インターネット字書きマンの落書き帳
興家くんとヨーコさんは友達のようだ
興家彰吾と福永葉子が出てくる話です。
二人とも、ただの友人というには親密だけど恋人というと「何か違う」みたいなバディ関係、あるいは兄妹みたいな関係の話ですよ。
真・EDのネタバレとか出ている気がするので気をつけてお取り扱いください。
内容は、基本的に興家くんとヨーコさんがバカバカしい会話をしているやつですよ。
Twitterで流した「自分のこと貧弱なの気にしている興家くんの話」と、おまけに「式神作りたいヨーコさんの話」がついてます。
バディ感のある二人、好きなんだな……。
二人とも、ただの友人というには親密だけど恋人というと「何か違う」みたいなバディ関係、あるいは兄妹みたいな関係の話ですよ。
真・EDのネタバレとか出ている気がするので気をつけてお取り扱いください。
内容は、基本的に興家くんとヨーコさんがバカバカしい会話をしているやつですよ。
Twitterで流した「自分のこと貧弱なの気にしている興家くんの話」と、おまけに「式神作りたいヨーコさんの話」がついてます。
バディ感のある二人、好きなんだな……。
『興家くんの筋肉トレーニング』
興家彰吾はギターの練習をしながら先日の事を振り返っていた。
偶然知り合った櫂利飛太と襟尾純、二人に誘われ酒を飲み少し話したのだが二人とも身体がしっかり鍛えられた逞しい肉体をしていたのだ。
襟尾などは興家とあまり背丈も変わらないし顔立ちも幼いくらいだというのに背中の大きさが全然違うのだから驚きだ。
もちろん、これだけ体格に差が出たのは襟尾は現役の警察官で武術をたしなんでいる身だということや櫂は元警察官として、そして今は探偵として身体を鍛えているというのもあるのだが二人の職業を知らない興家はそれを知るよしもなかった。
「みんな身体鍛えるもんなのかなァ。おれだって別にそこまで痩せてないし、運動してない訳でもないんだけど……」
興家は目を閉じて社内の様子を思い出す。
櫂や襟尾と同年代という他の先輩たちはビール腹とでもいうのか、最近は腹回りに脂肪がつき二人とは違う意味でムッチリしてきている。ついでに少しテカテカもしているだろう。
同僚たちも太っていたり痩せていたりはするが、そういった仲間たちから比べても興家の体格は普通か、少しばかり華奢なくらいだった。
「うーん、やっぱりあの人たちが健康的すぎるんだよな。おれは普通だよ、うん、フツー」
そう呟いてギターを弾く興家を横目に、福永葉子はコロコロと笑って見せた。
「どうしたのー興家彰吾くん。フツー、フツーって。いや、確かに興家くんはフツーのサラリーマンだけどさ」
福永とは少し前に知り合った。オカルト好きの変わった子だと思っていたら何故か興家になついてしまい、今は時々部屋に遊びに来るのだ。
恋人のような密接な関係ではないが友人と呼ぶには随分とくだけた不思議な付き合いが今でも続いているが、不思議とその関係が心地よく今に至っている。
「いやぁ、実はね……」
興家は櫂と襟尾の事を話し、二人と撮った写真などを福永に見せた。
「という訳でさ。ほら、この二人ってすごい鍛えてる感じあるだろ」
「どれどれ、ほー……二人ともすっごい顔がいいね! すっごい、興家くんこんないい男どこで引っかけてきたの? この男たらし!」
「全然褒められた気がしないなそれ……」
「二人ともすっごい顔のレベル高いのにこれで鍛えているとか、モテそー。あ、逆にモテそうだから変な相手に引っかからないのかも。興家くんみたいに欲のなさそうな人だと油断して懐に入りやすいのかもね」
何だか福永は二人の顔についてばかり語っている。
「あ、興家くんも顔はかわいいと思うよ。中の上くらい」
かと思うととってつけたように褒められたがなんだかとても不本意な気がした。
「二人とも同年代っていうんだけどさ、鍛えて見えるだろ。二人の間にいるとなんかおれが貧弱に見えて……」
と、そこまで言うと福永は元気に笑うと興家の両肩を叩いて見せた。
「ちがうよ興家くん、興家くんは貧弱に見えるんじゃなくて、実際貧弱なの!」
そしてハッキリ、そう告げる。実のところ、そうだと思いたくなかったから福永に聞いたのだがそのへん、彼女は容赦などしないタイプであった。
「でも興家くんみたいに貧弱だからカワイイって思う人もいるから心配しないで。あたしはカワイイって思うから」
福永はそういうと、また寝転んで興家の買っている音楽雑誌などを眺める。
そんな福永を横に、興家はギターを爪弾きながら
