インターネット字書きマンの落書き帳
ジョギングする新堂さんとついてくる荒井(新堂×荒井)
平和な世界線で普通に付き合ってる新堂×荒井の話を夏だからします。
夏を言い訳にするな。平時でもしてます。(挨拶)
夏休みがはじまって一週間程度はたった頃合いですかねっ。
せっかくのシーズンですのでシーズンらしく夏休みに荒井の家でお世話になりつつ練習に励むというストイックな新堂パイセンを置いておきます。
オデ、このシチュエーション、スキ……。
スキ、イッパイカク……。
夏真っ盛りなのでみなさんも何か楽しい気分になってください!
夏を言い訳にするな。平時でもしてます。(挨拶)
夏休みがはじまって一週間程度はたった頃合いですかねっ。
せっかくのシーズンですのでシーズンらしく夏休みに荒井の家でお世話になりつつ練習に励むというストイックな新堂パイセンを置いておきます。
オデ、このシチュエーション、スキ……。
スキ、イッパイカク……。
夏真っ盛りなのでみなさんも何か楽しい気分になってください!
『いない空間』
早朝からランニングをし、学校で練習をたっぷりしてから夕食後もランニングをし、夜は早めに寝る。
三年最後の大会を控えた新堂はいつもに増してストイックに自分を追い込んでいた。
生来の飽きっぽさがありやる気を出しても三日ほどですぐ手を抜く悪癖のある新堂がすでに一週間もこの生活を続けていられるのは、荒井の支えがあったのが大きかっただろう。
夏休みに入ってすぐ、新堂は荒井の家で生活するようになっていた。
新堂の家から練習場のある学校までは遠く、いつも電車で1時間以上は揺られて朝練などに参加していたのだが荒井の家からなら徒歩30分程度で学校までいける。 その時間を練習に当てられるのは有意義だと、そう思ったから荒井の家に一時的に居候をしているのだ。
もちろん、このような生活が出来るようになったのは荒井の家では両親が不在がちで夏休み中は彼一人で過ごすから出来るというのもあるだろう。 料理や洗濯など身の回りの世話をすべて荒井が請け負ってくれるため練習に集中出来るというのも大きかったし、そこまで尽くしてくれている彼を前に怠ける訳にはいかないという思いが自然と湧き出る。
何よりも今は恋人である荒井を前にかっこ悪いところは見せたくない。
環境と思いがうまくかみ合った結果、新堂は今までにないほど良いコンディションで練習に集中し試合前の付け焼き刃と言えない程の成長を遂げていた。
「たまには僕もランニングについていっていいでですか?」
だが、夜の走り込みに出かけようと靴を履いている時に荒井の告げた言葉に何を返すべきか戸惑ってしまった。
荒井には世話になっているから彼の希望なら叶えてやりたいと思うが、今の新堂はかなりハイペースで走っている。荒井のペースにあわせて走れば普段よりずっとゆっくり走らなければいけないし、かといって自分のペースで走り荒井を一人置いていくような真似は心配で出来なかったからだ。時刻がすでに夜遅くなっていたから尚更である。荒井は男だからリスクは幾分か少ないとはいえ、小柄で華奢と言っていい彼を一人にしておきたくはない。
「べつに、一緒に走ろうとは思いませんよ。僕では新堂さんに置いて行かれることなど目に見えてますから。僕は自転車でついていくんで、新堂さんが先導してくれませんか。流石に自転車でいけば置いて行かれないですよね」
すぐさまそう付け足す荒井の言葉を聞き、それなら大丈夫だろうと考える。流石の新堂も自転車より速く走れているとは思っていなかったからだ。
「いつも貴方の帰りを一時間待っているのも寂しいですし、僕も少しくらい体力をつけたほうがいいでしょうからね」
さらにそう畳みかけられれば、断る訳にはいかないだろう。
「仕方ねぇな、ついてこいよ。遅かったら置いていくからな」
新堂は靴を履きなおすと夜の街に出る。微かに笑みを浮かべ、荒井はその後をついて家を出た。
住宅街を走り、公園へと向かう。 車通りの多い駅前や繁華街を避けた走りやすい慣れたコースを抜けるうち、新堂の足が止まった。普段走り込みをする時に通る神社前にさしかかったからだ。
この神社は長い階段を上った後、参道の裏手から道路に降りる道があり小高い丘を越えるくらいの距離になっている。急な階段のせいで自転車では進めないのだ。
「この道を通ってるんですね」
