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インターネット字書きマンの落書き帳

   
【シンドーぱいせん~! バレンタインの話しようぜ~】
平和な世界線で普通に付き合っている新堂と荒井の話をします。
バレンタインなのでね、バレンタインの話を書きました。
俺が書いた時がバレンタインなので許してください。

バレンタインの時期だともう3年生なんて学校行ってないよな……。
新堂パイセンも進路決まってるだろうな……進路どうするか全然想像できないけど……。
今年卒業するんだからもうバレンタインみたいな季節イベントはこれが最後なんだよな……。

なんて思っていたら少しおセンチな話になっちゃいました。(当社比)

思いのほかチョコレートをいっぱいもらえている荒井くんにビックリする新堂パイセンとか新堂パイセンにチョコレートを渡す荒井くんとかが読めますよ。

pixivには袖山くんの話も入れておいてあります → コチラからどうぞ
web用にもしてあるから好きなほうを見てね♥ → こちらweb用です



『最初で最後のチョコレート』

 2月も半ばにさしかかったその日、新堂誠は鳴神学園まで来ていた。
 受験シーズンも終盤にさしかかったこの時期にい三年生が登校する必用はなかったのだが、引きこもりで滅多に学校へ来る事がない荒井がその日は登校するというのを事前に聞いていたからだ。
 新堂が荒井と付き合ってから今まで大きな喧嘩もなく過ごしてきたし卒業したからといって別れる事もないだろうとは思っているがそれでも荒井と学校で過ごせるチャンスはあまりないのだと思うと会いに行きたいと思うのも仕方の無い事だろう。
 まったく、自分にそのような感傷的な部分があるなど思いたくはないのだが一緒にすごす時間が心地よいのは事実なのだから。

 この時期となれば三年生は当然に授業はなく、授業がないのだから来ている生徒は志望校の手応えが芳しくなかったばかりに今からでも間に合う受験先を相談する生徒などがほとんどだ。
 すでに進路が決まっていた新堂は教室で苛立つ生徒と顔を合わせるのも面倒なので世話になった教師に挨拶を済ませると適当に時間を潰し終業時刻になったら荒井を迎えに行こうと思っていたのだが図書室で居眠りをしていたら少しばかり寝過ごしてしまい慌てて2年の教室棟へと赴いた。

 荒井のクラスに着いた時、すでに教室には荒井一人しか残っていなかった。
 テストも近く今は部活動も原則中止になっているから生徒が帰るのも普段より早いのだろう。一人でも教室に残っていたのは新堂が来ているのを知って待っていたに違いない。

「よぅ、荒井。本当に学校来てたんだな」

 新堂が声をかければ荒井は待ちくたびれたといった様子で顔をあげた。

「新堂さんこそ本当に学校まで来たんですね。三年生はもう登校する必用など無いと聞いていましたけど」
「そうだけどよ、お前が学校に来るってなら顔見に来たっていいだろ。この学校で会えるのもあと二週間くらいしか無いんだからな」

 以前の新堂だったらこんな事を自ら口にしたりはしなかったろう。だがいよいよ卒業が迫り同じ学校の生徒でいられる時間が少なくなると思うと今さら本心を隠して気取っても仕方ないと思うようになっていた。荒井は新堂の言葉を聞くと「それもそうですね」と小声でつぶやき微かに笑って見せた。

「ところで今日は何か用でもあったのか? 寒い時期に学校来るのは面倒だし出席日数も足りてるって言ってたから二月はテストくらいでしか来ないのかと思ってたぜ」

 教室へと入りながら不思議そうに聞けば荒井は一つ長いため息をついた。

「僕も面倒だったんですが机の中に食品を勝手に投棄されるのも嫌ですし、学校に来ないと家にまで来る人もいますからそうなると面倒ですからね。そうならないよう、一応今日は登校しておこうと思ったんです」

 最初は荒井が何を言っているのか意味がわからない新堂だったが、机の上に置かれた無地の紙袋に沢山のチョコレートらしい箱が詰め込まれているのを見て今日がバレンタインデーだという事にようやく気が付いた。

 「おまっ……おまえ、こんなにチョコレートもらえるのか? 凄ェじゃねぇか、紙袋いっぱいとか」

 新堂の友人である西澤仁志は学校内でファンクラブが出来るほどの好青年であり彼が机や下駄箱に入りきらないほどのチョコを受け取っているのも目の当たりにしているので『漫画みたいにモテる男』が実在しているのは知っていた。だが西澤は外見だけではなく成績も性格も家庭環境も良いという非の打ち所が無い本物の好青年だ。新堂から見て悪い所と言えば女性運のなさくらいのもので彼がモテるというのは当然だろうと納得できるのだが、荒井は顔こそ人形のような美少年ではあるがお世辞にも性格が良いとは言えないタイプだ。
 そもそも滅多に学校にも来ないし率先して人前に立つタイプでもない。普段から意図して目立たないよう生活をしているものだから思いを募らせチョコレートを渡しに来る生徒が多数いるというのは少々意外だというのが本音であった。

「言わなくてもわかってますよ、僕がこれだけチョコレートをもらえている事に驚いているのでしょう。僕自身がそう思っているんですから……ですが不思議と昔から僕には少しばかり熱心で過激な相手に思いを寄せられる事が多いんですよね」