「よし、やっぱおれきたえよう」
そんなことを呟くのだった。
『福永葉子の実験』
「興家彰吾くん、式神を作るわよ!」
日曜日は昼まで寝ると決めている興家のアパートに福永葉子は勢いよく飛び込んできた。
まだ昨日飲んだ酒が残っているのだが起こされてしまったのなら仕方ない。興家は目をこすりながら大あくびをした。
「式神……ってあれ、自分の使い魔みたいなもんか」
興家と福永は陰陽師の末裔であり稀な才能を持つ身である。
陰陽師の秘術は多く隠されてしまい隠されたまま所在不明のものが多くなった最中、二人は時々顔を合わせて過去の術を紐解いたり新しい呪術を開発を試したりするのだ。
式神は、陰陽師ではよく紙でできたヒトガタの依り代をつくり、それを顕在化させて作られる。実際に受肉される訳ではない精神体のようなものが簡単だが、中には生き物をモデルにして自分で作ったり、土人形などに命を吹き込む事もあるそうだ。
かくいう興家も先日、粘土を捏ねて作ったネコの式神があまりにも残念な出来上がりで福永から「何それブタさん?」と言われたショックでせっかくうごいたが焼いてしまったばかりだ。今は蚊取り線香を入れるブタになっている。
「そうそう、確か興家くんこの前成功してたよね、あのブタの式神」
ネコだったんだが、まぁいい。
「確かに作ったし、うごいたけど思ったより不便だったよ。おれも六畳一間も移動すれば『もう疲れちゃってェ……全然うごけなくてェ……』って顔するし、餌は食べないけど粘土で作ると物質だろ? 通れる所とかも制限されるから……作るとしたら精神と肉体をちゃんと分離して作った方がいいと思うけどな」
興家はそういいながら以前作ったネコの式神を封じた依り代を取り出す。
粘土の身体を作った時はすぐ動けなくなっていたが、精神だけの存在である今は機敏に動きあちこちの情報をいち早く届けてくれていた。
とはいえ、元の素体がネコであるせいか水に濡れるのは嫌がるから雨が降っている時、電車が遅延したかどうか見てきてほしいなどと頼むと「そんなことネコにさせるんですか、私はネコなのに!」という顔で見てくるのだが。
「実は私、興家くんが成功した式神をみてずーっと作りたい奴があったんだよね」
福永は嬉々として語ると片手にぶら下げた植木鉢を置く。
それはどうやら朝顔のようだった。
「わぁ、懐かしいなぁ朝顔か。おれも小学校時代に育てたよ、観察日記つけさせられたなぁ」
まだ若い芽が出たばかりのひまわりをのぞき込み、興家はつい笑顔を見せる。
そんな興家を横に福永は仁王立ちすると、ずいっと顔を近づけた。
「まさか、私が観察日記をつけるために朝顔なんて買ってきたと思ってないでしょうね?」
「……つけないの?」
「あたりまでしょ、私だってちゃんと小学校卒業してるもん。実はね、私このアサガオを式神の基礎にしようと思うのよ」
「朝顔を……?」
興家は身体を掻きながらあぐらをかいて朝顔を見る。
動物を式神にする事はあるが、動物自身の知性を制御し人間の意志を植え付けるという若干高度な術式をつかうし動物に何かあった時は術者にもそれなりに反動が出る。特に大きい生物、犬や猫、鷹のような生物だと使役する利便性が大きい変わりそれを喪った時術者の肉体にも何ら変化が起きて一定の危険があるものなのだ。
だが植物の場合、どうなるのだろう。そもそも植物は人間の意志を反映することができるのだろうか。それ以前に、動けない植物を使役することで利点というのはあるのか。
それなりに大樹なら門番にしたり、隠したい通路を塞がせたりはできそうだが……。
「何で朝顔なの? 植物を使役するのは面白い試みだと思うけど」
「それは当然、触手プレイのためよ!」
福永突然の提案に、興家はおもいっきり首を傾げた。
触手プレイ、といったか。
「知ってる、興家くん。世の中にはね、触手の力で手足を縛り自由を奪った相手にあぁんな事やこぉんな事をしちゃう、エッチコンテンツがあるんだよ」
知っていたか知らないかでいわれれば小耳に挟んだ事はある、くらいの記憶だがまさか福永の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
「それで、私思ったんだ。そういうのが好きな男性がいるなら、今から触手プレイ専用の触手をつくれば売れる! って。私たちだったら安全に式神を制御できて、安心プレイをお約束できるでしょ。だからさ、興家くん。この朝顔を立派な触手式神に育ててね」
福永はそういい、玄関へ朝顔を置いていく。そして時計を見ると。
