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インターネット字書きマンの落書き帳

   
【誕生日プレゼントを渡すシンドー先輩概念(BL)】
平和な世界線で普通に付き合っている新堂と荒井の話をしています。
(端的な挨拶)

今回は誕生日前に荒井に何かプレゼントしたいなぁ。
何がいいんだろうなぁ……みたいな事を考えて荒井本人に聞いてみるハナシですよ。
切実な朝比奈がオマケでついてきます。

俺が個人的な意見で、荒井くんは細身で小柄のまま大人になるといいな……。
でも大学では見た目は大人しそうなのにゴリッゴリに目立つピアスをガンガンつけているといいな……みたいな思いを抱いて書いてます。

荒井くんの誕生日は11月だって?
俺が書きたい時が誕生日なんだよォ!

『サプライズのないプレゼント』


「誕生日プレゼントって何が喜ぶんだろうな」

 新堂誠が何気なく日野貞夫に話かけた時、真っ先に返事をしたのは隣に座っていた朝比奈慎也だった。

「何が喜ぶかとかは一回おいておいて、相手の希望はそれとなくでも聞いておいたほうが絶対にいいよ。下手なサプライズとか奇をてらった演出なんてのはやめておいて、無難にこっちの予算を伝えてさ。普段使いできるものがいいのか、ぬいぐるみみたいに部屋においておけるものがいいのか、どんなジャンルかくらいは最低おさえておかないと。特にアクセサリとかコスメだったら絶対に本人が欲しいものを買った方がいいからね」

 急にスイッチが入ったように能弁に語る朝比奈を前に、新堂も日野も呆気にとられる。
 朝比奈は日野とは仲が良いが新堂とそれほど面識があるワケでもなく以前より新堂のことを怖がっている感じがしたからここまで饒舌に話すと思っていなかったからだ。

「もしプレゼントに予算より安いものをねだられたのだとしたら、デートの後に渡すとかがいいんじゃないかな。映画館でも遊園地でも食事でもね。誕生日だからプレゼントの他に特別な時間を準備するのって大事だし、そういうのは喜ばれると思うよ。最も、そういう所に行くのが好きな相手だってのが絶対条件だけどね。あぁ、そうそう、プレゼントはいいから普段はいけないようなテーマパークに行くのを求める子もいるから、何が欲しいのかってのは絶対に聞いてからのほうが失敗しないよ! 何が喜ぶんだろうなーなんて考えているならまず聞いたほうがいいって!」

 普段大人しい朝比奈がこの時とばかりにグイグイとくるものだから流石の新堂も気圧されしただ「おぉ」としか言えなくなる。
 聞けば朝比奈は大人しく控えめな性格のわりにかわいらしい顔立ちをしているし実際に線も細いから「優しそうで可愛い」と彼女が途切れた事のない程度にはモテるのだ。とはいえども顔と外見だけで引き寄せられてきたうえ、普段の朝比奈は日野のお膳立てで本来以上の実力を出しているところがあるのでいざ付き合ってみると優柔不断で押しの弱い面がどうしても目立ってしまい気付いた時には「つまらない人」とフられてしまうのが常なのだが。
 それでも女の子の誕生日はこの3年で幾度も経験し、彼女たちの注文を逐一覚えていたのだろう、朝比奈の言葉には妙な説得力があった。

「女の子ならサプライズが好きなんてうたい文句で周囲を煽るような雑誌もあるけど実際プレゼントでもらえるなら実用品とか普段ではちょっと手の届かないブランド品の小物とか、そういうのが嬉しがる子も多いんだよ」
「ふーむ、確かに女子がつかうコスメは見た目やパッケージも充分に可愛いからな。いい所のブランド品だといい値段もするしプレゼントには良さそうに見えるがな」

 腕を組み考える日野の肩を掴むと、朝比奈は大げさに首を振った。

「そう思うだろ日野。でもそれは罠なんだよねー、女の子ってほんの少しの色味が違うのとか、ラメが入ってる、入ってないとかそういうのもすっごい気にするし、メイクによっては肌質があわないと全然使ってもらえないから」
「だとすると、服とか靴とか……小物系が安パイって事かよ」

