インターネット字書きマンの落書き帳
坂上くんに弁当をふるまう倉田さんと福沢さん
9月18日は坂上くんの誕生日なので、ふだん誕生日に間に合わないよ~!
ってなりがちだから前倒しで書いてます。
今回は手作りお弁当をもってきた恵美ちゃんと福沢さんの話。
恵美ちゃんの料理が地獄料理なのは……ゲームの資料で明らかになっていた気がするから大丈夫のはず……何が大丈夫なんだろう。
福沢さんの料理は腕前が全然わかんないけど、人が死ぬ料理じゃないだろうなと楽観的観測で書きました。
恵美ちゃんのは……死ぬからね……。
傍目からすると坂上くんめっちゃモテるね。
坂上くん自分の話しないから、1年生の知り合いがほとんど女の子になっちゃうんだよしかたないねッ……。
ってなりがちだから前倒しで書いてます。
今回は手作りお弁当をもってきた恵美ちゃんと福沢さんの話。
恵美ちゃんの料理が地獄料理なのは……ゲームの資料で明らかになっていた気がするから大丈夫のはず……何が大丈夫なんだろう。
福沢さんの料理は腕前が全然わかんないけど、人が死ぬ料理じゃないだろうなと楽観的観測で書きました。
恵美ちゃんのは……死ぬからね……。
傍目からすると坂上くんめっちゃモテるね。
坂上くん自分の話しないから、1年生の知り合いがほとんど女の子になっちゃうんだよしかたないねッ……。
『昼休みのお弁当』
「坂上くーん、誕生日おめでとー! 恵美ちゃんがプレゼントにお弁当作ってきたよー!」
教室のドアを開けフロアいっぱいに聞こえる声で倉田恵美がそう告げた時、坂上修一の脳裏によぎったのは「死」という言葉ただ一つだった。
一学期の終わりに倉田・クッキングで作られたクッキーを一口かじった朝比奈部長がそのまま倒れて三日間生死の境をさまよってから、新聞部では「倉田の料理は実質毒物」というのはもう周知の事実なのだ。
だが肝心の倉田本人は「おいしすぎてビックリしちゃったんですね」と自分の責任など一切感じていないし、自分のことを料理上手だと思って時々劇薬を作ってくるのだからしかたない。 大概の劇物はクッキーやケーキらしいものなので皆、持ち帰って各々処分をしたり、ネズミ避けとして一役買ったりしているが今回は手作りのお弁当だ。 明らかに自分のために作ってきてくれているのだから食べない訳にはいかないだろう。
「あれ、坂上。彼女の手作り弁当? 羨ましいなー」
「誕生日にあんな可愛い子から弁当作ってもらうなんて、坂上ってけっこうモテるのな」
周囲の生徒は羨ましそうにしているが、正直「だったらお弁当あげますよ」と言いたい。
「はい、坂上くん。一生懸命つくってきたから食べてよー、あーんしてあげようか」
倉田は屈託ない笑みを浮かべ弁当を机に広げる。
見た目は普通で明らか様に毒っぽくない。むしろ綺麗な弁当に見えるからタチが悪いだろう。いっそ触ったらいけないタイプの警戒色であってくれたほうが断りやすいし、周囲も明らかに劇物だとわかるのだが。
「え、えっと、僕もうお昼ご飯食べちゃって……」
「えっ、昼休み始まってすぐ風間さんと話してたよね? それから一歩も席動いてなかったの知ってるよー」
「は、早めに食べちゃったんだよ、そう! 授業はじまるまえに……だから」
「そっか、育ち盛りだもんね! じゃ、いっぱい食べてね!」
ダメだ、逃れられない。すでに出口が塞がれている。それじゃなくても倉田は押しが強く絆されやすい坂上はいつも押し切られてしまうのだ。
覚悟を決めて食べるしかないんだろうか。
「うう、お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください……」
坂上は己の不甲斐なさを詫びた。
鳴神学園に通うことになった時から死は常に隣人として尽きそう運命だろうが、怪異や事件などではなくクラスメイトの作った料理というレアな死亡エンディングのアチーブメントを解放することになりそうだ。
そう思っていた最中。
「坂上くーん、お弁当作ってきたから一緒に食べよ!」
教室に福沢の甘い声が響く。
この世に神が存在するのだとしたら、今その存在に感謝しよう。坂上は心の底からそう思い喜びに満ちた表情を福沢へと向けていた。
「ふ、福沢さんッ……あ、ありがとう……」
「あっ、恵美ちゃん。恵美ちゃんもお弁当作ってきたの? ……どうしようかな、私も作ってきちゃったけど」
「玲子ちゃーん。そっか、私は坂上くんに他にもプレゼント準備してあるから、今回は玲子ちゃんに譲ろうかな。ふふ、坂上くん。恵美ちゃんのプレゼントがこれだけだと思わないで、楽しみにして、今日はちゃんと新聞部に顔を出してよね。じゃっ、私はこのお弁当、日野さんにプレゼントしよーっと」
倉田は存外に早く折れてくれたのは、きっと別にプレゼントを準備してあるからだろう。
弁当の行き先が日野に代わってしまったのは申し訳ない気持ちになるが、日野は機転が利くからきっと上手い具合に毒弁当を回避してくれるだろう。
倉田が教室を出ていくのを見送ると、福沢はにっこりと笑顔を向けた。
「あはは、助かったって顔してるー。実はね、昨日恵美ちゃんが『坂上くんの誕生日に手料理を振る舞う!』って意気込んでるの聞いちゃってさ。やばっ、坂上くん死んじゃうって思って慌てて作ってきたんだよね」
どうやら福沢は倉田の地獄メシ事情を知っていてくれたようだ。思わぬ助けに、坂上は感謝で手をあわせた。
「助かったよ福沢さん、本当、死ぬ覚悟をしてたから……」