後から追いついてきた荒井は目の前にある長い石段を眺める。コースをかえて道なりに進んでもいいだろうとは思ったのだが。
「どこに抜けるか知ってますから、新堂さんは普段通りのコースを進んでください。僕は道なりに進んで行きますから後で合流しましょう」
荒井はそう告げ自転車をこぎ出す。この地域に関しては荒井のほうが地元だ、道が何処に通じているかはわかっているのだろう。 新堂は安堵の息を吐くと普段通り階段を登り参道を抜ける。距離は荒井の方が長く走る事になるが100段以上ある石段を登った後、急勾配の坂道を下っていくアップダウンの激しい道だ。きっと荒井の方が先に到着するのだろうと思っていたのだが、長い道を抜けた時あたりにはまだ荒井の姿はなかった。
思った以上にこちらのペースが早かったのだろう。神社を抜けず迂回するとかなり距離があるから早く到着する可能性は充分すぎるほどだ。頭でそれがわかっていても不安がこみ上げてくる。
道中で何か事故にでもあったのではないか。あるいは不良気取りの輩にいらぬ因縁でもつけられてはいないか。犯罪者や変質者につけ回されてはいないか。一度湧き上がった不安は次々とあぶくのように立ち上っては消えるを繰り返すものだから新堂はたまらなくなって迂回路を走り始めた。
そして5分もしないうちに自転車をこぐ荒井を見つける。
「新堂さん。そっちのほうが早かったみたいですね、自転車でも迂回路には大きな坂道がありますから……」
荒井は普段と変わらない様子で自転車から降りると、立ち止まっていた新堂を見る。 その姿で新堂はようやく今日は一緒に行きたいとねだった彼の真意に気付いた。
新堂はいつもランニングを一時間ほどしているが、その一時間を荒井は家でただ待っていたのだ。事故にあわないか、事件に巻き込まれはしないか。あり得ない妄想だと思っていても心配になるだろう。
ほんの5分もない間に自分はこれだけ不安だったのだから。
「どうしましたか、ぼぅっと突っ立って」
自転車を押しながら傍へ寄る荒井を前に、新堂はようやく我に返る。
「いや、たいした事じゃ無ェよ。ただ、もし今日辛くなかったら明日もランニングに付き合ってくれ」
「いいんですか? 自転車でも僕がついてきたら足手まといではありませんか」
「そんなこと無ェよ。おまえが体力的にキツいってならこっちも無理言うつもりは無ェけど、一人で走るより楽しいもんな」
新堂はそう言いながらゆっくりと走り出す。
その背中を追いかけるよう荒井も自転車をこぎ出した。
二人が並んで走る姿は、その後しばしば見られるようになるのだがその理由はあえて語ることもないだろう。
早朝からランニングをし、学校で練習をたっぷりしてから夕食後もランニングをし、夜は早めに寝る。
三年最後の大会を控えた新堂はいつもに増してストイックに自分を追い込んでいた。
生来の飽きっぽさがありやる気を出しても三日ほどですぐ手を抜く悪癖のある新堂がすでに一週間もこの生活を続けていられるのは、荒井の支えがあったのが大きかっただろう。
夏休みに入ってすぐ、新堂は荒井の家で生活するようになっていた。
新堂の家から練習場のある学校までは遠く、いつも電車で1時間以上は揺られて朝練などに参加していたのだが荒井の家からなら徒歩30分程度で学校までいける。 その時間を練習に当てられるのは有意義だと、そう思ったから荒井の家に一時的に居候をしているのだ。
もちろん、このような生活が出来るようになったのは荒井の家では両親が不在がちで夏休み中は彼一人で過ごすから出来るというのもあるだろう。 料理や洗濯など身の回りの世話をすべて荒井が請け負ってくれるため練習に集中出来るというのも大きかったし、そこまで尽くしてくれている彼を前に怠ける訳にはいかないという思いが自然と湧き出る。
何よりも今は恋人である荒井を前にかっこ悪いところは見せたくない。
環境と思いがうまくかみ合った結果、新堂は今までにないほど良いコンディションで練習に集中し試合前の付け焼き刃と言えない程の成長を遂げていた。
「たまには僕もランニングについていっていいでですか?」
だが、夜の走り込みに出かけようと靴を履いている時に荒井の告げた言葉に何を返すべきか戸惑ってしまった。
