インターネット字書きマンの落書き帳
タテノとサクラと逆張り古参オタク仕草
オリジナル作品の「タテノとサクラ」書きたいシーンだけ書きました。
小説で、時々に作者の趣味らしいジャズやらクラシックの話が挟まれても「まったく意味がわからん!」となりがちな俺の話です。
なんか置いていかれてる! 話題に!
と思って寂しいね、ってのをタテノとサクラにダラダラ話してもらいます。
一応人物紹介もしておくね!
<登場人物紹介>
タテノ(櫻井達乃)
あんまりお金がない大学生
よく駅前にあるコーヒーショップでダベっている
ゲームが好き 友達はだいたいゲームで出来る
サクラとよく連んでるが別に恋人同士ではない
サクラ(館野サクラ)
タテノと同じ大学生で趣味と行動範囲がよく被ってるから連んでいる
だが別に恋人同士ではない
マイペースでなかなか人間としてあり得ない豪胆さをもっている
マスター
タテノとサクラがよくダベっているコーヒーショップのマスター
よくわからないが何でも知っていそうな顔をしている
本名非公開、顔出しNGらしい
小説で、時々に作者の趣味らしいジャズやらクラシックの話が挟まれても「まったく意味がわからん!」となりがちな俺の話です。
なんか置いていかれてる! 話題に!
と思って寂しいね、ってのをタテノとサクラにダラダラ話してもらいます。
一応人物紹介もしておくね!
<登場人物紹介>
タテノ(櫻井達乃)
あんまりお金がない大学生
よく駅前にあるコーヒーショップでダベっている
ゲームが好き 友達はだいたいゲームで出来る
サクラとよく連んでるが別に恋人同士ではない
サクラ(館野サクラ)
タテノと同じ大学生で趣味と行動範囲がよく被ってるから連んでいる
だが別に恋人同士ではない
マイペースでなかなか人間としてあり得ない豪胆さをもっている
マスター
タテノとサクラがよくダベっているコーヒーショップのマスター
よくわからないが何でも知っていそうな顔をしている
本名非公開、顔出しNGらしい
『蘊蓄古参逆張り仕草』
さして金もないが少し外に出かけたい。 そう思った俺が駅前にあるコーヒーショップ・ストレイシープに向かえば見知った顔である館野サクラが先にカウンターへ座っていた。
「あ、タテノ。やっほー、隣空いてるから座って座って、ホラホラ、遠慮なさらずに。いまなら現役女子大生の隣が無料だよ~」
サクラは俺を見て手を振り、ポンポンと隣の椅子を叩く。わざわざ隣に行く理由も無いが、自宅アパートに引きこもり誰としゃべる機会もなく悶々としていた俺には特に断る理由も無くサクラの隣に座ると、この店で一番安いレギュラーコーヒーを注文した。
「ところでタテノ、聞いてほしいコトがあるんだけど」
席について注文を終えたと同時に、サクラは神妙な顔をして話しかけてくる。
どうせ黙っていても続きを話すのだろうと思いながら彼女を見れば、聞いているのを確認しないまま話しを続けた。
「たまにはタテノも読書するでしょ、ミステリとかホラーとか。そういう作品って、時々作者の趣味なのか蘊蓄の長いシーンあるよね。音楽の話題だとさ、やれアレは名曲だ、クラシックの指揮者はコレがいい、このレコードが名盤だ……って話が何ページにもわたってつらつらと書かれている時とかさ、あれ、音楽のこと全然わかんない私にはさーっぱり何言ってるかわかんないんで置いていかれた気分になるんだけど、タテノはそういうシーン読む時、どんな虚無抱いている?」
虚無を抱いている前提で話をされた。
だが、サクラの言っている事は俺も分かる。娯楽作品にはクラシックやジャズなど作者の好みらしい話題が知的に綴られているシーンがよくあるものだ。サクラはクラシックの名盤云々や指揮者云々の話をしているが、ウイスキーは銘柄ナンタラの何年ものがいいだとか、クラシックカーは70年代のアレが最高だとか言われてもいまいちピンと来ない時が多い。作者としては拘りだろうし、知的な会話を印象づけるシーンとして演出的な意味合いもあるのだろうから、その手の話に詳しい人間なら「それはどうかと思う」とか「いや、わかる。すげぇわかるよ」なんて相づちもうてるんだろうが、何も知らない人間からすると宇宙に思いを馳せるしかなくなるのは概ね事実だろう。
実際俺も、どちらかというと宇宙に思いを馳せるほうの人間だ。つまり、虚無を抱いているという訳である。
「サクラちゃん、作者の蘊蓄シーンなんて作者自身がわかればいいと思って書いているから別に気にする必用もないんだよ。ほら、俺たちだって学校の授業中、いきなり教師が自分の好きな洋楽の話を始めても黙って聞き流すだろ。そういうのと同じ感覚だって」
