野は多少、風間に甘い所もあるのだが、風間がいると新聞部の女子部員から目の保養になると評判がいいというのもあるのだろう。
実際、風間は黙っていればモデルのようにスマートな外見をしているのだ。
「日野さんが気にするなっていうなら、気にする事はないか」
坂上は自分を納得させるために呟くと、席に戻り記事の下書きを始める。
切り抜いておいた新聞記事をいくつか眺め、それを参考にしながら書き出しを考える。すると風間は露骨なくらい坂上の前を行き来し、意味深にポーズをとったり、わざと視界に入るよう手を振るなどといった邪魔をしてみせた。
「何するんですか風間さん、僕は部活中ですよ、邪魔しないでくださいよ」
先輩に対して失礼な口を聞いてはいけない。そう思っていても、あまりに邪魔なのでつい泣き言のような声が出る。
すると風間はどこか悲しそうな顔をすると、いじけたように自分の前髪を弄り始めた。
「それはボクが言いたいくらいだよ、坂上くん。どうして日野の髪型が変わった時はすぐに気付くのに、ボクの髪型が変わった時は何も言ってくれないんだい?」
強い語調で言われ、坂上はやっと風間が長い髪を一つに縛っているのに気付く。
梅雨も明け暑い季節が続いているから長髪だと暑いからだろう。それくらいにしか思っていなかったからそこまで気にしていなかったのだが、どうやら風間はそれが気に入らなかったようだ。
「何だよ、日野がちょっと髪を下ろしただけで格好いいとかいうくせにさ。ボクだって格好いいんだよ。それに気付いてないなんて、キミの美的センスは少々おかしいんじゃないか」
頬を膨らませてブチブチと文句を言い続ける風間を見て、坂上は先週の事を思い出した。
部室の片付けをしていた時、部室に日野が駆け込んできた事があったのだ。
「外で運動部の写真を撮ってたら急に雨に降られちまったよ、坂上、タオルとかもってないか?」
「あっ、はい。どうぞ」
夏になり汗をかく事も増えたから、最近は常にスポーツタオルを持ち歩いくようにしていた坂上はすぐに鞄からタオルを取り出す。
「本当にもってるのか、準備がいいな……さんきゅ、坂上」
日野は感謝をしながら坂上のタオルで濡れたメガネや髪を拭いた。
普段は整髪料でしっかり整えられた日野の髪型は崩れ、前髪がはらはらと落ちてくる。トレードマークの眼鏡を外している事と前髪が崩れた事が重なり、普段の日野とは別人のような姿になるのを見て、坂上は驚き声を漏らしていた。
「わぁ、日野さんいつもと雰囲気が違う、すごく格好いいですね」
いつもしっかりと髪を固めている事や、厚ぼったい眼鏡をしている事から見過ごされがちだが、日野の顔立ちはかなり整っている。
普段から落ち着いた性格なのもあり、年齢よりずっと年上に見える日野だが、濡れた前髪を下ろした時はまだ少しあどけなさも見せる、年相応の姿に見えるのだ。
「そうか? ま、俺みたいなのは格好いいと言われるより、面白い記事を書いたと言われる方が嬉しいけどな」
あまり外見を気にしない日野は、坂上の賛辞を軽く受け流しただけだったが、あの時は風間も部室にいたのだ。
いつも通り500円をせびったり、片付けを邪魔して勝手にファイルを開いたり、「坂上くんの髪は柔らかいねぇ」なんて言いながら勝手に頭をポンポン叩いたりしていたから、何となく忘れていたのだが、まさか「髪型を変えたから格好いいですね」と言って貰いたくて、わざわざ髪を縛って新聞部にやってくるとは思わなかった。
「何いってるんですか、風間さん可愛いところがありますね」
坂上の口からつい、口から本音が漏れる。
すると風間は顔を真っ赤にすると、その場で地団駄を踏みはじめた。
「か、か、可愛いとは何だい。ボクは格好いいんだよ、キミが思わず目を奪われ憧れてしまうほど格好いいボクに、可愛いなんて、失礼だなもうっ……もういい、キミのことなんて知るもんかッ……ボクは帰るからね!」
そして荷物を引っ掴むと、頬を膨らましたまま部室を去って行く。
「おい、何だ今のは……」
日野はその背中を少し呆れたように見て、それから坂上の背中をポンと叩いて見せた。
「ま、あんまり気にするなよ。風間はいつもあぁいう奴だから、明日になったらケロリとしてまた遊びにくるだろうさ」
「はは……そうですよね……」
