インターネット字書きマンの落書き帳
柴犬パーカーでもりあがるDKたち(しんあら・BL)
平和な世界線で過ごす新堂さんと荒井くんの話です。
今回は付き合っていると言われればそんなような気もするし付き合ってないといわれればまだそうなんだろうな、くらいの距離感の二人ですが、まぁ俺の脳内では付き合ってますよ。
俺の脳内では付き合ってるのが真実です。
(自分を説得する二次創作者)
今回は、柴犬が好きすぎて柴犬になりきれるタイプのパーカーを購入したはいいものの、サイズがレディースのサイズでどう頑張っても自分では着れない!
そうだ、もう少し小柄の奴を捕まえて着せよう! なんて発想をしてしまう新堂さんと巻き込まれて着せられる荒井くんの話ですよ。
柴犬のパーカーを着るかわいい男子高校生という概念を大事にしていこうな!
今回は付き合っていると言われればそんなような気もするし付き合ってないといわれればまだそうなんだろうな、くらいの距離感の二人ですが、まぁ俺の脳内では付き合ってますよ。
俺の脳内では付き合ってるのが真実です。
(自分を説得する二次創作者)
今回は、柴犬が好きすぎて柴犬になりきれるタイプのパーカーを購入したはいいものの、サイズがレディースのサイズでどう頑張っても自分では着れない!
そうだ、もう少し小柄の奴を捕まえて着せよう! なんて発想をしてしまう新堂さんと巻き込まれて着せられる荒井くんの話ですよ。
柴犬のパーカーを着るかわいい男子高校生という概念を大事にしていこうな!
『柴犬パーカー』
荒井昭二は自分の身体より少し大きめのパーカーを着て立ちすくんでいた。
「いやー、やっぱ最高だなッ。かわいいぞ、荒井! いや、本当に可愛い……買って良かったぜ」
そんな荒井を前に新堂誠は満面に笑みを浮かべ何度もスマホで撮影をする。 荒井はそんな新堂を冷めた目で見つめていた。
このパーカーは新堂の私物で、柴犬をモチーフにデザインされたものだ。パーカーについたフードをかぶるとかわいい柴犬の愛らしい姿へ変貌する事ができるうえ、袖口には肉球がデザインされた手袋までついている柴犬が好きすぎて柴犬になりたい民のために作られたパーカーと言ってもいいだろう。 後ろにはわざわざ大きめの尻尾がくるんと巻いてある程度自由に動かせるようになっているのだから作った側もそうとう柴犬が好きに違いない。
動物のなかでは柴犬がいちばん好きだと以前から訴えていた新堂がそれに興味をもつのも当然のことだろう。
だがこの手のデザインが可愛らしさに特化したパーカーというのはやはり「かわいらしい子」が着るのを目的に作られていることが多い。
背丈は日本人の平均身長を超えている上に会った相手に「コワモテ」やら「チンピラ」なんて呼ばれる事の方が圧倒的に多い新堂はパーカーにとっても対象外の存在だったらしく最も大きいサイズを買ってもとても着られるサイズではなかったのだそうだ。
だが何としてもその柴犬パーカーを着たい。
自分が着られないのなら自分ではない誰かに着て欲しい、そして思いっきり可愛い柴犬パーカーの写真を撮りたい。
その思いが募った新堂は柴犬パーカーが着られる体格の人間を求めた結果、荒井に白羽の矢を立てたという訳である。
「あの……そろそろ脱いでいいですか? この服、けっこう暑いですし……」
しかしもう撮影は小一時間続いている。
新堂も部があり忙しい身であるはずだがあれだけボクシング一筋の新堂でも我を忘れる事があるのか、すっかり撮影に熱中して時間が過ぎるのも忘れているようだった。そもそも着れない服を買っている時点で相当感覚は狂っているのだろうが。
「いや、もう少し……もう少し撮影させてくれ、撮りたいショットがまだある」
「まだですか……カメラロール見せてください。もう、僕の写真ばっかりじゃないですか……」
荒井は呆れながら新堂のスマホをのぞき込む。そこには柴犬パーカーを着た荒井の写真が延々と映し出されていた。
新堂のカメラロールが自分ばかりになるという事は嬉しいのだが荒井の姿より柴犬パーカーの姿が圧倒的に多いのは少々気に食わない。もっとも新堂はべつに荒井が好きなのではなくパーカーの柴犬が好きなのだから柴犬パーカーがメインになるのは当然だが、これなら自分でなくてもいいのだと思うと腹が立つし実際その通り、パーカーのサイズがあえば他の誰だって新堂は喜んで撮影するのだと思うと苛立つのだった。
「そろそろ他の人にしてくれませんか……他にもいるでしょう、このパーカーを着れる人は……僕と同じくらいの体型なら、岩下さんとか……」
すっかり疲れて椅子に腰掛け半ば自棄になりそう言えば、新堂は俯き少し考えるような素振りを見せてからすぐに荒井を見る。
