インターネット字書きマンの落書き帳
新堂に勉強を教えてくれる岩下さん
新堂誠の学力心配すぎる。(挨拶)
いや、アパシーで新堂のこと知れば知るほど「この子の学力大丈夫……?」「卒業できる……?」「もう1年学生できるドーン! にならない……?」って心配度合いがバンバン上がってきてしまうので楽しいですね、学力心配すぎる。
風間や細田ができない子なのはわりと当人が実力を隠している感あるんですが、新堂は「ガチ」っぽさがあり親近感が湯水のごとくわいてしまいます。
そんな新堂さん、テストとかどうしてるんだろう!
赤点とったら補習で練習できなくなるだろうし、真面目に勉強してるんだろうな。赤点をとらないくらいには……等と思った時、けっこう同級生面子が教えてあげているんじゃないかな、と思って書きました。
全ての教科が残念な新堂さんのために一肌脱いでくれる岩下さんの話です。
自分で言うのもなんだけど、新堂と他の語り部をギャグじゃない話で書くの初めてだ! 新鮮!
新堂と岩下の距離感は男女の友人、そこまで親密ではないけど二人でいるのは苦痛ではないなんてぇわりと良い関係ですよ。
いや、アパシーで新堂のこと知れば知るほど「この子の学力大丈夫……?」「卒業できる……?」「もう1年学生できるドーン! にならない……?」って心配度合いがバンバン上がってきてしまうので楽しいですね、学力心配すぎる。
風間や細田ができない子なのはわりと当人が実力を隠している感あるんですが、新堂は「ガチ」っぽさがあり親近感が湯水のごとくわいてしまいます。
そんな新堂さん、テストとかどうしてるんだろう!
赤点とったら補習で練習できなくなるだろうし、真面目に勉強してるんだろうな。赤点をとらないくらいには……等と思った時、けっこう同級生面子が教えてあげているんじゃないかな、と思って書きました。
全ての教科が残念な新堂さんのために一肌脱いでくれる岩下さんの話です。
自分で言うのもなんだけど、新堂と他の語り部をギャグじゃない話で書くの初めてだ! 新鮮!
新堂と岩下の距離感は男女の友人、そこまで親密ではないけど二人でいるのは苦痛ではないなんてぇわりと良い関係ですよ。
『約束したから忍びない』
「新堂くん、いるかしら」
放課後、三年D組に岩下明美が入った瞬間校内に残っていた生徒から小さな歓声があがった。
鳴神学園でも群を抜いた美しさと演劇部のエースとして常に脚光を浴びていた彼女は生徒数が多いこの学校でも有名であり男女問わずファンが多いからだ。好意を抱いていなくとも姿を見れば自然と言葉が漏れる程度に彼女はいつも美しかった。
将来は女優になるのだろうと周囲にいる誰もが思っており、すでに有名な芸能事務所からオファーを受けている等の噂は絶えた事がない。
最も彼女はそれらの噂を否定も肯定もせず、今はただ演劇部の部長として目の前にある公演に全力を尽くすだけで多くを語る事はなく、それもまたミステリアスな魅力として多くのファンを虜にしていた。
「おぉ、岩下じゃねぇか。どうした?」
新堂は軽く手を上げ岩下へと挨拶をする。彼の前には真っ白なノートが広げられていた。
期末テストが間近に迫る中、新堂は放課後も残り勉強する事が増えていた。これは家に帰ったら勉強などしない自分の性格をよく知ってのこともあるし、勉強が終わった後に練習場へ顔を出し軽い運動だけはしておきたかったのもあるのだろう。
期末テストが終わればすぐ夏休みになり、夏休みに入ればすぐに高校最後になる大きな大会が控えている。今さら練習をしたところで焼け石に水程度の効果しかないのはわかっていてもじっとしてはいられないのだろう。
だが学生の本分は勉強だ。
鳴神学園も一応は高校なのだから一定の学力がなければ卒業できない。赤点をとれば補習が入り、補習が入れば練習する時間が奪われる。
仮にもボクシング部でキャプテンをつとめる新堂が夏の大きな大会を前に補習で練習に来なかったなど笑い話にもならないだろう。そんな理由もあり、期末テストでの赤点を回避するため彼は普段より真面目に教科書とにらめっこをしていたのだ。
最も、普段から人並みに勉強して予習が無理でも授業の復習くらいしておけばテスト前に慌てる必用なんて無いのだろうが。
岩下は新堂の姿を見つけると小さく息をいてから彼の前までやってくる。教室にいた生徒たちは自然と岩下から距離を取り、遠巻きに彼女を見つめていた。
「相変わらずすげぇ人気だなぁおまえ。みんなおまえばっかり見てるぜ」