坂上はそう言いながら、床に落ちたヘアゴムを拾う。風間の髪を縛っていた、緑色のヘアゴムだ。よほど気分を害したのか、髪がほどけてヘアゴムを落としていたのにも気付かなかったようだ。
(明日、このヘアゴムを風間さんに返してあげよう。その時は、ちゃんと「格好いいです」と言ってあげようかな。ふふ……風間さんは、可愛くて格好いいです。なんて言ったら、どんな顔するんだろうなぁ)
坂上は拾ったヘアゴムを腕につけると、書きかけの記事へと向かう。
脳裏には真っ赤になって恥ずかしがる風間の横顔が、まだ鮮明に焼き付いていた。
放課後、坂上が部活のため新聞部を訪れた時、すでに風間がテーブルの一角を支配していた。
パソコンの前では部長である朝比奈が次の新聞に載せる写真を吟味しており、長机では日野が取材用のメモを広げている。
どちらかといえば小さい部である新聞部は、校内新聞を作るだけでも人員総動員で大わらわになっている。にも関わらず、風間は涼しい顔をして前髪を弄っていた。貴重な椅子に座り込み、長机にマンガ本を広げる様子を見る限り、手伝いに来たワケではないようだ。
忙しそうに各々の仕事に集中している部員たちとは目を合わせようともせず、ぱらぱらとマンガのページをめくっている。
「こんにちは、風間さん。新聞部にいるなんて珍しいですね」
ひょっとしたら坂上に用があってきたのかもしれない。そう思って声をかけたが。
「やぁ坂上くん、遅かったね。これから原稿かい、頑張ってくれたまえよ」
そう一言告げるだけで、またマンガのページをぱらぱらとめくりはじめた。特にマンガを読んでいるワケではなさそうだが、やはり新聞部に用があって来たワケではないようだ。暇だが暇つぶしが出来る場所がないので、新聞部に間借りしているのだろう。
坂上は勝手にそう納得すると、風間の向かい側に座ると新聞を書くためのメモを広げた。
学校の七不思議という大きな企画を乗り越えた後、幾分か自信を付けた坂上は校内新聞で目立つ箇所の記事も任されるようになっていた。今回は社会的な記事を任されているから気合いをいれて下調べをしてきたので、下書きも進むはずだ。
意気込み部活用のノートにシャープペンシルを走らせる坂上を見て、風間は急にそわそわしはじめた。立ち上がり窓を開けてみたり、椅子に戻って足を組んでみたり、意味ありげにため息をついてみたりと、明らかに様子がおかしい。
とはいえ、風間は元々気まぐれで変わった事をする性格だから、それが普段の風間なのか、やはり傍目からしてもおかしいのかが判断つかなかった坂上はこっそり日野へ近づくと、こちらの様子をじっと窺う風間の視線を避けるよう日野に小さく耳打ちをした。
「あの、日野さん。風間さん、なんかずっとソワソワしてるみたいですけど、何ですか。そもそもどうして新聞部にいるんでしょうか」
「ん……そうだなぁ、実は俺もなんで風間がこっちに来てるかわからないんだよ。朝比奈がいうには、部室開ける前からドアの前にいて、一緒に入って来たから誰か他の部員に用があってきたのかなーと思ったくらいなんだが……」
日野は坂上の頭ごしに風間を見る。風間は何故か不服そうに頬をふくらめると、椅子を方向け足組みをしていた。
「見る限り、誰にも用がなさそうだな。ま、邪魔するワケでは無さそうだし、放って置いていいんじゃないのか」
日野は特に気にしてない様子でそう告げ、取材用のメモを整理しはじめた。
新聞部はよっぽど秘匿したい特ダネでもない限り、基本的にオープンな場所だ。他の生徒が入ってきても気にしないのだろう。
日野は多少、風間に甘い所もあるのだが、風間がいると新聞部の女子部員から目の保養になると評判がいいというのもあるのだろう。
実際、風間は黙っていればモデルのようにスマートな外見をしているのだ。
「日野さんが気にするなっていうなら、気にする事はないか」
坂上は自分を納得させるために呟くと、席に戻り記事の下書きを始める。
切り抜いておいた新聞記事をいくつか眺め、それを参考にしながら書き出しを考える。すると風間は露骨なくらい坂上の前を行き来し、意味深にポーズをとったり、わざと視界に入るよう手を振るなどといった邪魔をしてみせた。
「何するんですか風間さん、僕は部活中ですよ、邪魔しないでくださいよ」