「あっ、これから友達と遊びに行くんだった。じゃぁね、興家くんよろしくー」
そうして勢いよくまた出て行く。今日はやけにお洒落していると思ったが、友達と遊びにいくのか。興家はまたあくびをすると、ひとまず朝顔を日当たりのいい場所においた。
「これ、何色に育つんだろうな。朝顔なんて育てるの小学校以来だから……」
その後、特に触手プレイ専用の式神は生まれなかったが、興家の家におかれた朝顔は青紫の花を咲かせ沢山種が取れたので近所の小学校にお裾分けをしたのだそうだ。
興家彰吾はギターの練習をしながら先日の事を振り返っていた。
偶然知り合った櫂利飛太と襟尾純、二人に誘われ酒を飲み少し話したのだが二人とも身体がしっかり鍛えられた逞しい肉体をしていたのだ。
襟尾などは興家とあまり背丈も変わらないし顔立ちも幼いくらいだというのに背中の大きさが全然違うのだから驚きだ。
もちろん、これだけ体格に差が出たのは襟尾は現役の警察官で武術をたしなんでいる身だということや櫂は元警察官として、そして今は探偵として身体を鍛えているというのもあるのだが二人の職業を知らない興家はそれを知るよしもなかった。
「みんな身体鍛えるもんなのかなァ。おれだって別にそこまで痩せてないし、運動してない訳でもないんだけど……」
興家は目を閉じて社内の様子を思い出す。
櫂や襟尾と同年代という他の先輩たちはビール腹とでもいうのか、最近は腹回りに脂肪がつき二人とは違う意味でムッチリしてきている。ついでに少しテカテカもしているだろう。
同僚たちも太っていたり痩せていたりはするが、そういった仲間たちから比べても興家の体格は普通か、少しばかり華奢なくらいだった。
「うーん、やっぱりあの人たちが健康的すぎるんだよな。おれは普通だよ、うん、フツー」
そう呟いてギターを弾く興家を横目に、福永葉子はコロコロと笑って見せた。
「どうしたのー興家彰吾くん。フツー、フツーって。いや、確かに興家くんはフツーのサラリーマンだけどさ」
福永とは少し前に知り合った。オカルト好きの変わった子だと思っていたら何故か興家になついてしまい、今は時々部屋に遊びに来るのだ。
恋人のような密接な関係ではないが友人と呼ぶには随分とくだけた不思議な付き合いが今でも続いているが、不思議とその関係が心地よく今に至っている。
「いやぁ、実はね……」
興家は櫂と襟尾の事を話し、二人と撮った写真などを福永に見せた。
「という訳でさ。ほら、この二人ってすごい鍛えてる感じあるだろ」
「どれどれ、ほー……二人ともすっごい顔がいいね! すっごい、興家くんこんないい男どこで引っかけてきたの? この男たらし!」
「全然褒められた気がしないなそれ……」
「二人ともすっごい顔のレベル高いのにこれで鍛えているとか、モテそー。あ、逆にモテそうだから変な相手に引っかからないのかも。興家くんみたいに欲のなさそうな人だと油断して懐に入りやすいのかもね」
何だか福永は二人の顔についてばかり語っている。
「あ、興家くんも顔はかわいいと思うよ。中の上くらい」
かと思うととってつけたように褒められたがなんだかとても不本意な気がした。
「二人とも同年代っていうんだけどさ、鍛えて見えるだろ。二人の間にいるとなんかおれが貧弱に見えて……」
と、そこまで言うと福永は元気に笑うと興家の両肩を叩いて見せた。
「ちがうよ興家くん、興家くんは貧弱に見えるんじゃなくて、実際貧弱なの!」
そしてハッキリ、そう告げる。実のところ、そうだと思いたくなかったから福永に聞いたのだがそのへん、彼女は容赦などしないタイプであった。
「でも興家くんみたいに貧弱だからカワイイって思う人もいるから心配しないで。あたしはカワイイって思うから」
福永はそういうと、また寝転んで興家の買っている音楽雑誌などを眺める。
そんな福永を横に、興家はギターを爪弾きながら
「よし、やっぱおれきたえよう」
そんなことを呟くのだった。
『福永葉子の実験』
「興家彰吾くん、式神を作るわよ!」
日曜日は昼まで寝ると決めている興家のアパートに福永葉子は勢いよく飛び込んできた。
まだ昨日飲んだ酒が残っているのだが起こされてしまったのなら仕方ない。興家は目をこすりながら大あくびをした。
「式神……ってあれ、自分の使い魔みたいなもんか」
興家と福永は陰陽師の末裔であり稀な才能を持つ身である。
陰陽師の秘術は多く隠されてしまい隠されたまま所在不明のものが多くなった最中、二人は時々顔を合わせて過去の術を紐解いたり新しい呪術を開発を試したりするのだ。