マスターは笑いながら俺の前にいれたてのレギュラーコーヒーを出す。マスターは学生時代、訥々と洋楽について語る教師がいたのかと思うと随分気の毒だが、確かにそんな蘊蓄シーンは読み飛ばしていればいいだけだ。
だいたい、その手の蘊蓄シーンが物語の主軸になっているパターンは殆ど無い。作品全体からすると隠し味程度の存在で、メイン料理にはあたらないのだ。言うなればパセリだ。彩りとして添えられているが、パセリを好む人間からすると栄養価が高く、食糧自給率も極めて高い優秀な食材だということがわかるが、だからといってコース料理全体の価値観をかえるような存在ではないのだ。
「うーん、それはわかってるんだけどね。でも、自分がしらない話題で盛り上がってると、ちょっと寂しいなーと思って。私でもわかるような話で例えてくれればいいんだけど」
サクラはマスターの方をむくと、半分ほど飲んだフラペチーノをかき回す。
サクラの言う事もわかる。自分のしらない話題で盛り上がっている時、せめて自分のしってる内容で伝えてほしいなんて思いたくもなるものだ。会話にさえ入れないというのは悲しいし、勝手に盛り上がられている空間に取り残されていると謎の無力感を抱いてしまう。我々は小市民なのだから。
「例えば、この前読んだ小説にシナトラって出てたんだけど、シナトラといえばマイウェイ! って話をしたら、マイウェイは駄作だ! って登場人物が怒り出すのね。でもシナトラっての知らない私には何がなんだかサッパリわからなくて。そもそもシナトラって虎なの? みたいな顔して見てるから、何でそんなコトで怒るのかわかんなくてさ……」
シナトラを虎と認識してしまうのは少しばかり言語的にマズい気がするが、そんな所に引っかかってるなら解決策は簡単だ。
「サクラがそう思うなら、わかりやすい例えになおせばいいんじゃないか……スクウェア・エニックスのゲームの話をしていたら、『知ってる、ドラクエの会社でしょ!』って言われると『いや、ドラクエよりもっといいゲームあるし!?』ってなるような奴だよ」
「えぇ……それって面倒くさい古参オタク仕草じゃない?」
「つまり、その作中人物も大衆受けに逆張りする面倒くさい古参仕草をしているだけって話しなんだよ」
俺はそう言うとコーヒーを一口飲む。この店のコーヒーがうまいのかまずいのか、俺の馬鹿舌ではわからなかったが家で飲むインスタントよりよっぽど美味いし、マスターの前で飲むコトで随分と気張らしになる。この時間が俺は好きだった。
「なるほど……ところでタテノはスクウェア・エニックスではどの作品が好き?」
急に話が変わるじゃ無いか。そう思いつつ、俺は少し思案した。
「……スクウェアか、エニックスかで若干意見がかわるんだが」
「お、タテノは本当に面倒くさいオタクだねぇ。エニックスだって別にゲーム作ってる会社じゃないのに」
「あえて大分するとだ、で、スクウェアの話か? エニックスの話か?」
「エニックスの話にしようかな」
俺は少し思案し
「スターオーシャンだな」
はっきりと前を見てこたえる。
トライエースが作り出した、声が出て戦闘は自分で動き回り実際に武器を振るといったタイプのアクション要素が加わったRPGだ。
戦闘要素が斬新ではあったが、SFCも後期の作品でありPSやSSが台頭するようになって今ひとつ印象が薄くなってしまったのは否めないが、クラフト技能といった遊び要素も豊富で遊び心豊富なゲームなの。
するとサクラは手を叩いて子供のように喜んだ。
「え!? それってセカンドストーリーの方?」
「違う、初代だ。初代スターオーシャン、SFCのやつな」
「すっご-い、渋い! ラスボスが弱すぎてクレーム来ちゃった奴だね」
「そう、それで次回作のラスボスは強すぎて真っ向勝負では勝てない程になっちゃった奴だ」
ちなみに、スターオーシャンセカンドストーリーはボスが真っ向勝負では撃破しにくいのを制作者側もわかっていたのか、ラスボスも毒殺出来るので毒を使うコトで一撃あてれば仕留められる救済措置がある。最もこの救済措置があっても一撃を入れるまでなかなかスリリングな戦いを強いられるのだが。
それにしても、スターオーシャンは移植されているとはいえ初代の話もちゃんと通じるとは、さすがサクラだ。
「そういうサクラはエニックスと言えば何だよ。やっぱドラクエ3か?」
「うーん、ドラクエ3は好きだけど、エニックスといえば……って感じじゃないかな、私の中では」
そして少し考えると、小さく頷いてからこたえた。
「私は、やっぱり北海道連続殺人事件・オホーツクに消ゆかな!」
またすごいところにボールが飛んできたな!
