インターネット字書きマンの落書き帳
悪魔たりえるもの
久しぶりにオリジナル創作的なBLを書いたのでおいておきます。
漠然とモデルにしている作品はあるんですけど、二次創作というにはあまりにも二次創作ではないのでオリジナルとしておいておきますにゃーん。
にゃーん。
漠然とモデルにしている作品はあるんですけど、二次創作というにはあまりにも二次創作ではないのでオリジナルとしておいておきますにゃーん。
にゃーん。
『人はそれを悪魔と呼ぶのだ』
「日本人にはイマイチ意味わからないかもしれないけど、何だって願いを叶えてくれる神様ってのは、クリスチャンの価値観的には悪魔みたいなもんなんだよ」
隣を歩きながら、男はそんな事を言う。
母親が外国人と聞いていたからハーフなのは知っているが、クリスチャンだったんだろうかと考え、すぐに否定した。
とてもそうとは思えなかったからだ。
彼はいわゆる実家が太い家庭だ。子どもの頃から何不自由なく育ち、金の力で自分の悪行をもみ消せるような立場の人間なのだ。他人が不幸になる姿を見て愉悦を感じるような悪漢でもあり、世界には救いなんてものは存在しないと普段から豪語している。
この男が神のために敬虔に祈るなど、とても想像が付かなかった。
「クリスチャンの価値観としては、神様ってさ。与えるのは試練なワケ。病気でも、怪我でも何でも、血反吐をまき散らすほど辛い目にあったとしてもな。それはあくまで神様が与えた試練なワケよ。神様はそれを見て、自分への信仰を失わないか試しているってこと。その上で信仰を失わずに生きていく、清らかな人間を自分の信徒として守り、寄り添う存在が神様なのよ」
聞いてもいないのに彼は滔々と続ける。
何で急にそんな話をする気になったのかは毛頭わからないが、彼の話が本当ならクリスチャンの言う神は残酷な存在でしか無いのではないか。
「残酷なもんだろう」
まるでこちらの気持ちを見通したかのように、彼は言う。サングラスごしに見る目の色素は日本人にしては少し薄い。グレーにもアッシュブラウンにも見える彼の瞳では日光がひどく眩しいらしく、いつも気取ったサングラスをかけていた。
「でも、だからこそ信仰なんだよね。だってそうだろ、人間って生きていればものすごい理不尽な目にあうワケじゃん。自分は何も悪い事してないのに、絶対に覆せない運命が急に襲いかかってくるのなんて、現実にあるワケだし。そういう大理不尽を前にして、一人じゃない、神という大きな力が守っていてくれるんだ……そう思ってないとさ、孤独と絶望で、人間って案外簡単に壊れちゃうと思うんだよね」
信仰とは、天国に行く見返りである。とは、いつか、漫画で読んだ台詞だ。
ステレオタイプの日本人である自分は特定の宗教をもたず、生まれながらにしてまず宗教ありきといった教育を受けてこなかったから、神とは誰でも救える存在で、死ねば天国につれていくものだと思っていたから、「信仰は天国に行くための見返り」という言葉に「なるほど、そういうものか」と思ったものである。
だが、彼の話を聞くと少しばかり認識は違うらしい。
信仰は、自分の内にある正しさ、清らかさ、生き方、有りよう。そういったものを守る存在であり、アイデンティティーの一つなのだ。
見返りというのも当然あるだろう。救われたいという気持ちもだ。
だが、それを求める以前に自分が正しい存在だと、清い存在だと認めるための意義のようなものも、多分に含まれているのだと思う。
特定の宗教をもたない日本人でも、信仰心はある。鰯の頭も信心から、ではないが、食べ物を粗末にすると罰が当たるとは言うし、敬意や尊敬がない人間に対しては厳しい目を向ける事が多いのも、食べ物を粗末にせず、敬意ある人間は正しく清らかであるという価値観が根付いているからだろう。
「だから、何でも願いをかなえてくれる存在ってのはさ、神の所業じゃなく、悪魔の誘惑なのよ」
と、そこで彼は振り返ると淡い笑顔を向ける。
「つまり、俺は悪魔の誘惑に負けちゃった堕落した人間ってこと。まさか、俺の欲しいものぜーんぶくれるような奴がこの世にいるとはね」
その笑顔を前にして、自分の顔が熱を帯びていくのがわかる。
「何だよ、俺が悪魔だとでも言いたいのか」
「悪魔だよ」
彼は隣に寄り添い、腕に絡みつく。