周囲へ目をやり、新堂は驚き半分で言う。彼女が三年でも人気の生徒でありクールビューティや氷の美女など妙な二つ名を欲しいがままにするのは知っていたが、実際に目の当たりにすると驚きが勝るのだろう。
だが岩下は表情をかえぬまま新堂の前にある開いた椅子へこしかけ、何も書かれていないノートへと目をやった。
「別に気にしてないわ。話した事もない人にどう思われても関係ないもの」
実際に岩下はそう思っていた。
彼女は自分のやりたい事へ集中するのに手一杯で他の事に構うような暇はなかったし、一度も話した事がないような相手には何を言われても気にならなかった。
そんな彼女を新堂は頬杖つく。
「相変わらずだな岩下は」
そして屈託なく笑って見せた。
岩下が新堂と知り合ったきっかけは1年の終わり頃のはずだ。
演劇部で激しい殺陣の入るシーンがあり、より迫力を出す方法はないか思案していた時日野から紹介されたのがボクシング部の新堂だったのだ。
『へぇ、岩下明美ってのか。すげぇ美人だな』
初対面の新堂にそう言われた時は彼も外見の善し悪しで何でも判別するつまらない男なのかと思ったが、新堂はそれから一度だって彼女の外見へ触れる事はなく見栄えのいい立ち回りやより躍動感のある動きをする為に日々鍛えるべき筋肉とそのトレーニング方法を教えてくれた。
『おまえ、相当練習してるだろ。ちょっとやそっとじゃモノにならねぇ動きだぜ、それ。俺は芸術なんて詳しくねぇけど、次の舞台は成功するといいな』
教わったのは一週間程度だったが、トレーニングが終える頃に新堂からそう言われたのは今でもはっきりと覚えている。
演劇部の部員という漠然とした枠でもなければ美人の女という枠でもなく、練習熱心でしっかりトレーニングを積んだ岩下明美という人間を認めてくれた。それがやけに嬉しくて、その後も色々話すようになったのだ。
新堂の評判は当時からあまり良くはなく、暴力沙汰で問題をおこすのもしばしばだったが岩下には普通に接していたから岩下も彼には普通に接していた。
男女の間でも友人のように過ごせる新堂との距離感は心地よく、強すぎる羨望や嫉妬心を抱いて近づく人間よりもよっぽど気楽な相手だったろう。
新堂がボクシング部のキャプテンとなり、岩下が演劇部の部長となってからはお互い悩み相談や部員たちをどう導くか話す機会も増えていた。
強面の新堂と並ぶと傍目からは美女と野獣だとか揶揄される事もあったが、新堂はそれに気後れするような所は見せず言わせたい人間には言わせておけ、というスタンスであったのも岩下には有り難かった。
妙な噂をたてられ距離を置かれた事や勘違いをして口説かれた事は一度や二度ではなかったからだ。
『だいたい、岩下は俺よりも自分より年下で可愛い系の方が好きだろ?』
自分と並んで話す時に他人から茶化されるのは気にならないかと聞いてみた事がある。その時新堂は少し考えてからそんな風に答えていたか。
確かに岩下はどちらかというと年下で守ってあげたくなるような線の細い男に心引かれる事が多く、我が強く堂々とした態度の新堂には友情以上の感情を抱けなかったのは事実だった。
色恋沙汰についてあまり語った覚えは無かったのに見透かされているのは少し気恥ずかしかったが新堂は思いの外よくこちらを見ているのだと思い嬉しかったのも覚えている。
あの時、自分は何といっただろう。
『そういう貴方は年上の方が好きだものね』
そんな事をいって彼を困らせたような気がするが、どうだったか。
振り返れば彼と過ごした時間は楽しいものばかりだ。気負わず接する事ができる友人がいるというのはこんなにも心地よいものなのかと岩下は密かに思っていた。
岩下にとって新堂は信頼できる数少ない友人だったのだ。
だからこそ気に掛けていたし、つまらない事で喪いたくないとも思っている。ましてや簡単なテストで躓いては欲しくない。
「期末テスト、勉強中なんでしょう。現代文と古典だったら私でも教えられると思うのだけれども、どうかしら」
そう申し出たのは、そのような思いがあったからだった。
新堂は目を輝かすと岩下の方へ身体を向ける。
「本当か? 助かるぜ、現代文はまだ日本語だからわかるんだけどよォ。古典は日本語じゃないだろ? 日野に教えてもらおうと思ってたんだが全然捕まらなくて参ってたんだよ」