式神は、陰陽師ではよく紙でできたヒトガタの依り代をつくり、それを顕在化させて作られる。実際に受肉される訳ではない精神体のようなものが簡単だが、中には生き物をモデルにして自分で作ったり、土人形などに命を吹き込む事もあるそうだ。
かくいう興家も先日、粘土を捏ねて作ったネコの式神があまりにも残念な出来上がりで福永から「何それブタさん?」と言われたショックでせっかくうごいたが焼いてしまったばかりだ。今は蚊取り線香を入れるブタになっている。
「そうそう、確か興家くんこの前成功してたよね、あのブタの式神」
ネコだったんだが、まぁいい。
「確かに作ったし、うごいたけど思ったより不便だったよ。おれも六畳一間も移動すれば『もう疲れちゃってェ……全然うごけなくてェ……』って顔するし、餌は食べないけど粘土で作ると物質だろ? 通れる所とかも制限されるから……作るとしたら精神と肉体をちゃんと分離して作った方がいいと思うけどな」
興家はそういいながら以前作ったネコの式神を封じた依り代を取り出す。
粘土の身体を作った時はすぐ動けなくなっていたが、精神だけの存在である今は機敏に動きあちこちの情報をいち早く届けてくれていた。
とはいえ、元の素体がネコであるせいか水に濡れるのは嫌がるから雨が降っている時、電車が遅延したかどうか見てきてほしいなどと頼むと「そんなことネコにさせるんですか、私はネコなのに!」という顔で見てくるのだが。
「実は私、興家くんが成功した式神をみてずーっと作りたい奴があったんだよね」
福永は嬉々として語ると片手にぶら下げた植木鉢を置く。
それはどうやら朝顔のようだった。
「わぁ、懐かしいなぁ朝顔か。おれも小学校時代に育てたよ、観察日記つけさせられたなぁ」
まだ若い芽が出たばかりのひまわりをのぞき込み、興家はつい笑顔を見せる。
そんな興家を横に福永は仁王立ちすると、ずいっと顔を近づけた。
「まさか、私が観察日記をつけるために朝顔なんて買ってきたと思ってないでしょうね?」
「……つけないの?」
「あたりまでしょ、私だってちゃんと小学校卒業してるもん。実はね、私このアサガオを式神の基礎にしようと思うのよ」
「朝顔を……?」
興家は身体を掻きながらあぐらをかいて朝顔を見る。
動物を式神にする事はあるが、動物自身の知性を制御し人間の意志を植え付けるという若干高度な術式をつかうし動物に何かあった時は術者にもそれなりに反動が出る。特に大きい生物、犬や猫、鷹のような生物だと使役する利便性が大きい変わりそれを喪った時術者の肉体にも何ら変化が起きて一定の危険があるものなのだ。
だが植物の場合、どうなるのだろう。そもそも植物は人間の意志を反映することができるのだろうか。それ以前に、動けない植物を使役することで利点というのはあるのか。
それなりに大樹なら門番にしたり、隠したい通路を塞がせたりはできそうだが……。
「何で朝顔なの? 植物を使役するのは面白い試みだと思うけど」
「それは当然、触手プレイのためよ!」
福永突然の提案に、興家はおもいっきり首を傾げた。
触手プレイ、といったか。
「知ってる、興家くん。世の中にはね、触手の力で手足を縛り自由を奪った相手にあぁんな事やこぉんな事をしちゃう、エッチコンテンツがあるんだよ」
知っていたか知らないかでいわれれば小耳に挟んだ事はある、くらいの記憶だがまさか福永の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
「それで、私思ったんだ。そういうのが好きな男性がいるなら、今から触手プレイ専用の触手をつくれば売れる! って。私たちだったら安全に式神を制御できて、安心プレイをお約束できるでしょ。だからさ、興家くん。この朝顔を立派な触手式神に育ててね」
福永はそういい、玄関へ朝顔を置いていく。そして時計を見ると。
「あっ、これから友達と遊びに行くんだった。じゃぁね、興家くんよろしくー」
そうして勢いよくまた出て行く。今日はやけにお洒落していると思ったが、友達と遊びにいくのか。興家はまたあくびをすると、ひとまず朝顔を日当たりのいい場所においた。
「これ、何色に育つんだろうな。朝顔なんて育てるの小学校以来だから……」
その後、特に触手プレイ専用の式神は生まれなかったが、興家の家におかれた朝顔は青紫の花を咲かせ沢山種が取れたので近所の小学校にお裾分けをしたのだそうだ。
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