 新堂の問いかけに、朝比奈は再び大げさなくらい首をふって見せる。
 男にしてはやや長い髪が軽く揺れた。

「それもダメ、安パイに見えて結構地雷になるやつ。いや、僕らの可愛いな、似合いそうだなって服とか小物と相手の子が好きだな、可愛いなって思う小物とかってかなり違うし、サイズも同じSサイズ、Mサイズであっても実際に試着してみないと会わない所があったりするんだよ。ほら、量産品だと手の長さとか肩まわりとか若干サイズ違う個とがあるからね。だから、へんにサプライズしないで堂々と『誕生日、何が欲しい』って聞いた方がいいって。もー、僕なんて『あれやだ』で買い直したこともあるし『サイズが違う』で激怒された事もあるし『センスない』でフラれた事もあるんだから……」

 朝比奈は悲しそうな顔をし長くため息をつく。彼女が途切れた事のない朝比奈は同時に長続きしたこともなくフラれた回数も多いためその言葉には重みを感じずにはいられなかった。

「つまり、朝比奈は相手にちゃんと欲しいものを聞いた方がいいって事だな」

 日野がなだめるように背中をさすれば朝比奈は泣きそうな顔を押さえながら頷く。

「そう、そうだよ。例えサプライズが好きってタイプでもね、サプライズででっかいぬいぐるみとかもらってもどこに置くんだーってキレるもんなんだよ。だからサプライズで何かプレゼントするなら本命のプレゼントとは別に、ちょっとした花束とかを手渡すとかでいいんじゃないかな、花ならあっても怒らないし枯れてなくなれば捨てられるだろ? そうじゃない限りサプライズとかは絶対やめておいたほうがいいよ。やっぱ相手の欲しいものが長く使ってもらえるだろうしね」

 かくして新堂は想像してなかったほど熱意あるアドバイスを得て荒井昭二を屋上まで呼び出すことにした。
 善は急げではないが話は早いほうがいいだろう。そう思い事前に「誕生日プレゼントで欲しいものがあったら教えておいてくれ。今日は昼休み屋上にいるから用があったらツラ出せよな」と丁重なメッセージを送ったところ珍しく荒井は屋上までやってきたのだ。

「おっす」

 片手を上げ声をかければ荒井は億劫そうに小さく頭を下げる。
 鳴神学園は屋上から飛び降りた生徒の噂が後を絶たないにもかかわらず屋上の出入りは禁止されていなかったのだが屋上まで行くのにかなり長い廊下と階段を経由しなければいけないのとやれ人死にが出た、自殺者の幽霊が出るといった恐ろしい噂が多いのもあり立ち入るものはほとんどいなかった。
 秋も深まり外の気温が随分とさがってきた今の時期は尚更だ。荒井は新堂の隣に腰掛けると暫く考えたような素振りを見せてから口を開いた。

「覚えてたんですね、僕の誕生日」
「あたりまえだろ? 一応、俺の誕生日にもプレゼントもらってるしな」

 新堂の鞄にはスポーツ用のサングラスが入っている。日差しが強い時でもランニングがしやすいようにと荒井がくれたものであり以前から欲しいとは思っていたが値段が高くて手が出なかったものだ。
 突然のプレゼントに驚いたもののこちらの欲しいものであり欲しいデザインだったのは荒井が普段からよっぽどこちらを良く観察しているからだろう。 荒井の目聡さは他の連中と比べて群を抜いておりそれはもはや執着と呼ぶべき領域であった。
 だが生憎新堂はそこまで察しの良い方ではない上、荒井という人間は自分の本心を隠す傾向がある上多趣味でもあるため見ているだけで何が欲しいかは想像できなかった。
 最初は同じくらいの値段で荒井が普段使いするようなものをプレゼントしようと考えていたが朝比奈の意見を聞き、直接何が欲しいのか確認したほうがいいと考え直したのだ。

「それは別に良いんですよ、僕があったほうが良いだろうと思ってプレゼントしたのでお返しなどは別に考えてませんでしたから」

 荒井は目を伏せながら小声で言う。それは怒っているというより照れているように見えた。

「ソレだったら俺だっていっしょだ。俺だってお前に何かしてやりてぇんだよ。ましてや誕生日だもんな。で、ここに来るって事は何かしら欲しいものがあるのか? 先に言っておくが、あんまり高ェもんはやめてくれよ」

