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インターネット字書きマンの落書き帳

   
津詰と葦宮がプリンアラモードを食うような話(パラノマ二次創作)
津詰徹生と葦宮誠が出る話を書きました。(挨拶)
真EDの後、偶然出会ってしまってからしばしば顔を合わせて牽制するようになった二人みたいな関係です。

今回は何故か二人でプリンアラモードをつつく事になったりする話ですよ。
これはTwitterに放流していたやつをちょっと書き足したり修正したりなんかしちゃったりしました。

純喫茶にあるカチカチのプリンによるプリンアラモード。
今となっては昭和の懐かしいデザート、だけど当時は最先端お洒落デザート。

『固いプリンがつなぐ縁』

 津詰徹生が葦宮誠と再会したのは捜査中での事だった。
 葦宮誠というのは世間から身を隠すために名乗るようになった通名で、本名は根島史周という。20年前に世間を震撼させた殺人鬼であり僅かな証拠から苦労して津詰が追い詰めた因縁のある相手だ。
 根島の罪状ではそろそろ娑婆に出る頃だろうとは思っていたし、もしも彼が娑婆へと戻っているのなら以前の名は使っていないだろうとも思っていたが再会するというのはよほど津詰と根島との因縁が深いのだろう。

 根島、こと葦宮との再会は当然津詰にとって喜ばしいものではなかったが、顔を知りその経歴を知っている以上知らぬ存ぜぬで通すワケにはいかない。
 葦宮が学校という場所を勤め先にしているのなら尚更注意が必要だろう。何せ葦宮は20年前女子高校生でさえ容赦なく手にかけてきた犯罪者なのだから。

 とはいえ、いくら犯罪者だからといって罰を受けてきた身だ。一応はスジを通した上で娑婆に戻っている以上、警察という立場で知り得る過去を周囲に吹聴するといった真似はいくら根島が危険人物だといって決して許されるものではない。当然、まだ何もしてないのにしょっ引くという訳にはいかないだろう。
 だからといって目を離す訳には根島史周という人物はあまりにも危なっかしい。
 表向きは控えめで大人しく無害そうな風体をしているというのに内心は推し量れないほどの激情を秘めている人物なのだから、ふとしたきっかけで暴走しかねないのだ。

 そんな思惑もあり、津詰は時間があると根島の。今は葦宮と名乗っている男の様子を見に行くようになっていた。
 葦宮にとっても津詰の顔など頻繁に見たい訳ではないようだったが、執念の捜査で自分を追い詰めた津詰という人間に対して少なからず思うところもあるのだろう。会いに行けば歓迎こそはしないものの追い払ったり邪険にするような事はなく、下らない雑談くらいなら応じる程度の応対はするようになっていた。

 その日も津詰は葦宮の様子を見に行くため、彼が勤務している駒形学校へと向かった。だが普段よりも早く出かけたのもあり想定していた時間より随分早く着いたため、学校はまだ終わっていないようである。学校が終わっていないという事は用務員である葦宮もまだ就業時間中という事だろう。

 駒形高校に勤めるようになってからの葦宮は勤務態度も真面目だと聞いている。不意に津詰が訪ねても留守だった事はほとんどなかったので仕事が終わるまで何処かで休憩しようと津詰は学校の近所にある喫茶店へ入っていった。

 静かなジャズが流れる純喫茶はコーヒーが売りのようでメニューには様々な種類のコーヒーとコーヒー豆の種類が並んでいるが津詰の目を引いたのはプリンアラモードという文字と様々なフルーツで飾られた一枚の写真だった。
 喫茶店内で作っているのか少し固めのプリンにたっぷりのクリームとチェリー、オレンジ、みずみずしいメロンが銀色のプレートに盛られているのはいかにも美味そうだ。
 津詰は濃いめのコーヒーにプリンアラモードを迷わず注文すると、喫茶店内に置かれた新聞を読み始める。するとすぐにドアベルが鳴り一人の男が喫茶店へと入ってくる。その姿を見て驚いた。入ってきたのが葦宮だったからだ。