「岩下に頼んでもゴキブリでも見るような目で『はぁ?』って言われるのがオチだろうが」 「……それもそうですね」
「仮に着てくれたとしてもなぁ……その後何がおこるか解ったもんじゃ無ぇよ。岩下のファンを名乗る女子も多いからな……」
岩下はマンモス校である鳴神学園でも名の知れた存在だ。
ミステリアスで美しい容姿から男子生徒からの人気も高いが演劇部として様々な役を演じてきた姿に惚れ込んだ女子生徒からの人気も絶大である。
サッカー部のエース、西澤仁志のようにファンクラブや親衛隊といったものこそ存在しないがそれに近い結束力のファンがいるのは確かだ。
本人もなかなか恐ろしい人物だが水面下のファンたちもなかなか恐ろしい面々がそろっており丁重に扱わないとこちらの命すら危うい。
「でしたら福沢さんはどうですか。新堂さん、福沢さんとは仲が良いですよね」
新堂と福沢は馬が合うのか集会が終わった後もしばしば連絡を取り合い連んでいるというのを荒井は知っていた。
恋人同士といった付き合いではないようだが気軽に声をかけて一緒に出かけショッピングや映画やらと行けるのだから何でも頼める仲といってもいいのだろう。
それは気軽に買い物にも映画にも誘えない荒井にとって小さな嫉妬の対象でもあったのだがそれは胸に留めていた。
「福沢かぁ……福沢はなぁ……」
と、そこで新堂は言葉を止め突然後ろから荒井を抱きしめる。
そして彼の身体全体を愛おしそうに撫で始めた。
「福沢は女だからなぁッ、こうやって後ろから抱いたり撫でたりしてっ……犬みたいに可愛がったらセクハラーとか言われちまうだろうが、なッ?」
顔を近づけ笑う新堂の腕は大きく温かい。
柴犬のパーカーなどを着ているから荒井のことを柴犬だと思って扱っているのかもしれないが急に距離を縮められるのはただ恥ずかしいばかりだった。
「まってください新堂さんッ、僕でも充分セクハラですよそれは……ッ……知ってるんですか、男相手でも同意もなく身体を触るのはセクハラですからね」
「おっと……そうなのか?」
荒井に言われ新堂は手を止めると荒井の両肩をしっかりと掴む。
「頼む荒井! そのパーカーを着たお前の頭やら身体を撫でたり抱きしめたりしてもいいか! そうさせてくれ!」
そして律儀にそう頼んできた。
校則も守れず両耳にバチバチにピアスを開け髪は金髪に染めているというのに変な所でルールを守ろうとするのだから面白い。
「頼めばいいってものでも無いんですが……もし断ったらどうするつもりなんです?」
「そうだな……ダメ元で福沢に頼むか。あ、そうだ。坂上もお前くらいの体格だよな。坂上を脅して……じゃねぇ、話し合って着てもらうって手もあるな」
荒井の言葉に新堂は口元に手を当て思案する。本当に柴犬のパーカーを着てくれる相手がいるのなら誰でもいいのだろう。相手が嫌がらなければ撫でて抱きしめまさに子犬のように可愛がるに違いない。新堂の家ではペットを飼う事が出来ないらしいのでいつも柴犬に飢えているのだ。
だがそれを聞いたら止めない訳にはいかない。自分以外の誰かが新堂から愛情を受けるのは絶対に避けたいというのが荒井の秘めた本音だった。
荒井は新堂の身体に抱きつくと自然と上目遣いになる。
「まってください……僕は断るとは言ってませんよ。誰でもいいんなら、僕でいいでしょう。他の誰かじゃなく、僕のそばにいてください」
結局のところ、荒井は新堂を誰にも奪われたくないのだ。柴犬のパーカーを着て欲しいなんて恋愛感情など関係のない欲求であっても新堂の感心が他人に行くのは耐え難いのである。それは手に入らないものをほしがる子供のような我が侭なのだというのは解っていたしそのような振る舞いをする人間に対して愚かだと見下してもいたのだが何のことはない、自分がそういった性分だからそういった人間を直視したくなかっただけなのだというのを改めて痛感した。
「でも、出来ればパーカーだけじゃなく、僕のことももっと見てくれれば嬉しいです……」
思わず本音を漏らせば、新堂は悪戯っぽく笑って荒井の頭を撫でる。
「俺は最初からこの服を着てるお前を撮ってるつもりだぜ? ……お前に似合うと思ったから無理して買ったんだしな」
そして微かに笑うと荒井の額へ口づけをした。
気まぐれな新堂が言う事だ。どこまで本当なのか解ったものではない。だが今はその言葉が嬉しかったから今は信じておくことにしよう。
さらに強く抱きしめる荒井を前に、新堂はスマホのカメラを向ける。
きっとその一枚は最高に恥ずかしい顔をしているだろうが、特別な一枚になるのだろう。
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