インターネット字書きマンの落書き帳
サッカーを見るDKたち(しんあら・BL)
平和な世界線で付き合ってる新堂さんと荒井くんがサッカーの世界的な大会を見る話をします。
あ~サッカー楽しいのじゃ~。(挨拶)
いや、スポーツ観戦は全体的に好きなんですよね。
特に国際試合は、もう1年を通して何かしらの祭を見ていたい気持ちなんですよね。
ミーハーだから……祭りが! 祭りが好きなんだよ!
だからこんな祭りの話を書いてしまうんだろうと思います。
でもね、世界的なサッカーの大会が冬にやるのは珍しいからね!
特別な年に特別な人と過ごすと思うとロマンチックですよ。そうだと思いましょう、はい。
あ~サッカー楽しいのじゃ~。(挨拶)
いや、スポーツ観戦は全体的に好きなんですよね。
特に国際試合は、もう1年を通して何かしらの祭を見ていたい気持ちなんですよね。
ミーハーだから……祭りが! 祭りが好きなんだよ!
だからこんな祭りの話を書いてしまうんだろうと思います。
でもね、世界的なサッカーの大会が冬にやるのは珍しいからね!
特別な年に特別な人と過ごすと思うとロマンチックですよ。そうだと思いましょう、はい。
『明け方の決戦』
微かに聞こえる歓声のような音と漏れる光に促されるよう荒井昭二が目を覚ませば隣で寝ていた新堂誠の姿が消えていた。どこに行ったのだろうと一瞬驚くがテレビから漏れる極彩色の光へと向けばその前に座り食い入るよう画面を見つめる新堂の姿を見つけ安心する。
良かった、新堂がそばにいるのは夢ではない。
目が覚めた時に傍にいなかったから実は今まで過ごした日々は全て夢であり存在しない時間だったのではないかと思うと恐ろしく思ったが、そんな感情を抱いている自分が滑稽に思えた荒井は一人静かに笑っていた。当然その笑顔はいま自分の傍に新堂がいるから浮かべる事が出来るのであり彼が傍にいなければ深い絶望と悲しみを胸に抱いて過ごさなければいけなかったのだろうが。
時計を見ればまだ明け方の4時を過ぎた頃だ。テレビにはボールを追いかけピッチを走る選手たちの姿がうかがえる。荒井は寒さに身を縮めながら、そういえば今年のサッカー国際大会は秋に行われるのだという事を今さらながら思い出した。
「新堂さん、起きてたんですか? ……サッカーですか、そういえば世界的な国際大会の最中でしたね」
「ん、荒井か……起こしたんなら悪かったな。別に見るつもりは無かったんだが、何となく目が覚めちまってな」
そう言う合間も視線はテレビの向こうで走る選手たちに向けられている。
長らくボクシングを続けてきた新堂は腕っ節の強さや凶暴な気質ばかりが目立ちがちだが高校生としては高い身体能力を持っておりそのセンスは格闘技だけに留まらずチームの連携も重要となるサッカーやバスケといった球技でもその抜群の運動神経を遺憾なく発揮している。身体を動かすのが好きな性質の新堂はスポーツ全体に興味や関心が深く、スポーツ観戦も趣味としており世界的な大会に関しては日本であまりメジャーではない競技でもよく把握していたしテレビで放送していれば自然とそれを見るような習慣があるようだった。
荒井もスポーツ観戦はそれほど嫌いではなかったがこの分野に関していえば新堂のほうが知識も経験も圧倒的に上だろう。 最も荒井は自分よりも秀でた所が認められない相手を歯牙にもかけない性格であるから、もし新堂が暴力だけで他者を屈服させるのが趣味なだけの男だったらここまで心を許す事はなかっただろうが。
荒井は身体を起こすとベッドの中から新堂の後ろ姿を眺め、それからテレビへ視線を移す。ピッチの上で汗を流し懸命に走る選手たちの姿がぼんやりと浮んで見えた。
荒井もスポーツ観戦が嫌いという訳ではない。野球やサッカーなどはある程度見ているし世界的な大会ともなれば強豪国やスター選手くらいなら心得ている。 だがこの試合はどちらもそれほど強豪という訳ではないはずだ。誰もが知るようなスター選手もいない。わざわざこの試合目当てで起きたとは思えないから本当に目が覚めてしまい眠れないからテレビを付けたのだろう。
