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インターネット字書きマンの落書き帳

   
新堂×荒井が確定した世界の新堂←大倉失恋クリスマス(BL)
どうも、新堂×荒井の思想が強いものです。(挨拶)

クリスマスのネタはクリスマスのうちに書かないと鮮度が一気に落ちるって言ってるでしょ!
それだというのに毎年まいとし、クリスマスのネタを手がけるのがクリスマスイブなんだから仕方ないよね!

って気持ちを抱きながらクリスマスの話を書きました。
しかも新堂×荒井ではなく、新堂×荒井前提の新堂←大倉の話です。

クリスマス前、パーティに呼ばれて「降られるのわかっていて告白しよう」と決める大倉の話ですよ。

クリスマスにしょっぱい思いになろうぜ!



『ギャンブラーの条件』

 クリスマスが来る前に学校は冬休みに入る。
 受験を控えた三年生にとってラストスパートの期間になるが、クリスマスに正月と何かとイベントも多い。 クラスでは受験について話す生徒の他、クリスマスパーティを今年はどうしようかといった話で盛り上がる生徒も多い。大倉はそんな生徒たちを前に、ぼんやりとコインで手遊びをしていた。
 流石に受験も迫っている最中、賭け事や高利貸しといった目立った悪さをし教師に呼び出されるのはまずいと思い二学期も半ばになってから賭場の経営は二年の不良連中に任せ裏から眺める程度になっていた。
 まだ受験は終わっていないが、卒業は近い。大学に合格しようがしまいがこのクラスにいる連中とは殆ど別々の道を歩むのだろう。
 大倉は手をとめ、コインをポケットに入れた。

「よォ、大倉。おまえもクリスマスパーティ一緒にやらねぇか」

 そんな大倉に、新堂が声をかけてくる。
 1年の頃にトランプを使った遊びの賭け事をするようになってから腐れ縁が続いている大倉にとっては仲の良い悪友の一人が新堂だった。
 高校に入って初めての夏休みは新堂と連んでカブトムシを乱獲し子供に売ろうとして山に入ったら山の持ち主に追い回されてひどい目にあったか。一度、他校の生徒も集めてギャンブル大会をし荒稼ぎを目論んだ時は半グレの連中に目をつけられそうになり慌てて逃げ出した事もある。
 今考えれば新堂と連んだ時はろくな事をしてないが、それでも大倉にとってはスリルと興奮入り交じった良い思い出だった。
 そんな新堂は、スポーツ推薦枠でいち早く進学が決まっている。大倉の第一志望とは違う学校だから、春から会う機会はなくなるのだろう。

「クリスマスパーティって、新堂ちゃんの家でやるの?」
「そ、去年もやっただろ。男ばっかで色気の無ェパーティだけどな」

 そういえば、と大倉はクリスマスの事思い出す。1年の二学期にはカジノという名目で賭場を開き高利貸しに手を染め荒稼ぎをしていた大倉は金回りこそ良かったが色恋沙汰には無縁で、いつだって新堂を中心とした恋人なぞいない男たちのパーティに毎年参加していた。
 1年の頃はカラオケボックスで一晩中歌い騒いで問題になったから、去年は新堂の家に集まってたこ焼きパーティをしたりゲームで騒いだ後、徹夜で麻雀をしていたか。

「悪くないけど、他に誰か来るの? ほら、新堂ちゃんはもうスポーツ推薦で進学決まってるけど俺たち一応受験生だし? メンバー集まらないと盛り上がらないでしょ」
「そうだよなァ。実のところ、受験するやつも就職するやつも年末は忙しいみたいで今年来るのは風間と日野、あと神田くらいかもな……」
「へぇ、風間ちゃん来るんだ。というか呼んだんだ風間ちゃんのこと。そんなに仲良かったっけ?」
「別に呼ぶつもりは無かったんだけどな、日野と話してたら『ボクを呼んでもいいんだよ、呼びたまえよ、呼ばないと地団駄を踏んで泣くよ』なんて言うから仕方ねぇだろ。日野が企画した集会で久しぶりに顔あわせてから妙に懐かれちまったんだよ」
「神田ちゃんが来るのも結構意外かもねー、神田ちゃん新堂ちゃんのこと恐竜か何かだと思ってる雰囲気ない?」
「神田は日野が呼んでくれっていうから声かけたら『ヒィッ! わかりました!』って感じで快く来てくれたぜ。神田、ちょっと成績伸び悩んでて最近根を詰めすぎだから息抜きさせたい、って日野が言ってたからな」

 新堂に声をかけられ、小動物のように怯えながら従う神田の姿が脳裏に浮かび大倉は密かに笑う。だが、思い詰めた神田を外に引きずり出せるのは新堂くらいだろう。そういう意味で神田の親友である日野の目論見は正解といえた。神田が新堂のことをすっかり怖がり怯えているという事を除けばの話ではあるが。

