インターネット字書きマンの落書き帳
保護者ぶる新堂さんと保護される荒井くん(BL)
平和な世界線で付き合ってる新堂×荒井の話をしたい人です。(挨拶)
基本的に新堂×荒井の話をしたいんですが、今回はまだ付き合ってない新堂×荒井なので恋愛要素は薄めです。(当人比)
日野から旧校舎にヤバいのあるってよ! という噂を聞いてこっそり忍び込む荒井と、そんな荒井に気付いて心配だからついていく新堂の話ですよ。
俺は自分のこと保護者だと思っている新堂さんが大好き!
みんなも好きになってね!
基本的に新堂×荒井の話をしたいんですが、今回はまだ付き合ってない新堂×荒井なので恋愛要素は薄めです。(当人比)
日野から旧校舎にヤバいのあるってよ! という噂を聞いてこっそり忍び込む荒井と、そんな荒井に気付いて心配だからついていく新堂の話ですよ。
俺は自分のこと保護者だと思っている新堂さんが大好き!
みんなも好きになってね!
『旧校舎の怪異』
それを見た時、荒井昭二の脳は思考を完全に放棄した。
通常存在し得ない異形のそれは荒井より一回り以上は大きく前身は植物の蔦にも似た体毛に覆われ、無数の目が至る所から現れその全てが荒井の姿を捉えている。
これは一体何なのだろう。
生物だとしたら、どんな食性でどのような生活をするのだろうか。生殖し子孫を増やしたりもするのか、それともこの一個体だけが特別変異で生まれてきたのだろうか。
漠然と浮かんでは弾けて消える疑問とともに立ち尽くす荒井の手を、新堂誠は強く引き寄せた。
「何やってんだ荒井ッ、逃げるぞ!」
最初は棒のように固まっていた足も、新堂に腕を引かれ引きずられているうちに自然と動くようになる。
異形のモノは襲いかかる様子もなく、時々身体を震わせていたが角を曲がったのを最後に姿を見せなくなり追いかけてくる様子もなかった。
転がるように廊下を走り、階段を駆け下りて外へ出れば夕暮れの冷たい風が頬を撫でていく。肩で呼吸をしながら新堂とふたり地べたに座ると、荒井は今までの事を思い返していた。
鳴神学園は恐怖の坩堝である。特に旧校舎にまつわる言われは数多く、教室に取り残されたまま行方不明になった生徒の話や戦時中、研究施設として使われていたという話から生徒たちが内密に住み着いて密かに生活をしているといった奇妙な話まで、興味深い噂は枚挙に暇がない。
それは知識欲に飢え乾いた脳を癒やすにはうってつけの場所に思えた荒井は戦時下に行われた研究室を探すためひとり、旧校舎へ訪れたのだ。
「おい、荒井だろ。ひとりか?」
旧校舎の出入り口で声をかけられた時は咎められるかと思ったが、振り返った先にいたのは上級生の新堂だった。懐中電灯を手にしている所から、目的は荒井と同じ旧校舎の探索に違いない。
すっかり古くなり今夏には解体されると言われている旧校舎は老朽化を理由に立ち入りは禁止されていたから教師はもちろん、他の生徒に見つかれば厄介なことになると思っていたが目的を同じにする新堂なら安心だろう。
「えぇ、新堂さんもですか」
「まぁな。ほら、この前の集会で出来た記事を下読みしに行った時、ちょっと旧校舎の話になっただろ。あれから気になっていてな」
新堂は懐中電灯をぶらつかせながら、そんな事をいう。
先日、日野に頼まれ学校の七不思議を聞かせて欲しいという集会があり聞き手を担当した坂上修一が記事を書き終わったから、語り部全員でそれを下読みするために集まった。その時、旧校舎の話が出た。もう取り壊されるというのだが、隠された地下への入り口は何処にあるのか。推論を交えた雑談だったが、旧校舎の作りから少し気になる事もあり、隠し部屋でもないか確かめてみたくなったのだ。
