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インターネット字書きマンの落書き帳

   
新堂×荒井を見守る風間と日野(BLだよ)
屋上で星を見ようぜ~!
ってメッセージを集会メンバーたちに送った新堂のところに返事があったのは荒井だけだった。

というのを知って「じゃぁ、我々は陰ながら新堂×荒井を応援しよう」ムーブをきめた風間と日野が、急に荒井からキスをされてテンパる新堂をフォローする話です。

全体的に以前描いた この話 が背景にあります。
新堂のことも荒井のことも好きだからどっちも応援する男子たち……みんなに祝福されるCPというのが好きなので描きました。

新堂×荒井をどんどんすり込んでいってね!



『友達の幸せは誰の幸せか』

 風間が新堂からのメッセージに気付いたのは、パソコン室でアニメDVDを見ていたが途中で睡魔に襲われてすっかり寝入った後、震えるスマホに驚いて起きた時だった。
 気付けば周囲は暗くなっており、他の生徒は帰っているようだ。
 風間が視聴覚室やパソコン室に勝手にやってきては他の生徒がもってきたアニメなどを勝手に見ているのは日常茶飯事だったから他の生徒も気にしなかったのだろう。

「まったく、ボクを置いて帰るとは薄情な連中だね……」

 幸い室内の鍵はかかっていない。風間はスマホを取ると何とはなしに日野へコールしていた。
 日野は文化部でも真面目に活動している新聞部の副部長だ。新聞部の裏部長と言ってもいい。彼ならこの時間でも学校に残っているだろうと思ったからだ。

「どうした風間、おまえ何処にいるんだ?」
「やぁ日野。ボクはたった今PCルームを出たところだけと君はあの暑苦しい部室にいるのかい。よかったら途中まで一緒に帰らないか? 別に怖いというのは無いんだが、鳴神は物騒だろう。ボクのようなカッコマンを怪異たちが放っておかないだろうと思って……」
「わかったわかった、それより新堂からのメッセージ、読んだか?」
「新堂からの?」

 日野の言葉で風間は自分が起きる前にスマホが激しく揺れたのを思い出した。あの時は目覚ましがかかったのかと思ったが、あれが新堂からのメッセージだったんだろう。
 開いてみれば「屋上で星でも見ないか」と、新堂らしからぬロマンチックな提案が書かれている。

「あはは、学校の屋上で星を見るなんて新堂も洒落たことするじゃないか、似合わないねぇ。いや、でもボクだと似合いすぎてかえって完璧すぎるから、新堂みたいに似合わない男がやったほうがかえって様になるのかもね」

 風間は腹を抱えてけらけら笑うとスマホの時間を見た。

「もう7時過ぎてるじゃないか、これじゃあ来る人なんていないだろ。玲子ちゃんだってキミの部にいる恵美ちゃんだってとっくに帰っただろ」
「あぁ、一年生は30分以上前に帰してる。俺は個人的に気になる事を調べてたらこの時間なんだが……それでも来る奴がいるんだよ、見ろ」

 日野に促されスマホをみれば、メッセージの最後に荒井から「行きます、30分ほどでつきますから」なんて返信が残っている。

「えぇ、荒井くんかい。まさかこんな時間まで学校にいたのかい? 帰宅部だったよね、彼」
「そのはずだが、荒井は鳴神学園から徒歩圏内に住んでるからな。慌てて着替えて家から急げば、30分もかからずここまで付くとは思うんだよ」

 スマホごしに、お互い悪い笑みを浮かべているのが見ていなくてもわかる。
 荒井が以前から新堂のことを随分と気に掛けているのは、風間も日野もよく知っていた。
 荒井が新堂に向ける眼差しはいつだって温かかったし、他の相手では見せない笑顔も頻繁に見せているからだ。
 日野に関していえば、荒井が1年の頃から新堂に思いを寄せているのを知った上で集会に二人をわざと会わせている。