 荒井はそう言いながらチョコレートに付けられていたメッセージカードを新堂へ向ける。

『剥製にして飾りたい』
『ずっと私の部屋から出られないようにしてあげたい』
『腕と足とをもぎ取って床を這いずり回ってくれないか』

 おおよそ愛の告白とは思えない物騒な言葉ばかりが並んでいるのを見て、新堂は何となく荒井を好む人間の趣味を把握した。 

「そういう訳ですから、自宅まで押しかけられるより学校で受け取った方が面倒にならないんですよ。もし自宅まで押しかけられたらそのまま僕の家で監禁されそうじゃないですか……いや、それもなかなか面白そうではありますけれども」
「わかったわかった。で、どうすんだそのチョコ。別に甘い物好きって訳じゃないよなお前は」
「家に帰ったら捨てますよ。食べ物を捨てるというのは罪悪感がありますけどね」

 にべもしゃしゃりもない言葉にさすがの新堂も困惑する。食べ物を捨てるといった発想は不良でもスジの通ってない事を嫌う新堂にはないものだったからだ。

「そんな目で見ないでくださいよ、僕だって食べられるものなら食べてあげたいと思ってるんです。ですが、見ての通り過激な愛情をお持ちの方が多いでしょう。チョコレートといいつつ実際は何が入っているかわからないですからね。僕も見ず知らずの他人から受け取った食べ物を口にして死にたくはないですから」

 普通だったら「まさか毒が入っている訳でもあるまいし」と笑い飛ばせるだろうがここは鳴神学園だ。 怪異により何がおこるかわからない場所でもあるが生徒も何をしでかすか分からない連中ばかりだから惚れ薬といった怪しいモノや、爪・髪の毛・血などといった人体の一部が愛情といっしょにこめられていても何ら不思議ではない。愛の形がひどく歪な相手だとわかっているのなら尚更である。
 それに、たとえ本気で心をこめて作ったものでも全く味見をしないまま人が死ぬ程の兵器を生み出す生徒がこの学校に存在するのだ。「ちゃんと作った料理」だと言って渡されてもそれが本当に食べられるものになっている保証もない。

「そうだよなァ……学校のゴミ箱に捨てたら今度は手渡しで『ちゃんと食べてよね』なんて迫られたらおまえも可愛そうだし……知らない相手からばっかりなのか?」

 新堂は紙袋の中をのぞき込む。 衛生的にも呪術的にも危険がある品だとわかっていても綺麗にラッピングされたトリュフチョコレートやガトーショコラは捨てるのに惜しいほどきちんと作られていたし、中には有名な高級ブランドのチョコレートも見えた。

「えぇ、何故か僕に面と向かってチョコレートを渡す人はいないんですよ。この中で僕に直接渡してくれたのは姫乃くんくらいですかね……知っている相手でしたら何を入れてくるか想像が出来るので口にしていたかもしれませんが」
「そういうもんかァ? じゃあ姫乃からのは食べるんだな」
「いえ、食べませんよ。姫乃くんの手作りは非常に美味しいんですけれど、最近は彼が入ってる比率が多すぎますからね」

 彼が入っている比率、というのは何だろうと思ったが新堂は聞くのをやめた。何となく察してしまったからだ。
 頭を掻く新堂を前に、荒井はまた微かに笑うと愛おしそうに新堂を見つめる。そして意を決したように鞄を開いた。

「……本当は帰り道に渡そうと思っていたんですけど。確かに、貴方に学校でコレを渡すチャンスは今年しかないんですよね。新堂さん、よかったら受け取ってくれませんか」

 差し出されたのはいかにも高級そうなラッピングが施されたチョコレートの包みだった。

「えっ、それ……チョコレートか!?」
「そんな大きい声で言わないでくださいよ、恥ずかしいじゃないですか……誰に聞かれてるかわからないんですよ。殺されたいんですか? ……僕以外の誰かに殺されるのなんて許しませんよ」
「わ、悪い……今日がバレンタインだってのも忘れてたんだぜ? まさかお前が準備してるなんて思ってなくてよ……お前が買ったのか」
「当然です。最も、流石の僕も店に出向いて買うのは恥ずかしかったので通販で取り寄せた品ですが……僕からのチョコレートです、何が入っているかわからない代物ですが……受け取ってくれますか?」

 荒井は差し出した箱で自分の口元を隠すと上目遣いになって新堂を見る。
 最近の荒井は自分の容姿がかわいいと言われる所作も似合うという事に気付き意図してあざといポーズをする事があるのだ。それを見て安直にかわいらしいと思ってしまう新堂も大概なのだろうが。

「そんな事言われて受け取らない訳にはいかねぇだろ……でもよォ、俺は何も準備してねぇんだがいいのか?」
「気にしなくていいですよ、僕が貴方にあげたいと思って買った物ですから。あぁ、身体で払ってくれてもいいですよ」

 チョコレートを受け取る新堂を見て、荒井は悪戯っぽく笑って見せる。身体で払うなんて冗談のつもりだろうが、その笑顔を見た新堂は内側からくる衝動をどうにもおさえられなくなりはじめていた。
 だから受け取ったばかりの包みを開けると中にあるチョコレートを一つとりだし自分の口へとくわえる。

「いいぜ。じゃ、毒味もかねて……ほら、お前も喰えよ。嫌だとは言わせねぇからな」

 差し出されたチョコを荒井は少し驚いたように目を見開いて見つめる。だがすぐに嬉しそうに笑うと新堂の頬へと触れた。

「悪くないですね。この学校で過ごすバレンタインは今日だけでしょうから……」

 そして新堂と唇を重ねる。
 くわえたチョコを互いの唇で受け口の中で溶かしていくうちに抱きしめる力は自然と熱くなっていく。
 こんな所でと思うが、二人で過ごせる学園生活もあと残り僅かと思えば熱をおさえるほうが酷だというものだろう。甘いチョコレートの香りに包まれた二つの影はより深く結びついていった。

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インターネット駄文書き
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紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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