インターネット字書きマンの落書き帳
キスが待ちきれない荒井の話(新堂×荒井/BL)
平和な世界線で付き合ってる新堂×荒井の話をします!
挨拶を兼ねた幻覚の説明おわりッ。
今日はキスの日だそうですね。
真実などどうでもいい、都合のいい日に踊る事で推しCPを生成しようじゃぁないの!
そう思ったのでキスに焦れる荒井のはなし……しますよ、俺はァ……。
みんなもォ……していけばいいとォ、思いますッ!
挨拶を兼ねた幻覚の説明おわりッ。
今日はキスの日だそうですね。
真実などどうでもいい、都合のいい日に踊る事で推しCPを生成しようじゃぁないの!
そう思ったのでキスに焦れる荒井のはなし……しますよ、俺はァ……。
みんなもォ……していけばいいとォ、思いますッ!
『焦れる唇』
時刻が7時を過ぎるのを確認すると、荒井は待ちきれなかったように立ち上がり一刻を惜しむようノートや筆箱を鞄につめこんだ。
放課後と言うには随分と遅い時間だが、鳴神学園では運動部でも文化部でもこの位の時間まで活動している部は多い。それもあってか、この学校は遅くまで残っている生徒にも寛容で、授業が終わってからも教室に居残って教科書や参考書を並べ一人黙々と自習に励む荒井のような生徒がいても、誰も気に留めないのだ。
よく言えば自由主義、悪くいえば不用心な学校だが、特に部にも入ってなければ委員会などの活動もない荒井が遅くまで残っていても咎められないのは幸運だった。いくら残っていても見とがめられないということは、運動部の活動が終わるまで何をしていても特に気にされないということ。新堂がボクシングの練習を終えるまで待っていても、変に勘ぐられる事はないということだ。
肩に掛けた鞄の紐を直すのさえ億劫そうに駆け出すと、広いグラウンドを抜けボクシング部の練習場へ向かう。室内に他の生徒がいないのを確認し恐る恐る練習場へ入れば、新堂はまだリングの上にいた。
普段から部の主将として部員たちが全員部室を出てから鍵を掛ける役があるため、新堂が帰るのはいつも最後なのだ。
「新堂さん」
リングの脇へ走り寄り声をかければ、新堂は軽く手を上げる。本当はすぐにでも抱きついて彼の熱を感じたかったのだが、はやる気持ちをじっと抑える。
新堂にとってリングは神聖な場所だ。そこを穢すことは新堂が三年間培ってきた努力までも穢してしまう気がしたから、荒井は自らリングに登る事はなかった。
だが、焦れる気持ちばかりが募る。こんなにも愛しく、すぐにでも触れたい相手が目の前にいるというのに触れられないのはひたすらにもどかしい。
一方の新堂は荒井の気持ちなど気付いていないのだろう、疲れたようにリングを降りると腕を回した後、疲れたように大きくため息をついていた。
荒井は待ちきれず小走りで近づく。このまま抱きしめて、それからキスをしよう。新堂だったら唇に触れるだけの挨拶のようなキスのあと、たっぷり慈しむようなキスをきっとしてくれるだろう。そう思い急ぐ荒井を、新堂は手で制止した。
「悪い荒井、まだ汗で濡れてんだよ。おまえ、制服だろ? 臭いが移ると悪ィから、先にシャワー浴びてくるわ。もうちょっと待っててくれよな」
「あっ……はい、すいません……」
汗くらい気にしない。むしろ、ボクシングを終えたばかりの新堂から立ち上るにおいが好きだから傍にいたい気持ちの方が強いくらいだ。だが新堂も荒井を気遣ってくれているのはわかるから、左手を押さえじっと耐える。普段から運動もしない荒井のシャツを汗で汚すわけにはいかないと思っているのだろうし、臭いが染みついてたら家族も妙に思うだろう。
わかっているが、すぐにでも触れたいという気持ちばかりが募っていく。気にしないから抱きしめて、そして思い切りキスしてほしい。そんな事を言われても新堂を困らせるだけだということは分かっているというのに、口から言葉が零れそうになる。
「おい、そんな顔するなよ。キスなら昼休みに浴びるほどしてやっただろ」
新堂は荒井の横に立つと、首元を撫でて苦笑する。そう、昼休みに会った時、人目につかない場所で息つく暇がないほどキスを交わしたばかりだ。だがその時は誰かに見られるかもしれないという羞恥と不安が入り交じり、キスの雰囲気に浸りきれなかったから物足りなさが残っている。逆に言うとその時抱いた物足りなさを、今の時間まで引きずってしまったのだろう。
「すぐ戻ってくるから、少し待ってろよ」
新堂は荒井の髪をくしゃくしゃ撫でると、シャワールームへ消えていくかに見えた。だが不意に足をとめると振り返り、黙って荒井へ近づいてくる。
「どうしたんですか、新堂さん」