 まだ仕事は終わってない時間のはずだが、常習的にサボっているのだろうか。それとも偶然休憩時間に重なってしまったのかもしれない。
 葦宮が店に入ると喫茶店のマスターは顔を見るなり「いつものですか」と問いかけ、葦宮も「頼むよ」と穏やかな声で告げていた。その様子を見る限りすでにこの喫茶店では常連のようだ。もっとも、この店と葦宮の務める学校とは目と鼻の先にあるのだから彼が常連になっていても何ら不思議でもなかったのだが。

 葦宮は注文を終えフロアをぐるりと一回り見渡すと、端の席で小さくなっている津詰の姿を見つけ苦笑いをしながら片手を上げた。

「よォ、おまえさんも来てたのかい。いやァ、警察ってのも暇なんだなァ」

 ニタニタと嫌らしい笑顔を向けるのは、津詰が嫌そうな顔をするのがさも楽しいといった様子だ。挑発に乗ってはいけないと思うもののわざと神経を逆なでするような態度は津詰の内にある苛立ちを必要以上に煽るのだった。

「暇じゃねぇよ、貴重な時間の合間に来てんだから感謝してほしいもんだな」
「おぉ、熱心なことで。それともこんな干からびたオッサンがそんなに好きなのかい。いやぁ、愛されるのは嬉しいもんだがしつこい男ってのは嫌われるぜ」

 軽口を叩きながら葦宮は津詰の対面へと座る。
 嫌っているくせにわざわざ自分の傍に座るあたり、葦宮も大概だと内心で舌打ちをした。

「それで、調子はどうなんだ葦宮。生徒からの評判も随分といいみたいじゃ無ェか。出来ればこのまま良い用務員さんとして生活してほしいもんだがな」
「ははッ、おかげさまで仕事にも慣れて思慮に耽る時間も増えたってもんだぜ。これからゆぅっくりとおまえさん方を苦しめる方法を考える事ができる時間もあるってもんだなァ」

 店員が二人の隣に冷えた水を置けばグラスの中で溶けた氷がカランと冷たい音を響かせた。

「貴様っ、妙なこと考えるんじゃ無ェぞ」
「おっと、怒りっぽいのも嫌われるぜ。それとも一般市民に暴力振るおうってのかい、いやぁ、警察ってのは怖いねェ」

 声を殺して笑う葦宮はこちらの反応を見て楽しんでいるようだ。
 そうだ、落ち着け。葦宮は常にこちらを虚仮にして楽しんでいるのだ。こいつはそういう奴であり、津詰を煽って失態を誘おうとしているのだ。相手のペースに巻き込まれたら思うつぼだろう。津詰は深呼吸をし葦宮が何かを企んでいるのではないかと目を光らせる。
 無言のまま互い牽制しあう時間がどれほど続いただろうか。

「お待たせしました、プリンアラモードです」

 二人の間にピンと張った緊張の糸がぷっつりと切れたのはその時だったろう。
 銀色の皿にのせられたプリンアラモードは色とりどりのフルーツをたっぷり乗せ、ホイップクリームで彩られまるで宝石箱のようにキラキラと輝いている。
 自分と葦宮の前におかれたプリンアラモードを見て、津詰は毒気を抜かれたような顔をして苦笑いをする葦宮へと目をやった。

「お、おまえ……いや、おまえもこういうの、喰うんだな……葦宮」
「はぁ……アンタこそこんなもの好きなのか? いや、娑婆に出るまでこんな美味いモンに会った事がなくてな。一度頼んでみてからすっかりハマっちまったんだよ」
「そ、そうか。いや……俺はどっちかというと和菓子派なんだが、喫茶店で喰うプリンってのがまた美味くてなァ……」

 二人は暫くプリンアラモードを凝視していたが、どちらかともなく笑い出すとすっかり気の抜けた様子で笑い合っていた。

「男二人が渋いツラして眺めてるもんじゃねぇよな、プリンなんてよ……喰うとするか」
「そうだなァ……はは、思い出に残るプリンになりそうだぜ……」

 そして互いに笑いながら固いプリンをつつく。
 傍らに置かれた水はすっかり氷が溶け、水かさだけがやや増した状態で結露を滴らせていた。

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