内心の叫びを飲み込んで、俺は冷静にそのタイトルを噛みしめた。
「いや、それエニックスのゲームじゃ無ぇよ!? 堀井雄二が作ってるけど、エニックスから出てねぇはずだ」
「えぇ、そうだっけ。すごくいいんだけどな、オホーツクに消ゆ。事件が事件を呼ぶ! そして捜査は北海道に! 謎のニポポ人形!」
オホーツクに消ゆは堀井雄二が作り出した本格ADVだ。
といっても内容はミステリより二時間サスペンステイストというべきだろう。ポートピア連続殺人事件のコマンドシステムを踏襲し、グラフィックとストーリーをさらに厚くした上で東京の事件が北海道の事件へ繋がっていくという、なかなかに劇的な作品である。
ニポポ人形がキーアイテムとしてやたら顔が怖いので印象に残るのだ。
だがやはり、エニックスのゲームではない、というのはいただけないだろう。
「ポートピア連続殺人事件だったらエニックスだ、せめてそっちにしておけよ」
「えー、それは正当派すぎない? 犯人の名前みんな知ってるし、あえて私が出さなくても名作かなーって。何故か地下に迷路があるし」
「ADVは地下に迷路があるのを当たり前にしたようなゲームだったな……いや、でも全然正当派じゃないだろあのゲーム。むしろいま、このゲームの話が出来る事に俺は驚いてるよ」
「まさか、犯人が有名なのは知ってたけど共犯者がいるタイプのミステリだったなんてねぇ……」
「ミステリとしては色々とぶち破ってるよな」
俺たちの会話をマスターはニコニコ笑い頬杖をつきながら聞いていた。
「あのねぇ、タテノくん、サクラちゃん。今の二人の会話、俺全然わかんないから。何となく、小説で置いていかれた気持ちになるのかったよ」
そしてそう言われ、俺たちはようやく気付いた。
自分たちもなかなか面倒くさい、逆張りの古参オタク仕草をしているというコトと、そういう話は通じている仲間内では極めて心地よい時間になり得るということに。
さして金もないが少し外に出かけたい。 そう思った俺が駅前にあるコーヒーショップ・ストレイシープに向かえば見知った顔である館野サクラが先にカウンターへ座っていた。
「あ、タテノ。やっほー、隣空いてるから座って座って、ホラホラ、遠慮なさらずに。いまなら現役女子大生の隣が無料だよ~」
サクラは俺を見て手を振り、ポンポンと隣の椅子を叩く。わざわざ隣に行く理由も無いが、自宅アパートに引きこもり誰としゃべる機会もなく悶々としていた俺には特に断る理由も無くサクラの隣に座ると、この店で一番安いレギュラーコーヒーを注文した。
「ところでタテノ、聞いてほしいコトがあるんだけど」
席について注文を終えたと同時に、サクラは神妙な顔をして話しかけてくる。
どうせ黙っていても続きを話すのだろうと思いながら彼女を見れば、聞いているのを確認しないまま話しを続けた。
「たまにはタテノも読書するでしょ、ミステリとかホラーとか。そういう作品って、時々作者の趣味なのか蘊蓄の長いシーンあるよね。音楽の話題だとさ、やれアレは名曲だ、クラシックの指揮者はコレがいい、このレコードが名盤だ……って話が何ページにもわたってつらつらと書かれている時とかさ、あれ、音楽のこと全然わかんない私にはさーっぱり何言ってるかわかんないんで置いていかれた気分になるんだけど、タテノはそういうシーン読む時、どんな虚無抱いている?」
虚無を抱いている前提で話をされた。