「健気だねぇ、荒井くんは。少しでも新堂に会うためなら30分かけて学校にくるのも厭わないってやつか」
「そうだろうな。新堂の奴も荒井の事悪からず思っているんだろうが、どうにもなぁ……」
「しかたないよ、新堂はあれでピュアッピュアで健全な青少年だ。自分に好意を寄せられてるなんて微塵も思わないさ。だいたい、あいつ玲子ちゃんにも好意寄せられてるの気付いてないだろ?」
「そうだなぁ……で、風間どうする。屋上、見に行くか」
「行くに決まってるだろう? 可愛い親友の恋路が成功するのを祈るのが友のつとめって奴だからね」

 風間は電話を切ると嬉々として歩き出す。確か、部室棟の屋上だったか。
 誰もいない階段を足音少なく登れば先に着いていた日野がドアをあけ屋上の様子を窺っていた。

「やぁ日野、思ったより早かったね」
「新聞部の階段を登ればすぐだからな。新堂は一人でぼんやり空なんか見てるよ」
「ほー、思ったより絵になるよね新堂は。ボクほどじゃないけど顔もいいし体つきも筋肉質だから、遠目でもいい男って感じだ。もう少し優しい顔をしてりゃぁモテるのになぁ」
「優しい顔をした新堂か……かえって恐ろしい気がするな」
「それで、荒井くんはもう来たの? それともこれから?」
「流石にこんな早くはこないだろう、たぶんこれから……」

 物陰にかくれていれば、階段を登る乾いた靴音が聞こえてくる。荒井が来たのかもしれない。
 想定よりずっと早い時間でやってきたことに驚きながら、二人は転がるようにドアの影へと隠れていた。風間も日野もかなり背の高い方ではあるがどちらかといえば細身なのもあり、とっさにドアの影へ隠れた二人に荒井は気付かないようだった。
 あるいは荒井自身が随分と舞い上がっており、周囲を気にする余裕がなかったのかもしれないのだが。

「新堂さんっ……」

 荒井は頬を赤らめながら新堂へと走り寄る。自分たちより随分と距離が開いたのを確認しながら、風間は日野とともにドアごしで新堂と荒井の姿を確認した。
 二人とも今は床に座り、他愛もない話に花を咲かせているようだ。

「よかった、何とかバレなかったようだね……」
「あぁ。いつもの荒井なら絶対に気付いていただろうが、新堂を前にして冷静さを欠いてるんだろうな。まさか荒井にも人並みの弱みがあるなんてな」
「いいじゃない、可愛くて。荒井くんも恋する普通の男の子なんだよ。見てごらんあの熱い眼差し。輝く笑顔。本当、あれだけ好意を向けられてるってのに何も気付かないんだから新堂もニブチンだねぇ」
「新堂は荒井のあの顔しか知らないからじゃないか。普段、俺たちに向ける顔とか……特にお前を見る蛇蝎へ向けるような視線を知ってれば気付いていたかもな」

 二人は息をひそめながら成り行きを見守る。
 とはいえ、新堂は鈍い性格だ。荒井の眼差しが明らかに好意を抱いているものだというのに気付いてないだろうし、自分自身もまた荒井に対して特別に振る舞っている事に気付いてもいないだろう。荒井は新堂に思いを秘めつづけるつもりだろうと日野は思っていたから、別段なんら進展することもなく適当に話をして自然解散するに違いない。
 もしいい具合な雰囲気になったら自分たちがフォローを入れてもいいんだろうが、どうするか。
 場の空気が動いたのは、日野がそんな思案に浸っている時だった。
 荒井は新堂の頬に触れたかと思うと、少し強引なくらいに顔を引き寄せ触れるだけのキスをしてみせたのだ。
 恐らく、荒井にとってもまったく自分でさえ想像してなかった行動だったのだろう。彼は恥ずかしさのせいか、それともひどく混乱したからか弾けるように飛び出すとドアの傍に風間や日野がいた事すら気付かぬ様子で駆け抜けていく。