荒井には世話になっているから彼の希望なら叶えてやりたいと思うが、今の新堂はかなりハイペースで走っている。荒井のペースにあわせて走れば普段よりずっとゆっくり走らなければいけないし、かといって自分のペースで走り荒井を一人置いていくような真似は心配で出来なかったからだ。時刻がすでに夜遅くなっていたから尚更である。荒井は男だからリスクは幾分か少ないとはいえ、小柄で華奢と言っていい彼を一人にしておきたくはない。
「べつに、一緒に走ろうとは思いませんよ。僕では新堂さんに置いて行かれることなど目に見えてますから。僕は自転車でついていくんで、新堂さんが先導してくれませんか。流石に自転車でいけば置いて行かれないですよね」
すぐさまそう付け足す荒井の言葉を聞き、それなら大丈夫だろうと考える。流石の新堂も自転車より速く走れているとは思っていなかったからだ。
「いつも貴方の帰りを一時間待っているのも寂しいですし、僕も少しくらい体力をつけたほうがいいでしょうからね」
さらにそう畳みかけられれば、断る訳にはいかないだろう。
「仕方ねぇな、ついてこいよ。遅かったら置いていくからな」
新堂は靴を履きなおすと夜の街に出る。微かに笑みを浮かべ、荒井はその後をついて家を出た。
住宅街を走り、公園へと向かう。 車通りの多い駅前や繁華街を避けた走りやすい慣れたコースを抜けるうち、新堂の足が止まった。普段走り込みをする時に通る神社前にさしかかったからだ。
この神社は長い階段を上った後、参道の裏手から道路に降りる道があり小高い丘を越えるくらいの距離になっている。急な階段のせいで自転車では進めないのだ。
「この道を通ってるんですね」
後から追いついてきた荒井は目の前にある長い石段を眺める。コースをかえて道なりに進んでもいいだろうとは思ったのだが。
「どこに抜けるか知ってますから、新堂さんは普段通りのコースを進んでください。僕は道なりに進んで行きますから後で合流しましょう」
荒井はそう告げ自転車をこぎ出す。この地域に関しては荒井のほうが地元だ、道が何処に通じているかはわかっているのだろう。 新堂は安堵の息を吐くと普段通り階段を登り参道を抜ける。距離は荒井の方が長く走る事になるが100段以上ある石段を登った後、急勾配の坂道を下っていくアップダウンの激しい道だ。きっと荒井の方が先に到着するのだろうと思っていたのだが、長い道を抜けた時あたりにはまだ荒井の姿はなかった。
思った以上にこちらのペースが早かったのだろう。神社を抜けず迂回するとかなり距離があるから早く到着する可能性は充分すぎるほどだ。頭でそれがわかっていても不安がこみ上げてくる。
道中で何か事故にでもあったのではないか。あるいは不良気取りの輩にいらぬ因縁でもつけられてはいないか。犯罪者や変質者につけ回されてはいないか。一度湧き上がった不安は次々とあぶくのように立ち上っては消えるを繰り返すものだから新堂はたまらなくなって迂回路を走り始めた。
そして5分もしないうちに自転車をこぐ荒井を見つける。
「新堂さん。そっちのほうが早かったみたいですね、自転車でも迂回路には大きな坂道がありますから……」
荒井は普段と変わらない様子で自転車から降りると、立ち止まっていた新堂を見る。 その姿で新堂はようやく今日は一緒に行きたいとねだった彼の真意に気付いた。
新堂はいつもランニングを一時間ほどしているが、その一時間を荒井は家でただ待っていたのだ。事故にあわないか、事件に巻き込まれはしないか。あり得ない妄想だと思っていても心配になるだろう。
ほんの5分もない間に自分はこれだけ不安だったのだから。
「どうしましたか、ぼぅっと突っ立って」
自転車を押しながら傍へ寄る荒井を前に、新堂はようやく我に返る。
「いや、たいした事じゃ無ェよ。ただ、もし今日辛くなかったら明日もランニングに付き合ってくれ」
「いいんですか? 自転車でも僕がついてきたら足手まといではありませんか」
「そんなこと無ェよ。おまえが体力的にキツいってならこっちも無理言うつもりは無ェけど、一人で走るより楽しいもんな」
新堂はそう言いながらゆっくりと走り出す。
その背中を追いかけるよう荒井も自転車をこぎ出した。
二人が並んで走る姿は、その後しばしば見られるようになるのだがその理由はあえて語ることもないだろう。
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