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インターネット字書きマンの落書き帳

   
夕飯を作れるタイプの新堂パイセンの話(BL)
平和な世界線で普通に付き合っている新堂×荒井の話を壁に向かって延々とするブログです。(挨拶)

今回は、新堂から両親が出かけているから家に来いよと言われたので泊まりで遊びに行く荒井が特に何もしてないけど、二人で色々しているだけで結構楽しいし幸せなんだよなぁ。
そんな事を思う荒井の話とかしてますよ。

新堂の料理スキルが「材料さえそろえてあればカレーくらいの料理なら失敗せずに作れる」くらいになってます。
料理は上手ではないが、手を切りそうなほど危なくはないレベル……。

荒井は料理スキル、やらせれば丁寧にやるけどレシピ通りじゃないと納得できないしそもそも買った方が安くあがるならコスパ重視みたいなタイプで書いてますよ。

二次創作は幻覚を強めに見たもんが勝ち!



『今日の夕食はカレー』

 今日は両親がいないから、という理由で新堂誠の家に荒井昭二が招かれてしばらく二人でゆっくり過ごした後、新堂は今さらになって思い出したように立ち上がった。

「あぁ、そうだ。飯どうする? ……今からで良ければカレーでも作るけど、面倒だったら何か買いに行くか?」
「カレーを作るって、新堂さん料理出来るんですか?」

 荒井は心の底から驚いてついそんな事を言う。
 新堂と一緒にいる時、彼が料理らしい事をする姿は一度だって見た事はなかったし、包丁すらろくに握った事のないようにしか見えなかったからだ。

 実際に、新堂は普段から料理をする必要のない立場だといっていいだろう。
 朝おきれば母親の作った朝食と弁当が準備されており、学校が終われば家では暖かい夕食が当然として用意されているような家庭なのだ。
 おおよそ普通の家庭といって差し支えのない家族から普通の愛情を注がれ生活をしており、家事まわりは概ね母に任せきりであろう新堂が台所の手伝いをする姿など簡単には想像できなかった。

 しかも新堂の素行はお世辞にも良いと言えないタイプだ。当然に授業態度も良くはなく、居眠りや落書きは当然の有様で数学や物理などは一つ下である荒井が教える事もある程度に成績は芳しくないのだ。
 そんな新堂が家庭科の料理実習などをまともに取り組んでいるとは思えなかった。

「おい、そんな飯なんか作れるのかコイツなんて顔を露骨にするんじゃ無ぇよ、けっこう傷ついてんだぞこれでも」

 荒井の視線に気付いたのか新堂は口をとがらすと視線を背けた。金髪に染めたりピアスをあけたり、いかにも不良少年といった風体で周囲を威圧するようなところがある癖に見た目で判断されると気を悪くするのだから新堂も妙なところで繊細だ。

「いえ、そんなことはありません……と言うと、嘘になりますね。だって新堂さん、僕の家にいる時に料理なんてしたこと一度もないじゃないですか」
「そりゃぁな、いくらオマエの家に良く行ってるからって流石に台所を勝手に使うのは気が引けるだろうが。食器も鍋もどこにあるか分かんねぇしな」

 そう言いながら頭を掻く新堂を前に、荒井は時計へ視線を向けた。
 今から作るのなら夕食はやや遅くなるだろうが、新堂の家からスーパーやコンビニへ出かけて戻ってきても同じくらいはかかりそうだ。

「僕はどちらでも良いんですが、新堂さんが料理する姿を見たくないといえば嘘になりますね……何か手伝いましょうか?」
「いやいや、一応オマエは客だろ。座して待てや。それじゃ、ちょっと作ってくるからよ。出来たら呼ぶわ」
「いえ、待ってください、せっかくなら僕も行きますよ。一人で部屋で待つのも退屈ですから」

 荒井はスマホを手に取ると台所に向かう新堂の後をついて歩く。追い払われないということはそばにいても良いということだろう。
 新堂の部屋で待っていても良かったが、それでは普段自分の部屋でくつろいでいるのと変わりないだろうし新堂が料理する姿を見てみたいというのも本当だった。彼がどんな風に料理をするのか、ちゃんと食べられるものを出してくれるのか興味があったのだ。

 キッチンに着くなり新堂は食材を並べ、手慣れた様子ではないものの危なっかしい事はない手つきでジャガイモやらニンジンの皮をむいていく。
 普段から料理はしてないが、一通りのコツくらいは知っているといった様子は意外に思えた。

「思ったより料理出来るんですね、新堂さん」

 荒井はテーブルにつきスマホを弄りながらついそんな言葉を漏らすと新堂は苦笑いしながらジャガイモの芽をほじくり出していた。

「正直、料理なんざ億劫なんだけどな。ガキの頃からボーイスカウト行かされたり、1年の頃は部の合宿で料理担当やらされてたりしたから食えるもんは出せるから安心しとけよ。これでも普段喰ってる鶏ハムなんかは自分で仕込んでるんだぜ。一応、飯には気を使ってるからな」

 皮を向いた野菜を不揃いに切ったあと、鶏肉を一口大にすると鍋の中にサラダ油を注いで炒めていく。全体的に大雑把な印象があるのはボーイスカウトや合宿など、大人数の量を作る方になれているからだろうか。

 「それによぉ、オマエが卒業してもまだ俺らが付き合ってたら一緒に暮らすかもしれねぇだろ? 料理くらい出来るようになっておいたほうがいいかと思って、少しくらいはやるようにしてんだよ」

 鍋で鶏肉と野菜とを炒めた後、水を入れ湯でながら当然のように言う新堂の言葉に、荒井はつい顔を上げる。
 鳴神学園を卒業したら自分のレベルに見合った大学に行きどこかの企業に就職をするのだろうと漠然とは考えていたが、隣に新堂がいるのかとか結婚はどうするのかといった所はあまり考えてはいなかったからだ。
 たしかに今のまま過ごしていれば二人で暮らす可能性も充分にあるだろう。荒井が大学に通い始めて節約したいと思えば広めの部屋を二人でシェアしたほうが合理的だろうから、早ければ二年後にはそうなる可能性がある。
 来るべき時のことを考えて家事の分担や生活云々の話を考えるのは至極当然のことだろう。

 荒井はその点合理的で食事などは完全栄養食をうたう食品をとってれば料理はしなくていいだろうし、あまり部屋が片付かないようならホームクリーニングでも頼もう程度に考えていたのでその点では新堂のほうが現実的な事を言っているのだろう。

「随分と気が早いこと考えていたんですね」

 しかし、改めて二人での生活などを考えるとなると恥ずかしい。
 荒井はスマホをテーブルに置くと新堂の隣へ立っていた。

「何か手伝える事はありませんか? それを聞いて座っているのも気が引けますから」
「座して待てっていっただろ? あぁ、でもせっかくだから食器出してくれねぇかな。スプーンとかカレー皿こっちに置いてくれると助かる」
「わかりました。どこにあるんですかね、こっちの食器棚から出していいんですか?」
「あぁ、悪ぃな。頼んだぜ」

 背中で新堂の声を聞きながら食器を準備していれば、そう遠くない未来に同じような光景を見る事もあるのだろうと思う。 それを思うと浮ついた気持ちになり自然と顔が赤くなる事に気付き、荒井は自分は現実主義者だと思っていたのだが甘美な空想に浸る事もあるのかと驚いた。
 自分が変わったのか、元々そういう性分だったのかはわからない。
 だが新しい驚きがあるのはきっと良い事なのだろう。

 取り出した白いカレー皿を言われた場所に置いた時、鍋の中では少し多めのカレーが美味しそうなにおいを漂わせていた。

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