何せ旧校舎は今夏に取り壊されるという。今まで何度も取り壊しの計画が立ちその都度頓挫していたから今回もまた壊される事もなく終わりそうではあるが、壊されてしまったら確かめようもない。後回しにして後悔するより、まだ存在するうちにきちんと確かめておきたかったのだ。
「新堂さん、部活はどうしたんですか……?」
「お前が気にする事じゃ無ェだろ、どうせ行くならツレがあった方がいいだろ。ほら、行こうぜ」
結局、新堂に急かされる形で旧校舎に入り、心当たりの場所を探索しているうち、あの怪異に出くわしたのだ。
「な、何だったんですか。あれ……何なんですか……」
呼吸を整えながら、荒井は声を漏らす。
旧校舎にある戦前の実験設備について探索していたはずなのに、やたらと目玉の多い生き物ともオブジェともつかぬ存在と出くわすなど思ってもいなかったからだ。
アレも戦前に行われた実験の産物だろうか。それとも、旧校舎に潜む別の怪異なのだろうか。混乱する荒井の肩に手をやると、新堂はどこか諦めたような顔を見せた。
「ここは鳴神だぞ、あぁいうのがウジャウジャいるんだ。特に旧校舎は、噂が一つだけじゃ無ェ。どの噂に語られている霊や化け物が出るのかなんて予測はつかねぇし、噂にない奴が出てくることだってあるんだ。俺たちの常識なんて通じねぇ、考えてるうちにあいつらに囚われちまったら、もう命は無ェからな」
確かにそうだ。今日は戦前の実験室を探そうとしていたが、旧校舎にある噂はそれだけではなく、出てくるのも一つではないのだろう。 荒井はつい、実験室に気を取られそればかり考えていたが今日見た化け物は全く別の存在で、こちらの常識など通じず、好奇心で近づいてたら相手の一部になっていたのだろう。
「……新堂さん、ひょっとして僕を助けようと思って来たんですか」
汗を拭いながら、荒井はそんな事を言う。
そう思ったのは集会の時、新堂は怪談が得意だしホラースポットにも興味はあるようだがどちらかといえば怖がりのように思えたからだ。
すでに旧校舎にも何度か出向き、そこで怖い目にもあっている風だったから今さら好き好んで旧校舎の探索に行くとは思えない。
だが新堂は土埃をはらいながら立ち上がると、不器用に笑うのだった。
「そんな訳ねぇだろ……俺も気になったから見に行っただけだっての……」
あくまで余裕を見せたくて笑っているのだろう。だが、顔以上に膝が笑っている。
それを見る限り、恐怖があるものの心配が勝って様子を見に来てくれた風に思える。
「日野とか風間なら心配しねぇんだけど、お前とか坂上は細ェし小せぇからな……化け物相手じゃなくても心配だぜ」
独り言のつもりで呟いた言葉は荒井の耳にも届いた。斜に構えた見た目をしているが、案外と世話焼きなのだろう。
「……膝が笑ってますよ。強がらないでください」
だが、ただ助けられただけというのはしゃくに障るのでつい皮肉が口に出る。新堂は
「別に、こりゃアレだ。武者震いだよ。それより、お前立てるのか」
そう言いながらこちらへ手を伸ばしてきたからその手をとり立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
「ちょっ……と、まってください。足に力が入らなくて……」
「何だよ、お前こそ腰が抜けてんじゃ無ェか。仕方ねぇな……ほら」
荒井が立てないとみるや新堂は背を向ける。おぶって行こうというのだろうが、高校生にもなって他人の背に乗るのは抵抗がある。
「だ、大丈夫ですちょっと休めば……」
「休んでいるうちにあの化け物が来たらどうすんだ。旧校舎から出てこないって保証は無ェんだぞ。それとも抱きかかえてやったほうがいいか?」
抱きかかえるといわれ、お姫様のように横抱きにされる自分の姿が思い浮かぶ。それなら、背負われている方がまだマシか。荒井は観念し、新堂の背に身体を預けた。