「日野くん、この時期になると勉強を教えてもらいたい人たちから引っ張りだこですものね。でも新堂くん、約束してくれる? ……私が教えるからには現代文と古典、絶対に赤点はとらないって。そんな事をしたら私、許さないから」
こちらを見る新堂を、岩下は冷えた双眸で射貫く。
教えるからには徹底的に、赤点などとらないよう教えるつもりだが新堂にもやるからにはキチンと覚悟を決めて挑んで欲しいからだった。
新堂は軽く口笛を吹くと。
「岩下と約束したならしっかりやらねぇとな」
そういいながら口元だけで笑顔を作る。
やはり新堂は岩下という人間をよく分かっている。そして、約束した限りは必ず果たしてくれるのだろう。岩下とする約束の意味を正しく理解しているのなら中途半端な気持ちでは挑めるはずもないのだから。
岩下は微笑むと自分の教科書を開く。
本当に新堂を殺してしまうのは忍びない。
要点をおさえてしっかりと教えなければ。
そんな事を考えながら、密かに期待してもいた。
友情を抱いたまま心地よい距離感で永遠に時を留めるのも、存外に悪くないかもしれない。
だからどうせ殺すなら、今殺させて欲しいものだ。
「新堂くん、いるかしら」
放課後、三年D組に岩下明美が入った瞬間校内に残っていた生徒から小さな歓声があがった。
鳴神学園でも群を抜いた美しさと演劇部のエースとして常に脚光を浴びていた彼女は生徒数が多いこの学校でも有名であり男女問わずファンが多いからだ。好意を抱いていなくとも姿を見れば自然と言葉が漏れる程度に彼女はいつも美しかった。
将来は女優になるのだろうと周囲にいる誰もが思っており、すでに有名な芸能事務所からオファーを受けている等の噂は絶えた事がない。
最も彼女はそれらの噂を否定も肯定もせず、今はただ演劇部の部長として目の前にある公演に全力を尽くすだけで多くを語る事はなく、それもまたミステリアスな魅力として多くのファンを虜にしていた。
「おぉ、岩下じゃねぇか。どうした?」
新堂は軽く手を上げ岩下へと挨拶をする。彼の前には真っ白なノートが広げられていた。
期末テストが間近に迫る中、新堂は放課後も残り勉強する事が増えていた。これは家に帰ったら勉強などしない自分の性格をよく知ってのこともあるし、勉強が終わった後に練習場へ顔を出し軽い運動だけはしておきたかったのもあるのだろう。
期末テストが終わればすぐ夏休みになり、夏休みに入ればすぐに高校最後になる大きな大会が控えている。今さら練習をしたところで焼け石に水程度の効果しかないのはわかっていてもじっとしてはいられないのだろう。
だが学生の本分は勉強だ。
鳴神学園も一応は高校なのだから一定の学力がなければ卒業できない。赤点をとれば補習が入り、補習が入れば練習する時間が奪われる。
仮にもボクシング部でキャプテンをつとめる新堂が夏の大きな大会を前に補習で練習に来なかったなど笑い話にもならないだろう。そんな理由もあり、期末テストでの赤点を回避するため彼は普段より真面目に教科書とにらめっこをしていたのだ。
最も、普段から人並みに勉強して予習が無理でも授業の復習くらいしておけばテスト前に慌てる必用なんて無いのだろうが。
岩下は新堂の姿を見つけると小さく息をいてから彼の前までやってくる。教室にいた生徒たちは自然と岩下から距離を取り、遠巻きに彼女を見つめていた。
「相変わらずすげぇ人気だなぁおまえ。みんなおまえばっかり見てるぜ」
周囲へ目をやり、新堂は驚き半分で言う。彼女が三年でも人気の生徒でありクールビューティや氷の美女など妙な二つ名を欲しいがままにするのは知っていたが、実際に目の当たりにすると驚きが勝るのだろう。
だが岩下は表情をかえぬまま新堂の前にある開いた椅子へこしかけ、何も書かれていないノートへと目をやった。
「別に気にしてないわ。話した事もない人にどう思われても関係ないもの」
実際に岩下はそう思っていた。
彼女は自分のやりたい事へ集中するのに手一杯で他の事に構うような暇はなかったし、一度も話した事がないような相手には何を言われても気にならなかった。
そんな彼女を新堂は頬杖つく。
「相変わらずだな岩下は」
そして屈託なく笑って見せた。
岩下が新堂と知り合ったきっかけは1年の終わり頃のはずだ。
演劇部で激しい殺陣の入るシーンがあり、より迫力を出す方法はないか思案していた時日野から紹介されたのがボクシング部の新堂だったのだ。
『へぇ、岩下明美ってのか。すげぇ美人だな』