 新堂は普段から金銭面でルーズな所があるため常に金欠ではあるのだが、それでも荒井からプレゼントをもらってからは少ないなりに貯金をしていた。もらったプレゼントと同じくらいの品なら返せる程度の金額は準備しているからよっぽど無理を言われない限りは大丈夫だろう。
 これは新堂が借りを作りっぱなしというのは落ち着かないという性分なのも多少はあっただろう。
 荒井なら普段使い出来るような万年筆か時計のような実用品を望むのだろうか。漠然とそんな予想をしていた新堂にとって荒井の提案は意外なものだった。

「それなら、ピアスを買ってくれませんか。貴方から見て僕に似合いそうなものが欲しいです」
「ピアス? ピアスだって?」

 新堂は思わず荒井の耳たぶに触れる。荒井は校則を破るような真似をするタイプではなく、当然校則違反であるピアスの穴など開けてないからだ。 触れてみて実際、まだピアスの穴は開いてない。

「おまえ穴開いてないだろ? どうするんだピアスなんて……」
「まだ開けてませんけど、卒業したら開けてみたいと思っているんですよ。どうです? ……案外似合うと思いませんか?」

 悪戯っぽく笑う荒井を見て、新堂はピアスをつけた姿を想像する。
 元々顔立ちは綺麗なのだから何をしても大概似合うだろうが細身で小柄な荒井が見た目にそぐわぬ無骨なピアスが案外と似合うのではないだろうか。いや、それならピアスより手軽なイヤーカフを付けさせてみたい気持ちもある。きっとよく見たら付けているとわかるものより遠目から見てもはっきりピアスをしているのがわかる存在感がある方が似合う気がしたし、その方が自分がプレゼントしたものだというのが見た目ではっきりわかるのも良いと思った。
 荒井が自分のプレゼントしたものを身につけているという実感も沸く方が当然、嬉しいからだ。

「……自分がプレゼントしたものを身につけてくれる、って想像するだけで嬉しいんじゃないですか」

 新堂の気持ちを見透かしたかのように荒井は彼の顔をのぞき込む。

「どうです? 自分がプレゼントをしたものをつける姿、想像しただけで楽しいでしょう。まるで貴方が僕の所有者になったような心持ちになって……」
「なぁっ、何言ってんだよおテメェはよ……」
「僕は、そうですよ。貴方が僕のプレゼントしたサングラスを使っている時、僕はすこし喜ばしいんです。僕を傍に置いてくれているようで……」

 そして耳に触れる新堂と手を重ねると妖しい視線を注ぐ。それは毒のように甘美な言葉で新堂の脳髄を揺さぶった。

「だから新堂さん、一緒に僕のピアスを選んでくれませんか。男のピアスならそれほど流行り廃りもありませんよね」
「そうだけど、卒業までピアスの穴開けないつもりかよ。校則違反で怒られたりするのはおまえの性分じゃないだろ」
「はい、ですから……卒業したら、あなたが僕の耳にピアスホールを開けてもらいたいんです。僕はそれを楽しみにして、貴方からのプレゼントを大切にしておきますから……」

 新堂が卒業するまであと半年もないが一つ年下の荒井が卒業する日となれば随分と先の事のように思える。
 それまでにいくつピアスを買ってやれるだろう。誕生日だけでなくとも機会があればピアスを買い卒業した後自分の手で荒井の耳に穴を開ける事が出来るのならそれはきっと面白い。

「悪くねぇな……こんどカタログでも見るか? 俺が行く店を紹介してもいいけどよ」
「どちらでもいいですよ。貴方が好きにしてくれるなら、僕はそれでいい」

 楽しそうに笑う荒井の身体を自然と抱きしめ、新堂はその耳たぶに触れる。もしこの耳に自分の選んだピアスをつけるための穴を開ける事ができるのなら、その独占欲と支配欲はどれだけ昂ぶり満たされるのだろう。
 そう思っている事実に、新堂は知らぬうちに随分と荒井に支配されているのだという事に気付く。だがきっとそれは、幸福な支配なのだろう。

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東吾
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インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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