「おい、荒井ッ。待てよ!」

 その後を慌てて追いかけようとする新堂の前に、風間はとっさに立ちはだかった。

「はい、はいストーップ。落ち着こうか新堂」
「はぁっ!? 風間じゃねぇか……日野も。何でいるんだ。いや、いつからいる? ってかいるなら言えよ!」

 見るからにヒートアップしている新堂はこちらから見てわかるほど顔が紅くなっている。とても冷静な状態ではなさそうだ。
 日野は頭を掻くと新堂の肩へと手を置いた。

「俺たちは今着いたばっかりだよ。それより、そんなザマで荒井を追いかけておまえ、どうするつもりだ」
「ど、どうするって。そりゃ……」
「何を言ってあげるつもりだったのかな、新堂は。冷静にならないと、伝わるものも伝わらなくなっちゃうけど、それでいいのかい?」

 自分よりも背の高い男ふたりに囲まれ、新堂も幾分か冷静になったのだろう。
 俯いて、すこし考えると。

「でも、ダメだろこんなんじゃ……おまえら今来たとかいってどうせ全部見てたんだろっ? ……だったらわかるだろ、ちゃんとケジメつけねぇとアイツにも悪いっての」

 いかにも新堂らしい物言いをし、二人を見た。

「なるほど、新堂ならそう思うだろうね」
「そうだ、だがケジメって何だ? ……おまえ、今すぐ荒井を追いかけて言えるのか。おまえの素直な気持ちってのが」
「そりゃ……そりゃぁ……」
「……自分でもまとまってないんだろう? 見てりゃわかる、お前はこの手の話には少し浅慮だからな。男らしくないとか、普通じゃないって妙な価値観に囚われて自分の本心を押し殺したりするだろう」

 日野から窘められるように告げられ、新堂はその場で俯く。
 変わって風間が新堂の肩を軽く叩いてやった。

「ま、ボクからすると新堂が荒井くんの事を好きなのは見え見えだし」
「はぁっ!? な、何いってんだ風間てめっ……」
「あれ、気付いてなかったのかい? ……キミは荒井くんのことをいつも特別な目で見てたし、荒井くんの前では嫉妬するくらいいい笑顔だったよ。荒井くんもね。ボクは新堂も荒井くんも好きだから、そういうのはわかるさ。キミが気付いてなくても、キミにとって荒井昭二はとっくに特別だったんだよ」

 そして風間は大げさなくらいその場で回転すると、自分が王子様にでもなったかのように新堂へ手を差し伸べる。

「だから! だからこそ、一時の感情で間違った判断はしてほしくないんだ。ゆっくり考えてみるんだよ、新堂。荒井くんも、今日は軽率なことをしたときっと落ち込んでいるだろうから……」
「そうだな、荒井には明日、ゆっくり話すように伝えればいい」
「うんうん、1日あれば自分にとってどれだけ荒井くんが大切なのか、鈍感な新堂でも理解できるでしょ」
「おまえら、おまえらなぁ……」

 新堂はしばらく何とも言えぬ表情で唇を噛みしめていたが、やがて普段通りの不貞不貞しさを取り戻すと

「……悪かったな、少し冷静になれたぜ。おまえらの言う通り、明日になるまで考えてみるとする」

 そう言いながら、スマホを軽くタップする。
 明日、学校で。荒井が怖れるような事は言うつもりはないから。
 メッセージを送った後、普段より晴れ晴れした顔をする新堂に、風間と日野は自然と肩を組んでいた。

「よし、じゃ今日はメシ行こうぜ、新堂のオゴリな」
「なぁ、何いってんだよ日野っ」
「特別にラーメンで許しておいてあげるから感謝したまえよ。そのかわり、明日うまく行ったらボクと日野が特別に何かおごってあげよう」
「新聞部の経費でな」

 笑いながら歩く三人の足取りはいつもより軽やかだ。
 その背を満天の星空が見守るように輝いていた。

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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