初対面の新堂にそう言われた時は彼も外見の善し悪しで何でも判別するつまらない男なのかと思ったが、新堂はそれから一度だって彼女の外見へ触れる事はなく見栄えのいい立ち回りやより躍動感のある動きをする為に日々鍛えるべき筋肉とそのトレーニング方法を教えてくれた。
『おまえ、相当練習してるだろ。ちょっとやそっとじゃモノにならねぇ動きだぜ、それ。俺は芸術なんて詳しくねぇけど、次の舞台は成功するといいな』
教わったのは一週間程度だったが、トレーニングが終える頃に新堂からそう言われたのは今でもはっきりと覚えている。
演劇部の部員という漠然とした枠でもなければ美人の女という枠でもなく、練習熱心でしっかりトレーニングを積んだ岩下明美という人間を認めてくれた。それがやけに嬉しくて、その後も色々話すようになったのだ。
新堂の評判は当時からあまり良くはなく、暴力沙汰で問題をおこすのもしばしばだったが岩下には普通に接していたから岩下も彼には普通に接していた。
男女の間でも友人のように過ごせる新堂との距離感は心地よく、強すぎる羨望や嫉妬心を抱いて近づく人間よりもよっぽど気楽な相手だったろう。
新堂がボクシング部のキャプテンとなり、岩下が演劇部の部長となってからはお互い悩み相談や部員たちをどう導くか話す機会も増えていた。
強面の新堂と並ぶと傍目からは美女と野獣だとか揶揄される事もあったが、新堂はそれに気後れするような所は見せず言わせたい人間には言わせておけ、というスタンスであったのも岩下には有り難かった。
妙な噂をたてられ距離を置かれた事や勘違いをして口説かれた事は一度や二度ではなかったからだ。
『だいたい、岩下は俺よりも自分より年下で可愛い系の方が好きだろ?』
自分と並んで話す時に他人から茶化されるのは気にならないかと聞いてみた事がある。その時新堂は少し考えてからそんな風に答えていたか。
確かに岩下はどちらかというと年下で守ってあげたくなるような線の細い男に心引かれる事が多く、我が強く堂々とした態度の新堂には友情以上の感情を抱けなかったのは事実だった。
色恋沙汰についてあまり語った覚えは無かったのに見透かされているのは少し気恥ずかしかったが新堂は思いの外よくこちらを見ているのだと思い嬉しかったのも覚えている。
あの時、自分は何といっただろう。
『そういう貴方は年上の方が好きだものね』
そんな事をいって彼を困らせたような気がするが、どうだったか。
振り返れば彼と過ごした時間は楽しいものばかりだ。気負わず接する事ができる友人がいるというのはこんなにも心地よいものなのかと岩下は密かに思っていた。
岩下にとって新堂は信頼できる数少ない友人だったのだ。
だからこそ気に掛けていたし、つまらない事で喪いたくないとも思っている。ましてや簡単なテストで躓いては欲しくない。
「期末テスト、勉強中なんでしょう。現代文と古典だったら私でも教えられると思うのだけれども、どうかしら」
そう申し出たのは、そのような思いがあったからだった。
新堂は目を輝かすと岩下の方へ身体を向ける。
「本当か? 助かるぜ、現代文はまだ日本語だからわかるんだけどよォ。古典は日本語じゃないだろ? 日野に教えてもらおうと思ってたんだが全然捕まらなくて参ってたんだよ」
「日野くん、この時期になると勉強を教えてもらいたい人たちから引っ張りだこですものね。でも新堂くん、約束してくれる? ……私が教えるからには現代文と古典、絶対に赤点はとらないって。そんな事をしたら私、許さないから」
こちらを見る新堂を、岩下は冷えた双眸で射貫く。
教えるからには徹底的に、赤点などとらないよう教えるつもりだが新堂にもやるからにはキチンと覚悟を決めて挑んで欲しいからだった。
新堂は軽く口笛を吹くと。
「岩下と約束したならしっかりやらねぇとな」
そういいながら口元だけで笑顔を作る。
やはり新堂は岩下という人間をよく分かっている。そして、約束した限りは必ず果たしてくれるのだろう。岩下とする約束の意味を正しく理解しているのなら中途半端な気持ちでは挑めるはずもないのだから。
岩下は微笑むと自分の教科書を開く。
本当に新堂を殺してしまうのは忍びない。
要点をおさえてしっかりと教えなければ。
そんな事を考えながら、密かに期待してもいた。
友情を抱いたまま心地よい距離感で永遠に時を留めるのも、存外に悪くないかもしれない。
だからどうせ殺すなら、今殺させて欲しいものだ。
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