「よし。じゃ、行くぞ……鳴神はヤベェ場所が多いから、あんまひとりで無茶すんなよ」
「忠告ですか? ……考えておきますよ」
新堂に背負われながら、荒井は彼の温もりに触れる。
好奇心も探究心もずっとひとりで満たしてきたが、誰かに背中を預けて進むのも存外と悪くない。彼の背中で揺られながら、荒井はぼんやりとそんな事を考えるのだった。
それを見た時、荒井昭二の脳は思考を完全に放棄した。
通常存在し得ない異形のそれは荒井より一回り以上は大きく前身は植物の蔦にも似た体毛に覆われ、無数の目が至る所から現れその全てが荒井の姿を捉えている。
これは一体何なのだろう。
生物だとしたら、どんな食性でどのような生活をするのだろうか。生殖し子孫を増やしたりもするのか、それともこの一個体だけが特別変異で生まれてきたのだろうか。
漠然と浮かんでは弾けて消える疑問とともに立ち尽くす荒井の手を、新堂誠は強く引き寄せた。
「何やってんだ荒井ッ、逃げるぞ!」
最初は棒のように固まっていた足も、新堂に腕を引かれ引きずられているうちに自然と動くようになる。
異形のモノは襲いかかる様子もなく、時々身体を震わせていたが角を曲がったのを最後に姿を見せなくなり追いかけてくる様子もなかった。
転がるように廊下を走り、階段を駆け下りて外へ出れば夕暮れの冷たい風が頬を撫でていく。肩で呼吸をしながら新堂とふたり地べたに座ると、荒井は今までの事を思い返していた。
鳴神学園は恐怖の坩堝である。特に旧校舎にまつわる言われは数多く、教室に取り残されたまま行方不明になった生徒の話や戦時中、研究施設として使われていたという話から生徒たちが内密に住み着いて密かに生活をしているといった奇妙な話まで、興味深い噂は枚挙に暇がない。
それは知識欲に飢え乾いた脳を癒やすにはうってつけの場所に思えた荒井は戦時下に行われた研究室を探すためひとり、旧校舎へ訪れたのだ。
「おい、荒井だろ。ひとりか?」
旧校舎の出入り口で声をかけられた時は咎められるかと思ったが、振り返った先にいたのは上級生の新堂だった。懐中電灯を手にしている所から、目的は荒井と同じ旧校舎の探索に違いない。
すっかり古くなり今夏には解体されると言われている旧校舎は老朽化を理由に立ち入りは禁止されていたから教師はもちろん、他の生徒に見つかれば厄介なことになると思っていたが目的を同じにする新堂なら安心だろう。
「えぇ、新堂さんもですか」
「まぁな。ほら、この前の集会で出来た記事を下読みしに行った時、ちょっと旧校舎の話になっただろ。あれから気になっていてな」
新堂は懐中電灯をぶらつかせながら、そんな事をいう。
先日、日野に頼まれ学校の七不思議を聞かせて欲しいという集会があり聞き手を担当した坂上修一が記事を書き終わったから、語り部全員でそれを下読みするために集まった。その時、旧校舎の話が出た。もう取り壊されるというのだが、隠された地下への入り口は何処にあるのか。推論を交えた雑談だったが、旧校舎の作りから少し気になる事もあり、隠し部屋でもないか確かめてみたくなったのだ。
何せ旧校舎は今夏に取り壊されるという。今まで何度も取り壊しの計画が立ちその都度頓挫していたから今回もまた壊される事もなく終わりそうではあるが、壊されてしまったら確かめようもない。後回しにして後悔するより、まだ存在するうちにきちんと確かめておきたかったのだ。
「新堂さん、部活はどうしたんですか……?」
「お前が気にする事じゃ無ェだろ、どうせ行くならツレがあった方がいいだろ。ほら、行こうぜ」
結局、新堂に急かされる形で旧校舎に入り、心当たりの場所を探索しているうち、あの怪異に出くわしたのだ。
「な、何だったんですか。あれ……何なんですか……」