だが、サクラの言っている事は俺も分かる。娯楽作品にはクラシックやジャズなど作者の好みらしい話題が知的に綴られているシーンがよくあるものだ。サクラはクラシックの名盤云々や指揮者云々の話をしているが、ウイスキーは銘柄ナンタラの何年ものがいいだとか、クラシックカーは70年代のアレが最高だとか言われてもいまいちピンと来ない時が多い。作者としては拘りだろうし、知的な会話を印象づけるシーンとして演出的な意味合いもあるのだろうから、その手の話に詳しい人間なら「それはどうかと思う」とか「いや、わかる。すげぇわかるよ」なんて相づちもうてるんだろうが、何も知らない人間からすると宇宙に思いを馳せるしかなくなるのは概ね事実だろう。
実際俺も、どちらかというと宇宙に思いを馳せるほうの人間だ。つまり、虚無を抱いているという訳である。
「サクラちゃん、作者の蘊蓄シーンなんて作者自身がわかればいいと思って書いているから別に気にする必用もないんだよ。ほら、俺たちだって学校の授業中、いきなり教師が自分の好きな洋楽の話を始めても黙って聞き流すだろ。そういうのと同じ感覚だって」
マスターは笑いながら俺の前にいれたてのレギュラーコーヒーを出す。マスターは学生時代、訥々と洋楽について語る教師がいたのかと思うと随分気の毒だが、確かにそんな蘊蓄シーンは読み飛ばしていればいいだけだ。
だいたい、その手の蘊蓄シーンが物語の主軸になっているパターンは殆ど無い。作品全体からすると隠し味程度の存在で、メイン料理にはあたらないのだ。言うなればパセリだ。彩りとして添えられているが、パセリを好む人間からすると栄養価が高く、食糧自給率も極めて高い優秀な食材だということがわかるが、だからといってコース料理全体の価値観をかえるような存在ではないのだ。
「うーん、それはわかってるんだけどね。でも、自分がしらない話題で盛り上がってると、ちょっと寂しいなーと思って。私でもわかるような話で例えてくれればいいんだけど」
サクラはマスターの方をむくと、半分ほど飲んだフラペチーノをかき回す。
サクラの言う事もわかる。自分のしらない話題で盛り上がっている時、せめて自分のしってる内容で伝えてほしいなんて思いたくもなるものだ。会話にさえ入れないというのは悲しいし、勝手に盛り上がられている空間に取り残されていると謎の無力感を抱いてしまう。我々は小市民なのだから。
「例えば、この前読んだ小説にシナトラって出てたんだけど、シナトラといえばマイウェイ! って話をしたら、マイウェイは駄作だ! って登場人物が怒り出すのね。でもシナトラっての知らない私には何がなんだかサッパリわからなくて。そもそもシナトラって虎なの? みたいな顔して見てるから、何でそんなコトで怒るのかわかんなくてさ……」
シナトラを虎と認識してしまうのは少しばかり言語的にマズい気がするが、そんな所に引っかかってるなら解決策は簡単だ。
「サクラがそう思うなら、わかりやすい例えになおせばいいんじゃないか……スクウェア・エニックスのゲームの話をしていたら、『知ってる、ドラクエの会社でしょ!』って言われると『いや、ドラクエよりもっといいゲームあるし!?』ってなるような奴だよ」
「えぇ……それって面倒くさい古参オタク仕草じゃない?」
「つまり、その作中人物も大衆受けに逆張りする面倒くさい古参仕草をしているだけって話しなんだよ」
俺はそう言うとコーヒーを一口飲む。この店のコーヒーがうまいのかまずいのか、俺の馬鹿舌ではわからなかったが家で飲むインスタントよりよっぽど美味いし、マスターの前で飲むコトで随分と気張らしになる。この時間が俺は好きだった。
「なるほど……ところでタテノはスクウェア・エニックスではどの作品が好き?」
急に話が変わるじゃ無いか。そう思いつつ、俺は少し思案した。
「……スクウェアか、エニックスかで若干意見がかわるんだが」
「お、タテノは本当に面倒くさいオタクだねぇ。エニックスだって別にゲーム作ってる会社じゃないのに」
「あえて大分するとだ、で、スクウェアの話か? エニックスの話か?」