「寒くないですか? ベッドに入って見てもいいと思いますけど」
荒井の言葉に新堂は生返事をするだけだった。どうやら試合に見入っているらしい。 改めてテレビを見れば試合はまだ動いておらず0vs0の膠着状態のようだった。
荒井はあくびをかみ殺すとベッドから起き新堂の隣に座る。すると新堂はぽつぽつ試合の状況を語り始めた。
「このチームはどっちにも目立ったスター選手ってのはいねぇ。だがどっちも別に弱ェチームって訳じゃ無ェんだよ。片方は欧州のど真ん中みたいな所にあるから周りの国がえれぇ強ェ。そのせいで今ひとつパッとしないんだが、過去に何度もスター選手が出てはいるんだ。だがな、サッカーってのは一人でやるスポーツじゃねぇ。一人だけ飛び切り上手ェ奴がいても周囲がそれについて行けねぇとダメなんだ。欧州サッカーってのは特にその傾向が如実でな。ファンタジスタって呼ばれるような一人の天才が縦横無尽にピッチを走り試合を作るなんてぇ時代は終わって今はガッチガチのチームサッカー。個々のフィジカルと戦術がかみ合ってからこそ勝ち上がってきたんだが……この国もようやく長ェ忍耐の時を超えてこの大舞台に立ってるって訳だ。そう思うと結構感動するよなァ」
試合を見つめながら、新堂は能弁に語る。
ボクシングが好きだというのは当然知っていたし他のスポーツに関しても平均以上だというのは聞いていたが一個人としてスポーツを見る時も熱心なのだというのはこの時初めて知った。
「周りが強ェから長らく燻っててよォ。スター選手がいた時もそれを生かし切れず何度も予選を敗退してんだぜ? それが今回は他の強豪国が谷間の世代に入ったって理由もあるがようやくチームの総合力と戦術とがかみ合ってきてな。派手な選手はいねぇが世界で戦えるには充分なチームになったって訳だ。最も、それでもここは世界の舞台だ。やっぱり他の国と比べて地味な戦い方になっちまうだろうし、他にスター選手がわんさか出るのが世界の舞台だ……こんな地味なチームの試合なんざさして注目も浴びねぇだろ」
新堂はそう言いながら、歯を見せて笑う。
「でもよォ、この国は予選通過するのが60年ぶりなんだぜ? 強豪だらけの中、やっと掴んだ世界への挑戦権をよ。国のサポーターたちがみんなで見守って応援してんだよ。この熱気、サッカー見ててもこの大会にしか無ェ雰囲気。最高だよな、たまんねぇよ。やっぱ国際試合ってのは面白ェよな。国背負って戦ってんだからなァ」
やはりスポーツが好きなのだろう。試合をする選手もそれを応援するファンも全てを含めてスポーツが楽しいのだ。
だがあまりに熱っぽい視線をテレビにばかり向ける姿には少しばかり嫉妬してしまう。 荒井はベッドから厚手の毛布を引っ張り出すとそれを新堂にかぶせて自分もまた同じ毛布に包まった。
「はいはい、サッカーが好きなのはわかりましたよ。でも、朝方はまだ寒いですからね……毛布をかけて身体を温めて見ましょう。僕も一緒にいますから、良ければ色々と聞かせてください。サッカーに関しては新堂さんほどの知識はありませんからね」
「お、そうか……それじゃ、もう一方のチームについても話していいか? 俺はこっちの国も嫌いじゃ無ェんだよ」
「いいですよ、聞かせてください。そのかわり、興味がわかない話でしたらすぐに寝てしまいますからね?」
「おいおい、随分だな……ま、いいさ。適当に話すから解んねぇ所があったら聞けよな。俺もわかんねぇかもしんねぇけどよ」
新堂はそう言いながら荒井の身体を抱き寄せる。
ピッチの上では相変わらず汗を流して走る選手たちが生き生きと一つのボールを追いかけて走り続け、サポーターたちの熱気ある歓声に祝福されていた。
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