「えへへー、坂上くんが倒れる所を見るのもちょっと面白いかな、と思ったんだけどね。これで坂上くんが本当に死んじゃったらもう坂上くんで遊べないし、それならまだ生きていてもらったほうが楽しいなーって思ったんだよね」
動機は随分と物騒だが、助かったのは事実だ。 それに。
「正直、料理は自信ないから味は保証しないけど……誕生日おめでとう、坂上くん」
多少照れた様子で笑う福沢は普段と違う風に見える。彼女がこんな風に笑うのを知る事ができるのなら、誕生日を祝われるのは悪くない。
坂上はぼんやりと、そんな風に思うのだった。
「坂上くーん、誕生日おめでとー! 恵美ちゃんがプレゼントにお弁当作ってきたよー!」
教室のドアを開けフロアいっぱいに聞こえる声で倉田恵美がそう告げた時、坂上修一の脳裏によぎったのは「死」という言葉ただ一つだった。
一学期の終わりに倉田・クッキングで作られたクッキーを一口かじった朝比奈部長がそのまま倒れて三日間生死の境をさまよってから、新聞部では「倉田の料理は実質毒物」というのはもう周知の事実なのだ。
だが肝心の倉田本人は「おいしすぎてビックリしちゃったんですね」と自分の責任など一切感じていないし、自分のことを料理上手だと思って時々劇薬を作ってくるのだからしかたない。 大概の劇物はクッキーやケーキらしいものなので皆、持ち帰って各々処分をしたり、ネズミ避けとして一役買ったりしているが今回は手作りのお弁当だ。 明らかに自分のために作ってきてくれているのだから食べない訳にはいかないだろう。
「あれ、坂上。彼女の手作り弁当? 羨ましいなー」
「誕生日にあんな可愛い子から弁当作ってもらうなんて、坂上ってけっこうモテるのな」
周囲の生徒は羨ましそうにしているが、正直「だったらお弁当あげますよ」と言いたい。
「はい、坂上くん。一生懸命つくってきたから食べてよー、あーんしてあげようか」
倉田は屈託ない笑みを浮かべ弁当を机に広げる。
見た目は普通で明らか様に毒っぽくない。むしろ綺麗な弁当に見えるからタチが悪いだろう。いっそ触ったらいけないタイプの警戒色であってくれたほうが断りやすいし、周囲も明らかに劇物だとわかるのだが。
「え、えっと、僕もうお昼ご飯食べちゃって……」
「えっ、昼休み始まってすぐ風間さんと話してたよね? それから一歩も席動いてなかったの知ってるよー」
「は、早めに食べちゃったんだよ、そう! 授業はじまるまえに……だから」
「そっか、育ち盛りだもんね! じゃ、いっぱい食べてね!」
ダメだ、逃れられない。すでに出口が塞がれている。それじゃなくても倉田は押しが強く絆されやすい坂上はいつも押し切られてしまうのだ。
覚悟を決めて食べるしかないんだろうか。
「うう、お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください……」
坂上は己の不甲斐なさを詫びた。
鳴神学園に通うことになった時から死は常に隣人として尽きそう運命だろうが、怪異や事件などではなくクラスメイトの作った料理というレアな死亡エンディングのアチーブメントを解放することになりそうだ。
そう思っていた最中。
「坂上くーん、お弁当作ってきたから一緒に食べよ!」
教室に福沢の甘い声が響く。
この世に神が存在するのだとしたら、今その存在に感謝しよう。坂上は心の底からそう思い喜びに満ちた表情を福沢へと向けていた。
「ふ、福沢さんッ……あ、ありがとう……」
「あっ、恵美ちゃん。恵美ちゃんもお弁当作ってきたの? ……どうしようかな、私も作ってきちゃったけど」
「玲子ちゃーん。そっか、私は坂上くんに他にもプレゼント準備してあるから、今回は玲子ちゃんに譲ろうかな。ふふ、坂上くん。恵美ちゃんのプレゼントがこれだけだと思わないで、楽しみにして、今日はちゃんと新聞部に顔を出してよね。じゃっ、私はこのお弁当、日野さんにプレゼントしよーっと」
倉田は存外に早く折れてくれたのは、きっと別にプレゼントを準備してあるからだろう。
弁当の行き先が日野に代わってしまったのは申し訳ない気持ちになるが、日野は機転が利くからきっと上手い具合に毒弁当を回避してくれるだろう。
倉田が教室を出ていくのを見送ると、福沢はにっこりと笑顔を向けた。
「あはは、助かったって顔してるー。実はね、昨日恵美ちゃんが『坂上くんの誕生日に手料理を振る舞う!』って意気込んでるの聞いちゃってさ。やばっ、坂上くん死んじゃうって思って慌てて作ってきたんだよね」
どうやら福沢は倉田の地獄メシ事情を知っていてくれたようだ。思わぬ助けに、坂上は感謝で手をあわせた。
「助かったよ福沢さん、本当、死ぬ覚悟をしてたから……」
「えへへー、坂上くんが倒れる所を見るのもちょっと面白いかな、と思ったんだけどね。これで坂上くんが本当に死んじゃったらもう坂上くんで遊べないし、それならまだ生きていてもらったほうが楽しいなーって思ったんだよね」
動機は随分と物騒だが、助かったのは事実だ。 それに。
「正直、料理は自信ないから味は保証しないけど……誕生日おめでとう、坂上くん」
多少照れた様子で笑う福沢は普段と違う風に見える。彼女がこんな風に笑うのを知る事ができるのなら、誕生日を祝われるのは悪くない。
坂上はぼんやりと、そんな風に思うのだった。
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