「エニックスの話にしようかな」
俺は少し思案し
「スターオーシャンだな」
はっきりと前を見てこたえる。
トライエースが作り出した、声が出て戦闘は自分で動き回り実際に武器を振るといったタイプのアクション要素が加わったRPGだ。
戦闘要素が斬新ではあったが、SFCも後期の作品でありPSやSSが台頭するようになって今ひとつ印象が薄くなってしまったのは否めないが、クラフト技能といった遊び要素も豊富で遊び心豊富なゲームなの。
するとサクラは手を叩いて子供のように喜んだ。
「え!? それってセカンドストーリーの方?」
「違う、初代だ。初代スターオーシャン、SFCのやつな」
「すっご-い、渋い! ラスボスが弱すぎてクレーム来ちゃった奴だね」
「そう、それで次回作のラスボスは強すぎて真っ向勝負では勝てない程になっちゃった奴だ」
ちなみに、スターオーシャンセカンドストーリーはボスが真っ向勝負では撃破しにくいのを制作者側もわかっていたのか、ラスボスも毒殺出来るので毒を使うコトで一撃あてれば仕留められる救済措置がある。最もこの救済措置があっても一撃を入れるまでなかなかスリリングな戦いを強いられるのだが。
それにしても、スターオーシャンは移植されているとはいえ初代の話もちゃんと通じるとは、さすがサクラだ。
「そういうサクラはエニックスと言えば何だよ。やっぱドラクエ3か?」
「うーん、ドラクエ3は好きだけど、エニックスといえば……って感じじゃないかな、私の中では」
そして少し考えると、小さく頷いてからこたえた。
「私は、やっぱり北海道連続殺人事件・オホーツクに消ゆかな!」
またすごいところにボールが飛んできたな!
内心の叫びを飲み込んで、俺は冷静にそのタイトルを噛みしめた。
「いや、それエニックスのゲームじゃ無ぇよ!? 堀井雄二が作ってるけど、エニックスから出てねぇはずだ」
「えぇ、そうだっけ。すごくいいんだけどな、オホーツクに消ゆ。事件が事件を呼ぶ! そして捜査は北海道に! 謎のニポポ人形!」
オホーツクに消ゆは堀井雄二が作り出した本格ADVだ。
といっても内容はミステリより二時間サスペンステイストというべきだろう。ポートピア連続殺人事件のコマンドシステムを踏襲し、グラフィックとストーリーをさらに厚くした上で東京の事件が北海道の事件へ繋がっていくという、なかなかに劇的な作品である。
ニポポ人形がキーアイテムとしてやたら顔が怖いので印象に残るのだ。
だがやはり、エニックスのゲームではない、というのはいただけないだろう。
「ポートピア連続殺人事件だったらエニックスだ、せめてそっちにしておけよ」
「えー、それは正当派すぎない? 犯人の名前みんな知ってるし、あえて私が出さなくても名作かなーって。何故か地下に迷路があるし」
「ADVは地下に迷路があるのを当たり前にしたようなゲームだったな……いや、でも全然正当派じゃないだろあのゲーム。むしろいま、このゲームの話が出来る事に俺は驚いてるよ」
「まさか、犯人が有名なのは知ってたけど共犯者がいるタイプのミステリだったなんてねぇ……」
「ミステリとしては色々とぶち破ってるよな」
俺たちの会話をマスターはニコニコ笑い頬杖をつきながら聞いていた。
「あのねぇ、タテノくん、サクラちゃん。今の二人の会話、俺全然わかんないから。何となく、小説で置いていかれた気持ちになるのかったよ」
そしてそう言われ、俺たちはようやく気付いた。
自分たちもなかなか面倒くさい、逆張りの古参オタク仕草をしているというコトと、そういう話は通じている仲間内では極めて心地よい時間になり得るということに。
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