先輩に対して失礼な口を聞いてはいけない。そう思っていても、あまりに邪魔なのでつい泣き言のような声が出る。
すると風間はどこか悲しそうな顔をすると、いじけたように自分の前髪を弄り始めた。
「それはボクが言いたいくらいだよ、坂上くん。どうして日野の髪型が変わった時はすぐに気付くのに、ボクの髪型が変わった時は何も言ってくれないんだい?」
強い語調で言われ、坂上はやっと風間が長い髪を一つに縛っているのに気付く。
梅雨も明け暑い季節が続いているから長髪だと暑いからだろう。それくらいにしか思っていなかったからそこまで気にしていなかったのだが、どうやら風間はそれが気に入らなかったようだ。
「何だよ、日野がちょっと髪を下ろしただけで格好いいとかいうくせにさ。ボクだって格好いいんだよ。それに気付いてないなんて、キミの美的センスは少々おかしいんじゃないか」
頬を膨らませてブチブチと文句を言い続ける風間を見て、坂上は先週の事を思い出した。
部室の片付けをしていた時、部室に日野が駆け込んできた事があったのだ。
「外で運動部の写真を撮ってたら急に雨に降られちまったよ、坂上、タオルとかもってないか?」
「あっ、はい。どうぞ」
夏になり汗をかく事も増えたから、最近は常にスポーツタオルを持ち歩いくようにしていた坂上はすぐに鞄からタオルを取り出す。
「本当にもってるのか、準備がいいな……さんきゅ、坂上」
日野は感謝をしながら坂上のタオルで濡れたメガネや髪を拭いた。
普段は整髪料でしっかり整えられた日野の髪型は崩れ、前髪がはらはらと落ちてくる。トレードマークの眼鏡を外している事と前髪が崩れた事が重なり、普段の日野とは別人のような姿になるのを見て、坂上は驚き声を漏らしていた。
「わぁ、日野さんいつもと雰囲気が違う、すごく格好いいですね」
いつもしっかりと髪を固めている事や、厚ぼったい眼鏡をしている事から見過ごされがちだが、日野の顔立ちはかなり整っている。
普段から落ち着いた性格なのもあり、年齢よりずっと年上に見える日野だが、濡れた前髪を下ろした時はまだ少しあどけなさも見せる、年相応の姿に見えるのだ。
「そうか? ま、俺みたいなのは格好いいと言われるより、面白い記事を書いたと言われる方が嬉しいけどな」
あまり外見を気にしない日野は、坂上の賛辞を軽く受け流しただけだったが、あの時は風間も部室にいたのだ。
いつも通り500円をせびったり、片付けを邪魔して勝手にファイルを開いたり、「坂上くんの髪は柔らかいねぇ」なんて言いながら勝手に頭をポンポン叩いたりしていたから、何となく忘れていたのだが、まさか「髪型を変えたから格好いいですね」と言って貰いたくて、わざわざ髪を縛って新聞部にやってくるとは思わなかった。
「何いってるんですか、風間さん可愛いところがありますね」
坂上の口からつい、口から本音が漏れる。
すると風間は顔を真っ赤にすると、その場で地団駄を踏みはじめた。
「か、か、可愛いとは何だい。ボクは格好いいんだよ、キミが思わず目を奪われ憧れてしまうほど格好いいボクに、可愛いなんて、失礼だなもうっ……もういい、キミのことなんて知るもんかッ……ボクは帰るからね!」
そして荷物を引っ掴むと、頬を膨らましたまま部室を去って行く。
「おい、何だ今のは……」
日野はその背中を少し呆れたように見て、それから坂上の背中をポンと叩いて見せた。
「ま、あんまり気にするなよ。風間はいつもあぁいう奴だから、明日になったらケロリとしてまた遊びにくるだろうさ」
「はは……そうですよね……」
坂上はそう言いながら、床に落ちたヘアゴムを拾う。風間の髪を縛っていた、緑色のヘアゴムだ。よほど気分を害したのか、髪がほどけてヘアゴムを落としていたのにも気付かなかったようだ。
(明日、このヘアゴムを風間さんに返してあげよう。その時は、ちゃんと「格好いいです」と言ってあげようかな。ふふ……風間さんは、可愛くて格好いいです。なんて言ったら、どんな顔するんだろうなぁ)
坂上は拾ったヘアゴムを腕につけると、書きかけの記事へと向かう。
脳裏には真っ赤になって恥ずかしがる風間の横顔が、まだ鮮明に焼き付いていた。
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