「俺の世界を全部ぶち壊して、ほしいものを全部与えてくれる。本当に恐ろしい悪魔だよ、あんたは」
耳に絡みつく甘い言葉に、心の中だけで呟く。
もしも俺を悪魔にした奴がいたのなら、きっとそれはおまえなんだよと。
「日本人にはイマイチ意味わからないかもしれないけど、何だって願いを叶えてくれる神様ってのは、クリスチャンの価値観的には悪魔みたいなもんなんだよ」
隣を歩きながら、男はそんな事を言う。
母親が外国人と聞いていたからハーフなのは知っているが、クリスチャンだったんだろうかと考え、すぐに否定した。
とてもそうとは思えなかったからだ。
彼はいわゆる実家が太い家庭だ。子どもの頃から何不自由なく育ち、金の力で自分の悪行をもみ消せるような立場の人間なのだ。他人が不幸になる姿を見て愉悦を感じるような悪漢でもあり、世界には救いなんてものは存在しないと普段から豪語している。
この男が神のために敬虔に祈るなど、とても想像が付かなかった。
「クリスチャンの価値観としては、神様ってさ。与えるのは試練なワケ。病気でも、怪我でも何でも、血反吐をまき散らすほど辛い目にあったとしてもな。それはあくまで神様が与えた試練なワケよ。神様はそれを見て、自分への信仰を失わないか試しているってこと。その上で信仰を失わずに生きていく、清らかな人間を自分の信徒として守り、寄り添う存在が神様なのよ」
聞いてもいないのに彼は滔々と続ける。
何で急にそんな話をする気になったのかは毛頭わからないが、彼の話が本当ならクリスチャンの言う神は残酷な存在でしか無いのではないか。
「残酷なもんだろう」
まるでこちらの気持ちを見通したかのように、彼は言う。サングラスごしに見る目の色素は日本人にしては少し薄い。グレーにもアッシュブラウンにも見える彼の瞳では日光がひどく眩しいらしく、いつも気取ったサングラスをかけていた。
「でも、だからこそ信仰なんだよね。だってそうだろ、人間って生きていればものすごい理不尽な目にあうワケじゃん。自分は何も悪い事してないのに、絶対に覆せない運命が急に襲いかかってくるのなんて、現実にあるワケだし。そういう大理不尽を前にして、一人じゃない、神という大きな力が守っていてくれるんだ……そう思ってないとさ、孤独と絶望で、人間って案外簡単に壊れちゃうと思うんだよね」
信仰とは、天国に行く見返りである。とは、いつか、漫画で読んだ台詞だ。
ステレオタイプの日本人である自分は特定の宗教をもたず、生まれながらにしてまず宗教ありきといった教育を受けてこなかったから、神とは誰でも救える存在で、死ねば天国につれていくものだと思っていたから、「信仰は天国に行くための見返り」という言葉に「なるほど、そういうものか」と思ったものである。
だが、彼の話を聞くと少しばかり認識は違うらしい。
信仰は、自分の内にある正しさ、清らかさ、生き方、有りよう。そういったものを守る存在であり、アイデンティティーの一つなのだ。
見返りというのも当然あるだろう。救われたいという気持ちもだ。
だが、それを求める以前に自分が正しい存在だと、清い存在だと認めるための意義のようなものも、多分に含まれているのだと思う。
特定の宗教をもたない日本人でも、信仰心はある。鰯の頭も信心から、ではないが、食べ物を粗末にすると罰が当たるとは言うし、敬意や尊敬がない人間に対しては厳しい目を向ける事が多いのも、食べ物を粗末にせず、敬意ある人間は正しく清らかであるという価値観が根付いているからだろう。
「だから、何でも願いをかなえてくれる存在ってのはさ、神の所業じゃなく、悪魔の誘惑なのよ」
と、そこで彼は振り返ると淡い笑顔を向ける。
「つまり、俺は悪魔の誘惑に負けちゃった堕落した人間ってこと。まさか、俺の欲しいものぜーんぶくれるような奴がこの世にいるとはね」
その笑顔を前にして、自分の顔が熱を帯びていくのがわかる。
「何だよ、俺が悪魔だとでも言いたいのか」
「悪魔だよ」
彼は隣に寄り添い、腕に絡みつく。
「俺の世界を全部ぶち壊して、ほしいものを全部与えてくれる。本当に恐ろしい悪魔だよ、あんたは」
耳に絡みつく甘い言葉に、心の中だけで呟く。
もしも俺を悪魔にした奴がいたのなら、きっとそれはおまえなんだよと。
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