「面白い面子が集まるみたいだねー、じゃ、お邪魔しちゃおうかな。またゲームでもやる? 麻雀もっていってもいいけど面子が足りるかなァ」
「あぁ、大丈夫だと思うぜ。日野も風間も打てるはずだから、頭数は足りるだろ」
「そうだけど、新堂ちゃんさぁ……麻雀のルールちゃんとわかってる? チョンボ多くてこっちも張り合いがないんだよねー。日野ちゃんは強いから結構楽しいけど」
「き、去年よりちゃんと覚えてるから心配すんじゃ無ェよ。それに、荒井もいるから大丈夫だろ……」

 その名前を聞いた時、大倉は唇だけで「やっぱりいるんだ」と呟いていた。一方、新堂は今気付いたような顔で大倉へと向き直る。

「そういえば、パーティにひとり後輩がいるんだけどいいよな? 荒井って言うんだけど……」

 新堂が言う前から、大倉は荒井のことを知っていた。
 夏休み前、日野が発案した新聞部の企画で集まりそれから親しくなった後輩で、成績優秀頭脳明晰。映画や読書などを楽しむ多趣味で同好の士とは饒舌に語り合うが基本は無口なインドア派だ。体つきは小柄で華奢で、どこか中性的な雰囲気を持つ驚くほど顔立ちの整った少年で……。
 新堂誠の、恋人だ。

「ふーん、栗原ちゃんとかじゃなく他の子なんだ。仲いいから栗原ちゃんが来るかと思ってたけど」
「栗原は野球部で集まるみたいだからなぁ」
「うん、別にいいよ、麻雀の頭数になってくれるならこっちは歓迎だし」

 あたかも初めて聞く名前といった様子で笑えば、新堂はどこか安心したような顔をする。

「それじゃ、クリスマスにな。たこ焼きパーティの具材とケーキ、チキンあたりは準備しておくから他に欲しいもんがあったら勝手にもってきてくれよな」

 そしてひらひらと手をふると、大倉の前から去って行った。
 一人になり教室の賑わいを他人事のように眺めながら、大倉は机に突っ伏す。 新堂が荒井と恋仲であるのは知っている。だが、当人たちは周囲に言っていないからパーティの最中露骨に恋人らしく振る舞う事はないだろう。
 それでも大倉には、新堂が荒井に向ける笑顔が特別なのがわかるだけでも辛さがあった。彼に向ける視線はいつも優しいし、慣れない気づかいなどをして庇う事があるのもよく知っている。新堂は無意識にそうしているのだろうが、大倉からすれば荒井は彼に宝物のように扱われていた。
 ただの悪友でふざけて笑う時にだけ連む自分とは決定的に違うのだ。

「……どこで、こんなに差がついちゃったんだろうなァ。俺の方が新堂ちゃんと付き合い長いのにさ」

 荒井は人形のように美しい少年だ。大倉と顔立ちのタイプが違うから、新堂の好みが荒井のような顔だったのだと思えれば諦めはつく。だが新堂の性格から、単純に顔形が好きだから付き合ったという事はないのは分かっていた。荒井という人間に惹かれ彼のそばにいたい、彼を守りたい、そんな気持ちになったから新堂は荒井を選んだのだ。
 だとしたら、自分と荒井はどこが違ったのだろう。
 付き合いだけでいえば大倉は新堂と1年長く顔をあわせている。一緒に悪い事もしてきたし、楽しい事も沢山してきた。新堂が隣にいればどんなギャンブルにも負けない気がしたし、新堂が笑っていればリスクの大きい遊びでも何とかなるような心持ちになった。実際その通り、今に到るまで大倉は負けなしだった。
 欲しいものは手に入れてきたし、学園生活に大きな失敗もしていない。行きたい大学に行けるだけの学力も身につけてきたし、順風満帆と言えただろう。 それなのに、一番欲しいものだけは指先からこぼれ墜ちてしまったのだ。
 大倉はポケットに入れたコインをもてあそび、思案する。
 わかっている、自分と荒井との違いは行動に移したかどうかだ。新堂の性格なら、恋慕の情を抱いているという事を告げれば拒絶する可能性は高かっただろう。男を恋愛対象に見るタイプではなかったし、友情や善意で接していた相手に愛情を向けられると生理的に受け付けないというのは当然の心理だ。
 嫌われて腫れ物のように扱われ話しかけてももらえなくなる位なら、悪友としてずっとそばで笑っていられるほうがいい。 大倉はそう思って、秘めている事にした。だが荒井はその思いを打ち明け、嫌われるリスクを背負っても自分の恋心を貫こうとした。
 結局はそれだ、リスクを負って賭け、荒井は賭けに勝ったのだ。勝負の場にも出ないまま指をくわえて見ていた自分に、それをとやかく言う筋合いなんて無いだろう。
 だけど、それでも。

「……言っちゃおうかな。負けるってわかってても、勝負に出ないまま卒業するのはギャンブラーの俺らしくないもんねぇ」

 ポケットのコインを握り、誰に言う訳でもなく一人呟く。
 握ったコインは、かつて新堂が幸運のお守りだといって渡してくれた海外の古いコインだった。

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東吾
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インターネット駄文書き
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