呼吸を整えながら、荒井は声を漏らす。
旧校舎にある戦前の実験設備について探索していたはずなのに、やたらと目玉の多い生き物ともオブジェともつかぬ存在と出くわすなど思ってもいなかったからだ。
アレも戦前に行われた実験の産物だろうか。それとも、旧校舎に潜む別の怪異なのだろうか。混乱する荒井の肩に手をやると、新堂はどこか諦めたような顔を見せた。
「ここは鳴神だぞ、あぁいうのがウジャウジャいるんだ。特に旧校舎は、噂が一つだけじゃ無ェ。どの噂に語られている霊や化け物が出るのかなんて予測はつかねぇし、噂にない奴が出てくることだってあるんだ。俺たちの常識なんて通じねぇ、考えてるうちにあいつらに囚われちまったら、もう命は無ェからな」
確かにそうだ。今日は戦前の実験室を探そうとしていたが、旧校舎にある噂はそれだけではなく、出てくるのも一つではないのだろう。 荒井はつい、実験室に気を取られそればかり考えていたが今日見た化け物は全く別の存在で、こちらの常識など通じず、好奇心で近づいてたら相手の一部になっていたのだろう。
「……新堂さん、ひょっとして僕を助けようと思って来たんですか」
汗を拭いながら、荒井はそんな事を言う。
そう思ったのは集会の時、新堂は怪談が得意だしホラースポットにも興味はあるようだがどちらかといえば怖がりのように思えたからだ。
すでに旧校舎にも何度か出向き、そこで怖い目にもあっている風だったから今さら好き好んで旧校舎の探索に行くとは思えない。
だが新堂は土埃をはらいながら立ち上がると、不器用に笑うのだった。
「そんな訳ねぇだろ……俺も気になったから見に行っただけだっての……」
あくまで余裕を見せたくて笑っているのだろう。だが、顔以上に膝が笑っている。
それを見る限り、恐怖があるものの心配が勝って様子を見に来てくれた風に思える。
「日野とか風間なら心配しねぇんだけど、お前とか坂上は細ェし小せぇからな……化け物相手じゃなくても心配だぜ」
独り言のつもりで呟いた言葉は荒井の耳にも届いた。斜に構えた見た目をしているが、案外と世話焼きなのだろう。
「……膝が笑ってますよ。強がらないでください」
だが、ただ助けられただけというのはしゃくに障るのでつい皮肉が口に出る。新堂は
「別に、こりゃアレだ。武者震いだよ。それより、お前立てるのか」
そう言いながらこちらへ手を伸ばしてきたからその手をとり立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
「ちょっ……と、まってください。足に力が入らなくて……」
「何だよ、お前こそ腰が抜けてんじゃ無ェか。仕方ねぇな……ほら」
荒井が立てないとみるや新堂は背を向ける。おぶって行こうというのだろうが、高校生にもなって他人の背に乗るのは抵抗がある。
「だ、大丈夫ですちょっと休めば……」
「休んでいるうちにあの化け物が来たらどうすんだ。旧校舎から出てこないって保証は無ェんだぞ。それとも抱きかかえてやったほうがいいか?」
抱きかかえるといわれ、お姫様のように横抱きにされる自分の姿が思い浮かぶ。それなら、背負われている方がまだマシか。荒井は観念し、新堂の背に身体を預けた。
「よし。じゃ、行くぞ……鳴神はヤベェ場所が多いから、あんまひとりで無茶すんなよ」
「忠告ですか? ……考えておきますよ」
新堂に背負われながら、荒井は彼の温もりに触れる。
好奇心も探究心もずっとひとりで満たしてきたが、誰かに背中を預けて進むのも存外と悪くない。彼の背中で揺られながら、荒井はぼんやりとそんな事を考えるのだった。
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