最後まで言い終わる前に、唇が重なっていた。挨拶するような触れるだけの優しいキスだが、立ち上る汗の香りが鼻孔をくすぐり、昼間にした熱情の籠もったキスを思い出させ脳と身体が溶けるように酔っていく。
「……続きは、後でな」
照れたように笑い足早に去って行く背中を、荒井は呆然と見つめる。
その指先は自然と自らの唇に触れていた。
時刻が7時を過ぎるのを確認すると、荒井は待ちきれなかったように立ち上がり一刻を惜しむようノートや筆箱を鞄につめこんだ。
放課後と言うには随分と遅い時間だが、鳴神学園では運動部でも文化部でもこの位の時間まで活動している部は多い。それもあってか、この学校は遅くまで残っている生徒にも寛容で、授業が終わってからも教室に居残って教科書や参考書を並べ一人黙々と自習に励む荒井のような生徒がいても、誰も気に留めないのだ。
よく言えば自由主義、悪くいえば不用心な学校だが、特に部にも入ってなければ委員会などの活動もない荒井が遅くまで残っていても咎められないのは幸運だった。いくら残っていても見とがめられないということは、運動部の活動が終わるまで何をしていても特に気にされないということ。新堂がボクシングの練習を終えるまで待っていても、変に勘ぐられる事はないということだ。
肩に掛けた鞄の紐を直すのさえ億劫そうに駆け出すと、広いグラウンドを抜けボクシング部の練習場へ向かう。室内に他の生徒がいないのを確認し恐る恐る練習場へ入れば、新堂はまだリングの上にいた。
普段から部の主将として部員たちが全員部室を出てから鍵を掛ける役があるため、新堂が帰るのはいつも最後なのだ。
「新堂さん」
リングの脇へ走り寄り声をかければ、新堂は軽く手を上げる。本当はすぐにでも抱きついて彼の熱を感じたかったのだが、はやる気持ちをじっと抑える。
新堂にとってリングは神聖な場所だ。そこを穢すことは新堂が三年間培ってきた努力までも穢してしまう気がしたから、荒井は自らリングに登る事はなかった。
だが、焦れる気持ちばかりが募る。こんなにも愛しく、すぐにでも触れたい相手が目の前にいるというのに触れられないのはひたすらにもどかしい。
一方の新堂は荒井の気持ちなど気付いていないのだろう、疲れたようにリングを降りると腕を回した後、疲れたように大きくため息をついていた。
荒井は待ちきれず小走りで近づく。このまま抱きしめて、それからキスをしよう。新堂だったら唇に触れるだけの挨拶のようなキスのあと、たっぷり慈しむようなキスをきっとしてくれるだろう。そう思い急ぐ荒井を、新堂は手で制止した。
「悪い荒井、まだ汗で濡れてんだよ。おまえ、制服だろ? 臭いが移ると悪ィから、先にシャワー浴びてくるわ。もうちょっと待っててくれよな」
「あっ……はい、すいません……」
汗くらい気にしない。むしろ、ボクシングを終えたばかりの新堂から立ち上るにおいが好きだから傍にいたい気持ちの方が強いくらいだ。だが新堂も荒井を気遣ってくれているのはわかるから、左手を押さえじっと耐える。普段から運動もしない荒井のシャツを汗で汚すわけにはいかないと思っているのだろうし、臭いが染みついてたら家族も妙に思うだろう。
わかっているが、すぐにでも触れたいという気持ちばかりが募っていく。気にしないから抱きしめて、そして思い切りキスしてほしい。そんな事を言われても新堂を困らせるだけだということは分かっているというのに、口から言葉が零れそうになる。
「おい、そんな顔するなよ。キスなら昼休みに浴びるほどしてやっただろ」
新堂は荒井の横に立つと、首元を撫でて苦笑する。そう、昼休みに会った時、人目につかない場所で息つく暇がないほどキスを交わしたばかりだ。だがその時は誰かに見られるかもしれないという羞恥と不安が入り交じり、キスの雰囲気に浸りきれなかったから物足りなさが残っている。逆に言うとその時抱いた物足りなさを、今の時間まで引きずってしまったのだろう。
「すぐ戻ってくるから、少し待ってろよ」
新堂は荒井の髪をくしゃくしゃ撫でると、シャワールームへ消えていくかに見えた。だが不意に足をとめると振り返り、黙って荒井へ近づいてくる。
「どうしたんですか、新堂さん」
最後まで言い終わる前に、唇が重なっていた。挨拶するような触れるだけの優しいキスだが、立ち上る汗の香りが鼻孔をくすぐり、昼間にした熱情の籠もったキスを思い出させ脳と身体が溶けるように酔っていく。
「……続きは、後でな」
照れたように笑い足早に去って行く背中を、荒井は呆然と見つめる。
その指先は自然と自らの唇に触れていた。
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